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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第二章 クエスト生活
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第30話 「信頼」

 宿屋に戻った俺はすぐにベッドに横になり目を閉じながらナナにお願いをした。


「ナナ、俺にも回復魔法をかけてくれ」


 ナナはハッとした顔つきで俺のそばに駆け寄る。


「す、すいません! そういえばマサトさんも魔法をくらっていたんでした」


 急いで俺に手をかざし回復を開始するナナ、その横でアカネとソウラが立ち、俺に話しかけてくる。


「お父さん、すごくかっこよかったよ」


「アカネの言う通りだ。あの時はかっこよかったぞ」


「……? お父さんはいつもかっこいいよ?」


「ありがとうアカネ。でも照れてきたからその辺で……」


 だがアカネもソウラも、そしてナナも俺をほめるのをやめない。


「マサトさんは本当にすごいです! 頭も良くて度胸もあって、かっこいいです」


「うむ、あの戦い、私はひやひやしたが、全て想定内だったのだな」


「お父さん、つよい」


 俺はほめられだらしなくなった顔をベッドにうずめ顔を隠す。

 

 ほめてくれるのは気分がいいが、一つだけ間違っている。

 あの戦いが全て想定内というのは違う。

 あの勝負は運が良かった。

 ライが周囲の水を解除し強力な、ブラストウォーターのような魔法を放ち続けていたら、俺は間違いなく負けていた、いや、最悪死んでいただろう。

 ライの作戦ミスによって勝ったようなものだ。


「そうだ、アカネ。俺が戦ってるとき、お前だけは俺を信じてくれていただろう。ありがとな」


 俺の言葉にアカネはキョトンと、ナナとソウラはばつの悪そうな表情をした。


「しんじる? アカネはいつでもお父さんがかつっておもってるよ」


 アカネはまるでそれが当たり前だと言いたげに答える。

 どうやらアカネの俺への信頼は相当なものらしい。

 少なくともこの2人よりは


「あ、あの時はしょうがなかろう。母様の言う通り、マサトに勝機は見えなかったし……」


「そ、そうですよね。あの状況では仕方がないと言いますか……」


「ああいいよ、2人の言う通り、傍から見たら勝機なんかなかっただろうし、あの状況で信じろってほうが無理がある」


 それでも、アカネは信じてくれたんだ。

 俺がどんなに劣勢であろうとも、俺の勝利を。

 それはすごくうれしい。俺みたいなやつをこんなに信頼してくれるなんて……

 だがそれゆえに不安でもある。


「アカネ、俺はこの世界ではまだまだ弱い方なんだ。いつか負ける日も来る。そのことだけは忘れるな」


 我ながら情けない。こんな子供の信頼の為に、保険を掛けるような言葉を言うなんて。

 はっきり言って幻滅されてもおかしくない発言だったと思う。

 だがアカネは当然のように答える。


「お父さんは、まけてもかつから」


「……どういうことだ?」


 アカネの発言に俺だけでなくナナもソウラも不思議がっている。

 当然だろう。言葉の意味が分からない。

 負けても勝つとはどういう意味だ?


「お父さん、アカネたちのためなら、まけてもあきらめないでしょ」


「ア……アカネ……」


 俺はアカネの言葉に、思わず感動してしまった。


 そうか、そうだったんだな。

 アカネは、例え俺がライに負けたとしても信じてくれていただろう。ダルトドラゴンの時のように、どうにかしてソウラを自由にさせてやると。

 アカネは、強い俺を信じていたんじゃない、仲間を見捨てない俺を信じていたんだ。

 純粋で……無知ゆえの信頼、この世界で、これ以上に真っすぐな信頼はないだろう。


「ありがとう、アカネ。俺、頑張るよ。お前たちのために」


 俺は決意した。

 どんなことがあっても、みんなを守り抜くと。


「あっ、だけど今日はもう無理な。さすがに疲れた。クエストは明日にしよう」


 俺の言葉でナナとソウラは笑い声をあげた。


「2人とも、さっきはあんなこと言ったが、俺のことを心配してくれていたのは分かってる。その、ありがとな」


「な、なんですか急に……信じることは出来なかったかもしれませんが、心配するのは当然のことです」


「そうだぞマサト、私たちは仲間なのだからな」


 俺は、仲間に恵まれ過ぎだな。

 どんなことがあっても俺のことを信頼してくれるアカネ

 俺のことを本当に心配してくれるナナとソウラ

 力だけじゃない、そんな関係を築けたことが、心底嬉しい。


「それでは私は家に帰ろう。今日はもう何の予定もないのだろう?」


「ああ、でも大丈夫か? お前の母親、負けた腹いせに小言言ってくるんじゃないのか?」


「それは心配ないだろう。母様は負けはしたが、とても気分がよさそうだった」


 ソウラはそう言いながら、ナナのことをチラチラとみている。

 ソウラもあの女がナナで遊んでいたことに気づいていたんだろう。

 あの時のソウラの母親は、本当に楽しそうだった。

 多分、あいつはそこまで悪い奴じゃない。

 性格は多少意地悪なところはあるが、少なくともゴーマを切り捨てるような人間ではないだろう。

 交渉の武器として、非道なことをチラつかせては来るものの、本気でそんな事をするような、出来るような人間じゃないだろう。

 ライに薬を使ったことはひどいことには見えるが、ソウラと結婚するかもしれない男の精神を壊すはずがないだろうから、おそらくあの性格の変貌は一時的な物で、安全ではあったんだろうな。


「でも、母親の方が大丈夫でも、父親の方は平気なんですか?」


「大丈夫だろう。父様は母様に逆らえないからな」


 ソウラは笑いながら答える。

 確かにゴーマはあの女には一切頭が上がらないんだろう。

 自分が切り捨てられるかもってときにも、何も言えなかったからな。

 あの時はさすがにかわいそうに思えた。


「それではまた明日な」


 ソウラは晴れやかな表情で宿屋を出て行った。

 これでソウラに関する全ての問題が、今度こそ間違いなく解決したのだ。

 今後はクエストに、冒険者としての生活に没頭できるのだ。

 晴れやかにもなるだろう。


「それにしてもマサトさんって、意外とタフだったんですね」


 ナナは回復しながらつぶやく。


「ん? どういうこと?」


「だって骨にひびが入っていたんですよ。それなのにあれだけ動けるなんて」


「……それ、マジで言ってる?」


「マジです」


 マジかよ、体が異常にだるかったけど、まさか骨にひびが入っているなんて、……でも、ひびだけで済んでよかった。

 ライの魔法はものすごい威力だった。最初の魔法なんか、ハンマーで殴られたといっても不思議ではない威力だった。

 ルプウォーターも、最初の魔法よりは威力が低かったが、思いっきり殴られたようなものだった。

 あれをくらって骨にひびが入っただけだったのは、マジでラッキーだった。

 死ななくてよかった。


「それにしても、ナナって回復しただけで傷の具合とか分かるのか?」


「はい、回復の具合によってその人がどれくらいのケガだったかは分かるんです」


 回復魔法は便利なんだな。


「お父さん、だいじょうぶ?」


 アカネがひどく不安そうな顔をしている。

 骨にひびが入ったということがどのようなことかは理解できていなさそうだが、それでもやばいことだということはなんとなく察したようだ。


「大丈夫だよ。ナナの回復魔法のおかげで大分楽になった」


「そっか、ナナお姉ちゃんのまほう、すっごくきもちいいもんね」


 ああ、その通りだ。以前回復してもらった時はドラコキッドから受けたダメージの回復だったからそれほどでもなかったが、大ダメージを受けたこの体への回復は、とても気持ちいい。

 クセになりそうだ。


「ほんと、ナナが仲間で良かったよ」


 ナナが仲間じゃなかったら、俺はここまで無茶は出来なかった。

 多分、ダルトドラゴンと戦った時もナナがいなかったら勝ち目無しと逃げていただろう。

 いや、その前のドラコキッドにやられた時点でもう心が折れていたかもしれない。

 本当にナナが仲間で良かった。


「そう言ってもらえると回復し甲斐があります」


 ナナはとてもうれしそうに俺の回復を続ける。

 俺は、その回復が気持ちよく、そのまま眠りについてしまった。

 よっぽど疲れていたのか、俺が次に目を覚ましたのは、次の日の朝だった。


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