第3話 「ギルドに入ろう」
「ここがギルドか、思ったよりもきれいだな」
ギルドの中は割と広く清掃の行き届いた清潔な場所だった。
それにギルド内には武器屋や防具屋、道具屋、酒場まであった。
「マサトさん、受け付けはあちらみたいです。早く済ませてしまいましょう」
俺とナナは早速ギルドに入るため受付まで早足で行く。
「本日はギルドにどういったご用件でしょうか?」
おお、結構かわいい、周りにいる女の子もキレイどころが多いし、この世界ってレベル高いなぁ。
俺がそんな事を思っているとナナが受付に要件を伝える。
「あのー、ギルドに入りたいんですけど」
「はい、ギルド加入の申し込みですね。それではまずカードをお見せください」
俺とナナはカードを取り出し受付の人に渡す。
「ありがとうございます。ナナ様とマサト様ですね。少々お待ちください。カードの裏に必要事項を記入しますので」
そういうと受付の人の指に光が灯り、カードの裏にその指をつける。
「これで記入は完了しました。それでは頑張ってきてください」
おお、あれで記入できるんだ。そういえばこの世界には魔法があるって言ってたけど今のも魔法の一種か。実際見ると魔法ってスゲーな。
俺は初めて見た魔法に感動し、カードの裏に何が書かれているのか見てみると、
『ギルド加入クエスト
ドラコキッドの討伐 0/10
残り日数 7日』
と書かれていた。
……はあ? なんだギルド加入クエストって、そんなのモンキラにはなかったぞ。
「あのー、すいません。このギルド加入クエストって一体……?」
俺の質問に受付の人はキョトンとした顔つきで答える。
「ギルドに入るためのクエストですが、なにか?」
ギルドに入るためのクエスト!? 聞いてないぞそんな話。
「おいナナ、どういうことなんだ。こんなのゲームにはなかったよな?」
「ああ、それはですね、この加入クエストはチュートリアルをプレイすると発生するものなんですよ。マサトさんはチュートリアルやらなかったんですか?」
チュートリアル!?
くそっ、俺はゲームのシステムはやりながら覚える派だったからチュートリアルなんかやらねーでスキップしちまったよ!
「どうしよ、はじめっから予想外だよ」
落胆する俺をナナは慌ててフォローする。
「だ、大丈夫ですよ。ドラコキッドはモンキラの中でも最弱種、今の私たちでも倒せる…はずです」
倒せるはずかぁ。確かにドラコキッドは最弱でレベル1でも倒せるけど、それはゲームの世界の話だからなあ。まずは採取クエとかで小銭稼いで良い武器を手に入れたかったけど。
「ほ、ほらマサトさん、クエストには期限があるんですから早く装備を整えて行きましょう。神様のお計らいで最初の資金は少し多めに入っていますから、最初にしては良い装備が買えるはずですよ」
俺は重い足取りでまずは武器屋に向かう。
「武器か、何の装備にしようかな」
武器屋には片手直剣やナイフのような短刀、他にも槍やハンマーなど様々な武器が置かれている。
これは重要だぞ。モンスターには相性があるからそれに合わせて序盤で使える装備を選ばないとな……まあ弱点だけじゃなく相性まで変えられてたらお手上げだけど……。
「とりあえず序盤の敵はちっちゃいのが多いから、片手剣かナイフのようなものがいいな」
俺が武器を物色していると店主がいきなり話しかけてきた。
「兄ちゃん、見たところギルド加入希望者だろ」
ごっついなー、そういや色んなアニメや漫画を見てきたが武器屋や防具屋って妙にガタイのいい奴が多いよな。もうこいつがモンスター退治やった方がいいんじゃないか?
絶対そこらへんの冒険者よりも強いよ。
「ああ、さっきクエスト受けてきたところだ」
「加入クエストって確かドラコキッドの討伐だよな。ならこの武器がお勧めだぜ」
そういうと店主は20㎝ほどのナイフを取り出した。これは確か初期装備の1つのブロンズナイフだったか。
「ドラコキッドはすばしっこいからな、こういう武器がうってつけさ」
確かに俺も最初はブロンズナイフで行けるとこまでいったな。というか縛りプレイでボス級もこれで戦ったことがあったな。うん、よく考えてみると、これが一番お世話になった武器かもな。
よし、これにすっか。
「じゃあこれくれ。いくらだ?」
「本当なら100Gだがおまけして50Gでいいぜ」
そういうと店主はポケットから50%Offと書かれたシールを取り出しブロンズナイフに貼ってくれた。
「マジでか!? あんがとよおっさん」
こういうゲームの世界じゃありえない値引きっていいな。
そういえば金ってどうやって払うんだ? カードに所持金が記入されてるけどこのまま渡せばいいのかな?
俺が困っているとナナが教えてくれた。
「お金の支払いはあの機械に品物を置いてカードをかざせば自動で払ってくれますよ」
ナナが指さした方にはスーパーやコンビニでよく見かけるレジのようなものがあった。
俺はシールの貼られたブロンズナイフを機械に置き、カードをその機械にかざすとピッという音がした。ナイフに貼ってあるシールが消え、カードの所持金が1000Gから950Gに減っている。
おお、カードで買い物ってなんか金持ちになった気分で気持ちいいな。
とりあえず俺の武器は決まったから次はナナのだな。
「ナナ、どんな武器がいい?」
「そうですね、私は弓とかいいかなって思ってますけど」
確かにナナには前に出て行って戦うってあまり向いてなさそうだけど、弓か……なんか間違えて射貫かれそうだな。
「そういえばナナって魔法は使えるのか?」
魔法のほうが弓矢よりかは怖くないからな。ていうか弓が当たろうもんなら普通に死ぬ。
「魔法ですか? 回復魔法と簡単な攻撃魔法なら多少使えます」
「おお、ならナナは武器で戦うより後ろでサポートしてくれた方がありがたいな」
「そうですか、マサトさんがそう言うならそれでかまいませんが……」
うーん、明らかにがっかりしてるな。ナナは案外戦うの楽しみだったのかな?
「その代わり防具は良いの買ってあげるから、俺の金と合わせればかなりいいの買えるだろ」
「分かりました。それではそうしましょうか」
ナナには悪いけど戦闘は俺メインで行かせてもらおう。その方がナナを危険な目に合わせないで済むだろうし。
「どんな防具がいいかな……とりあえず1000Gぐらいで買えるのにしようかな」
俺がどんな防具がいいか物色しているとナナは声を大きくして猫っぽい動物がプリントされた盾を持ってきた。
「マサトさん、これがいいです! この盾にします!」
「お、おお。ナナがそれでいいなら別にいいけど……」
明らかにオシャレ重視の盾だ。盾としては防御力低そうだけど……ゲームと違って武器や防具の具体的な数値が出ないってのは結構痛いな。
でもまあ、ナナは満足してるみたいだからいっか……ってこれ1500Gもすんのか! 所持金の半分以上じゃねーかよ。ま、しょうがないか。
「それじゃあ装備も整ったとこだし、早速ドラコキッド討伐に行くか」
「はい、ドラコキッドはこの町の近くに徘徊していますから20分もかからずに遭遇できるはずです」
俺とナナは初めてのクエストに意気揚々と目的地に向かっていく。
…………ナナを先頭にして。