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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第7章 終焉への誘い
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クロノフィリア迷宮図書館


「ここは……………」


「すごい、本の数…………」


吹き抜けの大きな部屋の中に、いくつもの本が、ぎっしりと本棚に並べれている。

その数は尋常ではなく、この世の全てがここにあると言っても過言ではない。


「ここには、世界が生まれてから今までの全ての記録がある。お前さんが、水銀の姫さんかの?」


1人の老齢の男が、杖をつきながらゆっくりと歩いてくる。


「私の名前は、白咲枝音。お爺さんは?」


「わしは名など遠の昔に無くしたわい。今はモノクロと名乗っておってな。この図書館と、迷宮の管理人をやっとる。まぁ、ここに居候するついでじゃがな。」


そう言いつつ、老人は両手を広げて、まるで見せびらかすかのように迷宮図書館を誇示する。


「ここの本は全ての記録がある。世界のことが知りたいのならこの中から探すといい。とは言っても、jからzまでの階層は全てのこの図書館に割り当てられているがの。その中から探すのは骨じゃぞ〜?」


カカカッと老人が笑う。

確かに、この量の中から本を見つけるとなれば、骨が折れるどころではないぐらい苦労するだろう。


「お前さんが見るのは『叡智の書』じゃ。最終階層まで来てもらう。」


「ちょっと、私達は!?枝音をどうするつもり?」


瑠璃奈が炎の剣を老人に向けた瞬間。


いつの間にか瑠璃奈の背後に回り、仕込み杖だったのか、鞘から刃を引き抜いて瑠璃奈の首に当てる。


(この人………強いっ!?)


能力を発動していたにも関わらず、動かが全く分からなかった。


「そう殺気立つでないわ。彼女にはなんもせん。お前さん達には最終階層まで行く権限がないのじゃ。Y階層まではワシの酌量でどうとでもなるが、最終階層だけはどうにもならん。お前さん達はY階層までしか行けんのだ。」


そう言われてしまっては、どうしようもない。

瑠璃奈が殺気を抑えると、老人もまた、杖を元に戻して枝音を奥へと案内し始める。



――――――――――――――――――



「わしもここまでじゃ。全てはここにある。………いいか、お前さんが何を見たとしても、決して己を忘れるな。よいな?」


モノクロが、そう言ってどこかへ去っていく。

とりあえず、枝音は目の前の扉を開けて中に入る。


『最終権限の存在を確認しました。【叡智の書】起動します。』


そこには、前に空中要塞アンティオキアで見たものと同じ本が置いてあった。


『【叡智の書】の起動を確認。【世界の歴史書】を映像閲覧可能にします。』


『Task:ONE』


「…………ONE?前に見た時は、確か………」


task:ZERO、だったはず。

何かが、違う。


「これは…………?」




――――――――――――――――


「この中から探せったってよー。カンケーなさそーなもんが多すぎて、2万年前のもんなんか見つかんねぇぞ?」


「このよ本はある程度関連付けられて並べられているわ。だから、この膨大な量の中から1部でも見つかれば、後は次々と見つかるはず。」


「でも、その一部が見つかんねーんだよなー、なんだこれ?ナポレオン?中世じゃねーか!」


そう言って、舞鬼が本を放り投げる。

「もっと大切に扱いなさいよ。」、とネアから窘められるも、「だってよー。」と不満そうな顔をする。


と、そこでリリィが気づく。


「…………ん?待って。ナポレオンの本?それ、こっちでも見たよ?」


「…………え?」


「全く同じ本ね。冒頭でナポレオンについて軽く説明して、それで詳しい生い立ち………いや、ナポレオンの人生そのものが書かれているわね。その時の心情から、その時見たもの、その時考えていた事まで全て書かれているわ。」


「でも、なんで同じ本が…………?」


リリィが首を傾げ、瑠璃奈やレイリ達がうーん、と考え込む。


「………なんの意味も無いとは思えない。他に、同じ本はある?」


内容が重複している本を舞鬼や羅鳴が探し始める。


「………ある。しかも、沢山。」


「おーい、下の階層からもナポレオン出てきたぜ?これで4冊目だ。」


「……………私ちょっと探してくる。」


羅鳴がその足を異形のものへと変え、動体視力も強化しながら、一気に速度をあげる。

凄まじい速度で羅鳴が図書館内を移動し始める。

おそらく、羅刹の脚で高速移動し、この図書館の全域を高速で探索するつもりなんだろう。


自分たちはゆっくり調べるか、と部屋を少し移動すると、さっきまでいた部屋よりも大きな部屋にでた。

そしてその中心には1冊の本がなんか目立つようにおいてあった。

その本を少しめくってみると、どうやら検索機能のようだった。しかも、目当ての本を自動的にここまで運んできてくれるらしい。

なるほど、これ程でかい図書館だ。

こんなものでもなければ、やってられないだろう。


しかし、もうちょっと早く教えて欲しかった。


「……………ここになんか音声認識の検索機能がついた本があるんだけど。」


その言葉を聞いて、ガコォン!と言う何かにぶつかる音が羅鳴のいた方向から聞こえてきた。

…………無駄な努力、お疲れ様でした。


とりあえず、検索機能を確かめてみようと、瑠璃奈が本に向かって話しかける。


「…………ナポレオンについて。」


すると、全部で12冊の本が瑠璃なの手元に集まってきた。


「12冊?どういうこと………?」


「他にも、内容が重複している本は沢山あるね。」


たしかに、同じ内容の本が12冊もあるものは、沢山あった。

しかし、中には1冊しかないものもある。

どういう違いがあるのだろうか?


「…………ギルガメッシュ王について。」


今度は1冊だけしか集まらなかった。

さらに、いくつか他にも本を集めてみる。


「………もしかして、西暦以前の本は1冊しかない?」


「確かに、西暦以降の本は必ずどれも12冊あるね。」


だが、それが何を意味しているのか理解できなかった。

と、そこでネアが呟く。


「…………もしかして、あるのかな。」


「何が?」


「黒音の、計画書。」


確かに、あるはずだ。

この図書館が全てを記録しているというのなら、あってもおかしくはない。


「………黒音の計画について。」


おそるおそる、そう言ってみると、確かに1冊、本が手元にやってきた。


「これが…………!」


「黒音の、」


「数万年にも渡る、」


「計画の全て…………!」




――――――――――――――――――――



「………あやつの隠していた真実が、ついに他者の手に渡る時が来たか。」


「そうじゃ。task:zeroなどと言う歴史は無い。アレは枝音に対して真実を隠すと共に、あやつがそうあればまだマシだったのにという、少しばかりの願いを込めた歴史。偽物の歴史じゃ。」


2人の老人が、何やら話し込んでいる。

そこに、誰かが歩いてくる。


「ジジィ共、元気そうじゃねぇか。」


「おお、お主か。」


「なんじゃ、またワシの発明品でも見に来たか?今度のはすごいぞォ〜?」


「ちげぇよ。………俺たちもそろそろ動き始めるぞ。ダレスのヤローとの約束を、果たす時が来た。」


「そうか。やるのじゃな?」


「例の物はもう出来とる。蘇生の準備も、万全じゃ。」


「そうか。なら始めるぞ。」





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