10話 黒の心は満ち満ちて。
うわぁあ レ(゜∀゜;)ヘ三┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
『1話から読みましょう』\_(・ω・`)ココ重要!
( ゜Д゜)⊃旦~ <10話、始まるよ!
ラストの首から下げている鍵が、チリィンと鳴り響く。
スタッと、一人の18歳ぐらいの少女が、降り立つ。
黒く、巨大で3つの鋭い爪が特徴的の腕だ。
だが、その特徴的な腕よりも目に止まったのは。
その少女の左胸の服の上には、雅音の右腕や夜姫奈の右手の甲にある紋様と全く同じものが浮かび上がっており、そして左目の白目は赤く染まり、右眼の瞳だけ金色に染まっていたのだった。
「黒音!アレもあんたの計画とか言う奴!?」
枝音が、その少女の目を見て叫ぶ。
が、黒音はまるで覚えがないとばかりに首を横に振る。
「いや、俺が能力を与えたのはこいつだけ……っ!?」
その少女が、凄まじい速さで黒音の横を通り過ぎ、様々な物をバラバラに切り裂いていく。
「速いっ!!ラスト!」
「移動速度、それがお前の『限界』だ!!」
ラストの、5つだけ様々な物に制限を設ける能力。
それによって少女の速度がかなり落ちる。
黒音がすかさず冴詠を抜いて切りかかろうとするが、少女の左腕から伸びた白く光る鎖が右腕に巻きついて、動きを阻害する。
(なんだこの鎖!?解けない!)
九尾が、尻尾を3本だし、それぞれで攻撃するが、全て切り裂かれる。
雷狐が拳銃を具現化し、連射するが、少女の腕で全て防がれる。
「なんだァ!?その腕は!」
灰空の左腕が3つに切り刻まれ、夜姫奈の所まで少女がたどり着く。
少女が、夜姫奈を左腕で抱えると、黒音に巻きついていた鎖が空に霧散する。
「ん……、ティア……?」
夜姫奈が、うっすらと開いた目で少女の事を見て、そう呼ぶ。
ティアと呼ばれた少女は、夜姫奈の無事を確認して、安心したように息を吐いた後、再び腕を振るうが、
「切断威力、それがお前の『限界』だ。」
切れないものなど無いかのように思えたティアの爪が、黒音の左腕に食込んだだけで終わる。
黒音が刀を横なぎに振るうが、ティアは夜姫奈を抱えながらも凄まじい反射神経で屈んで避ける。
が、屈んだ所に黒音の蹴りが炸裂し、壁際まで吹っ飛ばされる。
追い討ちとばかりに、雷狐が銃弾を数発お見舞いして九尾が尻尾で攻撃する。
ティアは腕で防御するが、その腕の黒い部分がポロッと剥がれ落ちる。
ボロボロと黒い部分が崩れ落ち、普通の人間の腕が現れる。
目の色は元に戻り、左胸の紋様は消えている。
ラストの、首から下げている鍵がチリィンと鳴り響く、
そして、ティアの右手首に括りつけてある錠前が、チリィンと鳴り響く。
それを見て、黒音がもしや、と言ったような顔になる。
「………ラスト。まさか、あいつは………?」
ラストの方を向くと、それはどう表現すればいいのか分からない、複雑な表情となっていた。
再び、ティアの目の色が変化し、腕を黒い影が多い始めて形が変化する。
「……………大きくなったもんだ。」
ラストが、小さな声でポツっと呟いたのを黒音は聞き逃さなかった。
と、そこで枝音が気づく。
足元に、木の根のようなものが張り巡らされている事に。
「っ!?みんな、足元!!!」
枝音が叫ぶと同時に、その木の根からちょこんと出た芽が、一気に成長を始める。
みるみるうちに増殖し、成長していく木は黒音達を絡め取り、束縛していく。
雷狐が雷で、黒音が影で、それぞれが自分の能力で木を破壊していくが、木は破壊された部分から間髪いれずに再生、成長していく。
「っ!?こちらが破壊するよりも成長、再生スピードの方が早い!ラスト!!」
「はいはい、今日の俺は忙しいですねッ、とォ!成長速度限界!!再生速度限界!!これで枠はもう全部埋まっちまったぞ!?」
ピタッと、今までのが嘘のように木の成長が止まったかのように遅くなる。
それぞれが無理矢理脱出するが……。
「ちっ、逃げられたか。それにしても、アイツらは一体何者だ?」
雷狐がそう呟く。
皆が落ち着いて周囲を改めて見回すと、黒音とラストがいなくなっていることに気づく。
「てか、あれ?黒音とラストはどこに行った?」
「あ、あいつらなら、なんか天井の穴から文字通り飛んでいったよ。夜姫奈達の後を追ったんじゃない?」
と、枝音が言う。
それを聞いて、皆が一斉に黒音達の後を追いかけようと扉から飛び出すが、そこで灰空がふと思う。
(それにしても、我々でも見なかったのに、この人はよく彼らの動きが見えましたね。)
―――――――――――――
「移動速度低下の能力がまだ働いてるのか。」
ティアは夜姫奈を抱えながらもかなりの速度で移動しているが、彼女にとっては遅いらしい。
そして横に一人の、20代ぐらいの若い青年が並走する。
「お前がこれ程遅いって珍しいな。何かされたか?」
「ん、古木森か。どうやら、身体能力低下のような術をかけられたみたい。」
「まぁ、術じゃなくて九心王の特権なんだけどな?」
唐突に別の声がかかり、2人は足を止めて周囲を警戒する。
すると、正面の大きな木の後ろから、黒音とラストが現れる。
「…!黒音………!!」
2人が、黒音とラストを勢いよく睨みつける。
「なぁ、なんで目の敵みたいに俺がされてるんだ??」
まぁ、心当たりしかないけど、と肩を竦めながら黒音が言う。
「黙りなさい、この外道が!人体実験で私達だけでなく、何人もの人生を狂わせておいて!!」
「……ん?ちょっと待て、何人も??」
『私達』、と言う言葉に黒音が疑問をもつ。
確かに、色んな実験をしてきた、昔は非人道的と言われるような事もしてきた。
だが、こいつらなんか知らない。
夜姫奈は、わかる。直接、能力を授けたのだから。
もう1人は、これは恐らく予想だが……ラストが昔気にかけていたチビだろう。まるで娘のように扱っていたのも覚えてる。
なんで黒音と似たようで若干違っている眼を持ってるのかにも、予想はつく。
だが、それ以外は知らない。
そもそも、余程の事情が無い限り、無関係な人間に手を出したことなんて無かったはずだ。
「そうよ、忘れた、なんて言わせないわ。夜姫奈の両親も私の育て親も殺した上に、古木森や他にも沢山の人を人体実験に使っておいて………!」
黒音がさらに困惑する。夜姫奈の両親殺しの件は……まぁ、そう思い込むようにしたから夜姫奈はそう思ってるだろう。
だけど、お前の育て親、俺の後ろにいるんだけど??
ラストの方を振り返ると、俺についてはなんも喋んな!って言う感じで睨みつけてきた。
(おい、なんか俺、お前を殺した事になってるんだけど?)
(俺も知らねぇよ。いや、そんな事をする奴で心当たりがあるとしたら……奴か。)
と、黒音とラストが目線で会話していると、苛立ちが募ってきたのかティアが怒り混じりに問いかける。
「で、何か言うことは無いの?」
「言うことだぁ?あるわきゃねぇだろ。そもそも俺は夜姫奈以外の事なんて知らんのだからな。」
「うそ!よくそんな口が叩けたわね!」
「ハッ、お前、なんも考えずにただ情報を鵜呑みしただけだろ?俺が極悪人だーって話は誰から聞いたんだ?そいつの話は信用できるものだったのか?例えば、お前の育て親だが、俺は殺してない所か、普通に生きてるしな。」
まぁ、極悪人なのは違いないけどな、と呟くと、ラストが後ろで首を縦に降っていたので、黒音はジト目で睨みつける。
お前のせいでややこしくなってるんだよ、と若干イラッとする。
そして、『生きている』という言葉に、ティアは驚いた様子でいる。
「………え?」
「え?じゃねぇよ。ちっ、逐一面倒くせぇな。夜姫奈の両親は仕方ないと思ってる。俺が殺したも同然かもしれないな?だが、お前らなんぞ知らん。少なくとも、直接は関係無い。知らん物をあーだこーだ言われても分かるわけがねぇだろ。」
黒音は自分に対する不当な避難に抗議する為とはいえ、逐一説明するのが面倒くさくなってきていた。
夜姫奈の両親は、家族を守る代わりに夜花の研究員で働く、と言う契約をしたのに関わらず、守れなかった。だから、非難されても仕方ないし、計画もあったから夜姫奈からは恨まれるようにしておいた。
だから、それについてはガヤガヤ言われても文句はあまり言えないが、ティアに関しては俺は直接関わってない、更にその他なんざ知らん。
だんだんとイライラしてきた黒音であったが、ティアはその言葉に叫ぶ。
「それこそ嘘よ!!なんでアンタがそんな事知ってるの!!」
「ふん、話にならんな。やっぱ、お前はあの時のチビのままか。」
その言葉に、ティアは若干引っかかる節を感じる。
まるで、昔から自分の事を知ってるかのような……。
「まぁ、逃げるならこれ以上引き止めはせんよ。戻るぞ、ラスト。今日は色々ありすぎだ。」
黒音と、ラストが、消える。
ラストが消える瞬間、チリィンと言う音が鳴り響き、それが今も木霊している。
そして、ティアの右腕の錠前も、チリィンと鳴り響き続けるのだった―――――――
10話ですよーどこ黒でぇーーーすうううう。
はい、11話と10話はちょっと え、おかしくね?ってなる部分があるのですが、ダラダラとやってもしょうが無いのでチャチャッと行っちゃいます。
ま、もうすぐで3章ですし、その前振りな部分が少しあるので大目に見てください。
ブクマとか欲しいな〜と思いつつ、また今度〜。