第6話 「仲間を増やそう」
部屋に朝日が差し込み俺の目を光が覆う。
この部屋にはカーテンすらないので、朝日はダイレクトに俺に襲ってくる。
しかも時刻は朝8時にだ。何とも規則正しい生活を余儀なくされる部屋だ。
「んっ……朝日なんて、いつ振りかな?」
こんな時間に起きて、しかも朝日を見るなんてここ最近には記憶にない。いい気持ちだ。引きこもっていたらこんな気持ちには一生なれなかっただろうな。
さてどうしようか。まだ早いしナナは起こさないでおくか、それとも討伐の時間も5時までと限られてるし起こすか…………寝かしてていいか。まだクエストの期限は6日もあるし……
俺はナナが起きるまで待つことにする。
…………10時
さすがに起こした方がいいか、まさかナナがこんな時間まで寝てるとは思わなかったな。
ナナの方には朝日は届かないから、俺のように強制的に目を覚まさせれるなんてこともないしな。
「ナナ、もう10時だぞ。さすがに起きた方がいいんじゃないか」
「んん、もう朝ですか……」
「今は10時だ。朝って言うにはちょっと遅いな」
10時という単語を聞きナナは眠そうな目を一気に見開き飛び起きた。
「10時!? も、申し訳ございません! 今すぐ支度します!」
ナナは慌てて準備を始めた。
すぐそばには俺がいるのに、寝間着を脱いで着替えようとしている。相当焦っているな。
あ、下着は白か。
「……俺外で待ってるから準備ができたら来てくれ」
もう少し眺めていたい気持ちもあったが、ナナが冷静になったらきっと恥ずかしい思いをするだろうから、この段階で部屋を出た方が良いだろう。
「分かりました、すいません」
やっぱ根が真面目なんだろうな。謝ってばっかだよ。
……5分後
「お待たせして申し訳ありません!」
ナナが深々と頭を下げ俺に謝罪する。
俺に着替えを見られてたことなんかまるで気にしてないようだ。
やっぱこの子、ちょっとアホ入ってるな。
「気にすんなよ。初日バタバタして色々大変だったからな。疲れてたんだろ」
「それもあるんですが、その、もう神様のもとで働か無くていいんだと思ったら安心してしまって……」
あの神、本当に上司としてはクソだったんだろうな。
しかもこの発言を聞くに、睡眠すらろくにとれていなかったことは明白だ。
天界、相当にブラック企業みたいだな。
「ま、明日から気を付けりゃいいよ。それじゃ、まずはギルドに行って新しい武器を買いに行くか」
「はい」
俺とナナは宿屋に鍵を返しギルドに向かう。
もちろん俺を先頭にして。
今日は早く着いたな。ナナには単独行動しないようにするように後で言っておこうかな。
俺はそんなことを考えながら武器屋へと足を運ぶ。
「さて、今度はどんな武器にしようかな。前と同じナイフか、それとも他の……おっ、これってハンマーか、ちょっともってみようかな」
俺は店の中でも大きく目立つものを手に取り構えようとしたが、
「重っ! なんだこれ!」
重さでハンマーを持ちあげることすら叶わない。
そんな俺にごつい店主が話しかけてきた。
「おっ、昨日の兄ちゃんじゃねぇか。お前まだ駆け出しだろ。そんなハンマー重くて装備できないだろうに」
ゲームなら筋力値に関係なく装備は出来たのに、やっぱりステータスっていう概念があってもここはある種リアルの世界、そんなに甘くねぇってことか。
「しょうがねぇ、またブロンズナイフにしようかな」
ナイフを手に取る俺を店主は不思議そうな面持ちで聞いてくる。
正直、無視してほしかった。
「また買うのか? 昨日買ったばかりだろ。まさかもう壊れたなんて言うんじゃないだろうな」
「そのまさかだ」
「お前、才能ないんじゃないか……」
やめてっ! 考えないようにしてきたことを言わないでくれ!
しょうがないじゃん、俺ここに来るまでは3年も引きこもってたんだから。
「ドラコキッドの尻尾を叩いちまったんだろ。バカだな、あのモンスターは尻尾が固い分頭が柔くてもろいんだぜ」
「それくらいさすがに俺でもしってるよ」
尻尾が固いってのは知らなかったけど……。
「じゃあなんでナイフが折れるんだよ。それ知ってて武器壊すなんて初めて聞くぞ」
「あの野郎すばしっこくてよ、どんだけ振っても当たんなくて、当たったと思ったら尻尾に当たっちまったんだよ」
「ああ、だからか。あのな、ドラコキッドは頭めがけて振るんじゃなくて、突くようにして倒すんだよ」
それならそうと早くいってくれよ。モンキラの世界じゃ弱点当てるのに苦労するモンスターは中盤から終盤にかけてだったのに、リアルの世界じゃ序盤からこんなに苦労するのかよ。
所詮、バーチャルの栄光ということか。
「そうだったのか。ありがとな、教えてくれて」
俺は店主に礼を言いブロンズナイフを買い、教えてもらったことを早速実践してみようとドラコキッドが生息する場所に向かった。
が、気持ちはすでに折れかけていて、お家に帰りたいと心の中で何度も連呼した。
町を出てすぐに俺たちはドラコキッドに遭遇した。
「これ、何匹いる?」
「ざっと15匹ってところですかね」
多すぎだろ! 昨日は1匹だけだったのに、こいつら普段は群れで行動してるのか?
ますますモンキラとは違うな。
ゲームでは群れで行動する種は限られているのに。
「とりあえずやってみる。ナナはそこで見てていてくれ」
「はい。マサトさん、頑張ってください」
やってやる、落ち着けば倒せるはず。昨日は動き回るドラコキッドを折れたナイフで倒せたんだ。やり方をちゃんと聞いた今の俺ならこんなやつら楽勝さ。
数あるゲームを極め、音ゲーでもワールドレコードを出したことのある俺なら、攻撃を当てるだけならできるはず……。
俺がドラコキッドの群れに近づくと、数体は火を、残りは俺に近づき固い尻尾で俺を叩いてくる。
そりゃそうだ。
わざわざ俺の攻撃を待ってくれるわけがない。
「イテッ、ちょまって、アチッ、そんな同時にかかってこられても……」
俺はナイフでドラコキッドの頭を突こうとするが尻尾で攻撃してくるドラコキッドの頭は俺からは死角で突くことができない。なんとか距離を取って頭をこっちに向かせたいが、四方を囲まれ身動きのできない状況になっている。
これヤバイ————
俺はまたナイフをやみくもに振り回して、なんとかドラコキッドを遠ざけようとする。何体かは俺から遠のいたがまだ俺を攻撃する奴がいる。
さすがに見ていられなくなったのかナナが魔法をモンスターにめがけて放つ。
「ファイア」
そう言うとナナの手から小さな火が出現し、ドラコキッドの1体に当たる。
あの程度なら魔法で攻撃されても平気な気がするな。
ナナのレベルが上がらないうちに、魔法を放ってもらうか。
「ピキャッ!」
突然の火にドラコキッドは驚き、俺から遠ざかった。
「マサトさん、今です! 逃げてください!」
くそっ、情けない。まさか最弱種から逃げる羽目になるなんて……。
「ハァッ、ハアッ、ナナ、あれ、2人じゃ無理だ」
「そうですね、昨日みたいに1匹でいるところを探すしかないですかね」
昨日みたいな偶然はもう起きないだろう。昨日はモンスター交代の時間で、それに加えてナナの方向音痴があってこそのものだ。それよりももっと確実にいかなければならない。
「仲間を増やそう」
「仲間……ですか?」
「ああ、数には数だ。一旦ギルドに戻って仲間を募集しよう」
俺とナナはドラコキッド討伐を諦めギルドに戻る。
「さて、どうやって仲間を集めようか……」
一応ナナに張り紙を作ってもらっているけど、普通に張り紙を貼るか、それとも強そうな人に声をかけるか、でもこんな駆け出し冒険者の仲間になろうなんて奴いないだろうし贅沢は言えないか、でも弱い奴仲間にしたところで状況は変わらないし……。
「マサトさん、とりあえず張り紙の内容はこんなとこですかね?」
「なになに、私たちは今困っています。ぜひともドラコキッド討伐にご協力してくださる冒険者を募集中です、か。ボツだな」
「えー!? 何でですか?」
「これじゃ仲間募集ってよりクエストの依頼みたいだ」
それにドラコキッド討伐にご協力くださいって俺たちが弱いって大々的に宣伝してるみたいなもんだろ。ナナみたいな真面目な奴はこういうの向いてなさそうだな。
「やっぱ俺が書こうかな。ちょっとペン貸してくれ」
『仲間求む
回復魔法を使える才能ある人がいますが
パーティの数が少なく苦労しています
是非俺たちの仲間になってモンスターの魔の手から世界を救おう
マサト、ナナ』
「平凡だが、こんなもんでいいだろ、どうだ、ナナ?」
「まぁ、いいんじゃないですか。私のより」
ちょっとふて腐れた感あるなぁ。ナナって真面目系だけどちょっと子供っぽいところが可愛いよなぁ。
まぁそれはさておき、これでどれだけ集まってくれるかだよな。
俺は掲示板に張り紙を貼り、ギルドの酒場で誰かが来るまで時間をつぶした。
もちろん未成年だから酒なんか飲んでないぞ。
……3時間後
「誰も来ねぇな。このまま誰も来なかったらとりあえずこのクエストはまた次回頑張るって方向でいいかな」
「加入クエストは一度失敗したら1年間クエストが受けられなくなりますよ」
えっ? つまり失敗すれば1年間ギルドに入れず路頭に迷うことになるの?
「加入クエストを失敗した人は1年間力を積んできなさいという意味をこめてこのような規則があるんです」
先に言えよそういうことは。呑気に待ってる場合じゃない。俺から話しかけに行って仲間になってもらわないと世界救うどころじゃなくなる。
俺が慌てて席から立ち仲間候補を探そうとした。
すると突然女性が話しかけてきた。
「マサトというのは君か? 張り紙を見てきた! 私を仲間に入れてもらおうか!」




