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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第一章 天使討伐作戦
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第10話 弱点の心。

「せやぁぁぁぁあ!!!」


天使の首をありったけの力を込めて切り飛ばそうとする。

が、翼がいつの間にか刀を受け止めており、ガギィィィイン!!と凄まじい音を立てながら拮抗する。


「ちぃぃっ!」


瑠璃奈が、改めてランチャーを翼に向かってぶっぱなす。

天使が翼に力をさらに込めて枝音を思い切り吹き飛ばし、ランチャーの弾を避ける。


そして、枝音は、それはもうなんかホームランのごとく吹っ飛んでいく。


「え、ちょ!!??たすけてぇーー!!???」


え、これ思ったよりすごい遠くまで吹き飛ばされる感じじゃない?


未だに翼の制御の仕方がよく分からず、空中を野球ボールのように飛んでいきながら、枝音は思う。

天使を倒すまでには至らなかったが、ほとんどの味方はさっきの拮抗の間に、天使の近くまで接近、攻撃をそれぞれ出来る位置まで来ている。

私一人がしばらくいなくても問題ないだろう。

と、そこで気づく、飛ばされたということは、当然落ちるわけである。

そして下を見てみると、それはもう地面に向かってまっすぐ突き進んでいる所であった。


「ヴぇ!?ちょ!?駄目駄目死ぬ死ぬ!駄目だって!?たすけてええぇ!?」


凄まじい速度で地面に激突し、全身土まみれになる。

死にはしなかったようだが、結構痛い。

よろよろと起き上がると、どういう原理かはわからないが、勝手に汚れが落ちていく。

それ以前に普通の人間ならあの速度でこの距離を飛ばされたら生きてないと思うが、そこは遺物の賜物である。


(いてて…、かなり吹き飛ばされるちゃったな……。)


どうやって戻ろうかな、などと思っていると真横に黒い大きな鉄の塊を見つける。

あれ?これって……??


――――――――――――――――


「ちょ、ちょっと!枝音が吹き飛ばされたわよ!?」


「ん、分かってる……!…でも、構ってる、暇なんかない…!」


遺物の身体強化と再生の能力があるのだから、あれで死ぬことは無い。救助が必要かもしれないが、それをする余裕などない。

今も尚、十数人で張り付いて天使に攻撃を加えているが、未だになんの手応えもない。

それどころか、防御にも一苦労している。

強い。攻撃力が通常のそれではない。それに相手の防御も異常だ。

天使の翼の後ろに魔法陣のようなものが複数展開され、その全てが一気に光を放つ。


「!?……海よ!」


水が盾のように展開され、光がそれによって防がれる。

が、いくつかが貫通して顔を掠める。

様々な攻撃を加えてはいるが、未だに有効な攻撃を加えれてはいない。

こちらの攻撃は効かなくて、相手の攻撃は防御するのに精一杯。

非常に不味い状況である。

これの腕を切り落とせたという黒音はよほどのバケモノだ。


さて、どうやって切り崩して行こうかな、と考えていると、キィイイイインという凄まじい音が聞こえてくる。

そう、まるで戦闘機が飛んでくるような音だ。

空を見上げてみると、まるでじゃなくまさしく、枝音が敵の戦闘機を奪って特攻してくるところであった。


「うおおおおりゃぁぁぁあああああ!!!!!」


ぶつかる直前に、コクピットから飛び降りる。

ドゴオオォン!と盛大に天使の背中にぶつかり、爆発四散する。


天葵が『僕の言う通りにちょいちょいって修理すれば動くよ。』と言うからやってみたが、ほんとにうごくとは……。

ていうか、戦闘機の操縦も出来たことにオドロキなんですけど。


そんなことより、天使は爆発の炎を翼の根本に受け、かなりダメージを食らったようによろよろとしている。

瑠璃奈のランチャーや、ミサイルによる支援攻撃のとき、翼に当たるものだけ異常に警戒していたのが気になったが、やはり


「翼…しかもおそらく根本の方が弱点……!」


と、そこで瑠璃奈と水姫が駆け寄ってくる。


「ちょ、あんた無茶しすぎよ!」


「大丈夫。そんな事よりも、翼の根本、たぶんそこが奴の弱点!」


瑠璃奈と水姫は驚いたような顔をしたが、すぐに切り替えると全員に指示を出す。


「……総員、翼の根本を狙って攻撃……!各員は今から言う私の指示通りに動いて……!」


そして、瑠璃奈の方を向いて言う。


「瑠璃奈……拘束術式を、天使にかけれるよう…即興で組み上げてみて……。」


「無理よ!あんなのに拘束術式をかけれるぐらいなら、とっくの昔にやってる!」


「…翼、しかも1枚を固定するだけなら……?」


それを聞くと、瑠璃奈はふと、指を顎にあてて考え込む。


「………やってみる。でも、完成したとしても拘束できるのは90秒だけよ。」


「…充分。やってみて…!」


瑠璃奈は早速ブツブツと何かを呟きながら魔法陣のようなものを展開し、その中身を書き換え始める。

水姫は無線機をとりだし、狙撃ポイントで待機している矢波中尉に連絡を取る。


「矢波…。…私が合図をしたら、天使の翼の根元を狙撃して……。」


『了解したが……、合図とは?』


「…心配しなくても、…その時になったら、分かる…。」


『了解。』


ブツっと通信が終わる。


「他は天使の翼を直接叩く……!エンゲージ…!!」


そう言うや否や、天使に向かって全員で一斉に突っ込む。

水姫は鉄扇を広げ、横薙ぎに振り払う。


「海よ……!飲み込め…!」


大量の水が天使の足下に集まり、


「氷凍、水を全て凍らせて!」


「了解!」


天使の足元の水が全て凍りつき、天使がその場に一時的に固定される。


「枝音!!」


「わかった!!」


みんなからの援護もあり、なんとか天使の猛攻を掻い潜って、駆け抜ける。


「うおおおぉりゃぁぁぁあ!!まずは1本!!!」


翼の根本に思い切り刀を差し込み、無理やり捻って切断する。

魔法陣が複数展開され、光線が放たれるが、水姫が水の盾を作って防いでくれる。

1本切断したからか、力はかなり弱まっていた。


「何をしたら敵を倒せるのかがわかっているって言うのは重要ね……。ここまで変わるとは。」


瑠璃奈が、作業が終わったのか話しかけてくる。

全くその通りで、今まで倒せるかどうか分からず指揮が下がっていたが、倒せるかもしれないとわかった途端この様子だ。

みな、指示通り、いやそれ以上の働きをみせている。


「水姫。拘束術式、できたわよ!」


「ん、やっちゃって……!!」


「りょーかい!」


カッ、と瑠璃奈の右手が光り、大きな魔法陣が天使の足下に展開される。そして右掌をぐっと握りしめると、魔法陣から炎を纏った鎖が何本も魔法陣から飛び出し、天使の四枚ある翼のうち、右下の翼を拘束、固定する。

そして、空いた方の左手で閃光弾を上空に向けて放つ。


――――――――――――――

―――――第11砲台 狙撃ポイント


「矢波大尉!!上空に閃光弾の光が!」


「キタキタキタキタァ!!ぶち込むぜぇ!!!」


ドン!ドン!ドン!!と爆音を奏でながら撃ちまくる。

狙撃銃のわりには、対戦車砲どころではない大きさで、尚且つ連射速度がはやい。もはや狙撃銃とは言えないような代物である。

弾丸は寸分違わずすべて天使の翼に直撃、天使の翼がもげ、地面に落ちて四散していく。


ほかの翼ももぎ取ろうとさらに撃ちこむが、拘束している魔術の鎖が引きちぎられ、避けられる。


「ちっ、流石にそこまで上手くは行かねぇか。……任せたぞ。」


矢波は呟くと、部下に指示を出しながら弾丸を再装填する。


「援護射撃の準備だ!弾をHE弾に切り替えろ!!」


―――――――――――――


(残り2本……!)


今までは天使を固定し、動きを鈍らせてから翼を破壊するという方式を取っていたが、拘束手段が乏しくなりつつある。

拘束術式はおそらく二度もきかないだろうし、氷での固定も警戒されているため、厳しい。

他に何か翼を固定できるもの…。


「ねぇ水姫。」


「何……?」


「落とし穴ってさ。作れる?」


水姫はすごく驚いた顔をして、そして考え込む。

しばらくすると顔を上げ、通信機に話しかける。


土神(つちがみ)、落とし穴を作ることは可能?」


『……本気ですか?あれを落とす大きさとなると、流石に…。』


「私の、擬似海洋生成と組み合わせれば…?」


『……確かに、それならかなり限界まで頑張れば、下半身を埋める程の大きさを作ることは可能です。しかし、どうやってたたきおとすのです?』


そう、今でこそ天使は翼を使って空を飛んで移動していないが、飛ばないとは言いきれない。

それに、いくらなんでも自分の足下に異常が現れたら避けるなりなんなりするだろう。


「……枝音を、使う。」


………マジ?


「…枝音が、空からたたき落とす。」


「ちょちょちょ、本気!?私、空飛べないよ!?」


「出来てないだけ。枝音は、翼が…ある。だから、可能。…それに、そこまで飛ぶ必要は、無い。ジャンプでいい…。」


「えぇー……。」


「枝音、1度天使の頭上まで、飛べてた…。いけるいける。」


―――――――――


「3、2、1。ごー。」


私が気だるそうにカウントダウンをする。


「海よ…!」


「地よ!」


地面が沈み、海が作られる……と同時に海水が無くなり、穴の深さが深くなる。

その間、天使が何もしてない訳ではない。

天使は地面が窪み、穴が開き始めた時点で移動しようとしたが、ミサイル攻撃などがそれを許さない。

ミサイル攻撃を凌ぎ、擬似的な海から逃げ出そうとする。

が、


「うぉぉぉぉぉぉりゃァァァあ!!!」


枝音が、思い切りジャンプして天使の頭上数十メートルあたりまで飛ぶ。


「天葵!形状変化!!ハンマー!!」


持っている刀がハンマーの形に変わt………!?


「ちょ!でかい!?でかいって!!!」


それはもう、ほんとでかいハンマーだった。一軒家ぐらいならこれで叩き潰せそうな大きさである。

てかよく私むしろこんなの持ててるよね。怪力っていうか、物理現象むちゃくちゃじゃない?


天葵が心の中から声をかけてくる。


『いや、天使を叩き潰すんだからさ。これぐらいの大きさじゃないと。』


「潰さないからね!?ちょっと足止めして、下に落とせばいいだけだからね!?」


『まぁまぁ、ほら、ピコピコハンマーか何かかと思ってさ?』


いろいろおかしいでしょ…。こんなピコピコハンマーいやだ……。

と思いながら天使に向かって思い切り振り下ろす。


「オラァ!潰れろやー!コンチキショー!」


若干やけくそ気味に、ハンマーを叩きつける。

天使は翼でそれを防御する。

バゴォ!!!と凄まじい音が鳴り響き、衝撃波が撒き散らされる。

ビキビキッと少し天使の翼に亀裂が入り、そのまま地面に天使の足が押し込まれる。

ジャコッと妙な音が鳴り響き、手元のハンマーが変形する。


「……へ?」


スラスターのような物がハンマーの後ろ側に現れ、キィィイと異音を発し始める。


「え、まさか?」


ドッッッッツ!!!!と凄まじい音が再び鳴り響き、ハンマーが思い切り押し込まれる。

バキィッ!!と天使の翼がへし折られ、抵抗が無くなったハンマー(スラスター付)は真っ直ぐに地面に突き進み、身体がそれにグンッともっていかれる。

本日2度目、地面にまっしぐらのコースである。


「あっ、ちょ、ダメ死ぬ!死ぬ死ぬ!!なんとかしてえぇえ!?」


天葵が形状を刀の形に戻してくれる。

が、もうおせぇーんだよこのポンコツめ。

というか、まだハンマーのままの方が頭から突き刺さるよりましな気はする。

きゃぁぁぁぁあ!!と叫び声が聞こえ、しばらくしてからバゴォン!!と枝音が地面に突き刺さる音を撒き散らす。


「ねぇ、水姫、枝音はアレ何やってんのよ?」


「さぁ……?」


傍から見たら滑稽だが、本人からしたらたまったものではない。


「そんな事より、瑠璃奈…!」


天使が落とし穴に落ちて、固定された今がチャンスである。

2本あった翼の一つは先ほど枝音がへし折ってくれたので、あと一本である。

水姫は未だ能力使用の疲弊から回復しきっていない。


「うん、分かってるわよ!」


瑠璃奈は炎で翼を作り、いっきに天使の所まで飛ぶ。

半分ほど地面に埋まってしまっている最後の翼を、炎を纏った剣で切り飛ばす。

天使はもうほとんど抵抗力が残っていない状態である。


「枝音!とどめを!」


地面への激突から回復した枝音が、もう1度ジャンプして、刀を振りかぶる。


「今度こそっ!!やられろ!」


そう言って、天使の頭を今度こそ切り落とした。



ちょっと遅れちゃいましたが、10話です。

久しぶりに5000字行きました。ちょーっと迷走してましたが、今後のストーリーの展開はある程度整理着いたので、更新はなるべく早くします。

………やっぱり遅くなるかもしれません(手のひらスクリュー)


名前だけのキャラとかが多数出てきますが、誰こいつ?ではなく、そんなキャラもいるんだな程度で読んでいただければ幸いです。

機会があったら細かく紹介します。




思ったんですけど、今度は空墨中佐の出番無くね?




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