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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第2章 奈落調査作戦。
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第3話 白の心、閉じ込められて。

瑠璃奈が正気を失っている。

少なくとも正気であれば、仲間を傷つけることなんて有り得ないし、何故みんなが母の姿をした何かを攻撃するのか、とか疑問に思って考えるはずだし、そもそもここに母親がいるはずがない事も分かるはずだ。

なぜなら、彼女の母親は12年前に火事で亡くなっているのだから。


「お母さんを、虐めるなぁぁあ!!!」


拘束術式を破り、リリィに襲いかかる。


咄嗟に反応できなかったリリィは一瞬死への恐怖を覚えるが、それはすぐに消える。


枝音が、間に割って入ったからだ。


左目の白目は蒼く染まり、瞳は金色へ。


抜いた刀で瑠璃奈の剣を受け止め、腹に蹴りをいれて吹き飛ばす。

瑠璃奈はすぐさま起き上がり、背中から炎の翼を広げ、二刀の燃え盛る剣で攻撃してくる。


「枝音ぇぇえ!!」


「ぐっ、羅鳴はこっちにきて!他はアレを倒してちょうだい!」


羅鳴と枝音が左右同時に瑠璃奈に切りかかる。

が、羅鳴は仲間という事もあってか少し攻撃に迷いが見られる。


(羅鳴は攻撃を躊躇しちゃってる……!なら、私が瑠璃奈の手足を切り飛ばしてでも抑え込む!)


天葵からさらに力を引き出す。

すると、枝音の左半身に青い紋様が浮かび上がる。

翼を4本形成し、速度を最大まで上げて攻撃する。


左腕を切り落とした、と思ったが瑠璃奈は炎で腕を形成し、そのまま炎の腕で掴みかかってくる。


「ぐうぅううぅ!!」


右肩を掴まれ、そのまま枝音の体を炎が包むが、羅鳴が後ろから槍で攻撃し、それによってできた隙で炎から逃れる。


「躊躇してる場合じゃないっ……!羅刹!!」


羅鳴は覚悟を決め、悪鬼羅刹としての力を使う。


羅鳴の背中から2本の巨大な腕があらわれる。その手のひらにある、巨大な目玉がギョロリと瑠璃奈を睨みつける。


その目が赤く光る。危険を感じたのか、それを瑠璃奈は瞬時に避ける。

すると、先程まで瑠璃奈のいた場所が赤く溶けだし、爆発する。

瑠璃奈は、羅鳴の方を先に倒す事に決めたようで、羅鳴の方向に炎弾を撃ち込む。

その炎弾を羅鳴は2本の巨大な2本の腕で防ぐ。


と、そこで枝音が気づく。瑠璃奈がもはや言葉すら喋っていないという事に。

その瞳は涙を流してはいるものの、虚ろなものとなっている。


『どうやら、精神汚染が危険域に入ったようだね。早々にこの領域から逃げるか、精神汚染の根源を断たなきゃ。』


だが、ここから逃げるにしても瑠璃奈はなんとか拘束しなきゃ行けない。


「レイリ!しっかりして!!」


リリィの叫び声が聞こえ、そちらを見るとレイリがリリィ達に攻撃を仕掛けようとした所でハッとなって固まっている。

どうやら、リリィの声で正気に戻ったようだ。


(まずい……!明らかに私達も精神汚染が進んでいる……!ホントはとっておきたいけど、総司令から貰ったアレを使うしかない……!)


「舞鬼もこっちにきて!羅鳴、2人でなんとか瑠璃奈の動きを止めて!一瞬でもいい!」


舞鬼がこっに来れば向こう側のアタッカーがいなくなってしまうが、こちらは瑠璃奈を押さえつけるのにアタッカー2人でも抑えられるか分からない。


舞鬼が大剣を瑠璃奈に振り下ろすが、瑠璃奈は炎の翼で防御した後、燃え盛る炎剣を空中に3本生み出し、それぞれが自動で動いて舞鬼を攻撃する。


舞鬼は背中から生えた2つの巨大な腕と槍を駆使して瑠璃奈に猛攻を仕掛けるが、瑠璃奈は肩口から炎の腕をさらに作り、全ての攻撃をさばき切る。


お返しとばかりに、3つの自動炎剣と瑠璃奈の持つ2つの炎剣が襲いかかる。


避けられないし、防御も間に合わない、と思ったがそこで目の前に舞鬼が割り込み、瑠璃奈の攻撃をその身に受ける。


「そんな!舞鬼!!」


「ぐっ、がはっ!」


舞鬼は突き刺さった剣がさらに食い込むのを無視して前進し、そのまま瑠璃奈の両腕を掴む。


「これで……動けないだろ……!」


「舞鬼、ありがと!瑠璃奈、しばらく大人しくしてなさい!!」


そういって、枝音が取り出したのは『封印結界の釘』。

奈落の調査開始前に、総司令から餞別として貰っていた。

隊長の瑠璃奈と、副隊長の枝音に使用権限が任されている。


釘というよりかは槍のような大きさだが、それには封印術式や、身体能力低下術式、能力封印術式、拘束術式などのデバフ効果の術式が大量に刻印されており、刺されたものは全ての術式を解除しない限り動くことは出来ない。


それだけではなく、封印結界と言うものを対象に展開する。

これは、対象は結界の外に干渉する事が出来ないだけでなく、結界の外から中にも干渉不可能という代物、つまりは究極の檻であった。


Lv1~5まであり、数字が大きいほど巨大な大きさになるが、その威力も上がる。

今の枝音がもっているのはLv2、これならばある程度の力を持つものでも突き刺せば動きを止めることが出来る。


「うらぁぁあ!!」


枝音が釘で瑠璃奈の右肩をさし貫く。

すると、文字が書かれた帯のようなものが周囲に展開され、瑠璃奈を包み込む。

そのまま、瑠璃奈は白い球体の中に閉じ込められた。


「ふぅ、ひとまず安心ね。リリィ!レイリ!とりあえずそいつはほっといて一旦戻るよ!」


枝音がリリィとレイリの方を向くと、いつの間にか敵はいなくなっていた。

リリィとレイリも気づかない間にいなくなった敵を見て困惑している。

枝音は考える。逃げたのか、それとも隠れて隙を突くつもりか。

だが、かなり受動的なアレがこちらを積極的に攻撃してくるとは考えにくい。

そして、次の瞬間、いなくなった理由が前者だとわかる。


ズゥン、と地響きがすると共に地震のように地面が揺れる。

太陽に雲が差し掛かったかのように、急に当たりが暗くなる。

上を見上げると、そこには


「グォォォオオオオオオアアアア!!」


巨大な、赤いドラゴンがそこにはいた。


『ティアマトの眷属だね。数万年前には腐るほどいたんだけど、今はもうほとんど居ないはずだよ。こいつは恐らく神狩り戦争の時の生き残りだね。』


と、天葵が悠長に話しかけてくる。


「でも、なんでそんなのがここに!?」


『知らないよ。でも、奈落が広がったのと無関係ではないだろうね。それに、何かと戦闘した後みたいだ。随分ボロボロだね。』


「それで!?どうしたらいいの!?」


『逃げるしかないよ?手負いとはいえ、本物の竜の眷属だ。倒す事はできるけど、今の状態じゃあ君以外の人間は死ぬよ。』


「っ!?総員撤退!奈落の入口に戻るよ!!」


そう全員に指示を出す。瑠璃奈の閉じ込められている白い球体は羅鳴の巨大な腕で掴んで運ぶ。


『ザザッ…ザッ……くん。枝音くん!聞こえるかい!?』


と、そこで緊急用の長距離通信が入る。

よっぽどの事がない限り使わないと言っていたのだが……何かあったのだろうか?


「…!空墨さん、何かあったんですか!?」


「よかった!瑠璃奈くんに繋がらないから困ってたんだ。今すぐそこを撤退してくれ!奈落の幕が早くも閉じつつある!後30分も持たない!」


「なっ!?」


奈落の幕が閉じれば少なくとも三日間は外に出られない。

さらに、奈落の状態が不安定となっている今、三日間以内に出られるかもしれないし、三日間以上出られないかもしれない。


つまり、次に一体いつ、奈落の幕が開くのか分からないのだ。

その状況下で閉じ込められるのはまずい。

そして、その事を枝音は全員に伝える。


もともと撤退する予定だったのもあり、なんとか時間内には出られそうだった。

だが、時間以外に、大きな問題があった。


後ろの、巨大なドラゴンだ。


ドラゴンは相変わらず走る私達を追いかけてくる。

このまま簡易エレベーターの所まで連れていくと、エレベーターを破壊されて全員出られない可能性が高い。


誰か1人、殿(しんがり)としてここに残らなければ行けなかった。


枝音は、走る皆を置いて、急に立ち止まる。


「……?どうしたの枝音!?早く行かないと!」


「皆は、先に行って。」


「……え?」


リリィは絶句して立ち止まる。

ほかのみんなも、困惑しているようだ。


「私が、奴の足止めをする、皆は先に………っ!?」


ドラゴンが、口から炎を吐き出してくるのを枝音が『朝焼けの空』で防御する。


「そんな!仲間を置いてなんて行けないよ!」


「黙って早く行って!そんな事言い合ってる暇は無いの!!」


舞鬼だけは悲痛そうな顔をしていたが、やがて覚悟を決めた様子でみんなに言う。


「みんな…先に行こう。」


「なっ!?何を言ってるの!?枝音を置いて行けるわけがないじゃない!」


舞鬼は悔しそうに歯ぎしりし、握った拳は震えている。

が、なんとかリリィを説得しようとする。

ここで拘泥したら、全滅という最悪の結果になるかもしれないという事は、彼は過去の経験から分かっていた。


「じゃあ何だ!?ここで全滅する気か!?本当は分かってるんだろう!?誰か殿が必要なんだって!」


「それなら!私がなる!」


「ダメだ!お前じゃアレと戦っても10分と持たないだろ!?」


「そんなことない!私だって何とかでき……ぐっ。」


枝音がリリィの首を絞め落とし、気絶させる。

倒れたリリィを抱え、舞鬼に渡す。


「リリィをよろしく。みんな、無事逃げ切ってね。」


「……お前こそ、無事に戻ってこいよ。戻ってきたら、俺にこんな選択をさせたお前に高いもん奢らせるからな。」


「まぁ、破産しない程度にお願いね。行って!早く!!」


舞鬼はリリィを抱えてすぐに走って簡易エレベーターまで行く。

ほかの皆も、一瞬だけこちらをチラリと見たあと悔しそうに、そして悲しそうに走って舞鬼を追いかける。


「さって……ようやく2人になれたね…!天葵、どうすればいい?」


『君が文字通り全力を出せば竜種だって倒す事はできる。先程彼らを逃がしたのは、足でまといなのと、時間が無かったからだね。』


時間をかけて戦えば、このドラゴンも倒す事はできるらしい。

もう今から急いでも、奈落の外には出られないだろう。

時間を気にする必要はもうないわけだ。


「それじゃあ、頑張りますか……っ!?」


赤いドラゴンが、グォォォオオオ!!と天に咆哮を轟かせる。

何をする気なのか、と考えているとその答えはすぐわかった。


赤い巨体が10体ほど、咆哮を上げながら空を飛んでいたのだから。









ちぃいいいいす!!どこ黒でーす。


文章の細かいところ書くのがほんと苦手です。

こういうふうにしたら面白そう、とかこういう感じのがいいかも、とかその場その場の流れで書いてるんですけど、なんか最近は精神汚染系が多くなっちゃってますね。


精神系の能力はかなり貴重なのでめちゃ強いです。ただ、その代わり再生能力が低いのがほとんどです。

マユの再生能力は他の能力のおかげでそこまで高いわけじゃないですが、普通のものとなってます。

あと、能力は、1人1つとは限りません。


奈落での通信は、高位の情報共有系の能力を使わなければ出来ません。


では、説明とかもこの辺にしておいて、またこんど〜。


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