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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第7章 終焉への誘い
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第15話 世界を悲しんだ日


「…………協力?いったいなぜ?」


「まぁ、そうなるわな。」


うんうんと頷きながら、ワースが答える。


「俺の今回における目的は、ダレスとの約束を果たすことと、かな?後は………ミルとは一応友人のつもりだからな。」


「………それだけ?あなた自身の、メリットは?」


瑠璃奈が、訝しげに問いかける。

その言葉に、ワースは一瞬驚いた顔をした後、すぐに不快げな表情になる。


「嬢ちゃん。あんた、毒されすぎてんぞ。」


「……………え?」


「この世ってのはな、自分の損得勘定だけで動いてるわけじゃねぇ。確かに、こんな世界じゃ警戒すんのは仕方ねぇ。だがな、誰も彼もに裏があると思いながら生きてたら、そのうち心が潰れちまうぞ。」


その言葉を聞いて、瑠璃奈はハッとした。

確かに今、自分は相手に必ず裏があると思って接していた。

いつの間にか、他人を信じられなくなっていた。


「それにな、こんだけバカみてぇに壮大な計画ねってる奴の最終目標が『好きな人を助けたい』だぜ?そんなふうに人をあれこれ疑いながら生きてっのも、馬鹿らしくなるだろ?」


そう言いながら、ワースは肩を竦める。


「だからま、嬢ちゃんもあんまし張り詰めすぎんようにな。そういう相手の裏をかくってやり方は、あんたにゃ似合いそうにもねぇ。そういうのはダレスやミルみてぇな奴らにやらせりゃいんだよ。………んで、本題だが協力しにきたってのはほんとだ。」


先程までとは表情を一転させ、真剣な眼差しでワースが言う。


「………あと、死神の連中も、協力要請をすりゃあ共通しているしてくれるはずだ。ヤツらの中にも、世界が終わってもらっちゃ困る連中はいるからな。」


すると、ワースが机の上に沢山置かれた本を見て、さらに言葉を紡ぐ。


「世界の歴史は全部閲覧したか?なら、ここが、12回目の世界ってことも分かってるはずだな?」


「………………え?」


「ん、まだ読みきれてねぇのか?」


と、首をかしげながらワースは周囲を見渡す。


「ほら、違和感には気づいんてんじゃねぇか。」


ワースが指さした先にあったのは、内容が全く同じ12冊の本だった。

先程の言葉と、今ワースが指さした12冊の本を見て、何かピースが当てはまっていく感覚を、瑠璃奈は覚えた。


「西暦以降は全く同じ内容の本があることを疑問に思ってんだろ?なんで同じ歴史の本が12冊もあるのかって。」


ネアとレイリも気づいてのか、「あっ……」「まさか……?」と口々に言葉を発する。

それらを見て、ニヤリと笑いながら、ワースは答えを言う。


「簡単な話さ。同じ歴史が1()2()()()()()()()()()()。ただそれだけの話だ。」




――――――――――――――――task03


「また失敗だ。」


「またなの?」「またやらかしてるー。」「もー、今度はなんて名前つけるのさぁ。」「新しい妹だぁ。」「妹なのかなぁ?」


ミルの後ろで、ミアと全く同じ顔をした人間が5人、わーきゃーと騒ぎ立てる。

そして、ミルの前には薬品類の液体が詰まったカプセルがあり、その中には手術衣姿のミアとそっくりの女性が入っていた。


「肉体を人のそれにすることは出来たが、魂が入らない。それでも、できる限り人らしい仕草や反応ができるようになったが………」


ミアとそっくりだが、やはりそれぞれが違う人格をもった少女達が後ろで騒いでいるのを見て顔をしかめる。


「これじゃ人を生み出し続けてるだけだな。蘇生には程遠い。やはり、魂が無いと………。」


ひょこっと、髪の毛を短く切ったミアのクローンが、ミルの顔の横に顔を出す。


「でも、ボクたちのオリジナルの魂は失われしまってるんでしょ?」


「あぁ。恐らく。保管システムではなく別のどこかに行ってしまったと考えているのだが…………というか、アミ、お前近い。離れろ。」


どうやら髪の短い彼女はアミと言うらしい。

アミは「えー、そんなー。パパのけちー。」と言いつつも、ミルに「パパはやめろ。」と言って手で押しのけられる。


「保管されなかった魂がどこに行き着くかはまだ観測できていない。現世(うつしよ)の外に行くのは分かっているのだが、そこから先が観測できない。」


今度は、ポニーテールの髪型のミアのクローンが首を傾げて問いかける。


「ん、でもさ、消滅はしないんでしょ?」


「あぁ、消滅はしない。変質はしても、消滅することは無い。だから、死神という管理システムがあるんだ。」


「それはひとまず置いておいて、」とミルは言葉を切り、目の前の新しい個体に目を向ける。


「とりあえず、ミイ。こいつはお前が面倒見るか?」


ミイと呼ばれた、ポニーテールのミアのクローンは「私?んー、」と考えつつ、ツインテールの子の方を見る。


「ミウの方が向いてるんじゃない?ほら、エミの時もなんだかんだ言って面倒見てたし。」


「全員で面倒見ればいいだろ。ほら、ミオも隠れてねぇでこっちに来い。」


話しかけられた、ミオと呼ばれた凄く髪の長いミアのクローンが後ろの方の物陰からビクッと顔を出してきた。


「う、はい………。」


オドオドしながら近づいてくるものの、やはり皆から距離を置いている。

なんでこんなに人見知りなんだ、と思いつつ全員に新しい個体の面倒を見てあげるよう言う。


「んー、てか、アミだと変なこと教えちゃわない?」


「それもそうか。じゃあアミだけ牢獄行きな。」


「なんで!?」


「あ、それいいかも。」


と、セミロングの少女がさらに茶々を入れる。


「ちょっとエミ!?」


と、アミがさらに頬を膨らます。

それを見て、みんなが笑う。

ミルも、少しだけ笑う。


が、やっぱりその目はどこか悲しそうで、本当に笑ってはくれないのだな、とアミ達は思ったのだった。



―――――――――――



「……………どうかしたの?メア。」


「………アミ。ううん………なんでもない。」


1人、外の階段でずっと体育座りをしてる、ミアのクローンにアミが話し掛ける。

彼女はメアと名付けられたようだった。


「まだここが慣れない?」


「ううん、皆いい人だとは思う。だけど………」


と言いながら、その続きの言葉を発しない。

黙って目を逸らしてしまう。


「パパが………ミルが嫌いかい?」


アミのその言葉に、メアは言いづらそうに、言葉を紡ぎ出す。


「…………ねぇ、私の生きてる意味って、なんなのかな。」


「ふふ、それ、ミウも同じこと言ってた。…………ようは、ミアを蘇生させるために生み出され、その失敗作であるボク達は、ミアじゃない。望まれて生まれた生命じゃない。だから、この世に必要とされないんじゃないか…………そういうことでしょ?」


「………うん。だって、そうでしょ。私たちは………必要ない存在で………」


「いい?メア。ボク達は確かに彼のエゴによって生み出された存在だ。だけどね、それのせいで悩む必要はないんだよ。」


「…………じゃあ、聞くけど、アミはどうなの?」


「私……?私は、もうとっくにその壁は乗り越えたかな。」


ふふ、と微笑みかけながら、どこか昔を懐かしむようにアミは言う。


「私は、パパに叱られちゃったからね。お前はお前だ、って。」




『ミアじゃないなら、お前はミアじゃない。当然だ。お前は新しい一人の人間だ。だから、俺はアミと名付けた。お前はアミであって、それ以外の何物でもない。』


『お前を生み出した責任は全て俺にある。当然だ。だから必要としないなんてことは無い。それがお前を生み出し、そしてお前と同じ存在をこれからも生み出し続けることへの俺なりの責任のとり方だ。』


『そうだな…………こういう関係を、なんて言うのだろうか。仲間では無いな。友人でも、恋人でも、奴隷でも無い。…………人で言うところの、家族、とやらか?』


『俺とお前は家族だ。俺にとっても、初めての家族だ。………こんな最低なやつでスマンが、よろしく頼む。』




「懐かしいなぁ〜。皆通る道だよ。私は誰なんだって、私は必要のない、価値のない人間なのかって。」


当時を思い出しながら、アミは笑う。


―――家族だ。


あの頃の自分は、その言葉にどれだけ救われただろうか。

そういえば、不思議と自分が彼の勝手な目的で生み出されたことについては、何物でもない思わなかった。

別に、憎むこともなかった。


「じゃ、行こっか。」


「え?どこに??」


「もちろん、パパのとこ。」


―――――――――――――


「感情を正の感情のみにしたらどうだ………?いや、それだと人が生まれない。なら、俺の感情でまずはためすか……?」


夜中だと言うのに、実験室に行くと、ミルが何やらブツブツと呟きながら椅子に座っていた。


「俺の魂を完璧に複写したものを作り、それが反転できるのであればミアができるはずだ。しかし、彼女の魂を持たないそれは本当に彼女と呼べるか………?記憶、心、人格、肉体、その全てが一致するのであればそれは本物と呼べるはずだが…………。まるで、テセウスの船みたいだな。」


ブツブツと呟いていたミルが、突如ドアの方を振り向く。

そこには誰の姿も写ってはいないが、だが、ミルにはそこに人の気配があり、誰がいるのが分かっていた。


恐らく、アミとメアだろう。


「―――――何か用か?」


「やっぱりバレちゃったか。ほら、メアがパパに話があるって。」


そう言って、アミがメアの背中を押す。


「だから、パパはやめろとあれほど………はぁ。で、なんだ?メア。」


「え、あの…………。」


見ると、アミはいつの間にかどこかに行ってしまって、姿が見えなくなっていた。

何も言えずに固まってしまったメアを見て、ミルが優しくほほ笑みかける。


「………まぁいい。だいたい事情はわかる。アミはあぁ見えて、こういうお節介は上手だからな。」


などと笑うが、ふと、真面目な表情になるとメアの方を見て、言う。


「…………メア、俺が憎いか?」


それを聞いて、メアはブンブンと首を横に振る。

不思議と、憎んだことは無かったのだ。

己を生み出した事よりも、己が必要とされないことの方がよっぽど恐ろしい。


「そうか。ありがとな。優しいな、お前は。」


「……………え?」


「エミは凄かったなぁ………俺を殺してやる!みたいな勢いだったからな。ミオは、何があっても死んでやる!みたいな勢いだった。」


当時を懐かしそうに思い出しているが、その内容は惨憺たるものだ。

それを聞いてメアは、あの人たちそんなだったんだ…………と少し引いた。


「アミ、お前らは確かに、俺のわがままで生まれた存在だ。俺が、ある一人の人間を蘇生させたいがためだけに生み出された存在。………だけどな。」


一旦言葉を区切り、メアの肩に手を置く。

一瞬、ビクッとしながらもミルの方を見る。


「それは、お前という人格が生まれる前の話だ。」


「…………え?」


「蘇生実験の失敗作。それは、お前という存在が産まれる前の、メアという名が名付けられる前までのレッテル、いわば価値だ。」


「だが、今は違うだろう?お前はメアで、過程はどうあれ、メアという1人の人間として生まれてきた。メアという一人の価値ある人間だ。失敗作なんかじゃあない。お前はメアで、メアとなるべくして生まれてきた。違うか?」


メアは呆然と、ミルを見つめる。


「どいつもこいつも我儘で厄介な奴らだが、それでもお前も含めてみんな家族だ。お前が嫌じゃなけりゃ、だけどな?」


そう微笑むミルを見て、そしてそれらの言葉をよく考えて、メアは頷く。


「………うん。家族、か。ひとつだけ、聞いてもいい?」


「なんだ?」


「どうして貴方は、笑わないの?」


「…………笑えて、無いか?」


「みかけはね、笑ってるよ。だけど、目が悲しそう。」


「……………そうか。」


ミルはそう言うと、顔を上に向けて、天井の一点を見つめる。

そうしながら、ボソリと呟く。


「いつの日か、お前らと心から笑える日が来ると、いいな………。」


「ん、じゃその時まで、そしてそれからもよろしくね。お父さん!」


メアが、神妙な空気を振り払うかのように、明るく言う。


「………は?ちょ、お前、え、お父さん??」


「だって、家族なんでしょう?なら、ポジション的に貴方は、お父さんじゃない?ほら、アミだってパパって呼んでるし。」


「いや、それはやめろって………クソ、アミのやつほんとにろくな事教えねぇな………。」


あははは、メアが笑う。

あと、部屋の扉の影からぷぷっと吹き出す声が複数人分聞こえてきた。


(あいつら………)と思いながらミルはため息をつく。



こんな楽しい日々が続いて、いつの日かミアもやって来て、みんなで笑い合える日が来るんだと、彼女達はまだ、その時は思っていたのだった―――――




はい!どーもー、どこ黒ですー。

最近なぜかアクセ数が増えてる!

こーれは喜ばしいことです。えぇ。


読んでくださってる皆さんに感謝感激!

まじ感謝です。ありがとうございます!


今初めて読んだよーって方も感謝!ほんともう感謝。

ほんとはブクマや評価して欲しいけど欲は言うまい。毎話見てくれるだけでほんと感謝!


まだまだしばらく過去編は続くと思いますが、今後ともよろしくお願いします!!


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