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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第一章 天使討伐作戦
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14話 心は黒く染まりて

五日間連続更新2日目です。

「グルァァァア!!!」


完全に拘束から逃れた枝音が黒音に襲いかかる。

延ばされた左手を躱しつつ、黒音は回し蹴りを放ち、横腹に直撃を受けた枝音が吹っ飛ぶ。


「影の収納箱よ。」


影の収納箱、自分の影を広げ、その中に様々なものを自由に収納できる能力。収納する数に制限は無い。

生物、非生物を問わずに収納可能であるが、収納対象が拒絶反応を示した場合のみ収納不可能である。


黒音の足下の影が濃くなり、広がる。

黒音がトンっと地面を足で叩くと、少し変わった形状の大剣が1本、その中から飛び出てくる。


黒音はそれをキャッチすると、体勢を立て直して再び襲いかかる枝音に大きく振り下ろす。

地面が裂け、轟音がな響くが、枝音はそれを背中の翼で受け止めている。

そして、大剣を弾き返すと同時に黒音の足を払おうとするが黒音は大剣を捨て、後ろに下がって回避。


追撃として剣状の髪の毛を黒音に向かって放つが、黒音は再び足で地面を叩き、もう一本剣を取り出す。

そして、冴詠を右手に、もう一本を左手に持って枝音の追撃を弾き返す。


「理性を失っているとは、とても思えん動きだなっ!!」


冴詠を地面に突き刺し、地面をさらに足で叩く。

今度は炎を纏ったロングソードが現れ、それを右手でキャッチすると、両手に構えた剣を枝音に向かって投げる。

と、同時に地面に突き刺した冴詠を右手で掴み、枝音に向かって駆け出す。


「ガヴヴルルル、アサヤケノソラ!!」


枝音の正面に青色の障壁が展開され、剣がすべて弾かれる。


「っ!?」


黒音が立ち止まった一瞬の隙を突いて、地面から飛び出た枝音の髪の毛が黒音の左肩と右脇腹を指し貫く。

そして更に、振り払われた翼によって、黒音が大きく吹き飛ばされる。


「いつつ……。クソ、灰空ももう持たないだろうし、さっさと決めちまうか……。」


いくら灰空の能力が拒絶王と相性がいいとはいえ、そこまで長くもつとは思えない。

天の刹の残党も残っているだろうし、白華の死んだフリ作戦はほんとやめて欲しかった。人口神にやられたと思われていた部隊すらいくつか復帰しているし、それに、予備戦力が把握していたものより多い。

黒音がここに連れてきた戦力的に、夜花が勝つ見込みは低めである。


(あの野郎……。何が上手いこと時間稼ぐから任せとけ、だ。いろいろとヘッタクソなんだよ、ちくしょうが。)


あいつ、夜花をここで潰す気なんじゃないか?と、心の中で毒づきながら、黒音は冴詠を逆手に持つ。


「冴詠、やるぞ。320秒で自動的に解除されるように頼む。」


そう言って、冴詠を心臓に突き刺す。


右目の白目は血のようなどす黒い赤色に染まり、赤い涙が頬を伝う。左目の白目も赤色に染まり、両目の瞳は赤みがかった金色へと変わる。

顔のした半分が黒い影で覆われ、背中からは12本の刀身が突き出る。

右腕に黒い模様が浮かび上がり、右手の指先が伸びて、刀身となる。


遺物との完全な融合による暴走状態。


天葵と冴詠は遺物のどの型にも当てはまらないので、正確には少し違うが、今、黒音や枝音に起きている現象はそれと似たようなものである。


遺物と契約した人間は普段は魂を一部、同化させている状態である。

戦闘時には魂をさらに同化させ、さらに肉体的にもある程度同化する事で身体能力や再生能力の向上、及び能力の使用等を可能としている。


それを、魂を完全に同化させるだけでなく、肉体的にも完全に同化させる。

それによって、遺物に宿っている意思体の人格と自分の人格がごちゃ混ぜになり、理性のほとんどが失われる。

そして、その代わりに本来の力とは異なるが、今扱える以上の力を使う事ができる。


つまりは1種の暴走状態である。


「グルル……ヴォァァアアァァア!!!!」


黒音もまた異形となり、枝音に襲いかかる。

枝音の髪の毛を右手で切り裂き、そのまま枝音の右腕をバラバラに解体する。

が、枝音も左腕を黒音の右脇腹を指し貫いている。


二人とも相手を同時に蹴り飛ばすと共に、一歩後ろに下がる事で距離をとり、傷を再生する。


「グルル……ガァァアア!!!」


黒音が右手を思い切り振り下し、射程距離のある斬撃を放つ。

五指の射線上の地面に亀裂が入り、岩や枯れ木などを切断する。


枝音はそれを躱しつつ、黒音の懐へと潜り込み、足を払う。

黒音はバク転をして回避、片手立ちの状態で斬撃を放ち、着地時に体を回転させつつもう1度斬撃を放つ。


その斬撃を『朝焼けの空』で防御したあと、黒音の正面まで一瞬で移動し、蹴り倒す。


そこからは滅茶苦茶な戦いだった。

自分の肉体が破壊されても無視し、無理やり再生して相手を殺す事だけを考える。自分がどんな攻撃を受けようが無視、ただただ攻撃だけに専念する。


黒音は左腕が飛んでも無視して右手で枝音の右肩を破壊する。

枝音は凄まじい勢いで蹴りを放ち、黒音の左脇腹を貫通する。

黒音は左腕を3本生やして枝音の右腕を掴み、握りつぶすが、枝音は髪の毛で黒音の左腕を3本とも切断し、右手で黒音の顔の左半分を破壊する。

黒音は枝音の右手に噛みつき、その腕を噛みちぎる。

枝音は背中の翼を全てに腕に変えて、黒音は背中の剣を自在に動かせるように形を変える。


「グルル……グルルォオオヴェェエアア!!!」


「グルヴヴ……ヴェェレェエエエァァァ!!!」


防御も回避も関係ない、獣のような戦闘はしばらく続く。

280秒の時点で、黒音が若干劣勢になっていた。

枝音に与える傷より、圧倒的に自分の受ける傷の方が多い。


何しろ、暴走状態となっても理性が残っている黒音は、手加減していたからだ。

今回の目的は枝音の強化と暴走状態の鎮圧。

かなりのリスクが伴うが、コレを行う事で目的へと一歩前進できる。


殺してしまってはなんの意味もないので、手加減しながら戦っていたのだが、それが仇となり若干劣勢となってしまっている。

が、これも予想通りである。

一瞬にしてこの状況を打開する手はある。

そして、自分が枝音の暴走状態に共鳴する事で、半ば強制的に暴走状態となる事でその条件は整っている。


暴走状態解除まで、残り0.01秒の時点。


枝音の攻撃が自分の心臓と右目を捉え、同時に破壊する。

その瞬間、それは起きた。


「ぐっ、ガハッ!」


心臓を破壊された若干の痛みと、のどにせり上がってきた血を吐き出したながら冴詠に命令する。


(冴詠!俺の魂を再構成!!封印術式の除去と肉体の再生を同時に行なえ!)


自分の能力にかけられた封印の解除。

自分の魂そのものにかけられている為、その封印を解くのはほぼ不可能とされていた。


なぜなら、封印を解くためには一度魂と、自分の能力の根源をある程度破壊し、封印術式を取り除いて、再びそれを再構成しなければいけないからだ。


だが、黒音の魂を破壊可能なモノなど限られている上に、能力の根源も同時にとなると出来るものは一人しかいない。

よって、枝音の攻撃を誘導し、暴走状態が解除される、魂が不安定となるその瞬間、意図的に攻撃を受ける事で自身の魂と能力の根源を同時破壊し、即座に再構成を行うという荒業を行った訳だ。


これにより、自分の能力にかけられていた封印術式は解除された訳だが……。


(ふむ……やはり終焉王は俺には(・・・)発動出来ないか。)


使えればそれで良かったのだが、使えなくとも別に困らない。当初の計画通りに事を進めるだけだ。

そして、書き直し(リライト)の能力もやはり()が無ければ使えないようだ。


そして、黒音は異形の姿から元の姿へと戻っている。

ただ暴走前と違うのは、白目は右目だけでなく左目も赤く染まっており、黒い枯れ枝の様な翼は5本生えている。

顔の右側に黒い模様が浮かんでおり、溢れ出るエネルギーが黒くその身を纏っている。

そして、その右腕は枝音の左胸を貫通しており、何らかの術式を埋め込んだ様子である。


そのまま右腕を引き抜くと、枝音の右胸に空いた穴が修復され、枝音の姿も元の様子へと戻っていく。


(ふぅ、感情の制御術式……。上手い事起動してくれた様だ。)


あと、もう一つ術式を埋め込ませて貰ったが、そちらも問題無さそうだ。

目的は達せた。あとは、天の鍵の回収か。


―――――――――――


「ここであなたには消えてもらう……!」


水姫はバチバチと黒い稲妻をスパークさせている。

雷狐は隙を見せずに様子を伺っていると、上空から攻撃が来ていることを気配で察知し、咄嗟に後ろに下がる。

土煙が視界を覆う中、黒音が雷狐の前に着地する。


「目的は達した。天の鍵を回収した後、撤退する。」


「簡単に逃がすと思ってるの?」


黒い稲妻をスパークしている水姫の姿をみて、黒音は一瞬驚いたような顔をしたあと、


「ソレは……そうか、奴から譲り受けたか。……だが、君がソレをここで使う必要は無いさ。」


そう言ってドヤ顔をかましながら、黒音の周囲にとてつもないエネルギーが集まっていく。

それを見て、水姫がさらに警戒を高める。

黒音は、さらに言葉を続ける。


「なぜなら、君がなにかする前に我々は離脱させてもらうからな。雷狐!フラッシュ!!」


黒音が雷狐に指示を出すと同時に水姫の目の前に凄まじい閃光が迸る。

その光が消えると、黒音と雷狐の姿は何処にも見えないのであった。


―――――――――


「う、いたた……。…ここは?私は何をして……?」


そう言って、よろよろと立ち上がる白髪の人間がいた。

顔の半分以上は隠れてよく見えないが、青い模様が体中に浮かび上がっている。


「そうか、アレからここまで……。」


ふらふらと数歩、よろめきながらもそれは歩く。


「アイツより先に、天の鍵を回収しなきゃ……。」


そう言って、翼を六本生やして空へと一瞬にして飛び上がり、その場から消えるのだった――――




はい、14話です。


今回からさらにかなり伏線が貼られます。


黒音がなぜ能力を封印されているのか?という点は後々どこかの話でやる予定です。


では、また明日の更新で。

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