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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第二章 クエスト生活
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第25話 「猫」

「ではまずマサトから提案してもらおうか。そこから時計回りでいいだろう」


 時計回りなら順番的に俺の後はアカネ、次いでナナ、最後にソウラと言う順番だ。

 こういう時ソウラは自分から言いだしそうなものだが珍しいこともあるものだ。


「じゃあ俺から提案するぞ。俺が考えた名前は、ライオンズだ」


「…………なんか、野球チームみたいな名前ですね」


「ライオンかっこいいじゃないか」


「……そのライオンと言うものが何か分からんが、少しいまいちだな」


 この世界にはライオンはいないらしい。どうもこの世界の生物は犬や猫などの動物以外は基本的にはモンスターとしてみなされているらしい。ライオン型のモンスターはいるがライオンと言う動物はいないみたいだ。

 ライオンは俺の中で一番というわけでは無いが結構好きな動物だからいないってのは少し悲しいな。


「じゃあ次はアカネだな。考えてきてるか?」


「……なんでもいいの?」


「ああ、もちろんだ」


「じゃあ……ドラゴンズ」


「…………2人とも、野球がお好きなんですか?」


 ナナの言いたいことは分かるが別に野球は関係ない。

 俺はただ好きな動物の名前を、アカネは多分ドラゴンだった時があるからドラゴンに何かしら思う所があるんじゃないのかと思う。


「強い生物の名前をパーティに付けるのはいいが、少し単調すぎないか?」


「シンプルイズベストだ」


「…………そうか」


 ソウラがほんの少しだが俺を憐れむような眼をしている。


「じゃあ、次はナナな」


 今までは図らずも野球チームみたいな名前になってきたが、ナナならこの流れを断ち切ってくれるだろう。


「私が考えたのは、ダークネス――――」


「はい次ソウラな」


「ちょっと待ってください!」


 ナナがムッとした表情で抗議してくる。


「何で最後まで聞いてくれないんですか!? せっかくかっこいい名前を考えたのに!」


 かっこいい名前……か。

 野球チームの流れを断ち切ってくれたのは良いが、まさか中二病みたいな名前を考えてくるとは予想外だ。


「ナナ、私もダークネスはないと思うぞ。何と言うか、それでかっこいいと言うのは子供ぐらいだと思うぞ」


 中二病と言うものがない世界で育ってきたソウラにまで言われてナナは納得がいってなさそうだったが自らの意見をひっこめた。


「いいじゃないですか。別にパクったとかそんなことをしたわけじゃないんですから」


 ナナが小声でぶつぶつ何か言っている。


 ナナは普段は見た目の割には大人のように落ち着いているが、たまに子供のような仕草をする。そこが可愛いところでもあるんだよな。

 

「それじゃ最後はソウラな」


 正直今までの物の中から選ぶつもりはないしソウラもどうせそんな良い名前を考えられそうには思えないから名前決めは明日以降に持ち越しかな。


「うむ、何も考え付かなかった!」


 ソウラは堂々と胸を張り答える。

 その姿は自身に満ち溢れ、まるで自分に非はないと言わんばかりの光景だ。


「お前…………」


「勘違いするなよマサト。忘れていたんじゃない。考え付かなかったのだ!」


 堂々としていて嘘をついてる風には見えない。

 もしかするとこいつが帰ろうとしていたのは名前を考え付かなかったからかもしれない。

 思い返してみると今日のソウラは険しい表情をしている時が多かったように思える。

 名前を考えていたのかもしれない。


「じゃあ今日の所はいい。だけど明日以降はちゃんと考えろ」


「ああ、無論そのつもりだ。だがいかんせんこのパーティにどういう名前が相応しいか分からなくてな」


 ソウラの言いたいことも分からなくはない。

 名前は一度決めたら変更不可能、パーティに相応しい名前にしようと思うのが普通だ。

 だが俺たちはそれなりに仲良くやっているつもりだがそれでもまだ会って1カ月も経っていない。俺たちに相応しいものと言われてもあまり考え付かないだろう。


「一度、色々と話そうか。俺たちは一生このパーティでやっていこうっていうのにお互いのことを知らなすぎる」


「そうですね。ではどんなことを話しましょうか?」


「好きな物や嫌いな物とかかな」


 ベタだが人のことを知るにはこういった基本情報を知る必要があるだろう。


「じゃあまず俺から言おうか。好きな物は漫画、属性は猫耳っ娘だ。もちろん普通の猫も好きだ。嫌いなことは……とくには思いつかないな」


「……漫画? 何だそれは? それに猫耳っ娘とは?」


「漫画は、この世界で言う紙芝居みたいなものだ。猫耳っ娘は猫の耳をした人のことだ。」


「ああ、亜人のことか。亜人趣味とは変わっているな」


 亜人……だと?

 この世界にはリアルの猫耳っ娘がいるっていうのか?

 ここは……天国だったのか?


「……そうですか、猫耳ですか。この世界に猫耳カチューシャとかあったかな?」


「ん? 何か言ったか?」


「い、いえ! 何も!」


 ナナは俺のいた世界のことを知っているから俺の言ったことを十二分に理解しただろう。

 もしかしたら引かれたのかもしれないな。

 ちょっと後悔


「で、では次は私が言いましょう。私が好きなのは、小動物とかの可愛いものですね。子猫とか見てると癒されますね。仕事の疲れも取れます。嫌いなのは、特にありませんが強いてあげるなら……神様……ですかね」


 そうなのか、ナナも猫が好きなのか。俺も猫は好きだぞ。猫耳っ娘とは別の意味で、ちゃんと動物として猫は好きだ。多分猫が1番好きだな。

 ナナとは気が合いそうだ。

 嫌いなのに関しては……まあ苦労が目に浮かぶな。

 あの神のもとで10年も働いていたんだからな。嫌いにもなるだろう。


「それじゃあ次は……アカネな」


「うん。アカネはみんなすきだよ。あと、アカネもネコはすき」


「ア……アカネ……」


 アカネの言葉に俺だけでなくナナもソウラも感激しているようだ。

 アカネのような無垢な子にみんなすき、なんて言われて何も思わないやつはもはや人間じゃない、そう言い切れるぐらいアカネの言葉には威力がある。

 あと何気に猫が好きと言う情報を入れてきたな。


「それじゃあ最後は私だな。好きなことはモンスターと戦うこと、嫌いな人はライだ。ちなみに私も猫は好きだぞ」


 うん、好きなことと嫌いな人は知ってた。戦ってるときはホントに楽しそうだったし、ライと会った時は心底いやそうな顔をしていたしな。

 ていうか猫の好き嫌いを言うのは絶対なのか?


「とりあえず分かった。みんな猫が好きなんだな」


「そこ重要なんですか? ていうかみんなが猫が好きってぐらいしか新しく知ったことがないんですけど……」


「ならこの情報を有意義なものにしたいんならパーティ名に猫を入れるか?」


「…………まあ違和感なく取り入れられるなら別に反対しませんが……」


「良し、ならパーティ名には猫を入れるという方向で決まりだな。マサト! 例を一つ頼む!」


「えっ!? そ、そうだな、じゃあ……」


 名前に猫を入れる、縛りがある分幾分楽だが、どんな感じにしようか。

 猫の部分はパーティ名っぽくキャッツとかそんな感じにしようか。あとはもっと強そうにしたいな。普通に猫を入れたんじゃ周りの連中になめられかねない。

 何か、何かないかな?


「…………エストキャッツ」


「…………キャッツはともかく、エストってどういう意味ですか?」


「英語の最上級にはestを付けるだろ。つまりエストは最上級って意味だ」


「つまり、エストキャッツとは一番強い猫たち、そんな意味か…………いいじゃないか! 名前の響きも割と好きだぞ、私は」


「アカネも……それでいい」


「じゃあ決まりですね」


「…………マジで?」


 咄嗟に考えたにしては自分でもまあまあ良い名前だとは思うが、まさかこんなに簡単に決まるなんて……でもみんながこれで良いって言うなら別に文句はないな。

 むしろみんな気に入ってくれて何よりだ。


「それでは受付の人に申請しに行きましょう」


 俺たちは酒場で夕食を取った後、パーティ名の申請をしに行った。

 その際受付の人に何度も本当にパーティに名前を付けていいのか確認された。

 この世界では名前を付けたパーティは俺たちを除いてわずか13しか存在しないらしくかなり珍しいとのことだった。


「これでソウラはもうライなんかとは結婚しなくて済むな」


「ああ、本当に感謝する」


 これで問題は全て解決した…………はずだ。

 これからはクエストに専念できるはずだが、あいつらがこのままおとなしくするとは思えないけど、当面は平気だろう。


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