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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第4章 世界崩壊戦線
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第14話 人形の心。

「第2ラウンドってわけ……?」


『再生金属……。2万年前に失われた技術のはずなんだけどね……。』


天葵が懐かしそうにしているので、アレについて聞いてみる。


「その、再生金属ってのは?」


『神狩り戦争時の技術だよ。ほら、機械ってのは壊れても生物みたく自動で修復されないだろ?その常識を覆すのが、アレだよ。』


「チートじゃん!対処法は?」


『昔ならあったよ。あの時はまだ未完成品で、動力の核となるコアを破壊すれば再生能力は失われ、完全に機能を停止するんだ。』


昔なら、というそのワードに枝音は訝しげに思う。

昔はあったというなら、まさか今は……。


「昔?……今は?」


『………アイツからは、コアの反応を感知できない。コアを秘匿しているのか、それともそもそもコアが無いのかはわからない。だけど、アレの対処法は一つだけ。』


「勿体ぶってないで、早く教えてよ。」


天葵はいかにも面倒くさいといったような、嫌そうにしながら答える。


『……あいつが動かなくなるまで、破壊しつくすことだ。』


その言葉に、枝音もまた天葵と同じように、面倒くさく、嫌だというような顔になる。


「………マジ?」


『あるいは、完全に消し飛ばせばいいね。』


「……私にそこまでの火力、だせる?」


『………厳しいね。【眼】はまだ使いこなせていないだろ?』


「使いこなせれば、やれるのね?」


『それが出来たら、こんなに苦労してないね。あれは、強いとか強くないとか、火力がどうこうとか以前のシロモノだからね。』


それを聞いて、枝音は笑みを浮かべる。

俄然、やる気が出てきた。

破壊しても再生する?上等だ。


「……やってやろうじゃないの。天葵、演算の1部代理、頼んだ。」


『ちょ、それは黒音との戦いに備えて温存しなきゃ……!』


天葵が慌てるが、枝音は聞く耳を持たない。

既に、使う気まんまんだ。


「うるさいわね!黒音との戦いの時に使えなきゃ意味無いでしょ!慣らし運転よ!」


しばらくの間、天葵は『いや……でも……しかし……。』と渋っていたが、枝音が「でももクソも無いの!」と無理やり説得すると、天葵は諦めたようにため息を盛大につく。


『あぁ!もうどうなっても知らないからな!?』


天葵がもうやけクソだ!と声を荒らげる。

枝音は、なんだかんだいって付き合ってくれてる天葵に感謝しつつ、『世界の左眼』、『書き刻む(エングレイブ)』を発動する。


「すごい、これが………。」


いつも黒音が見ている世界なんだ。


光による視覚情報なんてそんなちゃちなものじゃない。

何もかもが、情報が、その本質が直接目に映る。


0と1の羅列、いや、これも世界を理解しやすいように、自分の意識が勝手に置き換えたものでしかない。

世界が、直接、その本質が、見える。


まるで、1つの本のページを見ているかのようだ。


でも、やはり、


「……光による視覚情報の方が、いいな。」


なんといっても、あれで見るものは綺麗だ。

なんとも言い表せないものがある。

だけど、そんな感慨にふけっている暇は、今はない。


『敵が来るよ。能力の内容はわかるよね?』


「うん。」


『エングレイブ』、これは生命以外のあらゆるモノを生み出す能力だ。

生み出せる質量に限度はあるものの、それはまだ自分が扱いこなせていないからで、実際の限度は無いに等しいと言える。


これすなわち、神のごとき、創造の力。

と、同時に黒音の『世界の右目』の対となる能力である。


「情報式の組み立て、開始。」


自分の生み出したいものの情報式を組み上げる。

これがひとつでもズレると、思い通りのものは出来ない。


「情報式、完成。対象式をコピー。世界への入力を開始。」


対象の式を複数コピーした後、世界という1つの本のページに入力していく。


「入力完了、出力開始。」


式の入力が完了し、現実世界へ出力していく。

生み出されたのは、6つの巨大な追尾型ミサイル。

そして、その全てが敵の『ドール』へと向かっていく。


『最初から結構ハードなものを作ったね。』


「これくらいやんなきゃ、倒せないでしょ?で、どうよ?」


『世界への出力までの過程が長すぎるよ。この程度のものなら、黒音ならコンマ以下で調整して1秒もかけずに出力するね。』


「ちょっとは褒めてくれてもいいと思うんだけどなぁ……、まぁ感覚はある程度掴めたからもう少しで実戦で使えるようになると思う。」


『今が実戦なんだけどなぁ……。』


爆炎の中から、再生し終えたドールが飛田してくるが、周囲に大量の鉄杭を生成し、『ドール』の体をさし貫く。


「うーん。無から有を生み出すより、元々ある物体を変換した方が効率良さそうだよね。」


『あ、残念だけどそれ、無理だから。』


……………え?


おいおいおい、今なんつったよ。


『それができるのは『書き直し』だけだから。『書き刻む』は1度書いたもの、書かれたものを修正することは不可能だよ。』


出来ないんかーい。

まぁ、確かに『左眼』にそれが出来たら『右目』の必要性が無いわな。


「そんなぁ……。これ体力と感情を結構持ってかれるんだけど。」


『それは仕方ないね。練習あるのみだ。』


「はーい、よっと!」


鉄杭から抜け出してきた『ドール』が襲いかかってくるが、その動きがほんの一瞬だけ止まる。


ズヴァァァア!!と再び何本ものビームが『ドール』の身体を貫く。


「物理現象を書き込めば、物質の生成とかはいらないし楽かな。」


『ん、自分の周囲にいろんな現象を書き込む事とより戦闘が楽になるよ。慣れればだけど。』


「慣れてやるわよっ!」


黒音なんか超えてやる、体力やら慣れやら知ったことか!

上等じゃー!今すぐにでも使いこなして見せてやる……!


「全兵装、起きなさい!!指定座標地点に向け、一斉攻撃!!」


枝音の持つ全ての遠距離兵装をぶつける。

先程のように、『眼』で相手の動きを止めたので、全弾が余すことなく命中する。

だが、


「いい加減、執拗いっ!!」


もはや原型すらわからないバラバラのボロクズになってもなおケーブル等を生成し、なんとか再生しようとする『ドール』のケーブルを引きちぎり、ショトガンをゼロ距離で連射(・・)する。


ポンプアクションにわざわざ手なんて使わなくても、『左目』でどうとでもなる。


最後に、ルークスでエネルギー貫通弾を撃ち込み、もはや元の形の残っている箇所を探す方が難しい程のスクラップにして、ようやく『ドール』は動かなくなった。

枝音は念入りに再生しなくなった事を確認すると、ふう、とため息をつく。


『すごい、ほんとに何とかなったね。能力についても、だいぶ慣れて来たみたいだ。』


「とりあえず、初陣にしては好調ね。後は……この戦場、何がどうなってるの?」


『……………。』


がむしゃらに戦っていたため、周囲の景色に気を配る余裕が無かったが、周りはしっちゃかめっちゃかな状況だった。


まず、わかりやすいのは空のアンティオキアと、地上の白華本拠地が戦っていること。

次に、白華と夜花が戦っていること。


ここまでは実にわかりやすい。見ただけでわかる。


だけど、あの地上に空いた黒い穴はなんだ?


奈落……とは少し雰囲気が違う気がする。

何より、黒い巨大な穴の中心に十字架のようなものが浮かんでいる。


黒音や瑠璃奈の姿が視認できたため、あそこが今回の戦闘の中心部なのだろうか。


今すぐ飛び出して行きたいところだが、何よりも気になる事があった。


「なんで、味方同士で戦ってるの……?」


明らかに、白華の戦闘服を着た者同士が戦っていた。

そして、黒音のそばに夢羽と水姫がいる。

対峙するのは瑠璃奈と空墨だ。


他にも見たことのない人達が黒音の周りを囲んでいる。

親衛隊のメンバーも、夜花の主力と対峙している。


「これ、どうゆう状況??」


『そうか、夢羽。やはり君は、彼女を選ぶんだね?』


「天葵?」


『枝音、水姫と夢羽は裏切った。おおかた予想通りだけど、ここから先、どうなるかは僕にもわからない。気を引き締めて行くよ。』


「え?え?裏切って、え??」


『君もおかしくは思っていただろう?特に水姫には。』


「え、そんな、事は……。」


『無いとは言わせないよ。君の心はボクと同化してる。だから、自分を誤魔化しても無駄だ。』


例えば、夜花のメンバーと奈落で過ごした日、地下の実験室でみたものはなんだったか?

海神とは、誰の能力だったか?


何より、私がここにいる原因はなんだ?


財布を取りに戻って、百鬼夜行と出会った。

その時、誰とぶつかったせいで財布を落としたのか?


避難経路の指示は、来なかった。

それは、誰が枝音の携帯に送るはずのものだったのか?


故に、天葵と言う剣に出会った。


「いや、でも、ありえない。私が天葵に出会ったのは、偶然のはず。だって、あそこまでの道のりは……」


『自分で決めたはず、かい?それが誘導されたものだとは思わなかったのかい?』


「それ、は………。」


『どうした、おい?こんな事で、こんな所で立ち止まるのか?』


「いや……ちょっと、驚いただけよ。この程度の事くらいじゃ、私は揺らがない……わ。」


明らかに強がりなのはわかる。

目を背けていた事実を突きつけられ、かなりショックを受けただろう。


それでも、こんな所で立ち止まってもらっては困る。

ボクはただの剣だから、目的なんかはない。

だけど、世界の崩壊後も主人が生きていけるようにしなければならない。


方法は分からないが、崩壊するのは確定だ。

そこでは、力のない人間は生きては行けない。


「もう大丈夫。行くよ。黒音に、その目的を問いただす。」





前回、やったか!?ってセリフを入れるの忘れてたなー(´・ω・`)


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