第2話 ジブラルタル海峡解放作戦、其ノ壱
この物語は、フィクションであり、実在の地名や団体名などとは、一切関係ありません。
どうも、枝音です。
ついに、戦争がおこってしまったわけです。
ジブラルタル海峡、それが今私のいるところです。
つい1時間ほど前、イギリス軍から上陸及び、ある一定のラインまで制圧する事に成功した、との連絡が入り、これよりセカンド・フェイズである沿岸要塞制圧作戦を開始するところです。
私達の役目は、ジブラルタル海峡にある2つの沿岸要塞、ジブラルタル要塞と、セウタ要塞の2つを落とす事です。
我々は敵にいるであろう異物保有部隊を抑える事と、制空権争いの手助けをする事です。
しかし、ジブラルタル・セウタ両要塞の対空システムを突破するのはかなり芳しいと思われるのが現状だ。
幸いと言うか、セウタ要塞方面に異物を保有した部隊……つまりは夜花の部隊は確認されていない。
大隊を両要塞に分ける程の余力はないので、正直助かるところだ。
だが、何か嫌な予感がするのは気のせいだろうか…………?
―――――12時間前、白華作戦会議室にて
「夜花を殺しきるぞ。」
総司令官である夢羽のその言葉と共に、作戦説明会が始まった。
「天の刹もだが、先に夜花から潰す。潰せる時に潰さなければ、この2つの組織は危険すぎる。幸い、天の刹は我々が潰しあって疲弊した所を狙うようで、この戦闘には参加しないようだ。」
ホワイトボートに、各国の軍事力の動きなどを書き加えていく。
「バルカン半島に現れた第2の奈落。そこが戦闘区域となる。恐らく、今までに無い規模の戦闘となるだろう。」
「敵の首領、黒音を孤立させる。これが出来なければ、まず間違いなく我々の負けだ。それほどまでに、奴という戦力はでかい。」
「だが、これは比較的容易だろう。奴は1人で前線に出てくる。メンバーはおいおい通達するが、これより各戦闘区域に当てる人数をこれより発表する。」
「307特殊部隊から20人、他、異物保有者を100、量産型異物保有者を500、通常兵士を1000。系、1620人が黒音討伐に当たる。」
その異常な数字に各メンバーが、驚きを露わにする。
「なっ!?いくら何でもたった一人にそれ程の戦力は過剰では!?」
「いや、むしろこの程度で足りん。通常兵士など、肉壁にもならないだろう。だが、彼らによる後方からの火力支援は欲しいのでこの数を割り振っているわけだ。そうした方が、色々と都合がいい。」
ザワザワと周囲が騒がしくなる。当然だ。たった一人に対して一軍を差し向けるというのだから。しかも、それでも足りないと総司令は言う。
一体、黒音が本気でちゃんと戦えばどれほどの強さなのだろうか。
「ジブラルタル海峡には、307から12人、異物保有者を72人、系84人の大隊を出す。クリミア半島には、307から12人、異物保有者を大隊規模で2つだ。他は全て、ボスポラス海峡とルーマニアの戦線に回す。」
全てルーマニアに回すと言うことはそこが今回の鬼門、凄まじい戦場になるということだろう。
黒音討伐にもさらに狩り出されるかもしれない。
「量産型の異物保有者は1個師団をルーマニアの戦線に割り当てる。」
「ジブラルタル海峡解放作戦には、イギリス軍はかなりの兵力を投入するようだ。まぁ、イギリスは奈落の一部管理権を持っていないから躍起になるのも分かるが。」
「では、作戦内容を詳しく説明する。」
――――――――ポイントB-4上空にて。
「予定時刻だ。作戦開始!!」
輸送機から、ラジア中隊とリレイル中隊を率いながら飛び降りるのは、空墨さんだ。久しぶりに見た気がする。
今回、私は副官を拝命した訳だが………。
正直、不安でいっぱいである。
枝音は輸送機から飛び降りるも、すぐさま翼を背中に4枚具現化し、刀を抜く。
他のメンバーも、翼を出すなり、魔術やその他もろもろで空を飛び始める。
「敵、異物保有部隊と思われるモノを確認。大隊規模!!」
「見えた!アレは我々で抑えるぞ!!エンゲージ!!」
更にスピードを上げて、私達は敵へ向かって突撃をしていく。
―――――独・仏連合軍司令所
「イギリス・白華連合軍がポイントB-4及びポイントG-6へ進行を開始!!独・仏連合軍との戦闘を開始しました!!各ポイントにおいて制空戦も開始された模様です。」
部下のひとりが、灰空に報告を入れる。
今回、ジブラルタル・セウタ両要塞の総指揮を得た灰空である。
「予定通り、ここで枝音を抑えます。閣下が準備を整えるまで絶対に通さないでください。イギリス軍を全滅させる勢いでやってしまっても構いません。」
「それと、私もでます。ジブラルタル要塞方面には白姫がいますからね。アレを抑えるのには苦労するでしょう。下手をすればあれ1人にここが落とされるかま知れませんからね。何かあったら連絡してください。」
そう言い残し、灰空は司令室を後にする。
―――――――――ポイントB-4上空。
「迎撃機は暇があれば一つでも落とせ!!」
「撃て撃て撃て!!」
怒号と爆音が飛び交うそこは正しく戦場だった。
戦争というひとつの音楽だ。
枝音が地上近で低空飛行している敵を上から切り倒す。
「これで3人目……!」
そのまま右手に持つ新装備である銃、ルークスを3発ほど、数十メートル先の敵にお見舞いする。
急降下して切りかかってきた敵を迎撃し、バランスが崩れたところで心臓を貫いてトドメをさし、蹴り飛ばして剣を抜く。
翼をブワッと数回羽ばたかせると、それだけで数百メートル上空へ一気に上昇する。
上空にいる戦闘機を数機ほど迎撃するが、キリがない。
だが、地上よりかはまだマシだ。
地上は市街地戦となっているが、ほぼ遭遇戦のようなものとなっており、混戦と化している。
私達は空を飛べるため、上空から敵の位置などを把握できるが、なんの能力も持っていない通常兵士達は常に敵がどの位置にいるのか、正確にわからない中で戦っているのだ。
だが、街を抜ければもうすぐジブラルタル要塞だ。
そこを落とせば私達の勝利条件は整う。
不意に、枝音の周辺が爆発を起こし、粉塵の中から敵が姿を現し、槍で突きを放ってくる。
完全に不意を突いた攻撃だが、枝音は重力に任せて自由落下することでそれを避ける。
地上スレスレの所で再び浮遊を開始し、体にかかる凄まじい負荷を無視しながら地上スレスレを超低空飛行する。
仰向けになりながら高速で飛行し、敵に銃弾を複数発当てる。
と、十字路にでた瞬間敵4人に挟み撃ちにされる。
銃弾を、翼で防御しつつ上昇、最近覚えたばかりの基礎魔術を行使し、氷の礫を敵に飛ばして牽制するが、敵は四1組となって連携しつつ氷の礫を迎撃する。
そこは枝音も迎撃される事も織り込み済みで、4人が集まった所に、ルークスに爆発的なエネルギーを注入して高エネルギー弾をぶっぱなす。
4人がいっせいに散開するが、予測演算された弾道はそのうちの一人に直撃し、派手な爆発を引き起こす。
散開した敵を各個撃破しようと近くの1人に突撃するが、もう1人がすぐさま合流し、2対1となる。
だが、人数差をものともせずに枝音は翼や刀や銃を駆使して戦う。
剣を何度か交えたところで敵が少しだけ距離をとる。
それを追う……振りをして振り返り、背後からの不意をかまそうとした敵の右肩をさし貫く。
そのまま、刀を動かして右肩を破壊し、腹部を蹴り飛ばして刀を抜くと同時に銃弾を3発ぶち込む。
そして、先程まで相手取っていた2人が枝音の隙をつこうとするが、翼を使ってアクロバティックに回避、逆に相手の後ろをとって刀で薙ぎ払う。
そして、4本のうちの2本を翼の形を剣に変えて、もう1人に連撃を繰り出す。
無理してそれを捌いた時に少しだけ出来た隙が出来た瞬間をついて、枝音が相手の顔に蹴りを食らわせ、袖口から取りだしたナイフを投げつける。
かなりの威力と速度で投げつけられたナイフを、それでもなんとか回避しようとするが避けきれずに左肩、右太もも、に突き刺さる。
そして、トドメと言わんばかりに落下する敵に取り付いて、心臓を突き刺し、腹部を蹴って刀を引き抜く。
「これで、7人………!」
と、そこで上空にさらに接近する気配を感じ取る。
「通常は異物保有者同士の戦いは、基本的に1対1か1対2だと言うのに1対4でもものともしないとは、流石ですね。」
そう言いながら近づいてくる男は、灰空だった。
―――――――ジブラルタル海峡イギリス海軍
「ポイントF-3進行部隊より入電!セウタ要塞側の制空権の奪取に失敗!!各部隊は直ちに撤退する模様!!」
突如、通信兵からひめいのような報告の声が上がる。
「何!?どういう事だ!?」
「異物保有者によって戦況が撹乱されたようです!!」
「何!?セウタ要塞方面に異物保有部隊は確認されていないはずだ!?数は!?」
「1個中隊を確認!航空部隊は全滅したとの事です!」
それが本当だとするならば、白華に新しく援軍を呼ばなければならない。一般の兵士が異物保有者とやり合うなど自殺行為だ。
ルーマニアの方がここより能力者部隊が多い分、キツいだろうが、それでも小隊程度でもここに送ってもらわねば困る。
「前線はどうなっている!?」
「ポイントF-3まで後退、そこで一旦膠着状態となっています。対空監視網、及び迎撃網の構築はなんとか間に合ったようで、前線をなんとかもたせています。」
「よし、ならぱ白華に増援要請を送れ!」
「了解しました!………ちょっと待ってください。前方の味方艦隊より入電!これは……!!」
「艦長!100km前方にフランス艦隊を確認!!」
「ちっ、このタイミングでか……!作戦中止!撤退だ!我々はポイントB-2に引き篭るぞ!!セウタ要塞攻略部隊の方もポイントF-3まで撤退するように伝えろ!!」
どぅおおおらぁぁお!!!どこ黒じゃぁあい!!
というわけで、また今度な!(どういう訳だ)