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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第二章 クエスト生活
33/115

第33話 「捕獲クエスト」

 ソウラの洗脳が溶けるまでに2日かかった。アカネの体調は数時間で治ったというのに、あのイーバとかいうやつは、神と同様に、次に会う時があったら絶対ぶん殴る。

 だがそれよりもクエストだ。

 今日こそ、今日こそはクエストをクリアするんだ。

 じゃなきゃ飢え死にだ。


「みんな、今日は張り切っていくぞ!」


 俺は意気揚々とギルドのドアを開けると、いつもよりも明らかに人数が増えていた。


「また……何かあったのか」


 また今日もクエストが受けられない、一瞬そう思ったが、そんなことはなかった。

 ギルドに入ってきた俺に、レイトが近づいてくる。


「マサト君、ついにこの時期が来たね」


「この時期?」


 レイトはいつも以上に晴れやかな笑顔を見せ、見ただけで気分がいいということが分かる。

 その後ろにはレイトのパーティたちもいる。


「知らないのかい? 今日から3日間は捕獲クエストの日じゃないか」


 捕獲クエスト? そんなことをして平気なのか?


 この世界では俺たちが倒したモンスターを周辺のモンスターが食べる、つまり共食いしている。もし倒したモンスターを持ち帰ったりなんかしたらモンスターは食糧目当てに冒険者だけでなく町の一般人も襲うはずだ。


「この時期はいつも以上にモンスターが発生するんです」


 モンスターを捕獲するということに疑問を浮かべる俺にナナが教えてくれた。


「大量発生するこの時期ではモンスターを持ち帰っても襲ってくることはないんですよ」


 なるほど、モンスターが大量発生する時期なんかあるのか。


「捕獲してもいい理由は分かったけど、どうして捕獲するんだ? モンスター使って研究とかするのか?」


 俺のこの疑問にナナは当然のように答える。

 だがそれは、俺にとって衝撃の事実だった。


「……? 食糧にする以外ないじゃないですか。それに以前研究に使うと言ったのは、ドラコキッドの量産が目的ですし……」


 食糧!?

 えっ? 俺が今まで食っていた飯って、もしかして……


「マサトさんも好きでしょう。ドラコキッドのお肉を使ったハンバーグ」


 俺は今まで食べていた料理を思い出していた。

 俺は肉中心の食生活だった。

 そのなかでもよく食べていたのがハンバーグ。

 うまかったから気にしなかったが、まさかドラコキッドの肉だったのか。


「マサトさん、どうしたんですか?」


「いや、今までを思い出していただけだ」


 そうか、ドラコキッドだったか、今まで何体も倒して俺の経験値になっていったが、まさか俺の血肉になっているとはな。


「それで、その捕獲クエストってのはいくらぐらい貰えるんだ?」


「大きさにもよりますが、だいたい死体なら1匹100G、生け捕りなら1匹1000Gといったところです」


「結構もらえるんだな」


 俺たちがいつもやっている採取クエストや小型モンスターの討伐の報酬の相場は500Gだから、これはかなり割のいい仕事だ。


「ダルトドラゴンは死体でも5000Gもらえますよ」


「5000G!?」

 

 俺たちの今の実力なら普通に倒せるんじゃないか?

 しかも俺たちはダルトドラゴンの弱点を知っている。大儲けのチャンスかも……


「で、いつからだ? もう始まっているのか?」


「捕獲クエストは10時からです。ギルド内に人が集まっているのは捕獲ロープというのを受け取るためです」


「捕獲ロープ?」


 今日は初めて聞く単語だらけだな。

 俺がいかにこの世界では無知だったかが分かる。


「捕獲ロープは神様が作った特別なロープで、それで弱ったモンスターを巻けば、自動的にギルドの倉庫へと転送されるんです」


 なるほど、つまりモンスタ○ボールということか。

 あの神はけっこう役に立つこともしてるんだな。


「マサト君、今日はお互い頑張ろうね」


「お前たちもやるのか? 金は結構持ってるんじゃないのか?」


「それがね、配下のパーティの面倒を見てると出費がかさんでね、このままいくとあと1週間もせずにお金が無くなるんだよ」


 最強パーティが金欠になりかけるとは、高い宿なんかとってるからだ、と言いたいが、後ろのレイトのパーティが怖いからやめておこう。


「しかし10時からか、結構時間があるな」


「暇なら君の話を聞かせてもらえないか? 色々と聞きたいことがあるんだ。神様のこととか」


 レイトは目を輝かせながら聞いてくる。

 対照的にレイトのパーティの、女騎士と槍を持った男は胡散臭そうに俺を見ている。

 まあしょうがない。これが普通の反応だ。


「信じてくれるかどうかは分からないが、別にいいぞ」


「ありがとう! じゃあまず聞きたいのは、君たちはどうやって神様に会ったんだい?」


 改めて聞かれると返答しづらい質問だ。

 ソウラの場合は神を直接見たから説明できた、受付の人は天界出身だったから説明できた。

 だけどレイトは神と何の接点もない。正直に言って伝わるかどうかと聞かれたら、まず無理だろう。

 だが正直に言う以外に何も思い浮かばない。

 しょうがないから正直に言おう。信じてもらえなくても別にかまわないし。


「実は俺は、異世界から来たんだ」


「異世界?」


「そうだ、俺は神にこの世界を救うように言われたんだ」


「ちょ、ちょっと待って。いきなりすぎるよ。もっと順を追って説明してくれるかい」


 無理なことを言う。

 これが一番最初の出来事だと言うのに。


「いいか、俺は元々はこの世界の住人じゃない。そのことを理解するとかしないとかじゃなくて、頭に入れろ」


「う、うん。分かった」


「それで、その世界のある分野で1番を取った俺を、神がこの世界を救うためにこの世界に俺を呼んだんだ」


「すごくスケールの大きい話だね」


 スケールの大きい話?

 ああそうか。何も知らずに話を聞けばスケールが大きいな。

 だが実際は俺がゲームをしまくったと言うだけの話だ。

 しかもそのゲームもほとんど役に立たない。


「じゃあ他のメンバーもそういう風に集められた人なのかい?」


「いや、正確には違うな。まずナナは、神の部下だったんだ」


「部下?」


「ああそうだ。ナナは俺のような異世界出身じゃなくて、天界出身なんだ。異世界からこの世界に来た俺をサポートするためにこの世界に来たんだ」


 ナナが来た本当の理由は神のもとから離れたかったっていうものだけど。


「なるほど、天界出身の神の部下か」


「次にアカネだが、アカネは神がこの世界を救うために作られた子なんだ」


「作られた?」


「まあ、アカネの立場は俺と似ているとも言えるな」


 アカネは、俺よりも可哀想な奴だ。

 長い間モンスターになって人を襲っていたのだからな。


「それであのすごいステータスなのか」


 レイトは今までの話を全て信じているようだ。

 こんな突拍子もない話を信じるとは、良い奴にもほどがある。


「ソウラさんは? 彼女もそれなりの強さを持っているだろう」


「ソウラはな、元からこの世界の住人だ」


 俺らの中で比べるとかなり普通の生い立ちだが、苦労した量なら俺たちに全くひけを取らない。むしろ過去の話なら俺が一番しょぼいだろう。


「そ、そうか。この世界の人なんだ」


 レイトは拍子抜けといった顔をしている。

 今までの流れから考えると当然だろう。

 俺は異世界出身、ナナは天界出身、アカネは神の子、ソウラだけがこの世界の住人だと聞けだ拍子抜けもするだろう。


「いやあ驚いたよ。まさか神様が関わっていたとは」


「おいレイト、この話を信じるのか?」


 レイトのパーティの女騎士が今の話を全て信じているレイトに尋ね、槍男も同調する。


「そうだぜレイト、こんな話普通に考えてあり得ないだろ」


 信じてもらえるなんて最初から思っちゃいなかったが、この2人に言われるとなんか腹が立つ。

 俺って性格悪いのかな?


「でも、この話が本当なら彼らの力も納得できるんじゃないか? 彼に誰も知らないスキルがあるとかナナさんが回復魔法を使えるとかさ」


 俺はレイトの言葉を聞いて思い出した。

 そういえば俺はスキルがあるとか言ってしまっていたんだ。

 なめられたくなかったからアカネを元に戻すためだけのスキルなのに、あたかも強いスキルかのように言ってしまったんだ。


「それは……駆け出しの割に強いのは認めるが……だがさすがにこの話を信じられるほど私は人間が出来てなどいない」


「俺もだ、さすがに突拍子もなさすぎる」


 まあ最初から理解してもらおうなんて思っちゃいない。

 俺だってこいつらの立場なら一切信じなかっただろう。

 速攻で痛い奴認定だ。


「これが俺たちのすべてだ。信じる信じないはお前たちの自由。何か質問は?」


 俺が尋ねると杖を持った老人が手を挙げた。


「わしから一つ、いいかね?」


「答えられる範囲ならいいよ」


「では、神とはどういう存在なのかね?」


「クズだ」


 俺は老人の質問に即座に答えた。

 これほど答えるのに簡単な質問はない。

 あの神はクズ、これ以外に奴を表す言葉は存在しない。


「か、仮にも神をクズ呼ばわりとは、何をされたんじゃ?」


「俺は、あの神に殺されたんだ」


「神に?」


「ああ、俺の元いた世界からこの世界に召喚するためには、一度俺を殺し、この世界に転生させる必要があったみたいなんだ」


「それは……災難だったの」


 老人は同情の目を俺に向ける。

 この老人も俺の話をある程度信じているのか?


「お前も信じるのか!?」


 老人の態度に女騎士は驚いている。

 はっきり言って俺も驚いている。こんな話を信じるなんて。


「すべてを信じているわけでは無い。ただ、本当なら面白い、そういうおとぎ話を聞く程度の気持ちじゃ」


 まあ、そうだよな。

 こんな話を信じるのはレイトみたいな底なしの良い奴か、ソウラみたいな実際に神を見た奴だけだろう。

 多分レイトがおかしいんであって、こいつらはいたって正常だ。


「みなさーん、捕獲クエストの説明をしますよー。近くに集まってくださーい」


 受付の人がギルド内に響き渡るぐらい大きな声で冒険者を集める。


「それではみなさん、もう知っているでしょうが一応説明します。今回皆さんに行ってもらう捕獲クエストは昆虫系、スライム系以外のモンスターを捕獲してもらうクエストです。捕獲の際には今からお配りする捕獲ロープを用いてもらいます。モンスターはロープを使わずに持ってきてはいけません。もし対象以外のモンスターの捕獲、および既定の方法以外での捕獲を行った方には罰金が科せられますので

ご注意ください」


 俺は受付の人の話を注意深く聞いた。

 もしこのクエストを効率よくこなすことができれば、かなりの大金が手に入る。

 そうすれば今の宿屋からもっと良い宿屋にランクアップできるし、ナナやアカネにうまいものを食わしてやれる。

 このクエストは、俺たちの生活が懸かってる。


「それと、捕獲ロープを使用する際はモンスターを弱らせておきませんと転送できないので、そこもご注意ください」


 弱らせて縛る、やっぱりモンスタ○ボールだな。


「報酬はモンスターによって違います。詳しくは後ほど掲示板でお知らせします。では、捕獲ロープを配りますので皆さま順番にお並びください。ロープはひとつのパーティにつき1本ですのでご了承ください」


 受付の人がそういうと、100を超える冒険者が一斉に並びだした。

 俺はちょうど真ん中あたり、うまい具合に入りこめた。


「それにしても、ヴァテックスみたいな激つよパーティが、駆け出し冒険者が集まる街のクエストをやるってどうなんだ?」


 できることならこいつらにはやってほしくない。

 いくら大量発生してるからと言って数には限りがある。


「マナー違反なのは分かってるよ。だからある程度の金額を稼いだらやめにするよ」


 それを聞いて安心した。

 ヴァテックスがそこまでやる気がないならば、モンスターがいなくなるという事態は起こらないだろう。

 俺がいろいろ考えている間にすぐに順番が来た


「はい、こちらがロープです。支給されるロープはこれ1本ですのでご注意ください。それと、捕獲クエスト終了時にはロープが欠損していても回収しますのでちゃんと持ってきてください」


「はいよ」


 俺は受付の人から長さ2mほどのロープをもらい、カードに収納した。


「それじゃ、早速行くぞ」


 俺たちはロープを受け取り速攻でモンスター捕獲に赴いた。


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