第11話 白華親衛隊。
「クッソがァッ!ハッハッハァッ!テメェ、想像以上の人外ぶりじゃァねェかァ!?」
「そりゃどーも!お褒めに預かり光栄ですってなァ!」
狂栖が大鎌を振り下ろし、それを黒音が刀で対応する。
黒音の影をナイフで切り裂き、黒音の刀を弾き返してさらに大鎌を振るう。
「しっかしまァ、王様らしからぬ事をする奴だなァ?ふつう、王様ってのァ後ろで偉そうに命令飛ばしてるもんだろ?」
狂栖が大鎌を思い切り振り下ろすが、黒音は簡単にそれを避け、距離をとる。
「オマケに、今までの戦闘じゃ使ってやがった眼も使わねェしなァ??」
「ならば、望み通り王らしく振舞ってやろうじゃあないか。」
黒音が、距離をとった状態で狂栖を注意深く観察し、警戒しながら相手の様子を見る。
「今まで眼を使っていたのは、質としてはともかく、数としての戦力差を埋めるためだ。この姿じゃあ、広範囲の遠距離攻撃は出来んからな。だが、いくつかの戦線に割いていた部隊をこちらに戻したことで、その差はなんとかなった。」
黒音の後ろ側に、夜花の中核メンバーとも言える面々が姿を現し、それぞれが構える。
「ラストはNo.5とNo.3を、雷狐はNo.7を、マユはNo.4を、九尾はNo.6をやれ。俺様でNo.1とNo.2をやる。」
「僕達を舐めて貰っては困りますね。1人で2人を相手取るなんて、正気ですか?」
白華親衛隊、No.2、剣聖 ロイド・ヴァリウスが黒音の背後から剣を振り下ろす。
黒音は翼でその剣を受け止め、正面からの狂栖の攻撃を冴詠ではじき返す。
「あ、そうだ。言い忘れていたが……雷狐がいないとあの出力が出せないというだけで、出力を下げれば別に陽電子砲はもう一度撃てるぞ?」
何?と、親衛隊のメンバーが思った瞬間
凄まじいエネルギーがこちらに向かって来ているのを感じ取り、それぞれが防御を行う。
だが、出力はかなり下がってしまっているのか、いとも簡単に親衛隊のメンバーは凌ぎきる。
「あ、それとだなぁ、ロイドくん、だっけか?」
「へぇ、名前を覚えて頂いて光栄ですね!」
ロイドが全力で振るった、ビルを一撃で破壊できるほどの威力を込めた剣を、黒音は片手で余裕そうに受け止める。
「それは結構。じゃあ、ロイドくん、さっきの言葉だけど」
黒音が冴詠を地面に突き刺すと、黒い魔法陣が大量に地面に展開される。
何が起こるのかロイドと狂栖が片方は注意深く警戒をあらわに、片方は興味深そうに好奇心を丸出しにして様子を伺う。
その魔法陣から、人型に形状変化した冴詠がでてきて、
「私は正気だぞ?別に1対2とは誰もいってないだろう?」
「そゆことー☆」
冴詠がナイフと拳銃を構えて突撃してくる。
その速度は、尋常ではないくらい速い、が。
「速いだけでは別段脅威にもなりませんよ!」
ロイドが1振りすると、冴詠は一撃で真っ二つになる。
が、冴詠は真っ二つになりながらも笑い続ける。
「………なんだが、気味が悪いですね。燃えろ。」
そう言ってロイドが剣を降ると、真っ二つになった冴詠は炎に包まれて、燃えちる。
「あははは!ひっどーい!あはははは!!あははははは!」
だが、体の全てが焼き付くされても、冴詠は笑い続けていて。
そして、跡形も無くなったのに笑い声が未だに聞こえる事に、気づいた。
「女の子にそんな酷いこといっちゃあ、ダメなんだよ?あは☆」
そして、冴詠の口が顔の真横で声を発する。
「なっ!?」
ロイドが勢いよく振り向いて冴詠を薙ぎ払う。
今度は、冴詠の首から上が飛ぶが、
「そんなに慌てないのー。焦らなくても、いーっぱい遊んであげるんだから!」
冴詠の首から下が、落ちてきた自分の首を抱き抱えながら声を発する。
そして、その声以外にも、笑い声が次々と聞こえてきて。
「あははは。驚いちゃった。」「あんなに小さかった餓鬼が。」「こんなに大きくなって。」「でもダメ。」「女の子の扱いが」「なって無いんだからァ。」「「「あはははは!!」」」
と、何人もの人の姿をとった冴詠が、こちらを向いて笑いながらナイフと銃をかまえる。
それを見て、黒音は呆れたようにため息をつく。
「何が女の子だよ。だったらちったァそれらしく降る前っつーの。」
「なーに?主殿は私に女の子っぽく振舞ってほしいの?」
「ハッ!抜かせ。馬鹿なこと言って無いでさっさとあのクソガキを、殺せ。」
「あはー?いいのー?殺っちゃって?」
「『神の眼』以外はあってもなくても大して変わりはしねェからナ。邪魔になる前にとっとと殺しちまうのが正解だロ。」
普段よりも悪意が感じ取れる、その刺刺しい発言に冴詠が眉をひそめる。
居ても居なくても、では無く、あっても無くてもという人を物のように扱う言い方を黒音がしている。
その事に、冴詠が黒音に忠告をいれる。
「………主殿、アイツの人格が色濃くなってるよ。」
「ン?あァ、忠告ありがとうナ。だが、これぐらいなら問題ねェし………つーか、」
黒音の真横に狂栖があらわれ、大鎌を真横に薙ぎ払う。
黒音は、それを上に飛ぶことで躱す。
「だべってる余裕があんのかあァん!?」
「殺人鬼の相手をするにゃァこんぐれェ狂気に浸ってた方がちょうどいいだロ!!!!あはははは!!」
黒音が笑いながらナイフを狂栖に突き立てようとするが、狂栖は大鎌で黒音の腕を切り刻む。
黒音は右腕を再生させながら、足のかかとで地面をトンッと軽く叩く。
すると、地面に黒い影が広がり、中から何本の剣や銃が現れる。
「俺様のコレクションだ。なァに、遠慮する必要はねェ。存分に味わえ!!」
ガガガガガガッッツツ!!!!と銃や剣を次々と使い捨てにしながら黒音が狂栖に襲いかかる。
現代の兵器から、過去の遺物まで、ありとあらゆる兵器をふんだんに使い潰す。
「チィイイイイ!!めんどクセェ!!」
だが、その凄まじい攻撃を大鎌1つで全て防御し、躱す狂栖も大概の物だろう。
ジャコッ!!と重機関銃が狂栖の姿を捉え、そのトリガーが引き絞られる。
その弾頭をすべて大鎌を凄まじい速度で扱うことで、切り裂き、弾きながら防御していく。
ロケットランチャーの弾が5つ、狂栖に向けて放たれる。
「ハッ!すっげェナ!ここまでその鎌一本で捌ききるのか!」
「ハン!そっちこそ、この程度で終わりかァ!?」
ロケットランチャーの弾頭を切り裂いて爆発させながらも、爆煙の中を突っ切って狂栖が飛びでてくる。
「まだまだ、これからだぜェ!!ははは!!」
「主殿も熱くなりすぎないよーにねー。」
「わかってるサ。だが、『書き直し』が無い分、本気でやらなきゃ、ちょいとまじぃけどなァ!」
そう言って、黒音は影の中から大きな何かを取り出す。
それは、対物ライフルのような何かだった。
何故、対物ライフルと断定できないのかと言うと……。
「おら、喰らえやクソッタレ!!」
対物ライフルから放たれた弾丸を狂栖はギリギリかわしたが、そのかわした弾頭が建物に直撃し、家屋を粉々に粉砕したからだった。
「なんだァそりゃあ!?」
一撃で家屋を粉砕しせしめたその火力を見て、狂栖が驚愕する。
「見ての通り、アンチマテリアルライフルだが?」
「ふっざけんな!んな威力のライフルがあるかぁ!?」
「現にここにあるだろうが!」
次々と、とてもライフルから放たれるとは思えない爆音を轟かせながら黒音はビルや家屋や様々なものを粉砕し、破壊していく。
そのうちの1発が、避けきれない形で狂栖に襲いかかる。
が、狂栖はすんでのところで大鎌で無理やり弾頭を真っ二つに切断して防御する。
「ほう、今のも防御できるのか。」
流石に、今のは不味かった、と狂栖は未だ激しく動悸する心臓を落ち着かせる。
これは、結構手強そうだ。『書き直し』の能力無しでこのレベルの強さなら、一体本来の力はどれほどのものなのか検討もつかない。
だが、今は奴は何故か『書き直し』を使わないようだ。
勝機はある。
と、ふと背後に気配を感じ、後ろを振り向くと、
「ロケット☆ランちゃん!」
ロケットランチャー………と言っていいのかどうか分からないが、ロケットランチャーを魔改造したような何かの銃口が目の前にあった。
「……………っ!!!??」
咄嗟に屈んで避けたが、遠くで凄まじい爆発が起きたのを見て、狂栖は冷や汗をかく。
「電電丸☆」
バチバチィッッ!!!と雷の奔流が狂栖に襲いかかる。
だが、その超高電圧をその身に受けながらも、さしてダメージを食らっていない様子なのは、やはり流石だと言うべきなのだろうか?それとも、化物と言うべきか。
まぁ、いくら殺人鬼の異名を持つ狂栖でも黒音にバケモノ呼ばわりはされたくないだろうが。
「さっきからなんだァ、そのふざけた名前はァ!?」
舐めてやがんのか、と冷静さを欠きそうになるが、落ち着かなければならない。名前はふざけているが、その威力は絶大だ。まともに喰らえばただでは済まない。
冴詠は嫌がらせのような手を使い、なおも狂栖を翻弄している。
ロイドも、切っても斬ってもキリがない冴詠に冷静さを欠き始めている。
戦いは案外楽に終わりそうだな、と黒音は思うのだった。
どーもー、
噛ませ犬部隊の活躍(?)です。
あと、冴詠も活躍します。
冴詠くんは本体の刀とその術式をなゆとかすれば増殖はしなくなりますが、刀本体の破壊は不可能に近いです。
では、なんだかんだでまた今度ー