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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第一章 天使討伐作戦
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16話 全ての悪。そして撤退とその後。

五日間連続更新の四日目です。

(なんだ……?あの力は……!?)


まだ、隠し玉を持っていたというのか。

夢羽は、焦りを覚えていた。

それもそのはずだ。


白華のメンバーにその黒い霧がまとわりついた途端、みな発狂し始めたのだ。

自分は霧を範囲指定で消し飛ばしたからどうにかなったが、防御手段を持たなかったものは、酷い有様だった。


「巨悪の権化…!人よ、皆その罪に苦しめ。」


そう、突然空間転移で現れた、マユと呼ばれた女が喋った途端、全ては起きた。

まず、凄まじいまでの負のオーラがマユの全身から放たれ、それが分散された。


そして、その黒い霧を吸った者達は、発狂し始め、仲間を襲ったり、笑いながら自傷を繰り返すという阿鼻叫喚の地獄へと変化した。


霧という範囲指定でしか消せないものなのだから厄介だ。

味方の周りにまとわりつかれると、味方ごと消し飛ばさ無ければ対処できない。

結果、なんの対処方もわからず、先ほどまで優勢だった白華は一気に瓦解した。


「クク……戦場において能力者という異分子が一人追加されるだけで優勢劣勢がこうもコロコロ変わるとなると、やはり遺物とは恐ろしいものよな。人の手に余る代物だということを、改めて痛感するねぇ。」


黒音は白華の地獄絵図をみて、感想をもらす。


この地獄絵図を作り上げた能力。それは、マユの幾つかある能力の一つ、『罪の霧』だった。


『罪の霧』、負の感情を凝縮した霧を敵と認識した対象に向けて放つ。最大で200人に対して使用できる。


その霧を吸った対象は、精神に異常をきたす。

幻覚症状、発狂、様々な感情の爆発、あらゆる物体への恐怖心、あらゆるモノへの猜疑心、自傷行為に対する快感などである。


精神攻撃に耐性のない者達は吸った途端に毒にあてられるが、精神攻撃に対して耐性がある者は霧を吸っても問題ない、と言ったものである。


精神攻撃に耐性のある者などほとんど居ないので、正直言って対人戦どころか、対多人数戦においても最強と言えるような能力であった。


「アハハ!アハ?フハハハ!!?」


「僕が私が俺がぁぁあ、あ???あああ!??」


「アガァァァア!!!来るなぁァあ!!」


「この野郎!よくもぉお!ぐぁっ!?」


「やめろ!俺は敵じゃ……!………敵は、誰??」


戦場は大混乱に陥っていて、白華はその対処で手一杯である。

それもそうだ。精神攻撃をもつ遺物というものはかなり希少で、精神攻撃を受けた事など今まで無いのだろう。

だから、そう言った場合の対処法が分からない。まぁ、ここまで大勢が攻撃を食らっていては対処のしようがないのだが。

そして、精神攻撃に耐性がある人間もまた、ほとんど居ない。


「……呆気ないな。んじゃあ、我々はとっとと退散しようか。」


次々と撤退していく夜花を、誰一人として追撃する余裕はなかった――――



―――――――――2日後、ウラジオストク、地下800メートル、極秘会議室にて。


「――――以上が多人数の能力者同士、及び一般兵士との戦闘データとなります。」


薄暗がりで顔はよく見えないが、若い男がモニターに映し出された映像と、分析結果などを説明している。


「素晴らしいじゃないか。この戦力を我がものと出来たらならば、これは多大な戦力となる。紛争など、一瞬して終わるだろう。」


そこでは、様々な国の裏のトップが話し合い、その欲望を語りあっていた。


「ふむ、この拒絶の能力。是非とも欲しいな。」


だが、そのうちの一人がそう喋った途端、何人かが凍りついたように固まり、青ざめる。


「冗談はやめてくれ。そいつは9心王の一人だ。絶対に手を出すな。」


「9心王だと?何だそれは?」


「極秘事項だ。この存在はいかなる理由があっても、隠匿せねばならない。世界の抱えるトップクラスの極秘事項の一つだ。それに、彼らに目をつけられでもしてみろ。死ぬよりも恐ろしい事になる。」


どうやら、9心王の存在を知っている国家と知らない国家があるようだ。

どういう事だ?と、目で訴えかけるが、その男はそれ以上は答えるつもりは無いのか、唸りながら背もたれに深くもたれる。


「それにしても、今回の戦闘による能力者(・・・)の死者が零、とはな。これでは戦場というものに彼らを慣らすという目的は達成出来ていないのでは?」


「なまじ再生能力というものがあるから、死への実感が湧かなくなる。これは考えものだな。」


「多人数の保持者による大規模な戦闘というものはこれが初めてになる。多少の誤差は致し方ないのでは?」


「だが、これが敵として現れた場合はどうする?正直、どうやってこいつらを殺すというのだ?今回のデータでは一般兵士の被害は甚大であるのに対して、奴ら保持者の損害はほぼゼロだ。」


と、そこで突然笑い声がその場に響く。

何事かと全員がそちらを見てみると、先ほど戦闘記録を開示していた秘書のような男が盛大に笑っていた。


「ハハ……血を流す量で勝敗を決める、という事がもはや時代遅れなのだよ。血気盛んな野蛮人には黙っていて貰いたい。」


「なんだと!?」


「貴様……立場というものをわかっているのか?」


突然、挑発するかのような、いや、挑発しているのだろう。

そのような行為に及んだ男に対して、欲望の亡者達は激昂する。

たが、それ以上に、なにか、不穏な空気がする。

それをくだらなさそうに鼻で笑って、男は言い返す。


「はっ!立場だと?それはこちらの台詞だな。今回、我々はこの戦闘に対して、あらゆる干渉は拒否すると通告していた筈だ。」


「……なに?」


どんどん不穏な空気が強くなる。


「戦闘記録をとっていたのは別に構わない……。ハナから言っても無駄だと分かっていたからな。だが、その戦闘記録を元に貴様らは独自に計画を立てていたな?」


背中がひやりとする。何を馬鹿な!とか、貴様にそんな事は関係ないだろう!?とか、何故そんなことを知っている!?などと言った言葉は吐かれない。

そんな事よりも自分の身の危険を本能が警告してやまないからだ。


「『遺物合成胎児生成(チルドレン)計画』、『遺物作成計画』、『遺物保持者洗脳計画』……はっ、中には9心王を手駒とするとか言う夢物語のような計画もあったな?」


今までハッキリと認識出来なかった男の顔がハッキリと見える。

9心王序列第2位、終焉王、そして夜花の総帥、黒音だった。

それを見た欲望の亡者共が顔を青ざめ、震え始める。


「さて、自分の立場はわかったな?お前らは処刑される立場という事だ。」


「ま、待ってくれ。分かった。もう二度とお前らには関わらないと誓う!それに遺物についても手を出さない!!」


「黙れ。誰が喋っていいと言った?」


黒音がいつの間にか手に持っていた刀を一閃して、命乞いをしていた男の首を切り落とす。


「ひっ!?」


「やっ、やめ!うわぁぁあ!!」


泣き叫ぶ悲鳴と血の飛ぶ音が鳴り響く。そして、数秒たつと静かになった。


「ゴミの掃除はすんだようだな?」


いつの間にか、もう一人、顔はよく見えないが若々しい男が部屋の中に佇んでいた。


「…ああ。そもそも彼らは今回の目的を勘違いしている。今さら、遺物保持者同士の戦闘記録をとった所で、なんの意味もないと言うのにな。」


「失われた過去を知らぬ彼らに、それを言ったとて意味は無いさ。…ところで、目的は……?」


「あぁ、問題ない。二つの鍵は我々の手のうちにあるも同然だ。多少、想定外のことも起きたが枝音の方も上手くいった。」


「ふっ、それは何より。……しかしまぁ、再生能力があるから死の感覚が薄くなる、か。案外、こいつらの言うことも一理あるかもしれんぞ?地獄のような戦争など、保持者の彼らの殆どは知りもしない。」


つまり、こいつはこう言っているのだ。今は誰も死んでいないし、多少の傷なら再生する。

遺物のお陰で、精神的な問題もどうにかなっている。

だが、もしそれら全てが無くなったら?

果たして使い物になるのか?と。


「……関係ない。計画の要である最小限の人物。その魂と、それを現実世界に表す肉の器があればいい。有象無象の兵など、そこらから湯水のように湧いてでる。」


兵士がいくら死のうが問題無いと涼しげに言う黒音を見て、男は怪訝な顔をする。


「なに?まさか、『醜き人形』の量産に成功したのか?」


「いや……この■■ではまだだ。だが、e-287が5200秒だけ存在の維持に成功した。これを元にf~zの実験体を再調整している。」


「ふむ。5200秒持つなら即席の突撃部隊としては役に立つな……。だが、天の刹は『ワルキューレ』シリーズの量産化に成功しつつある。開発は急がねばな。」


「あぁ、わかっている。」


そう言いながら、黒音は背中を向け、歩き出す。


「全ては、我々の望む世界のために。」


そう言って背を向けながら手を振る彼の姿は、どこか寂しそうだった。


―――――――――夜花撤退時、戦闘中心地から10km程離れた場所より。


その少女は、たまたま夜花と白華、そして天の刹の戦闘地域の近くにいた。

元々北欧地域で調べたいことがあったので、そのついでに何やら不穏な動きを見せていた天の刹の様子を見に来ていた。


しかし、すぐに白華と戦闘が始まったので、天の刹が何をしていたのかなどは後回しでいいや、と思い、本来の目的に戻ろうとしていた。

だが、後回しなどにせず、その戦闘に参加するべきだったのだ。


なぜなら、夜花の総帥が戦闘に直接介入していたのだから。


少女がその事を知ったのは、戦闘が終盤に差し掛かるところだった。


そして、急いでその少女は戦闘地域まで戻り、遠くから撤退する夜花のメンバーの中から目的の人物を探す。


「……やっと見つけた。」


そう言って黒音を睨みつける少女の瞳は金色に輝き、右目の白目は赤く染まっていた―――――






はいどーもー。毎日投降してますどこ黒ですー。

これにて、1章が終わる感じですかね?

なんか自分でも長ったらしいなぁって思ったので2章からは簡潔に行けたらいいな、と思います。


閑話かなんかを入れたかったのですが、それ書く前に2章の1話が書き終わりそうなので、そっちから先に投降します。


1章は天使討伐戦みたいな感じで、これにて終わりです。

途中、迷走してる箇所がありましたがどうだったでしょうか?

なにかアドバイスとかあったらお願いします。



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