第XVI話 未来の空
とりあえず先に言っておくと、この小説リメイクしようかなって思ってます。はい。
「何故だっ!なぜ僕に応えないっ!!」
「応える必要が、無いからだろ!!」
ラカが銃弾をばら撒くが、黒音がそれらを全て弾いて防御する。その後ろで枝音が銃を構え、放つ。
放たれた銃弾を忌々しげに弾き、ラカは怒り狂う。
「君たちはいつまでも邪魔をっ!!」
ラカが腕をこちらに伸ばす。
能力発動の兆候。すぐさま枝音が銃撃を行い、その全ての弾丸が爆発する。
爆風で方向がずれ、空虚の能力は皆目見当違いの方向に作用する。
「僕が救うんだ。僕がっ!!」
爆煙を囮にしながら黒音が死角から攻撃。
切り飛ばされた腕を腹ただしげに睨みつけるラカは、口から雷撃を放とうとするが、黒音が顎を蹴りあげて封じ込める。
がら空きになった胴体を枝音がきりつけるが、まだ浅い。
今度こそ放たれた雷撃に、たまらず2人は距離をとる。
「なぜだ……なぜ僕を拒絶するっ!人に戻りたくは、無いのか!!」
それは、今も尚崩れ落ちていく、『災厄の獣』に向かって言っているのであろうことはわかる。
黒音たちはラカこそが災厄の獣だと思っていたが、どうやら事実は少し違うようだ。
「創造と終焉の2つの力と、僕の力、そしてウィデーレ!後は大量の人間の魂さえあれば、人に戻れるのに………っ!!」
明らかにラカの魂は『災厄の獣』のそれだ。だが『災厄の獣』には人の魂が入っているように見える。
そして、今までのラカの発言を照らし合わせたならぱ。
「お前ら、入れ替わっているのか?」
図星だとでも言うかのように、狂った形相でラカが黒音を睨みつける。
言われたくないことを指摘されたその憎悪の瞳は、今にも黒音を八つ裂きにせんと物語っている。
「あぁそうだよ!だったらなんだ!!」
銃撃による攻撃がよりいっそう激しくなり、黒音は歯噛みする。これでは思うように動けない。
「教えてやるよ!!ボクは災厄の獣、ラカ。そして、あっちはただのひとりの、名も無き少年だった!!」
本当に昔の話。
前の世界と呼ばれる世界、機械の化け物が蔓延る世界にて、ラカは生物としての化け物として存在していた。
災厄の獣とされていたラカは、事実そのように災厄を振りまくものとして振舞っていた。
当時のラカは『空虚』などというものでは無かったし、ましてやあそこまで巨大でもなかった。
「あの子は、村で生贄とされていた!」
当時のラカは、そんなボロっちい少年になんて興味がわかなかった。だが、ただ破壊するだけの毎日にも飽きていたラカは、あることを考える。
こいつが大きくなって、自分と共に現れてその村を破壊し尽くしたならば、どんなに面白いだろうか。
その後で、この少年は殺せばいい。
そうすれば、きっと面白い。
人ですらない獣と少年の日々は、驚くほど自然と、平和に過ぎていった。
いつしか、2人は家族同然だった。
だが、そんな日々は長くは続かない。
災厄の獣には、当然だが討伐部隊が差し向けられた。
当時は『怒りの日』からまだ数年しか立っておらず、世界は混乱の最中だった。
村で『災厄の獣』と呼ばれている化け物。連合軍に伝のある人物がそれを聞き、当時世界を脅かしていた殺戮機械と同類のものだと思い、討伐部隊が差し向けたのだった。
実際そこに居たのは機械の化け物ではなく生物の化物であったのだが、それはさほど問題では無かった。
当時、その世界では突如現れた殺戮機会共に対抗すべく全ての倫理観が取り払われており、生物工学や遺伝子操作によって架空の生物や化物が生物兵器として生み出されていた。そして、ラカはその1種と思われる。
そして、討伐は速やかに行われ、災厄の獣は瀕死の重症を負う。
そこで終わったのならば話は簡単だった。
「あの子は能力者だった………。それも、魂に関する力……入れ替わりのな!」
能力者。遺伝子操作や薬漬けによって生み出される、殺戮兵器に対抗するための人類の兵士。当時の世界にて複数ある、闇の落とし子のひとつ。
だが、遺伝子操作による能力の発現は、従軍希望者にしか行われなかったため、ただの村にいた少年がなぜそのような力を持っていたのかは全くの不明ではあった。
「彼は入れ替わった!残ったのは、人間になった僕と、瀕死の化け物になった少年だ!!」
また、話はそこで終わらない。
『災厄の獣』が乗り移った直後、ラカ……と言うよりは、少年の肉体が『9つの器』がひとつ、『空虚』に目覚める。
「力に目覚めた僕は、時空間制御の力を使って、瀕死のあの子の魂を封印した!」
少年の肉体と、少年の魂を封じ込める。そして、自分は憑依の力で別の肉体に移動し、時が来るまで己を封印していた。
そして、数千年の時をかけて瀕死の『獣』の肉体の再生と、能力を使ったことにより消耗しきった少年の魂が蘇ったその時、再び肉体を入れ替えることでどうにかしようとした。
だが。
長い時をその肉体に宿らせた魂は、やがてその肉体に完全に定着してしまう。また、少年の持っていた魂に関する能力は少年から失われてしまっていた。
そして今や、魂を操る力を持っていた人物は全員その力を失ってしまっている。
その他にも、ラカの封印は簡単に解けたものの少年の肉体がどこに行ってしまったのか分からなくなったり、『獣』の封印を解く手順が複雑化してしまったりなどの誤算があった。
そして、花嫁のティアラと花婿の指輪という唯一魂に干渉出来る遺物を用い、儀式を行う事で少年を元に戻そうとしたのだが。
「やっとだ!やっと全てを揃えることが出来た!!やっと、またお前と暮らせると言うのに、なんで………!!」
「それは、お前が望んだことであって、その少年が望んだことじゃ無いからだろ。少年は既に幸せだった。今さら他人の多くを犠牲にしてでも、蘇りたいとは思わなかったのだろうさ。」
「知ったような口を聞くなぁァァァァ!!!」
神経を逆撫でされたラカが、怒り狂いながら手当り次第に攻撃をばらまく。
ずさんな攻撃だが、威力は絶大だ。当たればタダでは済まない。
「まぁ、確かに。ひとりの少女を蘇らせるために四苦八苦していた俺が言っても説得力はねぇだろうがな。」
そう自嘲気味に答えながら、黒音は隙を見て攻撃を行う。
威力こそは絶大で、当たればタダでは済まないと言えども、ずさんなのは確かだ。簡単に当たってやる理由もない。
「お前らさえ………いなければっ!ウィデーレ!ここら一体を吹き飛ば………っつ!?」
ウィデーレに、長距離砲でこちらに攻撃を入れろと指示を出そうとしたところで、ウィデーレの反応が消失していることに気づく。
「馬鹿なっ……」
驚きを露わなし、焦るラカの様子を見て黒音と枝音はほくそ笑む。
「どうやら、瑠璃奈たちは上手くやってくれたみたいね。」
「まぁ、儀式の生贄に使われて、死にかけになってたやつなんざ歯牙にもかけんだろうよ。」
砕けそうなほど歯を食いしばり、怒りで手を震わせながらラカは叫ぶ。
「クソがぁぁぁあ!!」
怒り狂う彼に、正気はもはや無い。正気を失い、狂気にその身を手放したラカは、絶叫しながらがむしゃらに攻撃し始める。
だが、そんな攻撃に2人が当たるはずもなく、ラカの絶叫は虚しく空を切るだけだ。
「あっ…………。」
ふと、忌々しいほどに真っ青な空に、少年の姿がうっすらと見えた気がして、ラカは思わず手を伸ばす。
もう届かないはずのその姿に、何だか手が届くような気がしたのだ。
「これで、終わりだ。」
黒音が、袈裟斬りにラカの体を切りつける。
深く切り刻まれた体に、脳が危険信号を発する。
だが、力はもう入らない。再生もきかない。
ラカはゆっくりと地面へ向かって落ちていく。
空は、相変わらず忌々しい。
『ラカ………もういいよ。』
「ミラ、イ……?」
『もういいんだ。僕はもう充分だから。』
「い、嫌だ。ちがう!違うんだ。俺は、もう一度、お前と………!!」
『おやすみ、ラカ。また明日……ね。』
枝音が、背後から刃を突き立てる。
「………あぁ、おやすみ。ミライ。また……明日。」
目を閉じ、ラカが、ゆっくりとその呼吸を止める。
息を吸うのをやめる事にしたラカの肉体が、砂のように崩れ、空に溶けていく。
冷たい、心地よい風が吹き抜ける。
空は小気味よいほど青く澄んでおり、何かが遠くから聞こえそうなくらいに静かだった。
「枝音、最後のあれは…………いや。」
最後、ラカは何かを見たようだった。いや、見て、会話をしていた。崩れ落ちた『獣』の遺骸からはもう魂の気配は感じられない。
きっと、枝音が何かしたのだろうが、言わない方がいいだろう。
居心地の悪さを残しながらも、全ては終わったのだ。
砂粒が崩れて溶け落ちた辺りに、黒音が十字の剣を突き立てる。同じように、枝音も小さな十字架を地面に突き立てる。
「……帰ろうか。」
「うん。帰ろう、私達の、家に。」
そこには、待ってる人達がいるから―――――
何年ぶりなのだろうかと言うくらい小説を書いていなかったどこ黒です。どうも。
これにて花嫁動乱篇は終わりです。途中迷走してしまって色々整合性を何とかするのに大変でしたが、まぁ何とかなったんじゃないかなと。
んでもって本題なのですが、この小説をリメイクしようかなって考えてます。
理由としては、設定がまだまだ甘いのと、文章が書きはじめたばかりの頃だったからか稚拙に思えてしまったのと、キャラクターをあまり活かせなかったなと思ったのと、話の一部分に無理があると感じてしまったからです。特に話に無理があるな……と思ってしまった点が大きいです。
なので、この際一気に全部最初から書き直してしまおうかな、と。
書き直すにあたって、主人公や1部のキャラクターの名前が変わります。
また、能力や遺物に関する設定も少し変わります。
そして、話の内容も(特に後半)大幅に変わっていく予定です。
まぁまだ全然書き上がっていないのですが、ある程度ストックが出来たらこちらを全部消して1から投稿していこうかなと思います。
また、こんな小説ですが、未だ読んでくれている人がいるみたいで、本当に感謝の限りです。
リメイクしてもやっぱり設定とかに無理がある感じになってしまうかも知れませんが、それでも楽しんでいただければ幸いです。
ではまた。