表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第二章 クエスト生活
22/115

第22話 「面倒くさい奴」

「ふう、やっと終わりました」


 ナナがレイトの配下の回復を終え、俺とレイトがいる酒場までやってくる。

 時刻は昼の1時、受付の人に手伝ってもらえなかったら本当に日が暮れてる所だった。


「ありがとうナナさん。本当に助かったよ。何かお礼をさせてくれないか?」


 おっ、レイトからの礼か、こいつは仮にも最強パーティのリーダー、相応の物が期待できそうだ。

 金もそれなりに持っているだろうし、今はボロボロだけどいい装備品だって持ってそうだ。


「いえ、当然のことをしたまでですから、お礼なんていいですよ」


 ナナ!?


「ほ、本当にいいのかい? 君たちの貴重な時間を割いてもらったのに……」


 そうだ、食い下がれレイト。

 俺が請求したらナナはきっとよく思わないだろう。お前が食い下がるしかないんだ。


「本当に大丈夫ですよ。ねっ、マサトさん」


「あ、ああ」


 俺はナナに話を振られ思わず頷いてしまった。

 

 本当はお礼が欲しい、ていうか金が欲しい。

 レイト、俺のこの気持ち、気付いてくれ!


「そうか、すまない。でも何か困ったことがあればいつでも言ってくれ。僕はしばらくこの町にいるからどんな時でも君たちの役に立って見せる」


 はあ、金は自力で何とかするか。幸い回復は昼に終わったからクエスト1つぐらいクリアできるだろう。


「マサトォォォォオオオオ!」


 突然のやかましくもウザったい声がギルド中に響く。

 この声はライの声だ。


「マサト! どこだ!」


 ギルドに入ってきたライは辺りを見回し俺を探している。

 俺がいる場所は酒場内に入らないと見えない位置にあるから見つかることはないだろう。


「マサト君、出て行かなくていいのかい? ここじゃ気付かれないよ」


「いいんだ。どうせろくなことじゃない」


 レイトはあいつのことを知らないからな、知れば俺の気持ちも分かってくれるだろう。

 ライがどれだけめんどくさいか。


「ライ! こんなところで騒ぐな! 迷惑だろ!」


 俺を探して喚き散らしているライにソウラが注意する。

 この上なく余計なことだがここで騒がれると他の奴にも迷惑だろうから仕方ないか。


「おおソウラ、話はお父さんから聞いたよ。半年後に俺と結婚してくれるって。今日はその件でマサトに一言いいに来たんだ。奴はどこにいる?」


 こいつは、前の勝負の時もそうだがいちいち宣戦布告しなきゃ気が済まないのか?

 だがまあ、こいつのこの口ぶりから考えると誓約については何も分かってなさそうだな。

 別に気付かれても問題はないが、めんどくさいことになりそうだから半年後まで言わないでおこう。


「マサトなら酒場にいる。さっさと話を済ませて来い」


 ソウラ!?


「サンキューソウラ、愛してるぜ! マサトオオオオ!」


 ソウラから俺の場所を聞いたライは駆け足で酒場まで入ってくる。


「見つけたぞ! 貴様、俺のことに気づいていただろう! なんで出てこない!」


「…………」


「おいっ! 聞いてるのか!」


 聞きたくないんだよ。お前と話すのはめんどくさいから、どうせ勝負のことだろ。


「マサト君、何か話さなくていいのかい?」


 レイトの奴、こいつのことをめんどくささを知らないからそんなことが言えるんだ。

 見ろ、ナナだって無視を決め込むつもりだぞ。


「いいんだ。俺には何も聞こえない。聞きたくもない。レイトも無視しとけ」


 俺の言葉を聞いてライはより一層の怒りを言葉に込める。


「てめえ! ふざけてんじゃねぇぞ! この卑怯者が!」


「…………卑怯者?」


 何故俺が卑怯者と言われなければならない。

 こいつは誓約には気づいていないはず。だとすれば別のことで俺のことを卑怯者と言ってるのか。一体何に関してだ?


「卑怯者だろ。何か卑怯なことをしなきゃお前らがダルトドラゴンに勝てるわけねぇだろ。いくら勝負に負けたくねぇからって、本当にだせぇよ」


「お前、人のこと言えるのか? 冒険者を雇っていたくせに」


 ライは一瞬眉をピクっと動かすが、すぐに笑みを浮かべる。


「なんのことだ? 俺は自力でランクアップしたぜえ。それとも俺が冒険者を雇ったって証拠があんのか?」


 こいつ、いけしゃあしゃあとよくもまあ嘘をつけるもんだ。

 バカのくせに。


「まあそこはどうでもいい。で、何の用だ?」


「ふっ、今日はお前に感謝しに来たんだよ」


「感謝?」


 なんだ、何を言ってるんだこいつは。

 ライが俺に感謝? 明日雪でも降るんじゃないか?


「今回の勝負、誓約書まで書いたらしいじゃないか。そんな俺にとって利しかないことをしてくれて、ありがとよー。ハーッハッハッハッハ!」


 ライの笑い声が酒場を超えて、ギルド中に響き渡る。

 俺は心底こいつが底なしの馬鹿で助かったと思っている。


「マサト君、勝負って何のことだい?」


「先にランクアップした方がソウラを手に入れられるって勝負だ」


「なんだって!? 君は、仲間を賭けたってゆうのか!?」


「大きな声出すなよ。ただでさえやかましいのに」


 ライの声もいい加減耳障りになってきた。

 それに加えてレイトまで大きな声を出すもんだから俺のストレスがかなり溜まってくる。


「だって、分かっているのか? 次のランクアップのモンスターはダルトドラゴンとは違う。弱点が分かっているのに当てられない、そんなモンスターなんだよ! このライって人は君たちとは違って弱点とは関係なくダルトドラゴンを倒したみたいじゃないか! 今の君たちじゃ勝ち目なんかないよ!」


 レイトの奴、どうやら今までのライの話を全部信じているらしい。

 お人よしもここまで来るとかなりのもんだ。


「落ち着けよレイト。ライも、用が済んだら早く行け」


「ふっ、せいぜいソウラとの半年間、楽しむんだな。ハーッハッハッハッハ」


 高らかな笑い声を上げながらライはギルドを後にした。

 何も知らないその姿は俺の目にはひどく哀れに映った。


「マサト君! 見損なったよ! 君のことを仲間思いの賢い奴だと思っていたのに」


「ほら、これがライと交わした誓約書、勝負の内容だ」


 正確にはソウラの父親、ゴーマと交わした誓約書をレイトに渡す。

 こいつなら事情を話してもいいだろう。


 レイトは受け取った誓約書を静かに読み、読み終えると誓約書を俺に返しにらみつけてくる。

 その目には怒りが込められているのが俺にもよくわかる。

 元引きこもりの俺からしたら、良い奴のこんな目を見せられたら逃げたくてしょうがない。


「マサト君、君はどういうつもりでこんな勝負を受けたんだ?」


「ソウラが俺たちのパーティでい続けられるのは半年だけ、そう思わせてから勝負を受けた」


「…………どういうことだい?」


 忘れてた。こいつは底なしの良い奴だったがそこまで頭がいいわけじゃなかったんだ。


「俺もお前らと同じようにパーティに名前を付ける、それだけだ」


「……………………あっ!」


 数秒の沈黙の後にレイトが声を上げる。

 そして俺に渡した誓約書をさらっと奪い取り再び目を移す。


「これは……つまり……」


「ソウラがパーティを抜けられなくなるまで、つまり名前を付ければ半年間じゃなくて一生仲間でいられるってことだ」


 レイトが誓約書を俺に渡し、頭を下げる。


「すまなかった。ろくに考えもせずに君のことを見損なっただなんて言ってしまって、本当に申し訳ない!」


「別に気にする必要はない。お前みたいな反応は普通だ」


「だが、僕は自分で自分が許せない。君の仲間に僕の仲間を回復してもらっておきながら……君が仲間を賭けの対象にする人じゃないって分かっていたはずなのに、一時とはいえ、君を……見損なってしまった」


 レイトの俺に対する評価も随分と上がったものだ。

 俺なんか仲間に恵まれているだけで、レイトと比べたらそこらへんの石ころレベルの存在なのに。


「やはり君たちには何か、何かさせてもらえないと気が済まない。何だって言ってくれ。君たちの配下になれと言うのならいくら僕の仲間が反対しようとも配下になる。お金だって僕の全財産をあげてもいい」


「そうか、じゃあお前の持ってる金を全部――――」


「マサトさん」


 ナナが俺の言葉を遮りジト目で見つめる。

 これはあれだ、俺がレイトから何かもらったらナナがレイトの仲間になるとか言い出しかねない。


「分かったよナナ。レイト、さっきも言ったが気にするな」


「だが、それじゃ僕の気が……」


 こいつも強情だな。ていうかこいつのこの何かしなきゃ自分の気が済まないってのは、完璧に自分の為だよな。そこんところをこいつは分かってなさそうだ。

 だけどこのままじゃこいつは引き下がらないな。

 何かいい方法は…………そうだ!


「じゃあレイト、もしもライがこの誓約について文句を言って来たら、その時はあいつの説得に付き合ってくれ」


「……説得に?」


「ああそうだ。この誓約、文面から考えると完全に俺たちに理がある。だけどライは認めないかもしれない。だまされた、この卑怯者が、とか言って勝負自体をなかったことにするかもしれない」


 まあ実際だましたようなもんだけど。


「その時はお前も立ち会ってライの説得に協力してほしい。お前ほどの奴ならライも文句は言えないはずだ」


「ああ……そんなことぐらいならお安い御用さ!」


 これでこの誓約はほぼ確実な物になった。

 最悪の場合この誓約書をライかゴーマの雇った冒険者に奪われ勝負自体を反故にされる可能性もある。

 だがレイトの後ろ盾があるというのなら多少の抑止力になるだろう。


「それじゃこの話は終わりだ。俺たちはクエストに行く」


「ああ、僕はこの町の中心にある宿屋にいる。いつでも来るといいよ」


 町の中心の宿屋か。確かあそこって1部屋1泊1000Gもする宿屋だったな。

 俺たちは1部屋1泊10Gの宿屋だっていうのに1000Gの宿屋なんて、さすが最強パーティ、金なんていくらでもあるってか。


「俺たちもいつか、いい宿屋に住めるといいな」


 そのためにはまず、クエストだ。

 レイトのせいで時間があまりないがとりあえずクエストを探そう。割の良いクエストを。

 今日からは長い間クエスト生活だ。

 とりあえずもっと宿屋に住めるぐらいまで金をためる。

 それが当面の目標だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ