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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第5章 変わり果てた世界
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第10話 呼び名。


そして、進みつづけること5時間。

操縦士は瑠璃奈からネアに交代し、時刻は既に

深夜1:00

その予想外の事態は、突然起こった。


「あれ?」


「ふぁ〜、眠た………ん?どうかしたの?ネア。」


「あ、枝音。いや、オーディンが書いた地図だとここに曲がり道を曲がるはずなんだけどさぁ。この通路、行き止まりなんだよね。」


「んー、オーディンが道間違えたんじゃない?」


「俺が間違えるわけないだろ。地下通路に誰よりも詳しい自信がある。」


「ひゃっ!?」


突然話しかけてきたオーディンの声に、ネアがびっくりする。

まさか話を聞いているとは………というか、起きているとは思わなかった。


「突然驚かさないでよ………てか、なんで行き止まりなのよ?」


すると、オーディンがHFから降りて、直接その行き止まりの壁を確かめ始めた。


「んー、これは……行き止まりっていうか…封鎖された感じだな?」


「なんで封鎖なんてされてんのさ?」


「おそらく、緊急閉鎖用シャッターだ。まぁ、程のことがない限り使用しないもんなんだが………。」


確かに、言われてみればその行き止まりの壁ははシャッターのようなものに見えなくもない。

が、やはりただの壁にしか見えなかった。


「ただの壁にしか見えないんだけどなぁ。」


「とりあえず、開けてみようぜ。」


そう言いながら、2人に距離を取るように促す。


「この防壁はそんじょそこらのミサイル程度なら防げるほどのもんだからな、こいつでやるか。………起動!」


右腕の義手を変形させ、強力な雷撃を放つ。

クロノスに向けて放った時よりは威力は抑えてあるが、それでも目の前の壁が一瞬で融解し、表れた奥の通路が吹き飛ぶほどの威力はあった。


「うぉおお!?何事!!??」


「敵襲か!!?」


「……っ!?レーヴァテイン、起動!!」


「敵襲!?起きなさい、羅刹!」


その爆音で、寝ていた他の連中も起きだし、レイリや羅鳴、瑠璃奈、舞鬼が戦闘態勢に入る。

リリィだけは「ふぇ?」とまだ寝ぼけているのか、目を擦っている。こいつ、危機能力が著しく乏しくないか?


というわけで、このカオスな状況をなんとかまとめあげ、ネアが経緯を説明する事5分後。


「で?そのシャッターの奥はどうなってんだ?」


「とりあえず、ただの壁ではなかったな。奥の通路は瓦礫で埋もれていたみたいだが、それもまとめて吹き飛ばした。」


「とりあえず、歩いて進むか?」


「そうだな。とりあえず、どれだけ進むか分からないし、少し準備するか。」


とりあえず、一旦HFの中に戻って、各々準備する。

このHFはとにかくスペースが広く、個室とは行かない迄も女子と男子で寝るところが別れていたりする。

なにやら、実験的に作り出された魔石の効果によって空間拡張魔術を常に発動することで、本来ありえないスペースの広さをとることが出来たのだとか。


と、オーディンの右腕をじっと見ていたネアがオーディンに話しかける。


「ねぇ、オーディンのその腕ってなんなのよ?」


それに対して、あ、私も気になってた、と瑠璃奈が言う。


「アガートラームって言ったっけ?それって確かヌアザのものじゃ?」


「あぁ、世界崩壊戦線の時に右腕をぶった切られてな。いくらオーディンと言えども再生できない程の威力で攻撃を受けたんだ。んで、代わりとなる義手をヌアザからの紹介でディアン・ケヒトに作ってもらったんだ。」


「へぇ、あの戦争にあんたもいたんだ?」


「まぁ、個人参加でな?詳しくは聞かないでくれ。」


珍しい、とネアは思った。

いつものこいつなら、「まぁ、なんで居たのかは秘密だ。」とかなんとか言ってはぐらかす。

が、今回は「聞かないでくれ」と頼む形できた。

その事に困惑したネアは、深く追求しないことにした。


「てか、ヌアザと知り合いなの?」


「そりゃ、長生きしてるからな。俺は。」


「ふーん。ねぇ、その腕、見せてくれない?」


「なんなら外してやってもいいぞ?」


オーディンがガチャガチャと何やら左手で右腕の肩あたりと二の腕のあたりを弄くり回す。

パキン、パキンっと何かが外れるような音が響き、ガシャッと金属の腕が外れる。

オーディンの右腕は、二の腕の真ん中あたりから先が全くなかった。


「へぇ、こうして見るとあんな威力がだせる武器とは思えないね。ちなみに、その眼帯の奥はどうなってんの?」


義手を一通り間近で見れて満足したのか、ネア達が腕をオーディンに返すと、次にそういった。


「ん、特になんもないぞ?」


右目の眼帯を外すと、そこには火傷跡のようなものがあった。

それを見て、瑠璃奈が呟く。


「火傷跡?」


「そう、お前と同じだな。」


瑠璃奈も、幼い頃にあった事件のせいで、顔の右半分に大きな傷を負っている。

少しだけ、瑠璃奈はオーディンに親近感が沸いた。


「てか、オーディンオーディンって呼ぶのめんどくない?愛称付けようよ。」


と、枝音が言いだした。

確かに、オーディンという名前は長いし、何より個人名という感じがしない。

神の名前をそう容易く呼ぶことに抵抗もあるし、愛称をつけるのはいい案だとネアは思った。


「いいねそれ!何にするよ?」


「んー、おでんとか?」


と、瑠璃奈。

おぉい、ネーミングセンス……と瑠璃奈を見る周囲の目がジト目に変わる。


「それ、いざと言う時に咄嗟に呼びにくいでしょ。」


「じょ、冗談よ、冗談に決まってるじゃない!」


あたふたと瑠璃奈が弁明し始めるが、誰も聞いてはいない。

「違うんだっばー!」とじたばたするが、みんなにガン無視され、枝音にポンッと肩に手を置かれた。


慈愛の心は負の心では無いため、今の枝音にもきちんとあるのだ。


残念キャラの枝音に憐れまれていると思うと、瑠璃奈の心はより一層暗くなった。


「オーディンの他にも結構呼び方あったよね。オティヌスとか、ウォーデンとか。」


「それ、オーディンと変わらないでしょ。」


「んー、名前の意味が『怒り狂う神』だからなぁ……」


全員がオーディンの方を見る。

オーディンは早く先に進まねぇか?と呼び名に関しては割とどうでも良さげだ。

そのオーディンの様子を無視して、皆は話し合いを続ける。


「そもそも、こいつ事態が『怒り狂う神』って雰囲気じゃねぇもんな。」


「「「確かに。」」」


レイリの言葉に、全員が頷く。


「おい。」


オーディンが失礼な、とツッコミを入れるが無視されてしょげる。

どうやら、自身の意見は大して考慮されないらしい。


「しっかし何がある?」


「バーレイグとか、ハーヴィーとかは?」


「何それ?」


「オーディンの他の呼び方。ケニングって言うんだけど。」


「だからそれオーディンって呼んでんのと変わんないじゃん。」


「あの、もうここらにして進みません?」


「オーディンは黙ってて!(なさい!)」


「あっはい。」


その後も数分の間、やんややんやとオーディンの呼び名決めが続く。

なかなか呼び名が決まらない中、突然、今まで1度も呼び名の候補を言わなかった枝音が口を開いた。


「―――――――シオン。」


「…………え?」


なんで突然その言葉が出てきたのか分からずに、一堂は困惑する。

オーディンのどこにも、シオンという名前の要素はない。


「シオンは、どう?」


「………どうして、その名前を?」


つけようと思ったのか、とオーディンが枝音に尋ねる。

対して枝音は、うーん、と少し考えた後、オーディンを見つめて答える。


「あなたを見ていたら、そう感じたから?」


それを聞いたオーディンは、片方しかない目を大きく見開いてどこか悲しそうに笑った。


「…………ハ…ハハ……そうか……そうかそうか……。」


その様子に、一堂はどう反応していいのか分からずに困惑するが、枝音だけはしっかりと彼を見つめていた。


「どうなの?」


「………いい、気に入った。その名前で行こう。シオン、なるほど、シオンか。うん、今から俺はシオンだ、よろしくな。」


「お、おう、よろしく?……って、何処へ行くんだ?」


「ん?少し、HFの上に行ってくる。今は機嫌がいい、風に当たりたい気分だ。」


先程のどこか悲しそうな雰囲気からは一転、どこか機嫌が良さそうに、鼻歌混じりにオーディン……いや、シオンはHFの甲板とも言える場所に出る。


その様子を、枝音以外のメンバーはポカンと呆気に取られたまま見ており、枝音だけはどこか満足そうだ。


HFの上で、地下通路の中を吹く夜風を心地よく感じているシオンがいた。

地下なので星が見えないのが残念であるし、今の自分はこんなキャラではないこともわかっている。

だけど、この、これを、この気持ちを、今は楽しんでいたい。


彼には、忘れられない想いがある。

永遠に忘れない想いが。

そのために、彼は生きているのだから。



――――――紫苑(シオン)


それはキク科シオン属、別名アスターというひとつの花の名前。


そして、その花言葉は――――


――――――「追憶」または、「永遠に君を忘れない。」






オーディンオーディンって名前なのか神の名前なのか分からないっていうか呼びづらい名前を書くのは面倒です!


ということで長らく考えていたオーディンの愛称をやっとこさ付けました。


別にインレに戻しても良かったんですが、それも呼びにくいですしね。


では、また今度ー

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