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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
プロローグ
3/182

第3話 目覚めるは白の心。

感情が、自分の中に広がっていく。

喜び、嬉しさ、楽しさ、慈しみ、親しみ、愛しさ、幸福、勇気、希望、友情、充足、安心――――

救いたい、守りたい、助けたい―――――

ありとあらゆる正の感情が、自分が手に取った刀から一気に自分の中に広がっていく。その無茶苦茶な感情の奔流に、気が狂いそうになる。

でも、わかる。その感情の、その力の、制御の仕方が、わかる。

まるで、前にも使ったことがあるかのように。

まるで、これを持っているのが当たり前かのように。


気づけば、枝音は真っ白い空間にいた。


そして、自分の前に、白い少年がいる。


「やぁ、君が僕の新しい使い手かい?僕の名前は天葵(あまぎ)っていうんだ。よろしくね。」


少年が、私に話しかける。


「ふむ、そうかそうか。友達を助けたいんだね?力が欲しいんだね?うん、言わなくてもわかるよ。すでに僕は、君だからね。」


私は何も喋っていないのに少年は言う。


「凄いね。この剣自体の感情より、君の感情の方が強いのか。…………いや、これは……ほんとに人間か?ここまで正の感情の奔流をまともに受けて、正気でいられる人は初めてだ。いや、前にもいた、気がする…けれど……。まぁ、いいだろう、気に入った。望み通り、力ならくれてやろう。代償も少なめにしてあげる。だけど、今の君では、20%も力を引き出せればいい方だろうけどね。」


構わない。20%であろうが、1%であろうが、瑠璃奈を助けれるなら、あの男を倒せるのなら構わない。

だから、力を。


「代わりに、僕は君の心を食べさせてもらう。君の感情を食らう事によって、僕の力は増幅するからね。後は…そうだな、僕の対になる黒いの、アレの所有者を探してくれれば、いいや。これでいいかな?」


なんでもいい。早く、早く瑠璃奈を助けるための力を。


「なら契約は成立だね。さぁ、存分に暴れるがいい!」


目を開くと、男の手が目の間に迫っていた。

枝音は、一瞬にして刀を鞘から抜く。そして、刀を持った左手を真上に振り上げる。

ザンッ、という音とともに、切断された男の腕が宙を舞って地に落ち、さらにそのまま胴体を切り裂こうとしたが、男は既に数十メートルの距離をとっていた。


「ははっ、これはこれは……!凄いですね…!」


そこには青白い光を身に纏い、刀身が青白く光る刀を持った枝音の姿があった。そしてその瞳は金色に輝き、左目の白目は青く染まっている。


「枝音……、あんた、それは………?」


どういうこと?と瑠璃奈は思った。


そもそも、遺物とはほとんどが、呪いの力を付与された武器である『呪器』、滅びに瀕した神々が、生き延びるために自身の魂を武器へと変換した『神器』、神殺しに特化した『神滅器』、 などと言った、古代に行われていた世界を滅ぼし尽くす戦争、神狩り戦争時に使われていた様々な武器のことを指す。


さらに、武器によって様々な能力があり、自身の魂と武器の魂の波長が合えば、強力な力を得られる。

だが代わりに波長が合わないものを使用すると、死に至る、魂を武器に乗っ取られる、狂気に落ち、破壊衝動に駆られた化物となるなどその代償は大きなものとなる。


例え魂の波長がうまく合ったとしても武器の中にいる意識体を御しきるのは難しく、武器によっては能力を使用するのに何かしらの代償を要するものがあるなどと、人が扱うには荷が重すぎるものばかりであった。

故にそれを実戦投入できている組織は数少なく、今のところ3つの組織しかない。


魂の波長が合わなくてもよく、かつ代償をそこまで求めない武器も無論存在する。だが、それは遺物の技術を実戦使用するために人が遺物を模倣した量産品で、特殊な能力がなくなり力が弱まる代わりに、安全性の確保を優先したものである。しかも、安全性が高まるとはいえ、それなりの実力と訓練を組んでいなければまともに戦うこともできない。


普通、たまたま拾った武器が自分と波長が合うものだった、などという事はほとんど無い。

万一そうだとしても、つい先程までただの高校生として生活していた枝音が、なんの訓練もなく武器の意識体を御しきることなど出来るはずがない。

間違いなく正気を失うはずだ。

だが彼女は正気を失わないどころか、完全に制御しきっている。


その事に瑠璃奈は疑問を抱かずにいられなかったが、実際、枝音は正気を保ち武器を制御している。

目の前では既に戦闘が始まっているので、瑠璃奈は今は考えても無駄だと判断し、枝音に何かあった時に対処できるよう自身の回復に専念することにした。が、何故か力がいつもより弱く、回復が遅かった。


(なんで再生しないのよ……?あの男の能力?それとも私の剣に何か……)


細工をされた?と思ったが、それはありえない、契約済みの剣に他人が細工をするなんて不可能だ。瑠璃奈は自分の周りに起きていることを、把握することが出来なかった。

そして、沈黙を保っていた状況は、男の一言によって動き出す。


「ふむ……、ではその力、試させてもらうとしましょうか。」


そう言うと、男は切断された腕を再生し、その手に剣が現れ、それを掴むと一瞬で距離を縮めて枝音の首を切り落とそうと薙ぎ払う。

枝音はそれを身体を横に傾けて避ける、と同時に男の胴を切断しようと刀を振る。

男はそれを一歩下がることでギリギリでかわし、左袖からナイフを数本取り出し、それを投げる。

枝音はそれを刀で撃ち落とそうとしたが、ナイフに刃が当たる寸前で突然ナイフが発光し、爆発する。


(目くらまし……!)


枝音がそう思った時、背後から気配を感じた。

振り向いていては間に合わない。


「はいチェックメ。まだまだ未熟ですね。」


と、男は勝利を確信し、背後から枝音の首を切り落とそうとする。が、そこで枝音の背中から2対の翼が飛び出し、そこから結晶のような形をした、羽らしきものが男めがけてばら撒かれる。


「なっ!!!??」


ドガガガガガガッッッ!!!っという音とともに地面が削れ、男の腕や足にいくつかが直撃する。


「くっ、そう簡単にはやられてくれませんか……!」


男は剣からナイフにもちかえ、両手を使って必死に結晶をさばく。


「天葵!形状変化、分裂。二刀!!」


枝音がそう言うと、刀が二つに分裂する。

枝音は結晶を飛ばすのを止め、翼を大きくする。そして二刀になった刀を両手にもち、二つの翼と交互に男に向かって連続で攻撃を繰り出す。

流石に手数が追いつかないのか、男の体中に傷がいくつもついていく。だが、それでも致命傷だけは避けている上に、瞬く間に傷が再生していく。


男が体制を立て直すために一旦距離を置こうと一歩下がり、追撃するように、再び翼から結晶をばら撒く……ふりをして刀からバチィッ、と青白い稲妻を放つ。

それをかわしきれずに稲妻が男の左肩に当たり男の左腕がぶっ飛ぶ、がそれをすぐに再生させながら後ろに下がり、体制を立て直す、とそこで急に男が立ち止まり、


「……撤退?ですが、対象物は目の前に…。…………、了解しました。」


そう呟いた。

そして男は筒のようなものを取り出し、地面に放り投げる。

ボンッと音とともに煙幕が発生し、男の姿が煙に紛れるように掻き消えていく。


「な!?ま、てっ……ゴフッ!!!??」


男を追おうとして、さらに力を引き出そうとした途端、急に身体から力が抜け、喀血して倒れた。それと同時に目の色が元に戻り、翼が消える。


『潮時だね……。これ以上は君の心がもたない。』


天葵の声が頭の中に直接響いてくる。


(どう、し、て………!あと…もう少、しだった、のに……。)


『言ったろう?今の君では20%も引き出せるか分からないと。それに初めての使用でここまでやれたんだ。凄い方だけどね?』


体が、全く動かない。と、同時にいくつかの感情の起伏がほとんど無いことに気づいた。


『まぁ、目前の脅威はさった。とりあえず、これでよししようじゃないか。』


動かない体を必死に動かして横を見ると、回復したのか瑠璃奈が心配した顔でこちらに駆け寄ってくるのが見えた。


(良かった……。瑠璃奈。無事だったんだ……。)


友達の無事を確認できたからか、緊張の糸が切れ、意識が遠のいていくのがわかる。


(後は、水姫も…無事だと…いい、な……。)


―――そして、枝音の意識は暗闇に落ちていった。



どもども。

戦闘シーンということもあり、速攻で書き終わりました。

でも、いつもなら一日かけて読み直したり、修正したりしてる所を今回はしてないので誤字脱字、あとは文章的に変なところが多いかもしれません。ひろい心で受け止めてください(白目)

おかしな点がありましたら、教えてください。


負の感情はいくらでも思いつくんですが正の感情ってあまり思いつかないですよね?


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