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暗殺者と錬金術師がいる街  作者: べに鮭
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次のターゲット

Kと呼ばれる青年が街に来て一週間が経過した。昨晩の仕事を終え任務の前から用意された宿屋の一室を借り続けて何かするということなく彼はただ寝ているだけだった。

そんな時間を過ごすKは部屋に用意された小さなベッドに仰向けに横になったまま今日も同じように過ごそうかと考えていた。


「K・・・何しているの?」

「・・・Rか・・・」


特にノックオンがすることなく部屋に入ってきた存在に目を向けるわけでもなく話しかけたKにRと呼ばれた少女はカーテンを開けて薄暗い部屋に明かりを通した。

RはKが普段見るように銀の長髪に黒のマントに身を包んだ格好で周りから怪しまれなかったのかと考えながらも特に動くわけでもなくただ横なっていた。


「それで何の用だよ?」

「どれだけだらけているか見に来たの」


Rは静かな口調で話をしながら彼が普段来ている黒のコートをハンガーに掛け視線をベッドに寝たままのKに向けていく。


「あと任務・・・」

「普通それを最初に言うんじゃないのかよ?」


Rの告げた用語にKは呆れたように体を起こす。そんな様子をRは確認するなり再び部屋の整理をはじめた。


「今回のターゲットは少し面倒かも、そもそも今回の任務はこれがメイン・・・」

「ついでにターゲットにされたあいつが不憫だな」


冗談のように話しながらも先ほどまでと違い無気力のような目に生気が宿り鋭い目つきに変わっていた。

いかなる標的をも間違いなく倒すとさえ感じられる今の瞳がRは好きだった。RにとってKは数少ない実力を認めた相手だからこそ本来面倒な掃除なども自分からするのだった。






「面倒そうな奴がいるというのも頷けるな・・・。それに・・・」


青のジャケットにジーンズ、腰には通常よりも大きめの銃を収めたホルスターを身に着けKは不審に思われないように食事の買い出しをしながら街の下見をしていた。

そんな中で見かけたのがバード、シンと呼ばれる役所の役人が旅のゴロツキを取り押さえる様子だった。

そしてその横にいたのは昨晩自分の姿を見た女だった。


「今回は一筋縄には行かなそうだな・・・」





「秘書?てっきり所長を狙えとかいうのかと思ったぞ?」  

「そもそも今回の任務は2つ。この街にいると言う錬金術師の捜索、・・・そしてある魔術師の抹殺・・・」


珍しく饒舌に説明をしていくRに内心戸惑いながらもKはこの後に使うと思われる銃の手入れをしていた。


「その錬金術師は知らないが魔術師をなんでそんなに危険視しているんだよ?」

「K・・・あなたコネサンスって知っている?」


Rの告げた用語にKが思いついたのは過去に何度か聞かされてきた組織にとって危険な施設の一つだという話だった。


「たしかなんかすごい魔法学校だったか?」


散々聞かされてきた話でKが認識していた内容はここまでで細かい話はほぼ聞き流していたのだろうと本来なら呆れられそうな答えにRは特に表情に出すことなく話し絵押していく。


「そこの卒業生で危険な4人がいる・・・。そのうちの一人がここにいる」

「細かいことは聞く気がないが俺に言うということは余程大物なんだろうな」


普段から面倒なターゲットが普通だったKにとって一人だけのターゲットという時点で一筋縄ではいかないということが認識できた。





Rからの話を思い出していきターゲットは少なくてもこの二人より強いと考えられるということから他の人間を送り込まなかったということも頷けた。


「とはいえ・・・こいつは面倒だな・・・」


Kの目の前にあるのは赤茶色のレンガ造りで建てられたシンプルな見た目の2階建ての建物だった。

見た目だけではごく普通の建物で周りにも溶け込んでいるもいたるところに魔法石が埋め込まれていた。


「これは・・・」

「驚きましたか?」


魔法石の存在に視線を向けている中で不意に後ろから声を掛けられてKは驚いたように振り向くとそこにいたのは一人の女性だった。ストレートの桃色の長髪に特徴的な黄色の瞳、薄い青を主にした膝丈までの長さのワンピースに黒のコートを羽織っていた。片手には分厚い本を持ち笑顔のままKに視線を向けていた


「ああ・・・あれは何かのセンサーだろ?いろいろな街を見てきたがここまで綿密に隠されて張り巡らせていたものは初めて見たな」


事実、これまで街だけでなく潜入任務で要塞などにも侵入してきたKが知る限りでも最も多くの魔法石が張り巡らせてあった。


「その答えは半分だけ当たりです。これがあると侵入者の姿も確認できますし狙撃についても対空撃退出来ちゃいます」


笑顔のままで具体的な内容も含めた説明にKは目の前の相手に少なからず警戒した。ただしその警戒心が表に出ないように視線を相手に向けて動きの一つ一つを見逃さないようにしていた。


「ふふ・・・そんなに熱い視線を向けられたら照れてしまいます」

「いや・・・あんたは・・・?」


照れたように笑い視線を向ける相手にKは調子を崩され小さくため息を漏らし、いまだに聞いていなかった相手のことを問いかける。


「そういえばまだ名乗っていなかったね。私はフィオナ。この街の役所で秘書をしているの」

「フィオナ?秘書?」


その用語を聞いてKは即座に理解した。目の前にいるこの人物こそがKのこの街でのターゲットとなる人物だった。


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