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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第四章 初めての労働
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第67話 「最強の武器」

「良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」


 唐突に頭の中に声が響いてきた。

 神の声はいつもいきなりだ。この声に慣れる事はなく、毎度のことながら俺を不快にする。

 朝食中だというのに、迷惑極まりない。


「じゃあ、悪いニュースで」


 不快に感じつつも、神の問いに普通に答える。


「悪いニュースね、では言おう。君ね、もう死なないで」


「そんな気はさらさらねえよ」


「まあそうだろうね。なんたって君をいつ見失うか分からないからね。これに関しては予想してたみたいだね」


 思ったよりも悪いニュースではない。

 神とのリンクが切れる可能性がある以上、死ぬなんて怖くてできない。

 いくらこの腕が治るかもしれないとしても、絶対にできない。


「で、良いニュースは?」


「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれたね。ズバリ、異世界から物を転送できるんだよ!」


「異世界からですか!?」


 このニュースに、俺ではなくナナが驚いた。

 どうやらこの声はナナにも届いていたらしい。

 この分だと、ソウラとアカネにも聞こえていると考えてよさそうだ。


「そう、つまりマサト君のいた日本から物を取り寄せられるんだ」


「異世界のものか、非常に興味深いな」


 やはりソウラにも聞こえていたか。

 それにしても、日本にあるものか。確かに興味深い。


「1カ月に1回という制限付きだけど、何が良い?」


 そう言われ、俺は数秒の間、思考を巡らせる。

 俺が考えるべきは今後の生活の保障だ。

 だがそれは、はっきり言って心配することはない。

 簡単なクエストでもこなし続ければ生活に困ることはない。

 俺が懸念すべきこと、それは、サイドレオーネのような凶悪なモンスターがこの街に襲ってくることだ。

 となると、モンスターの過激派連中をどうにかしなけれないけない。

 過激派をうまく殲滅できるものがあれば……。

 そう考えた時、俺は一つの答えを導き出した。


「過激派モンスターの頭上に水爆を落としてくれ」


「なっ……!? そんな発想無かったな」


「マサトさん、その発想はちょっと怖いです」


「マサト、水爆とは何だ?」


 それぞれの反応を皆が示す。

 神は驚き、ナナはドン引き、ソウラは疑問に、アカネは何もわかっていなさそうに。


「水爆っていうのはね、マサト君の世界で作られた、人類の最大の過ちだよ」


 神がソウラに説明をするが、それだけでは何も伝わらない。

 神の言っていることも間違いではないが、人に説明するのにそれはない。


「簡単に言うと大量殺戮兵器だ。水爆を使えば、タストの街の中心に放ったとして、カンドの街を超えて焼け野原にできる」


「そ、そんな兵器がマサトの世界に。平気なのか?」


「戦争に使うってよりも、抑止力のためのものだからな」


 攻めれば水爆を撃ち込む、そう言えば簡単には動けない。

 仮に水爆を持つ国が数多くいたところで、一つの国に放った瞬間に別の国に攻撃されるかもしれない。

 水爆を持つ国が一つだけだとすれば、それを使わずとも脅しだけで戦争には発展しない。

 強力すぎる兵器の存在が平和を保っていたと言っても過言ではないだろう。


「で、撃ち込めるのか?」


「無理、大きすぎる。それに水爆だと仮に放てたとしても範囲が大きすぎるね。過激派の頭上にうまく放てたとしても、人間にも危害が及ぶよ」


「じゃあ原爆」


「同じだよ! 規模は多少小さくなるけど、それでも人間に危害は及ぶの!」


 ちっ、うまくいくと思ったんだけどな。

 となると、モンスターを壊滅できるほどの武器は無理か。

 それに、神の言葉から察するに、大きすぎるものは無理。


「どれくらいの大きさまでOKなんだ?」


「そうだねぇ、少年ジャ○プ、ぐらいかなあ」


 微妙だ。

 大きくないけど小さすぎるほど小さくもない。まさに微妙な大きさだ。

 これならそもそも有用な武器は難しいか。


「それじゃーそうだな…………」


 武器以外で必要なもの、とくには思いつかないか。

 今の暮らしでも十分に満足できてるし、これ以上のものはあまり無くてもいいような。

 だとすればここは、思いっきり趣味に走ろうかね。


「将棋盤が欲しいな」


「またえらく個人的な要望だね。しかもそれなら、紙とか板を使って、自分で作った方がいいんじゃない?」


 確かにそうだな。

 俺が好きなのは電子ゲームもそうだが、むしろ麻雀や囲碁、チェスといったボードゲームのほうが割と好みだ。

 自分で作っても問題はない。

 というか、チェスならこの世界にもある。

 それ以外となると、メシ系かな。

 食事はこの世界で一番楽しみと言っても過言ではなくなってきている。

 そうなると、長く味わえるものがいい。

 そういえば、俺の大好きな調味料はこの世界にはなかったな。


「マヨネーズで」


「今度はいきなり食品かい。もっとこうさ、世界の役に立つものとかにしてくれない?」


「例えばなんだよ?」


「そうだなあ、サバイバル本とかどう?」


「本ならお前が内容教えてくれりゃいいだろ」


「あ、そっか」


 ホントに馬鹿だな。

 この神はマジ馬鹿だ。

 ありえないほど馬鹿だ。

 どうしようもない馬鹿だ。

 なぜにこうまで馬鹿なのか。

 どうしてこうまで馬鹿なのか。 


「ちょっと、心の中で馬鹿馬鹿って連呼しないでよ!」


 そう言われ、俺の心の声が神に届いていることを思い出した。

 神との交信は結構久しぶりのことだったから、ついうっかりしていた。


「人のこと馬鹿にして、そんな事するんだったら君の机の上から2番目の引き出しに入ってる例の本をナナ達に見せちゃうよ」


「すんませんでした神様! 勘弁してください!」


 俺の引き出しに入っている本、それだけは見せてはいけない本だ。

 率直に言うと、エロ本だ。それも何を血迷ったのか、結構マニアックな。

 あんなものナナ達に見せたらどんな反応されるか、俺のイメージというものがガタ落ちしてしまう。

 だがそんな心配は全くと言っていいほど無意味なものであった。


「大丈夫ですマサトさん。私はあの本の内容を知っていますが、マサトさんを軽蔑したりしません」


「ナナさん!?」


 何で知ってんだ!?

 まさかゲームをクリアしそうだった俺の、あらゆる情報を知っているというのか?


「あっ、あの本はもう君のお父さんの机の中に入ってるね」


「オトウサンンンンン!?」


 何やってんだあのバカ親は。

 俺って元の世界じゃ死んだことになってるんだよな?

 普通死んだ息子の机の中にあったエロ本を私物化するか?


「で、本当に何にする? 僕の力の都合上、月1までだから本当に役立つものにしてほしいんだけど」


「くそっ、ちょっと泣けてきたぞ。それに、何が良いかと言われても……」


 思わぬ精神攻撃をくらったことにより、思考が鈍りながらも、俺は考える。

 やはりこの世界で有用なものといえば武器だ。

 それも、片手の俺でも扱えるほどの。

 そんな便利なものがあれば……。


「そうだ! 銃はどうだ?」


「銃か。使用限度はあるけれど、転送できる物の中では比較的有用なものだね。よし、それにしよう」


 そう言った瞬間、俺の目の前が淡く光りだした。

 この光には見覚えがある。

 俺がこの世界に転送されるときに見た光だ。


「よし、これで転送は完了したよ」


 神の言う通り、銃が俺の目の前に現れた。

 手に取ってみると、大きさの割にずっしりとした重みがあり、少し、恐怖を抱いた。

 これは人をあっさりと殺せる武器だ。俺が持っているナイフよりも、以前使っていた刀よりも簡単に、人間の命を絶つことのできる道具。

 ダルトドラゴンですら1発で殺せるかもしれない。もしかしたらロックタートルですら。

 そう考えると、この武器を選択したことが間違いだったのではないかと思ってしまう。


「これでニュースは終わり、頑張ってね」


 それっきり、神の言葉が聞こえてくることはなかった。

 頑張って、か。

 たった6発だけの銃で、一体どう頑張れというんだか。

 それに、正直この武器は使いたくはない。

 モデルガンであれば興奮していたかもしれない。

 だが、本物の銃というのが、興奮どころか逆に俺を冷静にさせる。


「マサト、ちょっと貸してくれ」


 ソウラが銃に手を伸ばしてきた。

 俺は慌てて手を引っ込めて、銃をソウラたちから隠した。


「何だ、触るぐらい良いではないか」


 残念そうに、恨めしそうにソウラは言う。

 だが、何も知らない者にこの武器を持たせるわけにはいかない。

 何も知らなければ、何となくで引き金を引いてしまうかもしれない。

 その時、もしも銃口が誰かに向いていたら……。

 想像するだけで寒気がしてくる。


「ソウラ、これはな、人を簡単に殺せる。使い方も知らないお前に持たせるわけにはいかない」


「簡単に……そんなにすごい武器なのか?」


「ああ。多分、ロックタートルの体も貫通できるだろうよ」


 そう言うと、ソウラはその目に若干の恐怖を宿しながら、銃に伸ばしていた手を引っ込める。

 この武器は、誰にも触らせない。

 俺だって、出来れば使いたくない。

 なぜだろう、ナイフと同じ、人を殺せる道具だというのに、なぜ銃はこれほどまでに俺に緊張感を与えるのか。


「これは俺が厳重に保管しておく。誰も触らないように」


 ナナ達は静かに頷いた。

 俺は銃をカードに収めるため、カードに押し付ける

 だが、


「ん? 入らねえ」


 何度かカードに銃を押し込むも、いつものようにカード内へと入っていかない。

 こんなものを剥き出しで持っていろっていうのか。

 冗談ではない。


「は・い・れぇ……!」


 無理やりカードに押し付けるも、入る様子はまったくない。

 やがて、カードが折れ曲がりそうになったので、俺はいったん諦めた。


「どうしよ」


 別に持ってて犯罪というわけではないが、こんな凶器を街中で持ち歩くなんて俺の中では正気の沙汰ではない。

 カードに入れるのとそうでないのとで、ここまでの差があるとは。

 諦めて持ち歩くか、そこらへんにほっぽっておくか。

 後者は論外か。

 となると、持ち歩くしかないな。


「この銃、腰に掛けとくから、絶対に触らないように!」


 念には念を入れて、忠告しておく。

 先程の忠告で触る奴はいないだろうが、物が物だけに細心に、デリケートにいかなければいけない。


「なら、それの威力を見にモンスターを倒しに行くか」


「無駄遣いできるか! 6発しかないんだぞ!」


「そこをなんとか! それに、それがどういうものか知らなければいざという時に困るだろ」


 ソウラにしては、的を射ている。

 俺も銃の威力は二次創作の表現でしか知らない。

 それに、使い方もちゃんとは分かっていない。

 いざという時のために、1発だけでも試し撃ちしといて損はないだろう。


「じゃあ、1発だけだぞ」


「おお!」


 俺たちは銃の威力の確認に、草原へと足を運んだ。

 クエストを受けても良かったんだが、銃の威力を確認するだけだし、まずはいいだろう。

 この腕でまともにモンスターと戦えるかもわからんし。

 そうだな、この銃をうまく扱えれば俺はまだ冒険者とやっていけるかもしれない。

 となれば、マキナとの再会も時間短縮できる可能性も無きにしも非ず。

 そう思うと、やる気が沸々と沸いてきた。


 なのに、


「モンスターいないじゃねえか!」


 見晴らしのいい草原、水平線の彼方まで見えるほど見通しのいい草原だというのに、モンスターの1匹たりとも見当たらない。

 今の時間、夜でもモンスター交代の時間でも何でもない。モンスターは普通に存在するはずなのに。


「じゃあマサト、あの岩を撃ち抜いてみてくれないか?」


 ソウラが指さした方、そこには直径1mほどのまあまあ大きな岩があった。


「まあ、動作の確認だけだし、いいか」


 俺は拳銃の銃口を岩に向け、引き金に指をかける。

 片目を瞑り、よく狙いをすます。

 焦点が岩に重なった時、引き金に掛けた指に力をかける。


「うわっ!?」


 銃は轟音を放ち、俺の腕が反動で思いっきり後ろに吹き飛んだ。

 腕は吹き飛んだが、銃弾はうまい具合にまっすぐ岩へと向かっていき、ど真ん中とはいかないまでも、真ん中に近い部分に直撃した。

 銃弾は貫通し、岩にはきれいな穴が出来上がった。


「初めてにしては、うまくいったな」


 はっきり言って威力は想像通り、精度は想像以上だ。

 連射は出来ないが、これほどの威力があり、精度のある武器を有するとなれば、かなりのアドバンテージだ。

 月1で銃弾を神に送ってもらえれば、かなりの戦力向上だ。


「やっぱり、銃って怖いですね」


 ナナはつぶやいた。

 まあ、無理もない。

 銃とは本来、人を殺すためにのみ作られた兵器、目の当たりにすれば恐怖を感じるのが普通だ。

 ソウラだって震えて……。


「すごいではないか! あの岩を簡単に貫くとは!」


 身震いしながら、目を輝かせ、興奮している。

 ソウラに恐怖を与えるには、サイドレオーネぐらい実力に差があるモンスターでも持ってこなければ無理だな。


「んじゃま、銃の威力の確認はしたし、モンスターもいないから、とりあえずギルドにでも行くか」


 俺は拳銃を腰に掛け、空いた左腕でアカネの手を取り歩き出す。

 アカネは右腕が動かなくなったことを知ってか知らずか、左側に位置している。

 そのさりげなさが何とも言えないほどに愛おしい。

 この状況でモンスターに襲われようものなら、対応が遅れてやばいことになりそうだが。

 その心配もないか。なぜかモンスターは1匹たりとも見当たらない。


「なあなあ、私にも1発撃たせてくれないか?」


「ダメだ! 無駄撃ち出来るか!」


 俺はソウラを一喝し、ギルドまで向かう。

 その都度、何度もソウラは銃を撃たせるようにせがんできたが、俺は全てを無視する。

 弾に余裕があれば別に撃たせてやるのも良かったが、もう5発しかないのに試し撃ちなんてできるはずもなかろう。


「それにしても、本当にモンスターがいませんね」


 ナナのつぶやきに、当たりを一瞥した後に俺は頷く。

 不自然なほどにモンスターがいない。

 本来なら10数匹のドラコキッドの群れがこの辺りをたむろしていて、倒しても倒してもゴキブリのように沸いてくる。

 だが今日に限ってそのモンスターがいない。

 いや、今日だけではない。

 よく考えてみると、昨日マキナとタストの街に向かう途中、マキナの家からカンドの街まではモンスターは出現していたが、このあたりのモンスターはあまり、というか全く出現していなかった。

 捕獲クエストの時とは逆に、モンスターが出現しない時期でもあるのだろうか。


「ま、考えても仕方ないか」


 ゲームのことは1から100まですべてを知ってると言っても過言ではない俺だが、この世界の常識については疎いところがある。

 追々そういうところを理解していけばいいか。

 とりあえずはギルドに行ってクエストでも受けよう。


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