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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
アフターストーリー
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花嫁動乱編 第Ⅴ話 空高く奪う者



レルヒェがワイヤーアンカーを射出し、敵の飛翔戦艦に張りつこうとする。

無茶苦茶なまでの高機動で持って敵戦艦の迎撃システムをかいくぐり、急接近する。


「何をしている!さっさと落とせ!」


「こんな挙動をされては、当たるものも当たりません!」


「パイロットはなんで耐えられるんだ!?」


敵の飛翔戦艦の中では、艦長以下乗組員が悲鳴を上げていた。

それくらい、今の黒音が行っている挙動はありえないものだった。

しばらくして、艦が大きく揺れる。


「何事っ!?」


「敵HFに取りつかれました!」


「敵のエネルギー反応増大………これはHFのものではありません!人の……!?そんな、ありえません!」


「生体反応パターン解析完了しました!これは…………黒音です!」


「敵の大将直々乗り込んできたのか!?」


その時、ガコン………と全ての電子機器が停止する。


「今度はなんだ!?」


「分かりません!システムが全て乗っ取られた模様!」


「第7ブロック、第5ブロック……次々と制圧されていきます!」


「待機している能力者を差し向けろ!待機中のドールも全て出せ!」


「もうやっています!第4、第3ブロック制圧されました!敵の侵攻、止まりません!」


絶望的な報告を次々と聞いた艦長は、自らを終わらせる存在が近づいてくるのを感じ、こう呟いた。


「終わりを告げる終焉の王、やつは悪夢か…………!」



―――――――――



「さて、手土産にHFの1つとこの船くらいは貰っていきたいところだが。」


敵のHFと飛翔戦艦はいずれもライブラリにはのっていない。

ということは、新型機かあるいは大幅なカスタム機ということになる。

ならば、解析の為の手っ取り早い手段として、丸ごと1つ鹵獲しておきたい。

それに、HF共の母艦となる戦艦を鹵獲したならば、敵の『ネメアの衣』についての情報もいくつか得られるかも知れない。


「ハッキングは上々、影の侵食も問題なし……鹵獲できそうだな。」


のんびりと黒音は敵の戦艦の中を歩いているが、言うまでもなくここは敵の腹の中、大雨の如く銃弾が飛んできている。


「隙あり!」


「どこにだよ。」


突然天井にある排気口から飛び出してきた能力者らしき男を、影が槍のように飛び出して貫く。

十字に交差した通路出た瞬間、左右から同時に敵が飛び出してくるが、影を瞬時に両側面展開して防御。


「吹き飛べ雑魚ども。」


黒音はあの最後の大戦に置いて、1人で何十人という能力者を戦っていた。

今更、こんなしょぼい奴らがちびちびと出てきた所でなんの障害にもなりはしない。


システムは則ってるから自爆の危険性はないし、格納庫は既に制圧済みだ。

黒音は1人なのにどうやって制圧してるのかと言うと


「黒音〜機関室制圧したよぉ。」


「あはぁ、よくわかんない部屋制圧〜。」


「なにここ〜、暗号通信室?よくわかんないけど制圧かなぁ。」


全く同じ声が、複数聞こえてくる。

黒音がちらりと後ろを見れば、黒音と似たような顔をした、全く同じ顔の少女達が好き勝手している。


『冴詠』、黒音が愛用している刀の、幾つかある能力のひとつ。

人化した姿の冴詠を、大量に複製するというもの。

当然、人でなければ生き物ですらないので、どれだけ攻撃を与えても死にはしない。


「あはぁ、ベッドの下からなんかでてきたよぉ〜見てみて黒音〜?」


「元の場所に戻しておきなさい。」


「えぇー黒音もさぁ、男の娘なんだしぃ〜?こういうの興味あるでしょ〜?」


「今は戦闘中だし俺は枝音以外興味無いししかも字がおかしい。………いや、性別は別に好きに変えれるからあながち間違いでは………?いや、やっぱおかしい。」


これだからこのクソ刀を擬人化させるのは嫌なんだ……と黒音は今更ながら後悔する。

でもこの方が手っ取り早いし、他の方法を模索してるような時間もなかったのは確かだ。


拾った当初はもう少しマシだったはずだが、なんでこんな訳分からん性格になったんだ……と黒音は溜息を吐く。

ちなみに、瑠璃奈とかにそんなことを言ったなら「飼い主に似たのよ。」とでも言われるのは間違いないだろう。


「……ここが艦橋かな?」


ご丁寧にも艦内の所々に道案内が施されている。


「お邪魔しまーす。宅急便でーす。死を届けに来ましたぁ。ではさようなら。」


入るや否や、銃を抜いて発砲する。

オペレーター達の心臓を次々と撃ち抜いていき、艦長らしき人物だけは肩と足だけ撃ち抜いて生かしておく。


尋問用だ。まぁ、尋問なんてする必要はない。

ちょっと頭の中をいじくってやれば、簡単に吐くようになる。


「艦橋、制圧完了〜。」


後からのんびりとやってきた人化状態の冴詠たちがのんびりとそんなことを宣う。

制圧したのは俺なんだがな、と思いながらのんびりと拳銃をリロードしていた矢先、突如ポンッと小さな破裂音が鳴り響いた。


「は?」


見れば、艦長らしき人物の頭が弾け飛んでいた。

そして、ポンポンと次々とオペレーター達の脳が小さく爆発していく。


口封じ………しかもここまで脳を破壊されては、死体から記憶を読み取ることも難しくなる。

更にその上、死体が燃え上がった。

あまりにも徹底し過ぎている。


「クソっ、『書き直し(リライト)』!」


咄嗟に近くにあった死体の頭を掴み、肉体の構造を書き換える。

肉体が変化し、ただの鉄の彫像に死体が変わる。


「………鉄にしたのはやりすぎたか。」


何か一つでも情報を残さなくては、と咄嗟に鉄に変えた訳だが、ここまで肉体を変質させてしまえば得られるものは乏しいだろう。

何も残らなくなるよりはマシか、と前向きに考え直し、黒音はもう1隻の飛翔戦艦の動きを確認する。


もう1隻は既に撤退準備を始めており、地上部隊も撤退し始めているようだ。

もちろん、逃がすわけがないが。


「いくら平和ボケしてたからって、ちょーっと人の事舐めすぎだよなぁ……?」


ここは新東京、世界を統べる2つの組織の内がひとつ、白華の本拠地がある所だ。

そんな所にこの程度の人数で攻めてきて、無事に帰れると思ったのだろうか?

随分と舐められた事だ。


艦橋の窓ガラスを割って、甲板上に降り立つ。


「時空崩壊丙式。」


終焉の力を解放し、腕を敵飛翔戦艦に向ける。

終焉の力はそのほとんどは失ったが、それでもいくつか能力は残っている。

チリひとつ残らず消し飛ばす。


「上空は問題なし。地上部隊もそろそろ追撃戦に差し掛かってる頃だろ。………お粗末な作戦だな。」


成層圏から奇襲を仕掛ける、というのはいい作戦だったが、その中身はお粗末な代物だ。

大方、ミライを手中に収めることが目的なんだろうが………それにしても、新東京を相手に戦争を仕掛けるには些か火力不足だ。


「…………ほんとに、何を企んでいるんだ?」




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