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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第2章 奈落調査作戦。
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第5話 黒の話。

黒音が床の扉を開けると、地下へ続く階段があらわれ、その階段をさらに下っていく。


「ここは秘密裏に使われていた実験施設だな。人間達は神や化物に対抗しようと必死だったからな。」


階段を下り終えると、長い廊下とたくさんの扉が目に入る。

黒音がふと足を止めて、空いたドアから見える部屋の中をじっと見る。


「……どうかしたの?」


「いや、なんでもない。行くぞ。」


と、足早に奥に進んでいく。

枝音が何があるんだろうと思い、覗いてみると、そこは何かの研究室のようだった。

黒音が見ていたであろう一番奥の壁にはボロボロで読み取りづらいが、


『捕獲に成功した海神(ワダツミ)の魂と武器の同化実験に成功。保持者の容態は安定。可能なら量産体制へ。』


と書かれた貼り紙が貼られている。

これが一体どうしたと言うんだろう?と枝音が不思議に思っていると、


「おい、何してるんだ?早く行くぞ?」


と、黒音から声がかかり、急いで黒音の後ろを追いかける。

1番奥の扉を開けると、そこはコンピューターが大量に置かれた現代的な部屋だった。

奥に、何人か人がいる。


「あ、黒音。帰ってきたのか。外はどうだっ……た…っ!??」


黒音の帰還にいち早く気づいた雷狐が振り返ると、そこに黒音だけでなく枝音も居ることに気づき、ポカンと口を開けて呆然とする。


「ん?どうした、雷狐……っ!!?」


ほかのメンバーも枝音の存在に気づき、一通り驚いたあと黒音に説明を求める視線を向ける。


「いやぁ……、なんかいたからさぁ?連れてきちゃった。」


と、頭をかきながら困ったように黒音が返事をする。


「連れてきちゃったって……。はぁ、貴方と言う人は……。」


灰空が呆れたように肩をすくめる。

その顔に見覚えがあった枝音は、


「あっ!?黒フードの……!!」


「どうも、白咲さん。お久しぶりですね。」


丁寧に挨拶をしてくるが、何度か戦ったことがある相手なので、枝音としては複雑な気分である。


「で、どうするんですか、閣下?」


「ん、奈落の結界が次に開く時までここに置いておこうと思ってな。こちらとしても幾つか都合のいいこともあるし。」


「……はぁ、まぁ、閣下の決めたことですから。お好きなようにしてください。」


こういうわけで数日間、私は本来敵である夜花のお世話になるのだった。


自分用に宛てがわれた部屋で、枝音は黒音に一通りこの建物の説明を聞く。

そして、本命の質問タイムがやってくる。


「さて、聞きたいことはあるか?約束通り、答えられる範囲でなら答えるが。」


「じゃあ、あなた達はここで何をしてるの?」


「残念だけど、それは答えられない。強いて言うなら、計画に必要な事をしている。かな?」


早速答えてくれないじゃないか……と枝音は思った。

さらに計画ってなんだ?と思ったが、恐らく答えてはくれないだろうと思い、ほかの質問を考える。


「じゃあ、この奈落って、遺物ってなんなの?」


「ふむ、そうだな…。奈落、つまりこの場所だが、ここは本来あった世界だ。」


本来あった世界?

早速、混乱してきた。


「この奈落は『世界の権限』によって消された、世界の1部なんだ。それが元に戻りつつあることで空いた穴が奈落の穴だ。奈落が初めて観測された時、地上にあった国や海は消えただろう?アレは消されたこの世界の代理として作られたものだ。本当はここが元々地上にあったんだ。」


世界の権限?消された世界?全く理解が追いつかない。

が、なんとかして情報を整理していく。


「つまり、元々あったこの土地を違うものと置き換えて、でもそれが元々の状態に戻ろうとしてるから、地上に穴が開いたって事?」


「まぁ、そういうことだな。」


奈落の穴が空いた原因は段々と分かってきた。

が、まだまだ疑問は消えない。


「世界の権限って何?」


「それは俺にもわからない。ただ、神狩り戦争終結時にそういう神をも超える力が使われたという事は知ってるが。」


「なんで知ってるのよ。」


その当時の事を知っているかのように黒音が答えるのが気になった枝音はその事も聞いてみる。

あと、その何でも知ってるかのような素振りが気に食わない、


「秘密だ。あと、遺物だが、これは神狩り戦争の時に使われていた兵器の事を指すのがほとんどだな。神滅器やら神器やら……ここら辺は流石に知ってるだろう?」


それに対して枝音は頷く。

確か瑠璃奈がこういう種類があると説明していた記憶がある。


「まぁ、知られていない話だと、神器は元々は人間が作ったものなんだがな?これを滅びに瀕した神々が生き延びるために真似たのが今の神器だ。」


この場所が通常の世界から隔離され、神々は肉体を保てなくなりつつあった。

その時、思いついたのが神の魂を武器に封じ込めるという人間達が使っていた武器の1つを利用することだった。

肉体を保てないのなら、魂の器を変えればいい。

そうして、神々が自らの武器に魂を封じこめていって出来たのが今の神器なのだそうだ。


色々と難しい話が続き、わけがわからない枝音であったが、なんとか理解しようと試みる。


「じゃあ、神狩り戦争ってのは?」


それを聞いた瞬間、黒音の顔が一瞬だけ複雑なものに変わるが、すぐに元に戻ってそれに答える。


「神狩り戦争ってのは、この消された世界で2万7000年前に行われた戦争だ。神、人間、死神、邪神、化物、竜、鬼………様々な勢力が互いに争っていた。」


一部は協力関係にあったり、神でも人間側に着いていたやつとかはいたらしいけどな、と付け加えながら黒音は説明を続ける。


「戦争の理由は不明だ。邪神共が初めに何かやらかしたっていわれてるけどな。酷いものだったらしいぞ。現代で言う核戦争みたいなもんだったらしいからな。」


黒音が部屋に置いてある時計の時刻をみて、話を切り上げる。


「っと、話はここまでだ。俺はやらなきゃいけない事があるからな。まぁ、怪しい行動をしない限りは基本的に自由だからのんびりしてくれ。」


「あっ………。」


枝音は、何か言いたそうな顔をするが。


「ん?どうした?」


「……いや、なんでも。」


「そうか。」


そう言って、黒音は部屋を後にする。

1人、後に残された枝音は自分の不甲斐なさに歯噛みする。

なぜ、『どうしてあの時、私の前からいなくなったの?』とか、『どうして、あの時私に話しかけてきたの?』と聞けなかったのか。

確かに、奈落の事とかも知りたかった。何か役立つ情報も持っておきたかった。

それに、こんな事を聞いても答えてくれないかもしれない。


それでも。


それでも…………。



――――――――――――――――――


黒音は部屋を出たあと、薄暗い廊下を歩く。

すると、1人の男が話しかけてくる。


「はっ、お前と言う奴でも、お姫様には弱いんだな。」


「抜かせ。ある程度真実の情報を持たせておいた方が、我々にとって後々楽になる。」


「我々にとって、ねぇ……?」


自分にとって、の間違いじゃないのか?と言外に滲ませながらその男はつぶやく。

廊下に突然現れたのは九心王の1人、ラストだ。

黒音の事を昔から知る人物の1人でもある。


「そんな事より、仕掛けは済んだのか?」


「クク、それこそバッチリよ。俺様に面倒なな仕事させやがって。おかげで能力のリソースを幾つか割かなきゃいけねぇじゃねぇか。これは高くつくからな?」


ラストが乾いた笑い声をこぼしながら答える。

黒音は面倒くさそうに適当に流す。


「それより、気になる事がある。俺の勘違いだと良いんだが……どうやらそうじゃないみたいだからな。」


ラストの突然の報告に、黒音は怪訝な顔をする。


「……?どう言う事だ?」


「この奈落……しかも俺らの近くに他に誰か人間がいるみたいだ。」


「なに?他に奈落に侵入したやつが居るってのか?いつ侵入したんだ?」


「………恐らく、数時間前だ。そこら辺から急に化け物共が騒がしくなったし、俺も作業中に人の気配がした……気がする。」


そのありえない答えと曖昧な答えに黒音は困惑する。


「なっ、今はどこも奈落の幕は閉じているはずだ。侵入したとしたらもっと前だろ?それに、気がするってどういう事だ?」


「何かしらの方法を使って結界を破って無理やり侵入したのかも知れん。気がするってのは、気配があまりにも薄かったからだ。」


ラストのその言葉に、黒音はさらに困惑する。


「お前が気配が薄いと感じるほど隠形が上手い人間なんているのか?それに、奈落の結界を破るほどの能力なんて、それこそ9心王並の能力だ。」


黒音達ですら、ラストの能力で結界を維持する力が弱まっている所に限界を設け、そこに様々な能力を駆使することでこじ開けて侵入している。

黒音の『書き直し(リライト)』が使えればかなり楽に入れたのだが、生憎今は使えないし、奥の手も使い所ではない。


単独で奈落の結界を破れる人間なんているはずがない、というのが黒音の考えだった。


「だから俺の気のせい可能性もある。が、考えておくに越したことはない。」


「………そうだな。」


そう言った後、2人はそれぞれのやるべき事をするために持ち場に戻る。


そして、不穏な空気を漂わせつつも奈落の夜が来て、明けようとしていた。




どうもどうも、謎に三日連続で更新しているどこ黒です。

本格的に週一投稿ってのが大嘘になっていますね。


という訳で、5話です。

最後の方はぐだぐだになった感はありますが、今回は説明とか、重要な要素が多い回となっております。


ちなみに、世界というのはこの宇宙全体の事です。

『世界の権限』というのは人智どころか神すら超える能力で、さながら全能のように世界中のあらゆるものを自由にする事が可能です。

それによって、神狩り戦争以前に本来あった世界は今の世界に書き換えられています。

誰が、なぜ、どうやってそのような力を行使したのかは現時点では不明です。


奈落の底には、人間はもう残っていません。神狩り戦争以前の人間は全て寿命で死んだか、地上に住んでます。

なので、奈落の底にいるのは百鬼夜行や化物、鬼種や吸血種、竜種、神器となった神々などです(極小数は地上の世界にもいます。)

基本的に通常の神や天使は天界にいて、死神や悪魔、堕天使は冥界にいます。


では、また今度〜。




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