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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第5章 変わり果てた世界
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第5話 出会いの心。

今日はこの後も2~3時間置きに投稿しまくります!


「何してんの?」


「えーっと、どちらさん?」


「あー、私は白咲 枝音っていうんだ。あなたは?」


「適当に、インレとでも呼んでくると嬉しいかな。」


「本名は名乗れない理由でもあるの?例えば……あなたの持っている武器、あるいは能力が本名と関連しているとか。」


「何故、本名でないと?」


「直感。」


「なるほど、直感ね…………。」


こういうのは、案外馬鹿には出来ない。

特に、対極寒地仕様の白華の軍用コートを来ていて、ここの戦闘行為に感づいてやってきたようなやつの直感は。


「ちょっと、喋ってる場合じゃないって!攻撃、来るよ!」


ネアが2人に注意を促すと同時に、クロノスからビームが放たれる。


「アルギズのルーン。」


「展開、『朝焼けの空』」


ネアとインレの2人が、それぞれが持つ防御方法でクロノスの攻撃を防ぐ。


「私も戦うけど、何をすればいい?」


「いいのか?なら、俺達と一緒に奴を押さえ込んでくれ。タイミングを見て俺が最大火力をぶち込む。」


「りょーかいっ。そっちの、キミ!名前は?」


「ネアよ。少しの間だろうけど、よろしく。」


「よろしくね。」


「ゴァァァァァアアアッ!!!」


クロノスの目が、ギョロりとこちらを向いた。

そして、その雄叫びが衝撃波のようにビリビリとネアの肌を震わせる。

そして、斬りつけようとしていたネアの動きが、まるで、一時停止でもされたかのように止まる。

いや、止まっているのではなく、物凄くゆっくりになっている。


(な………にが……っ!?)


起きたのか。

体が重いわけでも、思うように動かない訳でもない。

だが、意識と体の速度があまりにも違いすぎる。


【時間をゆっくりにされているんだ。流石の奴でも、時を止めることは叶わないようだが………】


時の流れを遅らせるぐらいはできるらしい。


【へっ?ちょ、頭ん中に声が………えっ?】


【落ち着け、伝心のルーン魔術だ。肉体は時空間に制限を受けるが、本来なら精神にその制限は無いからな。意思伝達ならこのゆっくりの世界でも可能だ。】


【で、どうすんのよこれ?】とネア。


【対処法は知らん。考えてない。そもそも、黒兎で何とかする気だったしな。】とインレ


【ん?黒兎?】と枝音。


【あー、俺は黒兎のパイロットだったんだが………。その話は後でだ。】


【ん、分かった。じゃあ、まずはこの状況を何とかしないと。】


【あぁ、どうするかな………っ!!!?】


時間の流れが元に戻り、動きが元通りの速度になる。

そして、インレの左脚が綺麗に吹き飛ばせされていた。


「ぐっ…………がっ!」


「インレ!?」


「大丈夫だ、これぐらいならすぐに再生する。……今の攻撃はなんだ?」


「私には()()()よ。あのゆっくりの時間で、あいつだけ凄い速度で移動して、君の左脚を引きちぎってった。」


「なるほど、周囲の時間は遅くして、己の時間は早くしたのか。ネア、お前の影なら何とかならないか?」


「確かに、私の影は物理法則には当てはまらない。けど、遅い時の中で攻撃出来るかどうかは………。」


「お前の力、それは冴詠の欠片と黒音の細胞から作り出されたものだな?」


「………! えぇ、そうだけど………。」


なんであんたが知って………?


「あの力なら、例え時が止まっていても攻撃が可能なはずだ。まだ扱いこなせていないようだが………何とかしてくれ。」


「くろ、ね………?」


枝音が、急に顔をしかめて頭を抑え出す。


「大丈夫?」


「や、なんでも、ない……。」


「ゴァァァァァアアアッ!!」


「また来るぞっ!」


今度は3人とも視認できた。

とてもゆっくりな時の流れの中で、唯一、通常の速さとは思えないような速度で移動する巨大な怪物。

ネアの右脇腹が、枝音の右腕が、インレの左腕が、吹き飛ばされた。


いや、それぐらいの被害ですんで良かったのかもしれない。


このゆっくりの時の中では、奴のやりたい放題だ。

ネア達になす術はない。


そして、時間が元に戻る。


「完全に止めている訳では無いが、アレは脅威だな…………。お前ら、どうだ?」


「私はだいたいわかってきた。コツとタイミングさえ掴めればあの時間の中でも動けそう。」


「私は無理!見えるようにはなったけど。あの中で動ける気がしないわ!」


とても出来ない!と言うふうに首をブンブンと音を立てながら横に振るネアを見て、インレは少し考えてから言う。


「ネア、影を全身に纏うことは出来るな?」


「出来るけど……制御出来ない。暴走する確率の方が高いわよ。」


「構わん。やれ。それでお前もあのゆっくりの時の中で動けるはずだ。もしもの時は何とかする。」


「………信じていいのよね?」


「あぁ、出来なきゃ勝てない。信じてくれて大丈夫だ。」


「あーあ、出会って1日もたってないような奴を信用するはめになるとは思わなかったなぁ……。しかも胡散臭い奴だし。」


「は、言ってろ。」



「キミはどうするの?」


「使いたくなかったが…………1度だけなら、奴の能力を封殺できる。お前らが出来る限りダメージを与えて、俺がそれを使って隙を作る。そしたら、全員の最大火力で叩き潰す。」


「「りょーかい!」」


「………来るぞ!」


「グォォアアアアアアァァァア!!!!」


時の流れが、酷く遅くなる。


そして奴だけが凄まじい速度で移動し、攻撃を仕掛けてくる。

この時間の中では、ヤツのワンサイドゲームだ。

一撃で即死するだけのダメージだけは負わないようにしなければならない。

だが、このゆっくりの時の中では出来ることなんか限られている。


奴の胸ヒレが枝音の首を捉えた瞬間、奴の肉体が爆発した。


「グガァァァアア!!」


時の流れが元に戻り、クロノスが絶叫を上げる。

どこからか飛んできた炎弾が、さらにクロノスの身体を破壊していく。


「……どこのどいつだ?」


「ん、多分、私の仲間……かな?」


炎弾が今なお飛んでくる方を眺めながら、枝音が呟く。



―――――――――


800メートルほど離れた木の影から、瑠璃奈と他の部隊員達が援護射撃を行っていた。


「枝音!あんた1人で勝手に!!」


『あ、瑠璃奈。』


「あ、じゃないわよ!………で、これどういう状況なわけ?」


『クロノスとやらを討伐するみたい。多分、瑠璃奈の今の位置ならあいつの影響を受けない。援護射撃よろしく!』


「あの速度のやつに当てろっていうの?あんた達に当たりそうなんだけど!」


『瑠璃奈なら出来る!頑張って!!』



「はぁ……ほんと、無茶ぶりさせてくる所も変わらないのね。」


この距離で、あの速度域の敵を味方に当てずに援護射撃……。

自分に出来るだろうか?


「リリィ、あなたならあの速度のやつに当てれる?」


「無理無理!いくら巨体とはいえ、フレンドリーファイアをせずにあの速度のやつに当てるなんて出来ないって!」


「俺達はリリィ以外全員遠距離攻撃の手段を持ってないし、ていうか、瑠璃奈大佐はさっき出来てたじゃん。」


「まぐれよまぐれ。てか、あそこはフレンドリーファイアのリスクを無視してでもやらなきゃ駄目だったし。」


しかし、この中で遠距離攻撃の手段を持ちうるのはリリィと私だけだ。

羅鳴は遠距離攻撃を出来なくはないが、彼女の能力はあくまで中距離~近距離までだ。

この距離からの狙撃には向かない。

レイリの能力も中距離攻撃にしか向かない。

舞鬼に至っては近距離攻撃しか不可。


「やっぱり、私がやるしか………。」


【チカラを使わなきゃ、今の君には出来ないよ?】


突如、頭の中に声が響いた。


「………………っ!」


「…………瑠璃奈大佐?」


突然言葉を止めた瑠璃奈を心配するリリィ。


「大丈夫。……なんでもないわ。」


【ほら、早く私を使ってよ。さっきみたいにさ。】


(うるさい、だまれ…………!)


私は、この力はできるだけ使わない。


使いたく、無い―――――







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