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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第8章 未来に希望を持つために。
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第27話 鬼は外、心、内に在らず。


「羅刹!!」


羅鳴が両肩から生えた異形の腕を向け、茨木を吹き飛ばす。

一見押しているように見えるが、逆だ。


(あの刀………!)


茨木の持つ刀、『髭切』。

これが厄介極まりない……どころの話ではなかった。


鬼種に対する絶対的な攻撃。

その上、更には茨木の空間置換能力。


この空間では茨木の方が有利になる。

羅刹の身体強化を使っても、あちらの方が1枚上手だ。

攻撃範囲はこちらの方が広いのでまだなんとなっているものの、威力はあちらの方が圧倒的に上だ。


まさか舞鬼がここまで強いとは思っていなかった。


とはいえ、弱点もある。

羅鳴が見た限りだと、どうやら鬼化状態の舞鬼は再生能力が低い。

防御面というか、耐久性はある。

それこそ、先程の攻撃の直撃を受けても、目立った外傷が見当たらないほどだ。


だが、小さな切り傷とかは出来ているし、それが治る気配がない。


『大江山』を発動させるために右腕を切り落としたのもそうだ。

舞鬼は片腕で戦っている状態。

手数で押し切れないことはないと思うが……


(できる気がしないなぁ………。)


今の舞鬼は身体強化の比率が凄まじいことになっている。

身体強化という点のみならば、黒音と同等かそれ以上の強化率ではなかろうか?


片腕がない分の手数のロスは速度で補われているし、片腕でもパワーは申し分ない。


ただ、特別何か特殊な能力があるという訳ではないのが唯一のすくいか。

だがあの筋肉バカをどう攻めるかと言われれば攻めようがない。


羅刹の身体強化もかなりのもののはずだが、それを上回っているのであれば直接的な殴り合いはやめておいた方がいい。

ならば、距離をとった攻撃をすれば良いのではないか、と思うだろうが………


「ガァアッ!!」


舞鬼が刀を振るう。

咄嗟に身を屈めると、髭切から放たれた斬撃が羅鳴の髪の毛数本を切り刻みながら背後の草木を真っ二つに切断していく。


距離をとってもこれだ。

近づくに近づけないのはもちろん、距離をとっても安心できない。


「………髭切を壊してみるか。」


試せることはなんても試そう、という結論から武器を壊そうという結論に至る。

この怪力は恐らく鬼化のせいだけではないように思われる。


なので、羅刹の腕で受け止め、羅刹の目で破壊しようとするが……


「なんつー馬鹿力よっ………!!」


受け止めた瞬間、羅刹の腕が滅茶苦茶に破壊され、更には斬撃が少し袈裟を切り裂いた。

血を撒き散らしながらも一旦距離を取り、再び両者が睨み合う。


「…………ごり押すか。」


近くに誰か居たなら助けて貰うだろうが、生憎そんな余裕のある人間はここには居ない。

なら、刺し違えてでも止めてやる。

もちろん死ぬ気はないし、殺す気もないが……


「鉾引き抜きし龍………!!」


手に持っている矛を逆さまにし、地面に突き立てる。

すると、赤い炎を身に纏う巨大な龍が顕現し………


「穿て!!」


身体強化された今の舞鬼ですら避けられないような速度で龍が舞鬼に向かって特攻する。

インパクトの瞬間、大地が赤く染まり、巨大な火柱が天を貫いた。


(これで倒せているわけがない!)


火柱による爆発の煙や燃え上がる炎の中に突っ込み、それらに隠れて距離を詰める。


突然炎の中から飛び出していた羅鳴に、火柱が直撃したことで硬直していた舞鬼は気づくのが遅れる。

舞鬼は防御が間に合わない事を悟ると、防御から攻撃に転じて相打ちを選択する。

羅鳴はそれに気づくものの、無視して槍を突き出す。


「うぉぉぉぉおおりゃぁぁぁあああ!!」


舞鬼の刀が、羅鳴の左肩を突き刺し破壊していくが、羅鳴の槍が舞鬼の右胸に突き刺さり、貫通する。


更に槍を手放して接近。刀がより深く突き刺さるのもお構い無しに、羅鳴が鼻先が触れ合うか否かと言った距離まで近づく。


「羅刹の腕!」


異形腕を6本、最大数背中から生やし、その巨大な掌で舞鬼を包み込む。


「爆裂っ!」


カッ!と光が掌から漏れだし、異形の腕が自壊しながら爆発を引き起こす。

中からボロボロになった舞鬼が落ちてきて、地面にくずれおちるもののそれをどうこうできる気力は羅鳴にももうない。


(も、ダメ………)


どさっ、と地面に突っ伏して、羅鳴は気を失うのだった。




――――――――――――――――――



「はぁ、はぁ………やっと倒したか………。」


目立った外傷はないものの、精神的にはボロボロ、と言った様子のネアが、倒れ伏したマユの前で膝をつく。

マユの精神汚染攻撃はかなり危険ではあるものの、それに対応出来てしまえば空間転移ぐらいしか目立った能力がないため、持久戦に持ち込めばネアが勝つのは必然と言えた。


「あ、あの、お疲れ様です。ありがとうございます……姉のために………。」


「いーよいーよ。そんな事よりも、回復お願い。あと、マユの面倒はあんたに任せる。」


「………どちらへ?」


「どちらもこちらも、次がまだ控えてるからねぇ………。」


ネアが視線を向けた先には、まだまだ大勢の洗脳された人達がいた。


(この数は流石の私でも………)


捌ききれないかもしれない、と感じつつも仕方が無いと割り切って、ネアは立ち向かう。


「あの、私も……」


「着いてくるな、なんて言うわけないでしょ。できる限り回復よろしく。それでも怪しいけれど……。」


ても、諦めるよりかは数百倍マシだ。

そうおもいながら、ネアとアズは気絶したマユを抱えながら敵陣へと突っ込んでいく。




―――――――――



「拒絶する。」


「伏せなさいっ!」


「うおっ!?」


ロイドが狂栖の頭を押さえつけ、無理やり伏せさせる。

拒絶の力の座標点にたまたま重なってしまったロイドの右腕の袖が消し飛ばされ、残った糸と布切れが宙を舞う。


拒絶の力は、夢羽が認識した場所に居なければ問題ない。

だが、絶え間なく動かなければいけないし、範囲指定されるとさらに厄介なことこの上ない。

直接触れることは論外なので近接攻撃の2人は必然と斬撃による衝撃波が主体の攻撃となる。


「拒絶の力は生物に対して使用すると15分しか消すことが出来ない、というのがまだ救いですか………。」


とはいえ、それをされると15分はなにも出来なくなる、ということだ。

きっちり15分後、元に戻った瞬間に背後からブスりとやられたらたまったものではない。


「直接的な攻撃をするとすぐさま消し飛ばされる、ってのが厄介極まりねぇぞ。どうすンだよオイ。」


「彼の認識外からの攻撃なら恐らく届きます。とはいえ、それをどう行うかという話ですが………。」


ご存知の通り、夢羽も黒音と同じ目を持っている。

しかも、天然物だ。

冴詠の本来の力が宿主である黒音に定着しなかったがためのエラーのような形での発現だが、それでも天然の黒薔薇には違いない。

目の力を前にしてどれほど相手を欺けるのか、という事に至る。


「俺の『人殺し』の力をフルで使ってもこの力の差だ。やつの認識の外からの攻撃なんてまるで思いつかないが。」


「確か黒音は生物を拒絶させて、それを拒絶王の体内で爆破させたんでしたっけ?」


だが、それは例外中の例外だ。

少なくとも、生物の弾丸なんて自分たちは持っていない。

だから、それ以外の方法ということになる。


「アァ、なるほどな?」


「何か思いつきましたか?」


「お前、斬撃を置くことはできるか?」


それを聞いたロイドは、驚いたように目を見開く。


「…………なるほど?やった事はありませんが、剣聖と呼ばれた身、やってみせましょう。」


「なら、タイミングは任せた。俺様が陽動する。」


そう言って、狂栖が駆け出す。

大鎌を振りかぶり、狂気じみた笑顔を浮かべながら、狂栖は夢羽に斬撃による射程距離を無視した斬撃での攻撃を行う。


さすがに黒音には劣るものの、重くて大きな大鎌からこれだけの斬撃を出せるあたり、流石は白華親衛隊の中でも最強、と言ったところか。

人類に対するほとんど最強としての力を振るい、狂栖は夢羽を翻弄する。


だが、それだけだ。翻弄しているだけ。

斬撃は全て夢羽に避けられるか、届く直前で消滅させられてしまっている。


「狂栖!!」


ロイドが名前を呼ぶと同時、狂栖が身をかがめると、その頭上を斬撃が通り過ぎる。

それをものともせずに夢羽は避け、剣の形状を絶え間なく変化させながら変則的な攻撃を行う。


「ぐぅっ!?」


鞭のようにしなる剣が狂栖に直撃し、右肩から胸部にかけてを破壊していく。

だが、狂栖は剣を素手で掴み、引っ張って夢羽の姿勢を崩す。


「はっ!」


夢羽の脚ではなく、その足元、地面を狙ったロイドの斬撃が地面を切り刻む。

夢羽がよろけ、ダメ押しとばかりに狂栖が大鎌を背後から叩きつける。


大鎌やそれによる攻撃自体は夢羽の能力で消えてしまうが、受けた衝撃は消しきれなかったようで、夢羽の身体がさらに前に押し出される。


すると、まるで見えない刃に押し付けられたかのように夢羽の両目の部分と、両肩、脇腹等が切り裂かれていく。

そこに、斬撃の刃だけが置かれているのだ。

まさに理外の理。

理外の剣、その絶技。


「はぁぁぁぁっ!!」


ロイドが剣を振るい、夢羽を切り裂く。

目を潰した状態なので夢羽は上手く認識が出来ていない。


防御もままならずに夢羽は地面に崩れ落ちた。


「はぁ………なんとか倒せましたか。狂栖、大丈夫ですか?」


「大丈夫に見えんのかよ。」


「見えませんね。」




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