第11話 動乱の心
デン、デン、デン、デン、デンデン、ズンチャカズンチャカブンブンブン♪11話!11話!ダンダンダンデンデンデケデケ11話〜ズンジャカヂャカヂャン、
デン、デン、デン、デン、デンデン!デケデケデケ11話〜
黒音達が立ち去る前に、何か思い出したように聞く。
「あぁ、そういや忘れてたが、お前ら白華でも天の刹でも無いな。どこの組織だ?」
未だ呆然としているティアに変わって、困惑しつつも冷静さを保っている古木森が代わりに答える。
「俺たちはどこの組織にも属しちゃいない。俺達は、そういう組織の被害者の集まりだ。」
「そうか、じゃあ一言いっとくが、敵が誰か、よく考えておくんだな。」
そう言って、2人は消える。
チリィンと、黒音達の方から音が鳴り響く。
チリィンと、ティアの方から音が鳴り響く。
2つの音は、しばらく木霊し続けた――――――――
黒音が敵、その事実が若干だが揺らいだ2人は、今後どうするべきかそれぞれが独自の思いを抱いていた。
古木森は、若干の引っかかりを覚えつつも、所詮は敵の言葉だと判断し、どちらにせよ黒音を倒せば何か分かるだろうと考えていた。
ティアは、黒音の言葉なんて信じられない、と思いつつも戸惑っていた。確かに、黒音は敵だし、その言葉が正しいとは思えない。だが、あの怪しい情報提供者を見た時から、黒音が本当に敵なのか、という疑問は元から抱いてたために揺らいでいた。
ある日突然消えてしまった自分の育て親が生きている、という事の方がティアの心に大きく響いていた。
本当の両親は分からない。物心ついた時には1人だった。
だが、孤児として生きてきた私を拾ってくれた人がいた。
あの人にもう一度会って、色々聞きたかった。顔は残念ながら覚えていないが、もう少し黒音から話を聞いておけばよかったと思っている。
まあ、突然飛び出した夜姫奈を回収するのが本来の目的だったのだから仕方ないのだが。
そして、夜姫奈は大きな衝撃を受けていた。
実は、夜姫奈は黒音の昔話の途中から起きていた。
そこで、自分の敵は黒音では無いと言う事実を知った。
もちろん、黒音が嘘をついている可能性もあるが、今まで黒音が全ての元凶だと思っていた夜姫奈は困惑する。
確かに、今までおかしいな、と思う節はあったのだ。
なんで、こんな強力な能力を授けたのか。
授けておきながら、なぜ自分が敵だと自ら言うのか。
普通、利用したかったのなら自分は味方だと言って取り入る筈だ。幼少期の自分なら、訳もなく騙されていただろう。
色々と、疑問に思う事は昔からあったのだ。
もっと、色んなことを知らなければ行けないと、夜姫奈は今更ながらに思ったのだった―――――――
―――――――――――
「おい、ラスト。あいつ、確かあの時のガキだろう?あれはどういうことだ?」
黒音がラストに、聞いているのはティアに事だ。
彼女はかなり昔に、ラストが気まぐれで拾ってきた5歳くらいのガキだった。
その当時まるで本当の親子のようだったのを覚えている。
俺自身、何回か子守をさせられた記憶がある。
だが、あのガキが15ぐらいになったとき、悲劇はおきた。
なんの変哲もない、よくある話だ。
少なくとも、俺の周りではいくらでもいる。
九心王を狙った各国政府、及び各組織からの攻撃。
当時、第三次世界大戦前でピリピリしていた中、奈落の調査に九心王からストップがかかった事によって、歯止めが効かずに暴走した1部の連中が起こした事件だ。
これによって、怒り狂ったラストが暴れたおかげで、九心王の恐ろしさが今の世界に知れ渡った訳だが………。
その時、流れ弾に当たったティアは回復不可能なくらいの重症を負っていた。
いや、重症どころか、もう死んでいると言っても過言ではない状態だ。
完全回復術式を使用した所で綺麗な死体が残るだけだし、再生能力の高い遺物を持たせてもあの状態では精神が持たないだろう。
そこで、黒音にラストが泣きついてきたのだった。(泣きつくなんて可愛げのあるものでは無かったが。)
直接能力を授けた所で黒音の感情に耐えられるかどうか分からない。
そして、それを調べている暇がない2人は、1つの賭けに出た。
黒音の、心臓を移植する、と言う賭けに。
無論、何が起きるか分からなかった。
だが、拒絶反応は起きないだろうし、直接能力を授けるよりかは比較的安全策だった。
黒音の血を吸った吸血鬼がボロボロに崩れる、と言う例があったが、それは吸血鬼の感情の起伏が乏しいからだ。
吸血鬼になれば、戦闘のみに快楽を覚えるようになり、それ以外の感情、例えば仲間への思いやりと言った人間らしさは失われる。
そして、黒音の感情の受け入れ先がなければ、その体はまもなく崩壊する。
(余談だが、枝音の場合もこれと同じ理屈であの吸血鬼は死んだ。)
だから、人間ならば、特に黒音の感情と相性のいい人間ならばある程度問題は無い。
数分の間に数々の理論を展開しあい、ついにラストと黒音は心臓の移植を決行した。
手術は成功だった。
黒音の能力によって、肉体と魂の構造を再構築し、普段通りの健康体となった。
そして、その後にラストによって感情に限界を設け、黒音から受け継がれた能力を徐々に減少させていく。
まだ当時未完成だった感情抑制剤なども使用して、なんとが普通の体に戻した。
こうして、ティアは一命を取り戻し、再びこのような事態になることを恐れたラストは、ティアの前から姿を消す事にした。
と言うのが事の顛末だった。
どういう事だ?と聞かれたラストは、複雑な表情で肩をすくめる。
「どういう事とはなんだ?あいつが能力を発現している事か?それとも、俺たちに食ってかかってきている事か?」
「全部だ。」
調べ見ないことには確証の持てないことに対して今、何かしが意見を言えと言う黒音にため息をつきながらラスト、は答える。
「……能力の発言については、完全にあの子の体を元に戻せていなかったんだろう。なんで俺の顔すら覚えてないのかは、知らん。だが、心当たりがあるとすれば…………。」
「奴が、何かしたか。」
「そういう事だろう。」
ちっ、まずいな……。と、舌打ちをしながら黒音は何かを考えるように眉間に手を当て下を向く。
「この事は他で何とかする。とりあえず計画が優先だ、こんな所で別の事にかまけていて、しくじる訳には行かない。」
喋りながら歩いていると、地上に空いた大きな穴が見え、そこから飛び降りる。
数百mほど落下すると、灰空達のいるアジトへと戻ってきた。
「あの穴もなんとかしないといけないな………。」
ま、帰ってくるのが楽だからしばらく使わせてもらうけど、と夜姫奈の開けた穴を見ながら黒音は呟く。
「ちっす。ただいま。」
「閣下!まったく、勝手な行動して!!」
黒音を窘める灰空を見て、なんだか荒波に似て来たな……、と思った。
雷狐は、枝音と何かしているようだ。
ま、仲がいいのは良いことだから、親睦を深めてもらおうと黒音は考えた。
ちなみに、枝音は雷狐の分の食料も食ってしまい、怒った雷狐と更に食料を求める枝音によって、激戦を繰り広げていたのだが黒音は気にしない。
と、そこで黒音に長距離通信が入る。
「何があった?」
余程の緊急時以外に使わない回線で奈落の外から通信が来た。
その事に黒音が、真剣な表情に変えて通信に応答する。
「―――――――で、――――――た。どうしますか?」
「……構わん。予想より早いが、予定通りに行く。状況は?」
「アメリカは――――た。日本は参加を余儀なくされるでしょう。新ソ連は既に―――ようです。」
「わかった。こちらの仕込みも終わったし、すぐそちらに戻る。ちょうど、奈落の幕が開くタイミングだしな。」
通話を切ると、未だに戦闘している枝音と雷狐の間に入って、無理矢理戦闘を止める。
「枝音、もうすぐ奈落が開く。お別れの時間だ。」
11話じゃあ!どうもーどこ黒ですーーー!!
前書きの音楽はちょー適当っス。
最近音ゲー全然やってねぇなーっと思ってる今日この頃ですが、元気に小説書いてきます
次の話で2章は終わり、3章へと入ります。
では、また今度〜