表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第一章 天使討伐作戦
11/182

第11話 白の心、溺れて。

天使が首を切り落とされて、完全に動かなくなる。

他の部隊からも、天の刹との戦闘は既に残党狩りへと移行しているとの連絡が入ってきており、我々の勝利という事になる。


瑠璃奈は、天使討伐が成功したため、あらためてこの天使との戦闘によって不思議に思ったことを考える。

一つは、この天使が異常に強かったということ。

通常の天使はここまで討伐に苦労したりしない。仮初の肉体を与えられていないからと言って、強さがそこまで変わる訳でも無いし、むしろ肉体を与えた方が安定感はます。リスクが多くなるだけで、ここまで強くなったりはしない。

そして、先にも言ったように、天使をそのまま顕現させているということ。

普通は天使というものは仮初の肉体を与えてそれによって使役するのが通常だ。

仮初の肉体を与えず、莫大なエネルギーの塊である天使をそのまま顕現させるなど、正気の沙汰とは思えない。

制御しきれなかった時のリスクが大きすぎるし、リスクに見合った効果はあまり得られない。

わざわざそんな事をする意味はない。


天の刹は、いったい何を作り出したかったのか。


と、そこで気づく、天使の身体の表面がボロボロと崩れ始めている事に。

そう、消えるのではなく、崩れる。しかも、表面だけが。


瑠璃奈は天使間近にいたというのと、天使について考察していたということもあり、いち早く気づく。

天使の中にもう一つ、何かがいる、ということに。

そして、天使の腕が弾け、中から明らかに天使のそれでは無い異様な腕が現れる。

見たこともないような魔法陣が複数展開され、眩い光を放つ。


「なっ!?枝音っ!!」


その事に気づいていない枝音を庇うように、押し倒しおおいかぶさる。


そこからは、一瞬の出来事だった。


音が消え、視界が真っ白にそまる。


凄まじい衝撃波と、遅れて爆音が鳴り響く。


真っ白だった視界が正常にもどる。が、そこにあったのは先程までの光景とはまるで変わって、地獄のようだった。


燃え盛る炎が1面を多い尽くしていた。


天使は、いや、果たしてこれがもはや天使なのか分からないが、これがどうやってあの中に入っていたのか、身体がひと回り大きくなり、身体の形がおおきくかわっている。

そして、魔法陣を大量に展開し、眩い光を放ち続けている。

その光が現れる度、爆音とともに炎が燃え上がる。

先程の天使など比べ物にならない。凄まじい火力だった。

先程までは、勝利の余韻に浸っおり、祝杯を上げそうな雰囲気だったというのに、今やこの様子だ。


「どうして、どうしてッ!こうなるのっ!!!?」


「ぐ、うぅ。…枝、音。」


瑠璃奈のうめき声が聞こえ、ハッとして駆け寄る。


「瑠璃奈!!大丈夫!?」


瑠璃奈は血まみれで、ぐったりとしている。脇腹には、大きな穴が空いてしまっており、そこから大量の血が流れ出す。

今にも死んでしまいそうなその姿に、枝音は絶望する。


「あ、あぁ、ああああ。」


燃え盛る炎、瀕死の親友、仲間たちの生死はまるでわからない。

絶望、それしか思い浮かばない。

ここでは私は一人で、目の前にほどうしようもない敵がいる。

瑠璃奈を治療しようにも自分には知識も、方法も分からない。


許せない。あれが。あれさえ無ければ、私達はこんな事にはなっていない。

許せない。私が。私がもっとしっかりしていたら、天使の正体にもしかしたら気づいたかも知れない。いや、そこまでは出来なくても、私がしっかりしていれば、少なくとも瑠璃奈が私を庇ってこんな事にはならなかったはずだ。

許せない。許せない。許せない。


「ぐぅっ!?」


突然、頭に鋭い痛みが走る。

記憶が、流れ込んでくる。

そうだ、この炎を、この1面が燃え盛る地獄を、見たことが、ある。

なに、これ。わからない。こんな記憶、私は知らない。

哀しげなもの、憤怒に怒り狂ったもの、憎悪で己すら殺すもの、様々な人々の顔が、思い浮かぶ。

誰?このひと達は。なに?この景色は。


「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”!!!!!」


痛い、頭が割れそうだ。自分の中から何かが飛びだしてきそうだ。

感情が、暴れ狂う。気が狂いそうだ。意識を、自己を保てない。

天葵の声が聞こえる。必死で私の名前を呼んでいるようだ。

でも、その声すらもだんだん小さくなっていく。

意識が完全に消えていく、その最後に見えたのは、哀しそうな顔をして背を向けるあの人で――――。


――――――――――――――


「状況を報告しろ!何が起きた!?」


「現在分かっている事は天使の討伐は成功したとの報告は入っていました。しかし突如天使の中から何かが現れたとの事です!!」


「強力なelectromagnetic pulseを確認!!全ての電子機器が応答しません!」


「被害状況は不明!!指揮統制は壊滅的です!」


とっさに能力で攻撃を拒絶したため、本陣は直撃を免れたがそれ以外が壊滅的である。


「強力な神力が感じ取れます。おそらく、神に近いものが顕現した模様です。」


「これが、奴らが天使でカモフラージュして作り上げていたものか。さしずめ人口神と言ったところか。」


人の手で神を作るなど、おぞましい事をしてくれる。


(ふむ、だがここまでは想定通りだ。あとは……。)


ふと、凄まじいエネルギーの奔流を感じとり、そちらの方を向く。

うっすらと、夢羽は笑みを浮かべるのであった。


――――――――――――――


「ガァァァァァアアア!!!!ヴァ!!ラァァアア!!」


左手に持っていた刀が身体へと吸収されていき、枝音の身体が変化しはじめる。

左目の白目はより青く。濃い蒼へ。

右の白目も青く染まり、左目からはつーっ、と蒼い涙が流れる。

瞳の色は赤みがかった金色へ代わる。

両サイドに括ってある髪はまるで剣のように尖り、蠢き始める。

翼が4本、背中から生える。

電子回路のような模様が身青白く光り、体中に浮かび上がる。

口は牙が生え、人間の原型を保ってはいるが、異形といっても過言ではない。

そして、口からは常に叫び声が発せられており、明らかに正気を失っている。


「グルルィギギギガガ、ガ、ぁ。サナティオ。」


枝音の訳の分からない言葉の中に意味のある物が含まれる。

すると、瑠璃奈の傷がみるみるうちに再生し、顔色がよくなる。

そして、瑠璃奈の目がうっすらと開くのを確認すると、そのまま先程まで天使だった人口神へと向かっていく。


「う、うぅ。枝音……?」


今まで自分を襲っていた痛みと寒さが消え、瑠璃奈はゆっくりと起き上がる。

枝音を庇ってかなりのダメージをおったはずなのに、妙に身体が軽く感じる。

服などはボロボロになっているが、傷跡などが綺麗さっぱり消えている。…流石に、顔の火傷痕までは治らなかったようだが。

あの傷は、明らかに自分の再生能力の許容範囲を超えていたはずだ。

どうして治ったのか不思議に思っていると、まるで獣のような咆哮が聞こえ、そちらを見る。

そこには、異形と化した枝音の姿があった。


「ガ、あ?ががが。」


ドンっ!!!と思い切りジャンプし、人口神に向かってまっすぐ突っ込んでいく。


「グヴヴヴァ!ガァァァギィィギ!」


人口神が複数の魔法陣を恐ろしいほどの数を展開し、放つ。


「ギャァヴぁァァあ!!アサヤケノソラ!!!」


カッ!と障壁が展開され、全ての攻撃を防ぐ。そう、1面を炎と残骸に変貌してみせた攻撃を、簡単に防ぐ。

左手の指先が鋭く尖り、人口神の脇腹を指し貫き、うがつ。

が、すぐに再生し、追撃を仕掛けてくる。


「グルルル。ガァォァア!!」


バキキィッと4本の翼の形を腕のようなものに変形させ、それを使って思い切りジャンプし、避ける。

人口神の左腕に取り付き、蠢く剣と化した髪の毛を巻き付ける。

そのまま、背中から生えている腕を伸ばして人口神の左腕をもぎ取ろうとする。

が、右腕に光り輝く槍のようなものが形成され、突き刺される。左半身にポッカリと穴が開き、左腕はちぎれ、大量の血を吹き出しながら、枝音は地面に落ちていく。

背中から生やした腕を使って着地し、左腕を3本ほど生やして、それぞれが、剣を持つ。

もはや、人としての原型もとどめなくなりつつある。

再び天使へと突撃していくが、障壁のようなものを展開され、通れない。

一旦後ろに下がり、背中に生えた4本の腕と3本の左腕を1本に束ね、大剣を形成、再び突撃し、回転を加えながら障壁に叩きつける。

ピシィッと亀裂が入り込み、その亀裂に剣を無理やりねじ込んで無理やり破壊していく。


完全に障壁を破壊し、そしてその勢いのまま、人口神を真っ二つに切り裂くぐらいの勢いで、思い切り袈裟を切り裂く。

かなりのダメージが入ったらしく、よろよろとよろめいて、動かなくなる。再生がおいついていないようだ。

切り裂かれた胸の、そう、人でいう心臓にいちする当たりに、八面体の奇妙な白く輝く物体があらわれる。


「ガギガがガ、カギギギぎ。」


その八面体を破壊しようと、着地した直後に振り向き様に蠢く髪の毛を伸ばしてそれに突き刺す、その一歩手前でピタッ!!と髪の毛を止め、勢いよく振り向き、遠くを睨みつける。


瑠璃奈はそこに何かがあるのか?と思うが、何も見えない。


枝音は、相変わらずその1点だけを睨みつけ、そして、左手を剣から手に形を変え、さらに背中に生えた手を翼の形に変えて飛び立とうとする。


―――――――――――


「はは、この距離で気付くのか。はんとうに化物だな。」


そこには、夜花のメンバーが数十人おり、黒音とほか数人以外はスコープで枝音の姿を監視している。


「それをスコープも無しに確認できる黒音も大概バケモノだけどな?」


呆れつつ、部下の一人がスコープを覗き込みながら言う。

部下に誉めているのか貶しているのかよく分からないセリフを言われ、黒音は微妙な顔をする。

部下がタメ口という点はあまり気にしていないようだ。

というか、むしろ黒音自身は変な敬語で話されるより、タメ口の方がいいと感じている。


「……まぁいい。奴がこちらを攻撃してくる前に、撃て。」


「了解。」


バチバチッと帯電するスナイパーライフルを構え、撃つ。

放たれた弾丸はスパークしながら、夜花のいる方向へ飛び立とうとしている枝音の左目に着弾する。

連続して、もう4発ほど左肩、右胸、左太もも、右足首に着弾する。

枝音は無視して再生し、再び飛ぼうとするが、着弾した箇所がスパークしはじめ、バチィッ!という音ともに雷が枝音を拘束する。


「グルヴォォオヴェェァア!!」


枝音が咆哮を上げ、雷による拘束を強引に抜け出そうとするが、撃たれた場所が再生せず、上手く動けない。


「くく、左眼を感情抑制弾で撃ち抜いたからな。再生に時間がかかるだろう?」


せせら笑いながら、黒音は真っ黒な刀身を抜き放ち、戦闘態勢をとる。


(しっかし感情抑制弾、あの状態の枝音に効くとは試作品とはいえ、かなり有用性が高いな、量産体制を整えるか。)


そんな事を考えつつ、部下に指示を出す。


雷狐(らいこ)、狙撃はもういい。お前は水姫の相手をしろ。俺は拒絶王の相手をした後、白姫の対処にあたる。」


と、そこで相変わらず咆哮を上げながら、もがいている枝音の方をみて、


「ま、あの様子じゃ姫とはまるで呼べないけどな。」


と、苦笑いしながら、肩を竦める。

どうやら、枝音のことは夜花でも白華の一部の人達と同様に、白姫と呼んでいるようだ。

すると、桃色の髪の毛をした女性が一歩前に出てきて、言う。


「俺はどうしたらいい?」


「お前はまだだ。指揮系統が壊滅的になっているとはいえ、白華の連中もかなりやる。それに、拒絶王を封殺出来ていない状態ではリスクが高い。神殺しの力を拒絶されると、かなり厄介だからな。」


「了解した。」


雨恋(あまごい)は炎神の相手だ。まぁ、あの様子だ、白姫が再生したもののたいした力も残っていないだろう。他はあの気色悪い人口神の攻撃から逃れた連中の相手だ。」


「「「了解!」」」


威勢のいい返事をする部下が達を、黒音はふむ、と一瞥してから、大きな笑みを浮かべて、言う。


「いい返事だ。さぁて、神殺しの時間だ。」


そう言うとともに、黒音の右目の白目が赤く染まり、瞳が金色になった。



暴走枝音、大暴れ。


はいどうも、どこ黒です。

前回ちょっと更新が遅れちゃいましたが、今回はいつも通り投稿出来ました。週一投稿という文言が大嘘になってますね(白目)


さて、今回の枝音ですが、いやぁ、かなりの異形になっちゃってますね。

一応、絵柄とかも描いたんですけど、もはや人じゃないやん(´・ω・`)って感じになりました。

機会があれば見せます。

ちなみに、天葵は枝音の身体と同化しており、この状態では武器として具現化はできません(体の一部を武器に変えることはできます。)

あ、electromagnetic pulseとはEMP、つまり電磁パルスの事です。わかりづらかったらすみません。


後、天使から人口神への移行あたりの文章が雑になった気もしなくもないです。おかしい点などがありましたら、教えてください。





空墨さん、もはやノルウェーに居ないんじゃないかってぐらい出てきませんね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ