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暗殺者と錬金術師がいる街  作者: べに鮭
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役所の二人

「ごちそうさま~」

食事を終えたリーネは大きな声で手を合わせて声を出して食事の終了を宣言し皿を台所に運び始めた。


「ちょっとリーネ?また皿割らないでよ?」

「大丈夫だよ!ただ持っていくだけだもんね!」


二人のやり取りを見てサクヤは微笑んでいた。

リーネはカグヤが大好きだと素直に表現しているのに対してカグヤはリーネのように素直になれずにいる様子がサクヤにとって微笑ましい光景だった。


「ちょっとお姉ちゃん!何にやにやしているの!」

「二人が仲良しさんでおもしろいんだよ~」


サクヤの一言にカグヤは真っ赤になりサクヤと言い合いが始まり今度はリーネが楽しそうにその様子を見ていた。




「そういえば昨日事件があったらしいわね」

「ほえ?事件なんかあったんだ~」


片付けを終え朝に見つけた黒猫の前に座り遊ぶリーネはカグヤの発した用語に首を傾げた。


「ほら!いつも贅沢三昧でやりたい放題だったあいつ!あまり広まっていないけど死んだって話だよ」


街の権力者として普段から贅沢ばかりの生活だけでなく、密輸や密売とあまりいい噂を聞くことがないカグヤは内心では安心してしまっていた。そして人が死んだのにも関わらず喜んでしまった自分に嫌悪感も感じていた。


「えっ?それっていつの話なの?」

「サクヤお姉ちゃん?」


こういった内容についてはあまり触れないサクヤからの問いかけにリーネは首を傾げ、カグヤも驚いた様子を見せていた。


「えっと・・・昨日の夜みたい。どうかしたの?」

「ううん・・・ちょっと気になっちゃって・・・」


聞いていた話を思い出すようにカグヤは話をしていき、サクヤもそれ以上口を開こうとしなかった。

黙り込んだ二人に耐えられなくなったのか話題を逸らそうとリーネが辺りをキョロキョロし始めると考える。

その時リーネが抱いている猫に気付いたカグヤが指さした。


「そういえば!その猫どうしたの?」

「ええ・・・さっき拾ったの。せっかくだし飼わない?」


カグヤの疑問に答えたのはサクヤだった。

表情が緩んだサクヤに気付いたリーネは自然と表情が緩みカグヤもまた表情が緩んでいる。そんな中で黒猫を上に上げてにっこりとしたリーネは頭に浮かんだ名前を口走った。


「クロ!あなたは今日からクロだよ!」

「何それ?見たまんまじゃない!少しは捻りなさいよ」


リーネの上げた名前にカグヤはため息交じりに反論しながらも表情が緩みサクヤは笑ってその様子を見ていた。


(よかった。サクヤお姉ちゃん笑っている)


リーネはサクヤに視線を向けたままクロの頭を撫でまわすのだった。






「じゃあ出かけてくるからお留守番していてね」


お昼が近くなりクロの食事も含む買い物のためにサクヤはクロを連れて出かけることにした。 カグヤとリーネは昼のご飯のために片付けや下ごしらえを始めていたことから自然とサクヤが買い物に行くことが



「続きは私とリーネがやっておくからお姉ちゃんはクロのご飯とミルクに卵だからね!」

「大丈夫!じゃあ行って来るね!」


結局名前はクロに決定し黒猫を歩かせてサクヤを街の市場に向かった。

朝からいろいろと考えて沈んだ様子のサクヤを二人が私に気を遣ってくれたのはサクヤ自身が

何となく分かった。


(やっぱり気になる・・・。何であの人はあんな顔をしていたのかな。)


自分の足元を歩くクロをただ追いかけるようにして歩きながら考え込む。次の瞬間何かにぶつかったような感覚を感じた。


「あっ・・・すみません・・・」


人にぶつかったのに気付き反射的に謝罪をするもその瞬間に二の腕を捕まれた。

次の瞬間にサクヤの視線に入ったのは4人のゴロツキだった。

普段街で見ない男たちで大柄でボロボロな旅服を身に着けていることからその場を離れないといけないと考えるもその間に男たちに取り囲まれた状態になっていた。


「えっと・・・その・・・」

「ぶつかっておいてそれだけかよ?」

「ちょっとこっち来いよ」


助けを呼ぼうと辺りを見るが市場の死角になる場所のせいで助けを呼べず、手を無理やり引かれつつ先に行ってしまうクロにサクヤは手を伸ばすが当たり前のようにクロは先に行ってしまう。


「いいのか・・・。お前の主人・・・連れて行かれるぞ」


不意に歩いていこうとするクロを片手で抱き上げた存在は大柄の男と一目では性別が分からない少女の姿だった。


「え・・・バードさん?それにシンちゃん?」


バードと呼ばれる男は背中に大剣を背中に背負、赤の短髪と騎士風の黒い鎧が目に付く。腰には別の剣と銃を下げて黒猫を肩に乗せると腕組をしてサクヤの手を掴む男に視線を向ける。


「たまたま警備をしていたら見つけてよかったな。とりあえず放してやれよ」

「くっ、こうなったらこの女をひとじっ・・・ぐあ!?」


サクヤを人質にしようと自分の元に引き寄せようとした男は腹部に衝撃を受けてその場に膝をつくとサクヤの隣にいたのはシンと呼ばれた少女だった。赤いマフラーを首に巻き茶ばつの短髪につば付きのサバイバルに使う帽子、灰色のズボンに緑色のジャケット。腰には銃を下げている。


「だめですよバードさん。こういう人は力の差を見せないと人質が危ないです」


何が起こったのかわからない男たちはシンから距離を話していき、悶えていた男も距離を取り始めた。何が起こったのかわかっていたのはバード一人だったようでシンを見て笑い始めた。


「だからっていきなり不意打ちで肘鉄って鬼かよ」


男たちがすぐに逃げようと踵を返そうとすると次に聞こえたのはバードが上空に向けて銃を撃った音だった。男たちが驚いてその場で動きを止めるとシンはため息をし自らも銃を抜いて男たちに向けていった。


「とりあえず連行します。まあ国外退去が無難でしょう」


二人の様子に完全に呆然としてしまったサクヤは慌ててバードの元に駆け寄りクロを抱き上げて安心したのか小さく吐息を漏らした。


「あ・・・ありがとうございます。二人のおかげで助かりました」

「いえ・・・僕たちは役所の人間だから気にしないでください」


シンのいう役所は国に設置された様々な取り決めや警備など国の運営にかかわる機関。

二人はその中で警備、必要なら遠征をする役所に所属しており、サクヤやカグヤ、リーネとは顔見知りの関係だった。


「でもいいの。今夜はお礼をしたいからご飯食べに来てね」

「はい!絶対に行きます!」


サクヤの言葉にすぐに答えるシンにバードはあきれたようにロープで縛り動きを封じた男たちを見ながら笑う。


「今夜はまともな食事ができそうだな」


無意識につぶやきが漏れ、食事の内容を楽しそうに話すシンとサクヤにバードは表情が緩んだまま男たちを連行していった。




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