12話 拒絶の心。後編
「さてと、トドメだ。拒絶王、ここでおとなしく寝ていろ。」
黒音が、アリアドネをスピンコックして、銃口を夢羽の頭に突きつける。と、そこで夢羽が笑っているのに気がつく。
「何が面白い?」
ははははと笑う夢羽は、いったん落ち着きを取り戻すと笑いが止まらないとでもいうように口元を抑えながら喋る。
「くくく。何が面白いか、だと?それは当然お前の思慮の浅さにだよ。」
「……何?どういう事だ?」
「どういう事も何も………追い詰めた、とでも思っていたのか?バカが!!!」
デザイアの形状が遠隔操作で変化し、ひとりでに動き出して夢羽の左肩のを封印術式が展開されている箇所から先を切り飛ばす。
夢羽は右目の封印術式のせいで再生出来ない左腕を、デザイアを腕の代りにすることで、直接触れて能力を発動。術式を消し飛ばす。
「お前が寝ていろ。お前のその傲慢さと、その考えの甘さ故にここで死ね!!」
自由の身となった夢羽が、左腕を剣の形に変え、拒絶の能力を纏わせながら黒音の袈裟を大きく切り裂く。
「ぐっ、ガハッ!」
そしてそのまま、思い切り黒音の心臓を突き刺し、引き抜く。
黒音は喀血し膝を突くが、なんとか手で体を支え、地面に倒れる事だけは避ける。
夢羽は、左腕の代わりにしていたデザイアを剣の形に戻し、右手で持って黒音の首に突きつける。
左腕は、ズルズルと再生していた。
「昔なら、やられていただろがな。自分の力を過信し、奢っていた昔の俺とは違う。超再生はお前だけの特権じゃあない。」
と、そこで黒音ははぁ、とため息をつく。余りにも予想通りに上手く行き過ぎて、呆れてくる。
「いや、お前は昔から何も変わって無い。結局、お前は相変わらず、何もかもを拒絶し続けてる。」
「何を…。」
「なぁ、」
と、夢羽の言葉を遮って、黒音が問いかける。
「この場所は、どこだと思う?…いや、言い方を変えよう。お前が今立っているのは、何がある位置だ?」
何?と思って考える。何があるというのだろうか。いや、敵の言葉だ。信憑性は低い。
こちらに惑わせ、隙を作らせて反撃するつもりだろう。そちらの可能性の方が高い。
そう思い、夢羽は剣の形に変えたデザイアを、黒音の心臓に突き刺そうとする。
が、その刃は黒音の体には届かず、突如、夢羽は喀血して倒れる。
全身に黒い文様がまとわりつき、動きを拘束している。
拒絶の能力を使おうとするが、発動しない。
体が、まったく動かない。
「がぁ、ぐ、何…を、した……!?」
「わからないか?まぁ、九心王は確かに強い。さすがは何かしら一つのモノを極め、特殊な異能を得た連中と言うだけはある。」
黒音は、自分も九心王の一人だというのに、まるで他人事のように言う。
「だが、九心王は強すぎるが故に、その能力に制限がある。世界というシステムが、九心王という存在を好き勝手させないからだ。ならば、お前の制限はなんだ?……もっと言うのなら、生物を消した場合、その効果はいつまで持続する?」
「ぐぁ、まさか……いや、…でも、ありえないはずだ。」
確かに、拒絶王の能力は生物の存在を拒絶した場合、その効果ら15分しか持たない。15分経過した場合、拒絶した対象は、拒絶する前と全く同じ位置、及び状態で出現する。
おそらく、自分が立っていたのは、一番最初にアリアドネの弾丸を拒絶した場所なのだろう。つまり、弾丸が直接体内に出現し、術式が発動したという事だ。さすがに、それは対応のしようがない。
だが、それは、ありえない。弾丸が生物だと?そんなもの、見たことも聞いたこともないどころか、おとぎ話にしても、余りにも出来の悪いなにかである。
「銃弾が、生物……だと?ぐっ…どう、やって……?」
「クク、忘れたのか?俺達、九心王の中にそれが可能な奴がいるよなぁ?」
九心王のうち、創造王の席は空席となっている。
ならば、創造王と似たような事ができる奴は
「……知識王、か?」
「正解。いやぁ、今や知ってる人も数少ない、神狩り戦争の事をいくつか話すっていったら、喜んで作ってくれたよ。まぁ、君を倒すために使うとは思わないだろうがね?いや、知識王を名乗る彼女の事だ。気づいているかもしれないな。」
知識王、全知と言っても過言ではないほどのあらゆる知識を手に入れた九心王の一人。
能力は、一つだけ自分の思い通りの物体、または現象などを24時間、生み出すことが出来る、というものだ。
それを使って、生物の弾丸……つまり、魂が入った銃弾を作り上げたのだろう。
2023年に魂の存在が観測され、生物と非生物との違いは無機物、有機物といった違いではなく、魂の有無となった。
そのせいで、アンドロイドや、脳すらも機械に置き換えた人間達の人権などをどうするかと言った問題が大量発生したわけだが……。
「…なるほど、完敗だ。やっぱり強いな、お前。」
諦めたように、夢羽は抵抗するのを止め、ふっと笑う。
それを黒音は複雑な顔をして、見ている。
「……そんな事はないさ。じゃあ、おやすみ。拒絶王。」
黒音がアリアドネをスピンコックし、さらに封印弾を夢羽に撃ち込む。意識がだんだんと薄れていき、夢羽はその場で気絶する。
「黒音〜。こっち終わったよ〜。ヴァナルガンド以外つまんなかった〜。」
冴詠が、白華の連中を全員気絶させて帰ってくる。
周りを見渡すと、他の夜花のメンバーの戦いも、終わりつつある。もちろん、死者は誰も出していない。
殺してしまっては、計画に支障がでるからだ。
まぁ、ここで白華の頭を叩き潰してしまう事自体、かなり痛手なのだが、あの人口神と鍵の存在は予想外すぎた。
枝音を暴走状態にする事も出来たし、良しとしよう。
「いやぁ、でも拒絶王をこうも簡単に倒すとは、流石は私の使い手だねえ。」
「はっ、元々勝ちが決まっている戦いだったんだけどな。まぁ、ある程度本気でやったが。」
「ふーん。ま、でも拒絶王くんは潰したし、他もいい感じだしさ?次は枝音くんちゃんをなんとかしますかぁー。」
と、そこで目の前が凄まじい光に包まれたかと思うと、次の瞬間には黒音の左足と右腕が焼き尽くされていた。
人口神が完全に傷を再生して、攻撃をこちらにし掛けてくる。
「おいおい、白華は動き出すまで40分って言ってたよな?」
20分も経ってないんですけど?
黒音は走りながら、剣の形に戻った冴詠を右手で掴む。そして、左手の銃から、信号弾を撃ちながら、言う。
「しゃあない!順番変更だ。行け!潤さんや!」
「普通に、神喰って名字で呼んで欲しいんだが……?」
いつの間にやら現れた桃色の髪の毛をした女性…神倉が、半眼で黒音を見る。
呆れたようにため息をつきつつも人口神の方へと体を向ける。
「さってと、ようやく俺の出番か。久しぶりに、暴れさせて貰おうか!」
次回、潤さん大暴れ!(するかも)
12話です。誰が何と言おうと、これは12話です。13じゃないです。
決して、神喰潤……つまり潤さんと13のダジャレみたいな事をしたかったから、今回の話を13話にしなかったのではないです(大嘘)
どーも、どこ黒です。
最近、静電気が半端なくて少しでも金属に体が触れるたびに、バチっとなってる作者です。
ストラップの金属部分ですらバチってなるとか………。
ところで、今回は実験的に話を二つに分割してみました。読みやすかったら、今度からあまりに長い話は分割します。
3、4話あたりの7000字超えたやつも分割しようかなと思い始めてます。
あと、タイトルの横っちょに付ける言葉に難儀しているので、この作品タイトル、ちょくちょく変わると思います……(黒白の心っていう部分は変わりません。)
あと、あらすじもかなり迷走してて、どうやったら、わかりやすく、尚且つ面白そうと思えるのか……。
白華のメンバーが弱いのか、夜花が強すぎるのか……。
あと、空墨さん、出てきてすぐ退場(白目)