五十年まえ
二度の戦争があった。一度めは、空が新しい舞台になった。だが、それは私の理解の範囲の中だった。二度めは、私の理解を越えたなにかがあった。
コナーから面白い話を聞いた。その文書を読んでみると、昔、コナーの島で聞いた奇妙な機械と共通点があるように思えた。はるかに抽象化されてはいるが。それとともに、その男が作った、まったく違うように思えるアイディアも見た。
ドーグラスからも面白い話を聞いた。コナーから聞いたものよりもおそらく原始的なものだが、それが作られたらしい。そして、それが発達し、あの奇妙な機械へとどんどん近付いているようだ。
おかしな幻想に囚われた。あの奇妙な機械を作ろうとした男はかなりの癇癪持ちだったらしい。なぜそういう性格だったのだろう。ビオスと過した島で見た道具を知っていたのだろうか。ならば私たちの仲間だったのかもしれない。だとすれば、その機械を作ることが出来ることを知っていたのかもしれない。それなら、癇癪を起こしても不思議ではない。あるいは、昔読んだ小説にあったように、未来から来たのだろうか。それだとしても、やはりその機械を作ることが出来ることは知っていたのだろう。やはり、癇癪を起こしても不思議ではない。
いや、多分どちらも違うだろう。後者については確信できないが、前者についてならすこしくらいは伝え聞くことがあってもおかしくない。
著名な研究者が集った会議についてもドーグラスから聞いた。機械に人間の能力を持たせることを目的とするという。
法、あの奇妙な機械、あの女性の作品、時間を行き来する機械の話。なにかが繋がりかけているように思った。
「まだだ」
私はそう呟いた。ハームの言った諦め、ビオスの言ったわかる時。それらの言葉の意味がわかりかけているように思えた。
まだプライズを得てしまうわけにはいかない。まだ諦めてしまうわけにはいかない。ハームとビオスが見た未来をすぐそこまで来ているのなら、それを知ることのみで諦め、わかってしまうわけにはいかない。ハームとビオスの見たものがなんだったのか、それをはっきりと見るまでは。そう思ってどうにかなるものではないのかもしれない。だが、繋りかける糸を切ろうと、懸命にそれを考えないようにした。ただ観察のみに徹しようとした。