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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第4章 世界崩壊戦線
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16話 深界迷宮

「さぁ、絶望はここからだ。来いよ、ウロボロス。」


『グオォオオオオオオアアアアアッッ!!!!』


ビリビリと大気が震えるほどの咆哮を上げ、己の尾を咥える巨大な龍が顕現する。


「ウロボロス……、あんな、ものまで……。」


瑠璃奈が、絶望したように掠れた声をあげる。

ウロボロスの姿を見た者達の反応は、三者三様だった。


その恐ろしさに恐れ震えるもの、その強さに畏敬の念を抱くもの、そして、その姿を忌々しく思うもの。


『ちっ、ウロボロス。お前、あいつの使い魔になってたのか。だけど、そんなことより』


「黒音……、その眼は、何!?」


「天葵、冴詠とはとある人間が作った正と負の塊、すなわち人間の感情というエネルギーに剣として形を与えた物だ。人とは正と負、どちらか片方しか持ちえぬという事はない。故に片方の力だけしか持ちえないなんてことは無い。」


馬鹿な、そんな簡単な話ではない。

そんな簡単な理屈であるわけが無いのだ。

確かに人は正と負、どちらも持ちうる。

だが、『眼』は違う、持ちうる力が強大すぎて、そんなものを2つもが抱え込めばすぐさま死ぬ。


分からない。


『だとしてもだ!それが本当だとしても、お前はどうやってその力を手に入れた!?』


「天葵と冴詠という物は人が作りし正と負のエネルギーの集積体、だがそんなものが果たしてただの人に1から作れるだろうか?」


『………まさか。』


解らない。


「終わりと始まり、終焉と創始、破壊と創造、世界の右眼と左眼、その矛盾し合う2つの概念を物質化……とはまた少し違うが、まぁそういう風にこの世界のシステムを模倣し、手を加えたのが貴様らよ。」


判らない。


『では、お前は……』


「ミアの持っていた剣を私は所持しているからな。白の力も扱えるさ。」


『だが、それだけでは無いはずだ!お前のその力は、ボクのものと全く同じだ!いくら似たような力を使えると言っても、全く同じなわけが……!』


分からない。解らない。判らない。

理解できない。

その有り様が、まるで理解できない。


「ふむ、天葵と冴詠は神狩り戦争時に生み出されたものだが、私とミアは最初からそれらを武器として使っていた訳では無いのは知ってるな?。」


『あぁ、ボクらは君たちの武器を見た人間が、それを参考にして作ったものだからな。キミらの武器として渡ったのは、神狩り戦争の中盤で……』


「いいや、違うな。お前らが私の手に渡ったのは神狩り戦争の終結時だ。つまり、天葵、()()()()()()使()()()()()()1()()()()()。」


――――――――は?


『え………?』


「だって、そうだろう?冴詠が私の手に渡ったのは、ミアが死んだ後だ。では、ミアはいつお前を使えたというのだ?」


「黒音、それは一体どういう…!」


今まで会話についていけていなかった枝音だったが、この言葉にはたまらず反応を示す。

ミアと、天葵にはまったく関連性がない?


「天葵、貴様が枝音と波長が会うのは魂に関する実験のおかげだよ。私が、5万年(・・・)もかけた成果とも言えるな。」


『5万?どういう事だ、お前がこの世に生まれたのは、2万8000年前のはず。』


黒音はこの問いには黙ったまま、白い刀と黒い刀を二刀構え無理矢理会話を打ち切る。

正直、まだまだ聞きたいことは山ほどあるが、答えてくれる雰囲気ではない。


ゴッ!!!とこれまでの比では無い程にとてつもなく大きなエネルギーが、黒音から溢れ出る。

そのエネルギーの奔流は、余波だけで大地を削り、空気を歪めるほどだ。


『枝音、『朝焼けの空』を全力で展開して!ここで力を使い切りつもりでエネルギーを注ぐんだ!!』


「わ、わかった!!」


天葵の焦りようを見て、相当ヤバい攻撃がくると悟り、枝音は全力で防御する。


「『偽・世界を彩る黒白イミテーション・モノクローム』」


2本の刀を交差しながら黒音が振り下ろす。



視界が


空間が


消えて


真っ白に


音が


染まって


ひび割れて




あとに残ったのは、先ほどと変わらず地面にある黒い影と、最初から何も無かったかのような荒れ果てた地上だけだった。


枝音の『朝焼けの空』も全力で展開したにも関わらず、ひび割れて今にも砕け散りそうだ。


だが、枝音の障壁の後ろ側にいた瑠璃奈達はなんとか無事のようで、安心する。


だけど、そう長く安心しては居られない。

あの威力の攻撃がもう一度来れば、今度は凌ぎきれるかわからない。


「ふん、やはり本物の左眼では無いからか、そこまで威力は出なかったな。」


「白き鎖よ、その魂を縛り付けよ。」


先程から枝音の動きを制限している鎖をさらに増やして、枝音に巻き付ける。

完全に動けなくなった枝音は、だんだんと意識が遠のいている事に気づくが、時既に遅し。

そのまま、気絶してしまった。


『閣下、アンティオキアと深界迷宮との接続、完了しました。』


「準備にはかなり時間をかけたが、いざ始めるとなると一瞬だな……。反転せよ。」


ビシ、ビシッ!と地面がひび割れ、崩れ落ちる。


それだけでなく、まるで奈落のような黒い円が、次々と様々なところに現われ、地上の全てがそこに飲み込まれていく。


だが、不思議な事に白華の本拠地である要塞島だけはその崩落に巻き込まれずに同じところに浮かんでいる。


いや、徐々に、空中に移動し始めている。


「深界迷宮が起動し始めたな。次にここに来るのは、だいぶと苦労するだろうな……。」


深界迷宮、それはA-1階層からE-13階層の13×5の65階層からなる巨大な迷宮、だけでなく、さらに裏階層という物があり、E-13からZ-11までの謎に包まれた迷宮で出来る浮遊島だ。


しかも、表の階層はダンジョンのように、目的の部屋にたどり着くまでに恐ろしいバケモノが闊歩している。


そして、裏階層になると神話級の怪物達に加え、試練となる厄介な機能を乗り越えねばならない。


そして、何よりも迷宮に入ること自体が厄介極まりない。

こいつは、封印されていた今でこそ1箇所に固定されていたが、普段は超高速で、360度周囲に空間断絶結界を張り巡らせながら大気圏スレスレをランダムな軌道を取りながら移動するという、かなり馬鹿げた性能を持つ浮遊島だ。


耐久面もかなりのもので、迷宮の中は別空間に繋がっているらしく、それこそ黒音がほぼほぼ本気で暴れても問題ないくらいだ。


「今回の目的は、こいつの起動と、ある程度の世界の書き換えだからな、攻略してる余裕は無いぞ?」


「まあ、仕方ないしな。昔に来た時は、裏階層のJ-8までしかいけなかったし、今では装備がな……。」


表階層はバケモノをなぎ倒していけばいいだけなので楽だが、裏階層からはそれに加えて様々な足枷がかかる。


今回の目的を達成するためにも、攻略している余裕は無い。


今頃、地上は阿鼻叫喚となっているだろう。


「さぁ、世界の書き換えを始めよう。マユ、枝音を十字架へ磔にしろ。」


「了解しました、閣下。」


「俺は書き換えの調整に入る。こちらは自動防衛機構とラストがいるから、枝音の方はお前らが何があっても死守しろ。」


了解、と全員が頷く。

枝音の核としての配置の完了と、黒音が書き換えに入ったところで、夢羽に通信が入ってくる。

その後、間髪入れずに、ラスト、灰空、マユ……と次々に通信が入る。

何事だ?と疑念を感じたまま通信に応じると、


『至急です!ブランシュが………っ!?』


「ブランシュが、どうした?」


『飛翔戦艦ブランシュが何者かに侵攻を受けています!機関室は占拠されました!艦橋ももう持ちそうにありません!!』


「なんだと……!?」


―――――――――――


「隔壁を閉鎖しろ!」


「ダメです!全隔壁、破壊されました!通路も次々と破壊されていきます!」


「なんだと………?」


「最終隔壁突破!ここに来ます!」


「うぉおおおりゃぁぁあ!!!」


まるでクッキーを割るかのようにサクサクッとドアをバラバラに切り裂いてあらわれたのは、ティアだった。

そして、バチバチと天井に黒いプラズマが走ったと思うと、天井とともに人が落ちてくる。


天井を分解し、華麗に着地したその人物は だった。

それを見て、白華側に潜伏していた夜花のメンバーである艦長は、黒音の言っていた事を思い出す。


「あ"っ!?もしや、貴様らは閣下の言っていた落下登場大好き集団………!?」


「誰が落下登場好きよ!!確かに天井から落ちてくる登場しかしてない気がするけども!!」


本人は好きでやってる訳では無いと言うものの、実に怪しい所である。


「ともあれ、この艦は貰うわよ。死にたく無かったら、大人しく捕まりなさい!」


「…………。」


どうしたものか、と艦長は考える。

こういう事になった場合の対策はいくらでもあるが、何をすれば1番閣下にとって良い選択となるかを、艦長は考えあぐねていた。


しかし、そんなものを考えずに、即座に1番確実な方法を取れば良かったのだ。


『あー、あー。こちら機関室〜、直列式霊花崩壊エンジンの制御に成功〜。全システムのハッキングにも成功したとの報告〜。』


そんな、気だるそうな声が艦橋内のスピーカーから流れてくる。


「なっ!?オペレーター、どうなって……っ!?」


見れば、いつの間にか9mm拳銃をこちらに向けているオペレーターの姿があった。

あんなもので自分を倒せはしないが、ただの拳銃では無いだろう。


「なるほど、お前スパイだったのか。」


「お前に言われたくは無いがな。」


確かに、艦長も夜花のスパイだったのだから、スパイにスパイとは言われたくないだろう。


「この船は我々が貰った。と、いうわけで大人しくして貰おうか?」


既に、周囲の味方は拘束術式によって捕らわれている。

これ以上の抵抗は無意味。

いや、あるいはこれすらも閣下の掌の上か。


何も分からない以上、なるようになるしかない、か。

ここで変に暴れて無駄死にするよりは、生きて汚名を返上する機会を伺う方が賢い選択だ。


私は別に、戦争に飢えた狂人では無い。

あいつらならここが死に場所と喜び勇んで突撃していくだろうが、自分は違う。


大人しく捕まっておく。


「ブランシュ内、全て制圧完了。」




特に出番のないまま乗っ取られるブランシュくん可哀想(´・ω・`)


はい、どーもーどこ黒です。

20話くらいまで大ざっぱに書いたはいいんすけど、これブランシュくん活躍シーン無いよ?


まぁ、どっかにブランシュ対ノワール戦をぶっ込むと思うので、そのせいでたぶん投稿頻度がまたもや遅れるかも……?


では、また今度ー



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