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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第7章 終焉への誘い
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第28話 2つの力。

「発動。」


その一言が発せられると共に、何かが弾けた。

人の肉眼では視認できない何かがそこでは起きた。

そして、終焉の力が世界を蹂躙する。


それを押さえつけるように枝音が空間を置き換えていく。


しかし、徐々に押され始める。


「ぐぅっ………ダメっ……まだ、もう少しもって……!」


先程の攻撃にエネルギーをかなり使ってしまっていたのがかなり痛手だった。

枝音が歯噛みするが、それでもどうしようもないほど終焉は迫り来る。


「ほっ、後ろががら空きじゃぞ。」


そんな声が聞こえたかと思いきや、ミルの左腕が肩ごと切り飛ばされ、背中側から胸の中央に白い刀が突き立てられる。

そこには、白と黒の刀を持ったモノクロの爺が居た。


「小癪な……!」


ミルがすぐさま振り返り、右手の掌をモノクロの腕に当てる。

モノクロの右手が吹き飛び、血液が飛散する。


手から離れた刀を器用に左手の指で掴み、ミル蹴りを入れる。

ミルがバランスを崩し、その間に刀を2本、枝音に向かって投げる。

しかし、ミルに触れたモノクロの左足は消し飛んでしまっていた。


「おじいちゃん!?」


咄嗟に刀をキャッチしつつ、落ちてくるモノクロの方へと走って彼もキャッチする。


「はは、年甲斐にも無くはしゃいでしまったわい。」


モノクロほそういって笑うが、その傷はとても大きい。

未だに血は流れていて止まる気配がない。


「よい、傷は再生せん。吹き飛んだ所の少し手前の所で切り落とし、再び縫いつける。………ワシは別に能力者でもなんでもないからな。ただ、やつの力によって魂の寿命が人より遅くなっているだけのこと。いづれ寿命で死ぬ。」


「でも、」


「こんな老いぼれを気にしている暇があるのならば早う奴を仕留めい。自分のことは自分でなんとかする。まだ死ぬつもりもないわ。」


「…………わかった。」


モノクロから目を離し、両手に花持った刀の調子を確かめる……


「冴詠、天葵、調子はどう?」


………直接問いかけて。


武器の調子はどうか、とはよく言ったものだ。

すると、明らかに不機嫌そうな声が2つ聞こえてきた。


「僕はこんなのと一緒にいたくないんだけどぉ〜。」


「あらァ?私だって、あんたなんかお断りだよ?」


仲が良さそうで何よりだった。

とりあえず、改めてこの2振りを握りしめて構える。


この2振りを持つということは、正のエネルギーと負のエネルギーの両方を消費し続けるということ。

負のエネルギーは使用するとやつに吸収される可能性が高いが、先程正のエネルギーも吸収されたため、もはや今更だ。


「でも、ほんとに大丈夫なのかい?」


「私たちを使うってことは、肉体の崩壊は免れない。下手したら死ぬよ?」


「問題ない。それまでにミルのやつをぶっ飛ばせばいいだけよ。」


瞬間、両方の目の白目がそれぞれ右は赤に、左は青になり、瞳は金色に輝く。

そして、二刀を構えた状態で瞬時にミルの背後に回り込む。


「邪魔をするな創造の。いい加減にしろ。」


「それはこっちのセリフよっ!!」


ミルはその瞬間移動とも言える枝音の軌道を目で追いながら、十字架や棺を幾つも飛ばして攻撃する。

それらを避けながら白い稲妻と黒い稲妻を帯電させつつ、刀を交差させる。


「『世界を彩る白黒モノクローム・ワールド』!!」


交差した刀を振り抜くと同時に放たれた黒と白の2つの極光がミルを飲み込む。

ミルの時空崩壊式と互角と呼べる程の威力の爆発が巻き起こり、辺りを焦土に変える。

が、周囲に棺を展開した状態の無傷のミルが姿を表す。


瑠璃奈達はもはや2人の戦闘にはついていけていない。

援護をする隙が見つからないのだ。


それほどまでに2人の戦いはその威力、技術ともに異常だった。


「充填、発射。」


十字架の横の出っ張りを持ち手にし、上の短い出っ張りを前にして、まるでロケット・ランチャーを構えているかのような構図だ。


「っ!」


先端から放たれたエネルギー弾を枝音は普通に避けるが、エネルギー弾は枝音を追尾してきていた。

枝音はそれらを刀で切り裂いて霧散させる。


が、次にミルは左右を逆にしてこんどは長い方を前にしてまるでライフルでも持っているかのような構図をとる。


「朝焼けの空!」


放たれた極太のビームを障壁で防御する。

攻撃が止み、光が消えて視界がクリアになると、目の前に時空崩壊式を展開済みのミルの姿があった。


「天よ輝け、澄み渡りし蒼空に。月よ灯せ、星流れし夜空を。展開、『大空』!!」


2重の障壁が展開され、ミルの攻撃を受けきる。


「やっぱり、終焉自体は防ぐのは難しい。それでも、終焉の力を利用して放たれる力は防御可能!」


とはいえ、時空崩壊式を防御できる手段などそう多くは無いだろう。

それこそ、枝音くらいしか防御できる人間はいないのではないだろうか?


「それに、冴詠も天葵もあんたの身体に触れているのに消滅しない。つまり、あんたの力は何らかの条件でレジストできる。」


終焉の力は終わらせようとしたもの全てを終わらせることが出来るが、今のミルはそうでは無い。

そもそも、初期状態では地球すら終わらせるだけの力がないのだ。これでは世界そのものを終わらせることなど出来ない。


現在の終焉の力は、何かを終わられば終わらせるほどその力を増すように設計されている。

明らかな設定ミス……というよりは、バクのようなものなのだろう。

前の世界において無理やり終焉の力を使用させた上に、その力の残滓をこの世界においてもなんとか再活用しようとした結果、誤作動を起こしているのだろう。


その誤作動を調整し、本来の動作へと戻す作業が今の状態、何かを終わらせるだけその力が増す、という感じだと推測できる。


つまり、完全に終焉として目覚めるまでの間ならば、終わらせられるものに限界がある。

おそらく、世界の中でかなり高位に位置するものは現状では終わらせることが出来ない。


ならば、やつの絶対的な力などまやかしだ。

付け入る隙はある。


「あとは再生能力ね。」


こっちの方はよく分からない。

黒音の時は、天葵である一定以上のダメージを与えれば再生に遅れが出ていた。

だが、余程のダメージ出ない限りどんだけ攻撃を加えようとも再生していた。

体力には限りがあり、いくら再生しようとも力を弱らせることは出来た。


が、今のミルの状態はよく分からない。

果たして体力に限界はあるのか、そして再生能力を阻害することはできるのか。


それらを全て頭の隅に追いやりながら、枝音は不敵な笑みを浮かべながら上空にいるミルを睨みつける。


「上等………!泣きべそかくまで殺してやるだけよ……!!」






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