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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第7章 終焉への誘い
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第26話 遅まきの到着


「総員、第5防衛ラインまで後退しました。」


「ミサイルの消失を確認!!終焉王内部のエネルギーが跳ね上がっています!!」


「時間と空間の歪みを確認!空間が崩壊していきます!」


「時空崩壊式だな。棺の数は幾つだ?」


「確認できているのは、背中に6つです!!」


6つということは、乙だという事だ。

助かった、賭けには勝った。13の棺だったら一瞬にして終わっていた。


「エネルギー数値はどうだ?第2モノリスは持ちそうか?」


「いえ、恐らく数秒ももたずに吹き飛びます。とはいえ、かなりの威力を減衰できると思うので各自で防御すれば何とかなるかと。」


「ならばよし。第5防衛ラインにて総員、防御体制!!」


ダレスが言うやいなや、終焉王の背後の棺でできた輪が黒く輝きを増す。

激震が司令室を遅い、立っていたダレス達は少しよろけてしまう。

座っているオペレーター達も、椅子から落ちまいと何かしらを手で掴んでいる。

モニターが暗転し、数秒後に別の映像に切り替わる。


「ちっ!相変わらず凄まじい威力だな。………状況は?」


「第3モノリス郡と第2モノリス郡の1部消失、それに伴い、第5結界も解除されました。死者は無し。第6、第7防衛ラインの攻撃施設は全て破壊されました。」


「は、これがたった1人の攻撃なんだもんなぁ………やってらんねぇな。」


1人で国を、いや、世界を相手にできるだけの圧倒的な力。

正直、普通ではなくとも科学兵器や通常の能力者たちで抑えられているのが不思議なくらいだ。

このことからもやはり、ヤツには終焉王としての役割はない事が伺える。

そもそも、終焉が発動したのはただの1度きり、イデアが無理やり意志を奪い取って暴走させた時のみだ。

あの時に、急な能力の引き継ぎによってかなりの無茶をしたようで終焉としてのシステムではなく、王という1個の個人になってしまった。

だから、神狩り戦争時に意思抵抗出来たのだ。


本来ならば意志などない。

それこそ、世界が出来た直後、神滅戦争の時のようにただただ終焉を振りまいているだけの存在になるはずだ。

そうでは無いということは、ヤツは終焉王としての人格、個人を制御できるはず。

創造王がその力を個人の意思である程度制御できるのだから、終焉王もできるはずだ。


やつ自身も、そこに賭けたから今回は意思抵抗をせずに終焉の発動を受け入れたのだろう。

終焉の力無くしては虚無は倒せない。


手段は選んでいられない。


だが、そのためにここで全滅してしまえば本末転倒だ。


「総員、再度攻撃開始!」



――――――――――――――――


「時空崩壊式………」


「させないっ!」


夜姫奈が分解能力で、終焉王の手のひらに生成された4つの小さな棺を分解する。

棺は能力で生成されているが、生み出された棺そのものは物理的なものだ。

だから、能力で干渉はできる。


物理的に干渉しようとすると終焉の力によって消し飛ばされてしまうが。


「詠唱速度加速。ラ――――。」


ラストが、詠唱のやたら長い大魔術の構築を一瞬で済ませて攻撃する。

通常、戦闘用の魔術は無詠唱、または魔術陣を使った物がほとんどだ。

詠唱式は無詠唱よりも複雑な設定が可能になるが、構築に時間がかかるため、とても戦闘向きとは言えなかった。

しかも、知識のあるやつならばその詠唱でだいたいどんな魔術が発動されるか分かってしまうのだ。


どんな効果か事前に分かってしまうのは魔術陣にも言えるが、あちらは無詠唱よりも魔力消費が少なく、さらに事前に仁を用意していれば発動速度も速く、並列起動できる数も比べ物にならないので詠唱式よりかは使える。


無詠唱は発動する直前までどんな効果の魔術なのか分からないため、効果が事前にバレるという点においても詠唱式は戦闘向きとは言えない。


特に、詠唱魔術の中でも、大型の魔術はやたらめったら詠唱が長く、その効果と時間が釣り合っていなかった。


しかし、ラストの加速の能力を使えば話は別だ。

無詠唱とほとんど変わらない速度での構築が可能な上、詠唱が早すぎて常人には「ラ――――」と詠っているようにしか聞こえない。

ゆえに、どのような魔術が放たれるのかも分からず、その効果も絶大だ。


「終われ。」


だが、どれほど威力があろうがその一言で終わってしまう。

どんな攻撃も、その一言によって全て防がれる。


武器固有能力である複製だけはラストによって限界が設けられているため、ひとつしかコピー出来なくなっているが、それでも厄介極まりない。


マユは遠距離から常に『罪の霧』を出しつつ、空間転移を使って味方の配置を変える。


が、罪の霧を出していても常に終焉王の周りだけ霧が消されているので、大して効果をなしていない。


どれだけ、どんな攻撃をしても全て防がれる。

何をしても防がれる。何をしても防御出来ない。

避けるしかない。


そんな戦いを続けていれば、集中力は途切れ、兵達の士気も下がるだろう。

それでも皆がここまで士気を保てているのは、ひとえに自分たちに世界の命運がかかっている、というとてつもない重圧と責任からだ。


ここで折れてしまえば、世界にあとはない。

ここで踏ん張らなければどこで頑張るというのか。


そういった考えだけで兵達は未だに終焉王と拮抗出来ていた。


だが、そんなものは終焉の前には無意味と言わざるを得ないのだろうか。


現に今、二重の別方向へと回転する13の棺が自分たちを消し飛ばさんと空間を歪めている。


一瞬の隙だ。

何百人もいる兵士達がたまたま同時に息継ぎをする一瞬の隙。

本当に偶然とも言えるその瞬間をきっちりと把握し、終焉の王は時空崩壊式を発動した。


「クソっ、甲か!?」


レルヴァ舌打ちをする。

しかし、支配能力はあまり効果をなさない。

せいぜい、少しだけ照準をずらせるくらいだ。

殺雪が魔術をいくつかぶっぱなすが、そのどれもが目前で消失する。


「だめっ、間に合わない!防御をっ………!!」


夜姫奈がそう言うが、防御など出来はしまい。

それができるとしたら、姫の能力だけだ。

だが、最高位の防御能力である『朝焼けの空』は折れた天葵では使えない。

だから、防ぐ術などない。


いや、あるいは、全ての防御系の能力をもつ遺物で防御すれば可能なのかもしれない。

でも、そんなのは到底不可能だ。


終焉王から黒き光の輪が放たれる。


だから、死を覚悟したその時、


「生成、対象は防御系固有能力を所持する遺物、数に制限はなし、種類はALL、書き起こせ。」


そんな言葉とともに、無尽蔵とも言えるような数の盾が次々と展開されていく。

しかし、それでも放たれた黒き光の輪はその何重にも展開された盾を次々と破壊していく。


「ちっ、同個体複製、順次展開。………これでも押されるのか。」


さらに盾が展開されていくが、それすらも間に合わなくなるような速度で光の輪は突き進んでいく。


しばらくして、全ての盾が消し飛ばされた時にようやく光が収まり始めた。


「ふぅ、やっぱ天葵とか欲しいなぁ……。」


そう言いながら、あれだけの()()を、もは)災害としか呼べないような圧倒的なまでの攻撃を無傷で止めて見せた人物は、ミルを睨みながらふてぶてしくニヤリと笑う。


「や、待たせたね。」





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