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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第7章 終焉への誘い
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第21話 それは、創造の王。


「これが、過去にあった全て…………。」


そう感慨深げに呟くと、背後から何かが近づいてくる気配があった。


「誰っ!?」


「はーい、(あなた)だよ。まぁ、ミアとも言うね。」


白い少女が、のんびりとした様子で言う。

周りの空間か全て白に起きかわっていき、その後、地面が草原へと変わっていく。

空には朝日が登り始めており、その光景は幻想的だ。


「え、なんでいきなり?」


枝音が驚く。

そりやあそうだろう。

なんの前触れもなかったのだから。


「そりゃあ、融合するためさ。君に本来の力の全てを分け与えよう。すれば、今外でやんちゃ騒ぎを起こしてるアイツにも、一撃どころかフルボッコにできるぜ!」


そう言いつつ、獰猛な笑みを浮かべる彼女は、枝音とそっくりの見た目をしていた。

サイドの髪の毛が翼のようになっていたり、服の裾や袖が翼のようになっていたりはするが、枝音そっくりだ。


「融合って、それ超展開すぎない?てか、色々と突然すぎ、先にアポとっといてよ。」


「そうでも無いでしょ。あなたはほぼ全ての記憶を閲覧した。残りの記憶は、私しか持ってないからね。返すだけさ。力も、記憶も、全て。」


「残りって?」


「この世界には無い記憶だよ。それに、君は私がダレスとした約束も覚えてないだろう?」


「約束?」


「そう、約束。それが、今君がこうしてそこに蘇ってる理由でもある。」


枝音とミアの2人が話し合う。

若干、性格が違うものの、基本的にはその思考回路は同じだ。

相手の言わんとすることはだいたいわかる。


「えー、でもさぁ。ダメじゃね?そーゆーの。」


「何が?」


「だってさぁ、なんの努力もせずに力が手に入っちゃうんでしょ?」


枝音さんは実に真面目だった。

そう、やはりなんの努力もなしに力を得るなんてズルである。

ズルはダメなのだ。今はよくとも後々困るに決まってる。


「別に元々持ってたもんだし、なんの代償もないって訳じゃないでしょ………例えばほら、負の感情無いし。」


確かに、代償がない訳では無い。

枝音には元々負の感情が無い。

それは、彼女という存在が世界から選ばれた時、その左眼の力を授ける代償として負の感情の一切が無くなったからだ。


「でも今は理解できるし、ある程度感じることはできるからあんましデメリット無くない?」


「普通は理解とかそーゆー考えにならねーんだよ。だって普通は元々備わってる機能なんだから!てか、努力ならしてんじゃん。」


「ん?」


「意識不明ってことになってた3年間、あんたは必死で努力して強くなったじゃない。」


「あー。」


そう言えば、確かに。

あの時は、黒音に2、3年ほど任せた、と言われて息巻いていた。

最後の決戦で相打ちで終わった時、黒音に頼まれたのだ。

その時、それはもう嬉しくて必死になって頑張ったのだが………


「あんなのでいいの?」


「あんなのってねぇ……。そもそも、あんたが力を使いこなせるレベルまで来たから、私はここに来たのよ。」


「そなの?」


「そーじゃなかったら最初から力くれてやってるっつーの!だって自分なんだし!」


そりゃそうか、と枝音は納得?する。

しかしまぁ、あの程度の訓練で良いのだろうか?と枝音は思った。


しかし、実際にはあの程度、どころでは無い壮絶な訓練だ。

恋は盲目………とはまた違うだろうが、黒音に初めて頼られた!という想いが凄まじく強く、彼と小細工なして互角に渡り合えるようにと考えながらした訓練はそれはそれは壮絶なものだった。


それをあまり自覚出来てない枝音(じぶん)に呆れつつ、ミアは手を差し出す。


「とりあえず、話が進まないから、ほれ。」


「…………?」


「ちゃっちゃと融合しちゃいましょ。」


「あー、そか。そだね。」


未だにこんなのでいいのかなぁ、等と言いながら枝音はミアの手をとる。

すると、枝音の中に何かが流れ込んでくる感覚があった。


正面のミアは、サラサラと光の粒になって消えていく。


「それじゃ、これで(ミア)になれるね。(えね)。」


(ミア)も、(えね)になれるね。」


ふふ、と2人して笑いながら言う。

そして、光が2人を包み込み…………。


「意外と、すんなりと受け入れられたわね。」


枝音が、1人つぶやく。

もっとこう、記憶が突然入ってきた反動とか、人格が融合した反動がくると思っていたのだが。

別段、そんなことはなく、すんなりと受け入れられた。


自分の役目、ダレスとの約束、力の使い方、そして()()()()の事も。


「ん、まぁ、外に出ますかぁ。」



―――――――――――――ダレスが死ぬ1か月前



「貴方が、死神の中で一番偉い人?」


「おや、お嬢さん。そうだが、何か用か?」


白い少女が、話しかけてきた。

どうみても人間のそれだ。おかしな所は何も無い。

だが、おかしい。


だってここは死神の連中が大量にいる、死神協会の本部で。

自分の周りにも、たくさんの死神がいたはずだ。


なのに、一瞬にして、建物の構造が変化した。

いや、新しい部屋を生み出したと言った方がいいだろうか?

しかも、新しい部屋と言っても、先に別の空間を作り出し、そこに接続して部屋を生み出したようだが。


ここには、少女と自分の2人しかいない。


「お願いがあるの。私の魂を、外界に固定することってできる?」


そんな、突拍子もないことを、その少女は言った。

なんでそんなお願いをするのかも分からないし、こいつが何者なのかも分からない。

明らかに人間なのに、人間ではありえないほどの力を持っている。


「単刀直入に言う。これであてが外れたら、私はもう何も打つ手が無くなっちゃうからね。…………貴方、前の世界を覚えてる?」


「………………っ!!」


その言葉を聞いて、ダレスが息を呑む。

その反応を見て、少女はやはり、と確信する。


「やっぱり。」


前の世界、それはその名の通り、この世界の前の世界だ。

そう、終焉が発動し、創造によって生み出された世界。


終焉と創造が1度行われていると言うのならば、当然、終焉した世界があるはずだ。

その世界の記憶を、ミアは持っている。

そして、ダレスもまたしかり。


「あの世紀末な世界の記憶を持ってるやつが、他にも居たとはな。で、誰だ?」


「ミア、よ。前の世界の名前は……コハク。白咲 コハク。」


「……………っ!なるほど、あの時の中心人物って訳ね。で、俺だが………」


「灰色の男、グレイでしょう?今はダレスらしいけど。」


「………なんだ、知ってたのか。あんまり、関わりは無かったと思うんだが。」


「クロヤの近くによく居たでしょう?」


「あぁ、なるほど。物覚えがいいんだな。」


そう言った後、どこか遠くを見るように、何かを思い出すような目をしながら、ダレスは問う。


「俺はあの時、事の中心にいなかったから実際のところよく分かってはいない。あの時、どうなったんだ?」


「世界の中枢であるイデアは討伐できた。だけど、終焉は止められなかった。」


「じゃあ、クロヤ………いや、ミルのアレは。」


「そう、終焉の力。受け継いだ……いや、受け継がされた。私は、創造の方を受け継がされた。」


「………なるほどな。………元々勝算は低かった。だが………仕方ない、で済ませられることでも、無いよなぁ………。」


「それは。」


世界を救うために、世界そのものを討伐する。

その途方もない作戦は、ただ少し特別な力を持っていたと言うだけの人間であった彼らには恐ろしく勝算の低い作戦だった。


しかし、だからといって、仕方ないで済ませられるほど、事は小さくはない。

結果として、ひとつの世界が滅んだのだから。


「まぁ、終わった事をとやかく言っても仕方ない。イデアを討伐できたって事は終焉へと至る脅威はほとんど無いと言っていいんだな?」


「うん。だけど、懸念はある………というより、このままだと間違い無く世界は終焉へと至る。」


「どういう事だ?」


「前の世界という概念が、意志を持った。」


「……………な、に?」


「ウロ、虚無……名前がついた事でより具体的なモノとなった。世界そのものがこの世界の破滅のためだけに動いている。……あまりにも脅威すぎる。」


「まて、まてまて、なんの、話だ?どういう事だ!?」


「簡単に言うと、前は世界全てを司るものだった。次は、世界そのもの。」


「…………は、はは。やってらんねぇな……マジで。」


乾いた笑い声で、ダレスが言う。

しかし、ミアの瞳は力強い意志を物語っていた。


「でも、次は負けない。」


「………そうだな。で、どうすりゃいい?」


「私と貴方ははとりあえず確定で死ぬから、後はミルに任せる感じになる。」


「……………は??」


「私の魂はウロとの親和性が高すぎる。……だから、創造の王になったわけなんだけど。逆にミルはウロとの魂の相性は最悪も最悪。だから終焉に選ばれた。」


「なるほど?世界を作る奴は、世界そのものであるウロと魂の親和性が高すぎるってわけか。逆に、世界を滅ぼすミルとは最悪と。だが、それでなんで俺達が死ななきゃならない?」


「たぶん、今のままでは確実に勝てない。なら、引き伸ばすしかない。ウロが世界を飲み込むには私に取り憑く必要がある。」


「…………なるほど、それで最初のお願いってわけか。」


確かに、死人に取り憑く事など出来ない。

死体に取り憑いた所でそれはただの肉塊で、魂が入っていないからなんの意味もない。

死はある意味最大の防御とも言える。

死んでいるのだから、何もできることは無い。


「貴方の能力ならできるでしょう?」


「………確実にできるって保証は無いぜ?」


「構わない。出来なかったら貴方も道連れ。」


「………俺はなんでなんだ?」


「ウロが貴方を狙わないわけないでしょう?唯一魂に直接干渉できる存在なんだから。」


「まぁ、そうか。…………はぁ〜、とんでもねぇことを考えるな。お前。」


「そうでも無いよ。後のことは全部ミルに任せっきりになるし…………あいつに酷いことをしてるって自覚もある。。」


「前の記憶もないのに、あいつは相変わらずお前にぞっこんだからなぁ……お熱いことで。」


「ふふっ、羨ましい?」


「抜かせ、おれは1人でじゅうぶんなの!そっちの方が気楽だわ。」


そう言い放つダレスをジト目で見ながら、ミアは肩をすくめる。


「で、1ヶ月後、か?」


「そだよ。今後起こりうる出来事も、事前に予想を立てといたから話すね。」


そこから話された内容は、その内容のほとんどがこれから起きた事と一致していたのだった。





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