第20話 十二尾
4章と5章の所々に修正を加えました。
少しだけ重要な修正なので見ておくといいかも?
「システム起動…………設定がノーマルのまんまだな………。まぁ、当然か。ちょっと変えるから待っててくれ。」
オート照準、オート防御をオフ。
オートバランサーをオフ、スラスターのリミッター解除、各所オーバーヒート時の自動動作停止設定解除………
「はい!?ちょっとまって!?こんなピーキーな設定、私じゃ操縦無理だって!!」
「俺はこれくらいの設定じゃないと逆にダメなの!!」
さらに設定を次々と書き換えていき、並の人間では扱えないスペックへと魔改造していく。
しかし、変則的な動きしかできず、セオリー通りの動かし方では並の兵士ぐらいの操縦技術しかないシオンには逆にこの設定ではないと上手く扱いこなせない。
「格納庫から出るぞ!!」
基本的な機体操縦はシオンが行うので、移動などに支障は出ない。だが、武器の操作は枝音が行うので、反応が追いつくかどうか不安だ。
完全思考操作型のHFを開発できたなら、その辺の問題もどうにかなりそうだが………
「索敵に感あり、敵機6、能力者8!!」
「早速だな。だが、この機体なら能力者は関係ない。」
12本の尻尾のうちの4つの尻尾、この機体の背中辺りにあるそれを起点として、半径450メートル程に結界のようなものが構築されるのを枝音は認識した。
そして、半径450メートル以内の全ての異能がキャンセルされる。
四足歩行型HF【黒兎】と同じ機能だ。
可変式四足歩行型試作HF【十二尾】
【黒兎】の後継機とも言える、キツネをデザインモデルとしたこの機体は、人型や四足歩行型へと任意で変形可能であり、平面での戦闘における四足歩行型の弱点や、狭地における人型の弱点を補っている。
全ての能力をキャンセルする機能を持ち、直撃すればHFの動力を停止させる機能をもつ伸縮自在の尻尾が背中に4つ。
先端にビーム砲を搭載している伸縮自在の尻尾が腰周りの横側に6つ。
伸縮自在の蛇腹剣のような高周波ブレード……通称チェインブレードを搭載した尻尾が腰背面側に2つ、計12本の尻尾をもつのが特徴である。
全体的に他のHFより一回りか2回りほど大柄であり、操縦が複座式という他のHFにはない特徴を持つ。
「さて、初陣だ。敵機は6、か。枝音、いけるか?」
「どうせ私が何言ってもやらなきゃいけないんでしょ?」
「そらそう、よっ!」
四足歩行型で機動性を高め、1機目を翻弄しつつ尻尾を長く伸ばし、ビーム砲でオールレンジ攻撃を行う。
四肢を破壊して動けなくした後に、標的を別の機体に変更する。
パイロットは殺さない。
ここで夜花の戦力を削りすぎると、3つの組織の勢力バランスが崩れてしまうからだ。
今の夜花は、他の2勢力と比べて少し力が劣ってしまっている。
だが、あくまで直接手を下さないだけで、爆発に巻き込まれたり、流れ弾のことなどはまったく考慮しない。
2機目は高周波ブレード搭載の尻尾で頭部を刺し貫き、もう一本の尻尾で下半身と手首を切り落とす。
3機目をオールレンジ攻撃で破壊し、4機目の脚部を高周波ブレードで切り落としながら、5機目へ飛びかかる。
敵の銃撃を避けつつ、空中で人型に変形してそのまま頭部を思い切り踏みつけ、破壊する。
そのまま四肢を破壊、行動不能に陥らせる。
6機目、こいつだけ装備類が大幅に変更されている。
隊長機、それもエースという事か。
オールレンジ攻撃を行おうとするが、スパーク型閃光弾頭を使用され、レーダーとメインカメラが一時的に使用不能に、目標を見失う。
手当たり次第にビームを撃つが当たるはずもなく、モニターが回復した頃には接近戦に持ち込まれる。
この距離になると、遠距離武装はほとんど役に立たない。
腕部にある爪のようなブレード、ファントム・クロウを展開し、敵の高周波ブレードを受け止める。
甲高い音が鳴り響き、敵のブレードに亀裂が入る。
そのまま砕け散るが、敵は予備のブレードに付け替えてさらに攻撃。
こちらは背面側にある2本のチェインブレードを伸ばして展開、鞭のようにしならせて変則的な動きでの攻撃を行う。
だが、相手もかなりの技量で、動きに惑わされる事無く的確にチェインブレードを防御、回避しつつ防御の隙を突いてくる。
再び閃光弾、だがこの距離で使えば相手も視力が一時的に使えなくなるはずだ。
モニターの光源処理が追いつかない程の眩い光が炸裂する。
だが、それをものともせず敵は的確にコクピット付近を狙いにくる。
だが、シオンの技量もまともではなく、目がほとんど使えない状態にも関わらず、ファントム・クロウを展開して防御する。
だが、形勢は敵の方に少しだけ傾く。
枝音がHFの戦闘に慣れていないのと、シオンも乗ったばかりの機体であるために操作にあまり慣れておらず、徐々に押され始める。
だが、ここでシオンは四足歩行型に変形して相手のリズムを崩しにかかる。
そして、左前足の何も無い素手の拳で攻撃を行う。
十二尾は、どうせなら、という理由であらゆる最新技術や試作兵器などを詰め込んである。
その試作の武装の一つであるファントム・クロウの特徴は、その爪状のブレードに光学迷彩が用いられていることだ。
透明になったクロウで攻撃するが、何も無い素手の拳で攻撃するというこの動作を不審に思った敵がブレードで咄嗟に防御する。
またしても敵のブレードが破損、さらに刃を付け替える。
ジャンプして空中から攻撃、着地点を狙われるだけだと思うが、太陽を背にして目くらましを行ってくる。
咄嗟に後方に飛び退いて回避、左腕に装備されているガトリング砲でこちらを牽制。
四足歩行型ならではの高機動性をいかしてガトリング砲を全て回避しつつ、敵を翻弄する。
だが、敵のパイロットはその速さに臆することなくついてくる。
かなりの技量だ。
こんな量産型ベースのものではなく、専用の機体を与えていたらもっと強かったかもしれない。
なれた機体だからこそ、この強さなのかもしれないが。
なんにせよ、機体性能で勝ったと思われるのは癪だ。
そう思ったシオンと枝音は、武装を迷彩状態を解除したクロウとチェインブレードのみに変更する。
息ぴったりの連携で、枝音とシオンは敵と攻防を繰り広げる。
ふたりとも極限まで戦闘に集中し、額から汗を流している。
だが、ふたりの顔には笑みが浮かんでいた。
負の感情を抱けない枝音だけでなく、シオンすらも珍しく心から楽しそうにしている。
シオンが枝音に話しかける。
「ねぇ!」
「なんだ?」
「いま、最っ高に楽しいっ!!」
「あぁ!」
激しい攻防のすえ、ついに十二尾のクロウか敵の胸部を捉える。
敵はそれをギリギリのところで躱そうとするが、右腕が肩ごと抉り取られる。
それによってバランスを崩し、続くチェインブレードによる攻撃を回避出来ない。
頭部を破壊され、コクピット内のモニターが一時的に暗転する。
一瞬でサブカメラに切り替わり、モニターに映像が再投影されるが、その一瞬が致命的な隙となる。
先程のお返しとばかりに十二尾は空中へと舞い上がり、太陽を背にしてチェインブレードにて攻撃を行う。
視界を確保したばかりの敵パイロットはそれに対応しきれず、直撃を喰らう。
脚部を切断され、身動きが取れなくなる。
崩れ落ちる前に体当たりをくらわせ、近くの基地管制塔にぶつける。
パイロットの意識が失われたのか、完全に敵機が沈黙。
逃げる十二尾を止められるものは、誰もいなかった―――。
はいどーもー。どこ黒でぇーす。
これにて5章は終わりにするつもりです!!
6章でララヴィア討伐へ!キリが良ければ7章に行く前に光の巨人も6章で討伐したいですが。
7章、あるいは8章からが本番、物語の最後へ向かって行く予定です!
では、まぁたこんどー




