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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第4章 世界崩壊戦線
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第11話 Human formed Weapon

「HF隊、出撃。」


「HF隊、出撃せよ!」


黒音の命令によって、人型機動兵器、HFが次々と発進して行く。


「私も『月光』ででる。」


「あの、閣下がHFに乗る意味ってあんまり無いですよね?」


本来、HFとは能力を持たない人間が、能力者と渡り合うために作られたロボットだ。

能力者の中でも最強といっても過言ではない黒音がロボットに乗る意味はあまり無いのだが………。


「確かにそうだが……隊長機に乗るっていうのが夢だったんだよ、ロマンさ。」


ようは、いつものお遊びである。


「それに、深界迷宮との接続まで、まだまだ時間はあるだろう?」


「遊びもほどほどにしてくださいよ?後30分もすれば、姫が戻ってきます。」


「わかってる。灰空、しばらく任せた。」


「……分かりましたよ。0番隊、予定を変更して閣下を護衛せよ。」


護衛なんていらないんだろうなぁ……と思いながらも一応体裁だけはとっておく灰空だった。


――――――――――――


「いいなー、『月光』。僕も乗りたかったなー。」


若い少年が0~10番隊までの隊員に与えられる専用機に乗りながらそう呟く。コクピットの横画面には『soun donly 01』と小さく映し出されている。


「そう駄々をこねるな。元々アレは閣下が開発してたものだからまともに扱いこなせんぞ。」


「うー、隊長〜でもさぁー。」


どうやら通信相手は0番隊の隊長らしい。

と、そこで駄々をこねる少年のコクピットの横画面に『sound only 00』と書かれたマークが新しく映し出される。


「俺を殺せばいつでも乗れるぞ?」


上官反逆罪で処刑されてもおかしくないような事を平然と部下にさせようとする黒音。

それに対して少年はさらに文句をいう。


「それこそ絶対無理じゃん!灰空さんやマユさんや雷狐さん達が模擬戦闘訓練でどんなに頑張っても勝てないって嘆いてるの聞いたよ!!」


「あいつらちょーっと気合が足りんからなぁ……。」


「気合いの問題なの!?」


こんなやり取りをしている間であっても、当たり前のように彼らは敵を屠っていく。


「ん、あれは『憤怒』じゃないか?」


「ん、確かにそうですね。あの……閣下、遊んでる時間はあまり無いのですが………。」


「少々遊んでくる。」


「あ、ちょ、待ってください!」


部下が制止するものの、黒音は無視して突っ込んでいく。


「…………これが灰空殿の胃痛の原因か……。」


0番隊の隊長は、元上司の灰空の胃痛の原因を知るのであった。


―――――――――――


「木偶人形が、邪魔をするなァァァ!!!」


瑠璃奈が『ドール』を2体同時に破壊し、さらに炎の翼で敵を溶断していく。


「少佐殿、オスカー中隊より連絡!右舷より敵、新兵器と思われる人型機動兵器部隊が接近中!!」


「次から次へと……!新兵器のお披露目会じゃないんだから……!!」


迫り来る機体の1つを交差した瞬間に撃ち抜き、爆破する。

さらに、爆破炎上する機体を踏み台にして加速し、さらに炎の剣―――レーヴァテインでもう一機の右腕を溶断。

飛んできたミサイルを左腕に接続されているガトリングガンで迎撃する。


「っラァ!」


が、そのガトリングの雨を掻い潜って突進してくる妙な動きのHFがいた。

明らかに他の量産機とは違う。恐らく隊長機か。


「そーこーにーいるのーはーるーりなくーーーん!!」


「っ!?この声は黒音!?」


突然響いた声に驚くも、直ぐに状況を把握する。

あのロボットに乗っているのは恐らく黒音。


(あんにゃろ……こんな前線まで出てきやがって……!)


黒音が前線で確認されるのはよくある事だ。

部隊の指揮をするのも上手いが、前に出て戦う方が得意だと本人は言っている。


「枝音が天界から戻ってくるまで暇なんだよなーこれが。だから暇潰しに付き合ってくれ!」


「そう、なら、ここで死にたいわけね!」


それはやだなー、などと呑気な声を出しつつも、一体どんな操縦をしているのか、恐ろしいほど巧みな動きを見せている。


(こいつ、通常の戦闘能力だけだなく、操縦技術もレベルが高すぎる……!)


ミサイルを避け、銃弾を、ビームを、剣を、その全ての猛攻を躱しつつ瑠璃奈は攻撃を仕掛ける。

たが、黒音の『月光』も瑠璃奈の様々な攻撃を避け続ける。

そのアクロバティックな動きをさせる黒音の操縦技術はなかなかのものだ。


しかし、黒音はそこまで操縦が上手いわけではない。

誰も使わないような裏技や機体性能の高さ、人間の予想もつかないような挙動でもってして動かしているから上手く見えているだけだ。

神狩り戦争の頃の、HFのエースパイロットと戦えば、黒音はジリ貧の戦いになるだろう。


しかも、無茶な挙動で動かしているためにまともなやり方では長期戦も出来ない。


「あのぉー、閣下ってあんまり『HF』の操縦訓練してなかったよね?なのに、あの動きはどういう事です?あんな動かし方、僕でも無理なんだけど。」


「そりゃぁ、2万7000年前にも何回か使ったし、作ったからな!」


実の所、『HF』の技術は神狩り戦争時のものだ。

神殺しを可能とするものまで作られたり、当時は科学技術も相当のものだったと記憶している。

そういや、技術レベルが高かったわりには高層ビルなどの近代建築技術などはあまり確立され無かったな……。


そんな事を考えている間に、少し隙が出来てしまっていたのだろうか。

いつの間にか瑠璃奈にかなり近くまで接近されており、近接装備でなんとか対抗する。

が、小回りはあちらの方がよくきく。


「ちっきしょ、こんにゃろー!」


瑠璃奈から放たれたパンツァーファウストをミサイルで迎撃しようとするが、その判断が失敗だったと後悔する事になる。


パンツァーファウストの影に隠れていて見えなかったが、例の特殊弾頭が放たれていることに気づいたからだ。


半径2メートル以内の火器は、もれなく暴走、爆破される。

気づいたのが少し早かったため、なんとか機体の中心から銃弾をそらしたものの、左腕に直撃してしまった。


「ぐっ!?しまった!」


左腕を切り離し、暴走の範囲外に逃れるが、背中の翼の1部が巻き込まれ、それに搭載されていたミサイルが誘爆、背中のスラスターが損傷して機動力が下がる。


『ちよーっと閣下ァ!ボクの機体壊さないで!!』


通信でいきなり呼びかけて来たのは、変態科学者、マッドサイエンティストと名高いロリババア、アリスだった。

テロメアの寿命やら全身の細胞やら魂やらを弄りまくって、もう300年も生きてるが、見た目は完全にロリっ子である。


ちなみに、こいつは神狩り戦争時に数々の新兵器を開発した究極のマッドサイエンティスト、ウォルの子孫であるのだが………。300年生きても世界は分からないものだ。先祖のジジィがまだ生きてると知った時のこいつの顔はなかなか笑えた。


ていうか、あの変態サイボーグジジィ、28000年近く生きてっけどいい加減死なねぇのかな。

あんな長生きしてんのが人間なわけないだろ。

もはや仙人のレベルでしょ。


ともかく、『月光』は自分のものだと言うアリスに黒音は抗議する。


「あぁ!?てめぇの機体じゃねぇよ!」


『ボクが作ったんだからボクのに決まってるだろう!?』


「基本設計は俺がやっただろうが!」


『でも、ソフトウェアはボクが作ったよね!?』


「俺もそれ手伝ったよなァ!?」


『ぐっ、うー、この意地悪っ!馬鹿っ!クソジジイ!』


「あ”ぁん?ジジィじゃねぇーっーの!このロリババァが!見た目と喋り方で若さ保ってんじゃねぇーよ!」


『うるさい!ボクの先祖より長生きしてるとかジジィどころじゃないでしょ!』


「何オープン回線で喚いてんの!余裕ねっ!」


2人の言い合いはオープン回線で周囲にダダ漏れだった。

今度は背中の飛行システムである翼のもう片方の翼を破壊される。


『あぁぁあーー!!また壊しやがったあぁあ!!』


「戦場で兵器が壊れるのは当たり前だ!気が散るからちょっと黙ってろ!」


戦闘はさらなる苛烈を極めていく。

だが、所詮は機械だ。機体の稼働領域には限界がある。どうにも思い通りに動かない『月光』に黒音はだんだんと苛立ってくる。

『月光』も黒音の無茶苦茶な操作方法に耐えきれずに全身の至る所がスパークしている。


「はっ、私の方が1枚上手だったわね!」


放たれた特殊弾頭にばかり気を取られ、広範囲爆裂弾頭が放たれていることに気づかなかった。

普段なら避けることも可能だった。だが、今は背中のスラスターが損傷し、機体にかなりの負荷をかけてしまっており、避けきれなかった。


機体の動力路付近に直撃し、大きな爆発を引き起こす。

機体の動力路付近を破壊された上に、かなり大きな損傷を負った月光はスパークと共に次々と小さな爆発を引き起こし、墜落して行く。


「このクソ……まだまだァ!」


黒音は影で機体を侵食し始め、かけた箇所を歪ながらも無理やり保管していく。

流石に爆発した箇所や欠損した箇所等の修復は無理だが、それでもまだまだまともに動かせるレベルまで機体を侵食、修復している。


「ちょ、はぁぁあ!?何それ、そんなのアリ!?ずるじゃん!!?」


「戦争にズルもクソもあるか!さあ第2ラウンドだ瑠璃奈くん!」


『ボクの機体になんてことをっ……!?』


「うるせぇ動きゃいいんだよ、後てめぇのじゃねぇ。」


瑠璃奈は黒音の猛攻をかいくぐりつつ接近を試みるが、「月光」は本来ならありえない挙動をしたり、なんなら物理法則も無視している。


「喰らえやオラァ!」


「はぁぁぁぁあ!!?」


影で擬似的に補完された『月光』の左腕が伸びて、瑠璃奈を掴もうとする。

瑠璃奈は咄嗟に避けたものの、あんな予想もできない攻撃が繰り出され続ければ、さすがに避けきれないかもしれない。


形がロボットであるがために、そんな動きは出来ないだろうという常識が、無意識のうちに瑠璃奈の戦略の幅を狭くしているのもかなりまずい。


『瑠璃奈くん!キミは今どこに!?』


空墨からの報告だった。


「はい、私はいま黒音と交戦中……っ!?くそ、」


月光から放たれたミサイルを特殊弾頭で誘爆させて迎撃し、放たれる不規則な動きをする銃弾を必死に避ける。


『いいか、瑠璃奈くん。黒音をなるべくそこに引き止めておけ。枝音くんが天界から帰ってきたらすぐさまこの領域から離脱するんだ!』


「どういう事ですか?」


「ん、あー、なるほど。予定通り(・・・・)夢羽の奴はバレたか。」


(予定通り……?)


今、黒音が不穏な言葉を放った気がする。ぼそっと呟いただけなので、上手くは聞き取れなかったが……。


『今から僕は委員会の連中と一緒に夢羽総司令官を問い詰める。』


委員会とは、白華の中で立場が高いメンバーが何かしら違反を行ったさいに出動する、憲兵のような機関だ。

という事はやはり、夢羽に関する何かしらがわかったということなのだろうが……。


いや、まて、何か、何か大事なことを見落としている気がする。


確か、おかしな事があったはずだ。

それは、なんだ?


「味方の、配置…………。」


そうだ、確か味方の配置に疑念を覚えたはずだ。

ほとんどのメンバーを攻撃隊として派遣し、防衛隊は外からの攻撃より中からの攻撃の方に特化しているかのような布陣。


何故、長年白華のトップに君臨していた夢羽が、ココ最近だけ怪しい行動を起こすのか。

何故、黒音は予定通りと呟いたのか。

何故、外より中からの攻撃に強い布陣なのか。


何より、空墨は今どこにいる?


まさか、ここまでが全て予定通りだとしたら……!


「まずい、空墨さ……っ!?」


月光から放たれたビームが瑠璃奈が左手に持つ無線を捉えるが、瑠璃奈は咄嗟に腕をずらしてギリギリで避ける。

だが、その熱さと腕の焼ける痛みに無線を手放してしまう。


そのすきに、さらに瑠璃奈に向かってミサイルが数発直撃する。


「残念だが、仲間への通信は禁止だ。枝音が帰ってくるまで後数分。それまで、一緒に遊んで貰おうか?」




なんか後書きに書くこともないので、今話から術式やら魔術やらの種類を1個紹介してこうと思います(たぶん長続きしない)




『人よ、神よと泣き叫べ。』


対人用の術式であるが、広範囲に使用可能。

対象の地面から茨が飛び出し、対象となる人物に巻きついて茨の十字架を作り上げる。

十字架の状態になれば、普通の人間はただ死を待つばかりだが、茨から無理やり脱出出来るような人外の力を持つものには、


炎系の術式で対策出来ることもあり、実用性が低い気もするが、相手の動きを少しの間封じられるのと、ほとんど強制的に炎系の術式を使わせられることもあり、汎用性は意外と高刈ったりする。


さらに、広範囲に使用可能なため、施設の制圧にも向いている。







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