~出会い、そして、幕開け~
なにやら揺すられている気がする。それに体があちこち痛む。ものすごく。なんだか夢を見ているような感覚だ。そういえば間抜け女神に異世界に飛ばされたんだっけか。
そんな情けない考えにふけっていると。
「ちょっと・・・・ねぇってばっ!!」 ドゴッ!
・・・・?
「ふごぇっ」
そんな情けない声を出しながら男は目を覚ました。覚ましたと言うよりは起こされたと言うべきだが・・
男の目の前には金髪碧眼の少女がいた。正確には男の腹の上に両足で乗っていた。男が起きたことに気づくと少女は目を細めて退いていった。きっと警戒しているのだろう。
さて何故このような現状に陥っているのか思考を巡らせる男だが考えても仕方がないので尋ねることにした。
「え、えぇ~っとお嬢さん・・・?なんで俺の腹に乗っかっていたのかな?」
恐る恐る男が尋ねると少女は訝しげな顔をして腕を組みながら答えた。
「そんなの起こすために決まってるじゃない!さてはバカなのね?それならあなたが言ったことにも辻褄があうわね。」
起こすために決まっているとゆうのはどうゆう事なのだろうか?この世界ではこれが主流なのかもしれない。そんなのたまったものではないが。それになぜか初対面の可愛らしい年下っぽい少女に物凄い勢いで馬鹿にされてるのだが・・・
まぁ俺は寛大な心の持ち主なので怒りはしないさ・・・ははっ・・
「俺と君は初対面で間違いないよね?随分と馬鹿にされてる気がするんだけど。」
「間違いなくあなたとは初対面ね。不審者に向かって下から物を言う人なんていないと思うんだけどそれは私だけなのかしら?」
馬鹿にされた挙句不審者呼ばわりされてしまった。男は心に深く傷を負ってしっまった。
「うっ、とりあえずその話は置いておくとしてなんで俺を起こしていたんでしょうか?」
「それは簡単な事ね。私がポチと昼食を取っていたら急に目の前が青色に光ったのよ。そこにあなたがいたから起こしたってわけ!高名な魔術師でもなければ転移魔法は使えないはずなのにいきなり人が現れて倒れてるんですもん。そりゃ心配して起こしもするわよ。」
いつの間にか俺が弱々しくなっていたが気にしないことにした。それよりもこの話を聞く限りだとあのクソ女神に飛ばされてこの少女の所に転送されたようだ。早速、痴漢まがいの天罰がくだったのだろうか。それにポチとゆうのは少女の横にちょこんと座っている黒猫の事だろうか。そんな考えにふけっていると少女が偉そうに尋ねてきた。
「それで?あなたはどこぞの何者なのよ?ここはあまり荒れてはいないけど魔族が目と鼻の先にまで攻めてきてるのよ?」
「あ、あぁ自己紹介してなかったな。俺は田中光一。東の方の国から来たんだよ。旅の途中だ。それで君の名前を聞いても?」
異世界からきました!なんて言ったらきっと変人扱いされる事間違いなしだろう。少なくとも元の世界では中二病扱いされるだろう。
「とても変わった名前をしてるのね。東の人間は強いと昔から言われてるしそれなら魔族くらいなら平気なのかもね?じゃあ私も自己紹介しようかしら。私の名はリーシャ。リーシャ・メイデル、そこそこ名の知れた魔術師よ」
そこそこ名が知れてるとゆう事はそれなりに強いのだろうか?見た感じ一人っぽいし魔族が近くにいるってことは危険な地域に自ら足を突っ込むくらいならそれなりに強い自信があるのだろう。
「それよりもあなた東から来たってわりに随分軽装ね?剣も杖もないみたいだけど戦えるのかしら?」
「あ、あぁ。あまり記憶がなくてなにができるのかもわからなくてね。あはは・・・」
適当に嘘をついて誤魔化そうとしたがこれが所がどっこい大成功を期したようで右も左も分からない少年に救いのてが差し伸べられた。
「軽い記憶喪失みたいなものね?よくある話だわ。それになぜかあなたを放って置いたらいけない気がするのよね。いいわ、町まで連れて行ってあげましょう。」
「マジかっ!!そりゃ助かる!しかもこんな美人が案内してくれんだったら願ったり叶ったりだよ!!」
頼んでもないのに町まで連れて行ってくれるとはありがたい話だ。こうも都合よく話が進むと裏になにかありそうだが、これが女神の恩恵なのだろうと勝手に光一は決めつけた。なぜかリーシャが顔を紅くさせてるのが気になったが熱でもあるのだろうか?
「ま、まぁ私は宮廷魔術師だから困っている人を助けるのは当たり前の事よっ!!」
まさかのお偉いさんっぽい方だったとは・・
これからは人を見た目で判断しないように肝に銘じておこう。そう心に決めた光一だった。
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あれからなんだかんだあってリーシャと一時のパーティーを組んだ光一はこの金髪碧眼の少女と仲良くなっておけば後々役に立つだろうと山を下りながら色々と話しかけて気を引こうとしていた。
そんな事もあってか、なかなか親しくなったのではないかと思うほどの仲になっていたそんな折
「リーシャさんはなんでこんな辺境地におひとりで?」
光一がそんな他愛もない会話を振り、リーシャは
「普通にリーシャって呼び捨てで構わないわ貴方は私の部下でもないんだし。私もコウイチって呼ぶから。それにあなたの方がいくらか年上のようだしね。それとここへは、現地の調査に来たのよ。最近は魔族の動きが活発なようでね。それで私が派遣されたの。それに使い魔のポチもいるしまったく問題ないわね。この子もなかなか強いのよ?」
この数時間で相当心を開いてもらえたみたいだ。現地の調査とゆうのは先ほどから聞いている話から理解できるがこのポチと言われる猫まがいの生き物がそこまで強いようには見えなかった。現時点ではリーシャの方に乗って微塵も動かず固まっているだけである。一種のマスコットのようだ。
そんな事を考えていた時だった。
「「ウォゥオオオオオォォオォ」」
突然、後方から声とも言えないような叫びが轟いた。
「こんなところにまで魔族がっ!?」
その声を聴いて光一が後ろを振り返ると見ていて吐き気を催すような醜い姿の物体がこちらを目掛けて走っていた。そんな時、瞬く間に目の前に現れたリーシャが何かを言っている。
「コウイチっ!!危ないわ!下がってて!戦闘の記憶がないなら戦わせることはできないわ!」
リーシャが光一を守ろうと必死になっていた。さすがに宮廷魔術師でもあの数を相手にするには分が悪いのだろう。ざっと見ただけでもデカいのが10体、空を飛んでいるのが10体、それを従わせているらしき将が1体。デカいのはゲームに出てきたオークのような見た目だ豚の鼻に苔緑の体に黄ばんだ目玉で見てるだけで食べた物が戻ってきそうだ。空を飛んでいるのはまさに悪魔の類だろう深紫の体躯に真っ赤な目玉。黒い息まででている。最後に一際不気味なオーラを放っている。人のような容姿だが頭には禍々しい一本角が生えており純白の目玉は見るものを凍てつかせるような視線を放っている。右手に大きな槍を携え最後尾を悠々と歩く姿はまさに強者そのものだ。リーシャが何やらオーガがどうの言ってるのであれがオーガなのだろう。
光一が魔族の群れに目を奪われているとリーシャが訴えかけてきた。
「コウイチ!私とポチでもあのオーガには敵わないかもしれないわ!コウイチはこのまま山を下りて町に行って救援を呼んできて! ふっ!!!行くわよポチ!!」
リーシャがポチに声をかけた瞬間ポチは前方に走り出して止まった。そして止まったと同時にポチの足元に魔法陣が浮かび上がった。魔法陣はポチを飲み込み閃光の光が視界を奪った。光が落ち着き瞼を開くと巨大化したポチらしき者がそこには居た。容姿も大分変っており日本で言うところのアフリカゾウくらいの大きさと言えばわかるだろうか?耳は長く尖っておりピアスのような物がついている。尻尾は3本に増えていた。口からは牙の隙間から炎が見え隠れしている。あまりの迫力に小便をちびった事は黙っておこう。
「がらぁぁぁぁぁらぁぁ!!!!!」
ポチの咆哮がその場に轟いた。それと同時に魔族も動き出した。ポチが魔族の群れと激戦を繰り広げていたが多勢に無勢だった。ポチの体は多数の傷がつき、すでに弱っている。だがその後方では、リーシャがなにやら呪文のようなものを唱えている。
「偉大なる、炎の聖霊よ、我にその力を、我にその加護を、汝イフリートよ、その偉大なる暴力を此処に顕現せよ!ヘルバーニングフレア!!!」
リーシャが詠唱し終わった瞬間、瞬く間に一面は地獄の炎で埋め尽くされ炎が治まるころには魔族の姿はなかった。一体を除いて。
「我をイフリートの炎ごときで葬れると思ったか!小娘よ!」
魔族が言葉を発した事実にリーシャは目を見開いていた。
「魔族が人語を介せるなんて聞いたこともないわよ・・・」
そんな愚痴を垂れていると魔族の将は地面を蹴り砕きリーシャの懐に一瞬で迫った。リーシャは苦悶の表情で迎え討つが呆気なく蹴り飛ばされた。魔術師であるからか接近戦に持ち込まれると分が悪いようだ。
「っ!! くっ!!がはぁっ!!」
「情けない下等な生物よな。弱いくせにしゃしゃり出てきては綺麗ごとばかり並べる醜い生物がっ!!」
地面に転がるリーシャを蹴り飛ばすと右手に持っている大槍を構え落ちてくるリーシャ目掛け投げようとしたその時・・・・・
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光一は目の前で起きている事に圧倒されていた。猫が巨大化して火を吹いている。魔族が叫べば地が揺れる。言葉を紡げば爆炎が身を焦がす。これが異世界なのかと。これが自分のやるべき事なのかと。どうしたらいいのか自分では分からなかった。リーシャが言っていた事なんてもはや頭にない。しばらく圧倒されているとリーシャの痛みに耐える表情が目に入った。そこで自分に問いかける。俺はこのままでいいのか?女の子に命懸けで守ってもらって嬉しいか?確かに英雄になんて微塵も興味ないしなりたくもない。だがその宿命は自分に与えられたものだ。自分に与えられた力なのだ。自分に対する怒りがこみ上げてくる。女神の恩恵もいろいろ試したが言葉の理解くらいしかわからなかった。腕力や脚力が向上したりもしなかった。でも今ならなにかできるかもしれない。いや、できる。光一が確信に至った時、目の前に純白の魔法陣が浮かび上がる。自分を呼んでいる気がした。自分を男にしてくれる気がした、だから、迷わずに魔法陣を通り抜けた。
「・・・・ これは?・・・」
魔法陣を通った光一は純白の美しい全身鎧に包まれていた。背中には金の刺繍が入った純白のマント。右手には、刀身のない柄だけの剣があった。刀身がなくとも使えるのだと確信を持った光一は剣の柄を腰に差し、大きな一歩を今、踏み出した・・・・・
はじめまして!木枯です!
呼んでくださった方に感謝です!!まぁこんなかんじでほのぼのとアクションだったり日常だったりを書いていこうかと思ってます!!
感想などじゃんじゃんまってます!これからめげずに長期連載したいと思ってますので応援していただけると助かります!!
これから長らくよろしくお願いします!!!