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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第二章 クエスト生活
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第17話 「予想以上に弱くて強かった」

 俺たちは傷ついたライとシズクに回復魔法をかけて一緒に街まで向かう。

 シズクはともかくライにまで回復魔法をかけるなんてナナは優しいな。


 町に着いた俺たちはギルドに向かいライのパーティに事情を尋ねる。


「お前たちはあんな所で何をしていたのだ? 時間的にもダルトドラゴンと戦ったわけでは無いだろう?」


 ソウラの言う通りだ。俺たちがライたちを見かけたのは6時よりも10分ほど前、まだ夜のモンスターは出てこないはずの時間だ。

 だがそうなるとライ達は昼のモンスター、つまりドラコキッドレベルのモンスターにやられたってことになるけど、さすがにそれはないだろう。

 俺が何があったのか考えているとミリトが口を開く。


「実は、ドラコキッドにやられまして……」


 マジかよ!? ドラコキッドに!?


「お前たち、仮にもレベル2だよな? ライもレベル5のはずだし……」


「森に入ると30匹ほどのドラコキッドに囲まれまして、僕たちはなんとかライ様を守りながら戦ったのですが……その……」


 ミリトは気絶しているライをチラチラ見ながら非常に言いづらそうにしている。

 言葉を濁すミリトの代わりにシックが話し始める。


「ライ様が俺が蹴散らしてやるとドラコキッドに向かっていきまして、その……返り討ちに会い火を噴かれ、尻尾で叩かれ、めちゃくちゃでした。それをシズクさんが助けようとしたのですが、ライ様が身を屈めながら手を周囲に向けそこら中に魔法を放ちまして、シズクさんがその魔法に当たりまして……」


 なるほどな、全部ライの所為か。

 いくらタコ殴りにあったからといってろくに周りを見ずに魔法を放つなんて、危険すぎるだろ。

 そもそもこいつ、レベル5のくせにドラコキッドにやられるなんて、予想以上に弱すぎだろ。


「あの、回復魔法をかけてくれてありがとうございました。僕たちはそろそろライ様のお屋敷に戻ります」


 ミリトとシックが頭を下げ、ライとシズクを抱えてギルドを出る。


「しかしライって、想像以上の弱さだったな」


「うむ、まさかあれほどまでとは思わなかった。全く情けない。シズク達も大変だな」


 本当にシズク達がかわいそうだ。あんなのと半年間もパーティを組み続けなくちゃならないなんて。


「まあライの弱さは置いといて、困ったことになったな」


「困ったこと……ですか?」


 ナナが不思議そうな顔で聞いてくる。


「ああ、あいつがあそこまでボロクソにやられたらさすがにな」


「どういうことだ? ライがやられたからといって私たちには関係ないだろう」


「あそこまで手ひどくやられたんだぞ。お前らならあんなにやられた後でまたモンスターと戦おうと思えるか?」


 俺の質問にソウラは堂々と、ナナとアカネはおどおどと答える。


「無論だ! 何度やられようと私は戦い続ける」


「私は……多分無理です」


「アカネも……いたいのはヤダ」


「ソウラはともかく、ナナとアカネが普通だ」


「かもしれないが、だとしたらどうだというのだ?」


「ライはもう戦わないってことだ」


 俺の返答にソウラとナナはさっき以上に不思議そうな顔をしている。


「戦わないのなら、別にいいのではないか?」


「そうですよね。そうしたら勝負も私たちが勝てますものね」


 確かに普通ならそう考えるだろう。ライが普通の冒険者だったら俺もそう思ったさ。だけどライは普通の冒険者じゃない。


「いいかよく聞け。ライが戦わないとしてもあいつが勝負を放棄すると思うか? いいやしないだろうな。この勝負はソウラを手に入れられるチャンスだからな。だからあいつはこの勝負に絶対に勝ちに来る」


「確かにそうかもしれないが、お前は今ライはもう戦わないと言っただろう。矛盾してるぞ」


「いいや矛盾していない。ライは、戦わずにこの勝負に勝ちに来るはずだ」


「戦わずにって……マサトさん!? もしかして!?」


 ナナは気付いたようだ。ソウラはまだ分かっていないようだ。


「ライは、おそらく冒険者を雇ってくる。そしてダルトドラゴンを捕獲しようとするはずだ」


 俺の言ったことを理解しソウラが驚きの表情を見せる。


「つまり、早くて明日にはライがランクアップするってことだ」


「ちょっとまて!? そんなことをされれば勝負に負けてしまうではないか!?」


「ああそうだ。だから困ったことになったって言ったんだよ」


「なら、私たちはこの勝負に勝てないということなのか?」


 ソウラの表情が不安に包まれている。

 そりゃそうだろう。負けたらこんな下卑た方法を使うやつと結婚させられるんだからな。不安にもなるだろう。


「予定を変える。俺たちは明日ダルトドラゴンに挑む」


「明日!? 今の私たちのレベルでは……お前は安全第一と言っていただろう!」


「今のまま行くとは言って無い。明日の昼にできるだけレベルを上げて夜に挑む。うまくいけばナナとソウラはレベル10になるだろう」


「だとしても、アカネはステータスが高いからそれでも問題ないだろうが、お前はどうなる!? お前はたとえレベル10になったとしても弱いんだぞ!」


 こいつ、人が気にしてることをはっきり言いやがって。確かに俺がレベル10になってもステータスはソウラのレベル3にも及ばないだろうけどさ。


「そこは、頑張るさ。それにライがこの方法を使うと決まったわけじゃない。あしたライと会って、この方法を使うそぶりを見せなければ今までの予定通りに行くさ」


 ライと会う確率なんてそんなにないだろう。あいつは冒険者を雇う。これは鉄板だ。そうなるとあいつは家から出てこないだろうな。


「ソウラさん、覚悟を決めましょう。私たちは明日、ランクアップするんです」


 ナナが真剣な表情だ。

 ソウラは諦めたかのような顔をしている。

 ナナはこれで意外と頑固だからな。俺が否定すれば渋々受け入れるが、その俺もナナと同じ意見だからな。


「これはもう、しょうがないな。みんな、明日は頼む」


 最近ソウラはらしくないな。

 ソウラはもっと偉そうで、自分の意見を押し通そうとする奴なのに。


「まかせとけ。ダルトドラゴンなんて楽に倒してやる。今日の所はもう家に帰って明日に備えよう」


 俺たちは宿屋に、ソウラは家へと向かう。




翌日


「ついに、時間か」


 俺たちは森の近くにいる。時刻は6時少し前

 レベル上げはあまり順調ではなかった。あそこでのレベル上げはもう限界なのか、俺たちのレベルは俺が2、みんなは1ずつしか上がらなかった。


「レベルは少し足りないが、何とかなるだろう」


 俺は縛りプレイで裸装備のレベル3で戦って勝ったことがあるんだ。

 自信を持て、俺はみんなほど力はない。だけどゲームで鍛えた考える力がある。


「いいか、敵が出てきたらまずは俺が魔法を撃って俺に注意を向ける。その隙にソウラとアカネは接近するんだ」


 これが今のところできる最善策だろう。

 俺の攻撃はナイフも魔法もダメージを負わせられないだろう。だが、ソウラは良い武器を上手に扱え、アカネはステータスがずば抜けている。

 この2人の攻撃がうまく当たればきっと勝てるはず。


「ナナは魔法はあまり撃つな。ソウラとアカネが危険だと思ったら撃て」


「はい!」


 ナナには今回は回復に専念してもらう。考えたくはないが、ソウラとアカネがダメージを負う可能性が十二分にあり得るからだ。


「……そろそろだな」


 時刻は6時になった。初日の時のようにすぐに出てくるはず……


「グルアアアアアア」


 モンスターの鳴き声、これは間違いなくダルトドラゴンだ。

 俺たちは声のした方を振り向く、そこには紫の体をした4足歩行のドラゴンがいた。

 大きさは俺たちが初日に見たものよりも大きい。3mはありそうだ。


「みんな! まずは手筈通りに行くぞ!」


 俺が指示すると同時にソウラとアカネはドラゴンの後方に向かって走り出す。

 ドラゴンは2人に顔を向け口を開き炎を噴こうとしている。

 させるか!


「ファイア!」


 俺の手のひらから放たれた火球はドラゴンの顔面に向かって真っすぐ飛んでいく。


「グルアア!」


 ドラゴンが火を噴くのを中断して俺の放った火球を食った。


「はあ!?」


 俺の攻撃が効かないのは予想通りだったけど、まさか食うとは……だが注意はこちらに向けた。


「行くぞ! アカネ!」


「うん!」


 ソウラとアカネがドラゴンの横に立ち剣を振るう。

 よし、計算通り。2人の攻撃をまともにくらえばダルトドラゴンだってただでは……


「ギイィアア」


 ドラゴンが吠えると同時に尻尾を振りアカネを攻撃する。


「キャアッ」


「アカネッ!」


 ドラゴンの尻尾をまともに喰らい吹き飛ぶアカネ。

 俺とナナは急いで吹き飛ばされたアカネのもとに向かう

 まさか尻尾で攻撃してくるなんて、ゲームにないことやられると困るが、ソウラの攻撃は当たったはず。


「グアアアアア」


 ドラゴンの体にソウラの剣が突き刺さっている。

 あの場所はゲームで弱点だった場所……これで終わってくれ。


「ギャアアアアア」


 しかしドラゴンは刺さった剣などまるで意に介さずソウラに顔を向ける。


「あれは……ソウラ! 逃げろ!」


 俺の叫びと同時にドラゴンはソウラに向けて炎を放つ。

 ドラゴンの炎はドラコキッドの火などとは比べようもない。火炎放射と呼べる代物だった。


「ソウラ!」


「大丈夫だ! 何とか避けられた。しかし武器が……」


 ソウラは炎をなんとか避け突き刺さった剣を抜き取ろうとするが抜ける気配が全くない。


「一旦離れろ!」


 ソウラは刺さった武器をそのままにダルトドラゴンから距離をとる。


「アカネ! 大丈夫か!?」


 俺とナナは飛ばされたアカネのもとにたどり着きナナが急いで回復魔法をかける。

 見るとアカネのダメージはかなり深そうだ。

 ステータスだけならレイトにレベル30相当と言われたのに、ダルトドラゴン強すぎだろ。


「ナナはアカネを見ていてくれ」


 俺はナイフを構えてダルトドラゴンに向かう。


「マサトさん!? さすがに無茶です!」


 分かっているさ、そんなこと。俺のナイフと魔法じゃダメージを与えられない。だから俺のやることはあいつを倒すことじゃない。

 俺の役目、それは、こいつの弱点を見極めること。

 注意して戦えば致命傷は避けられる。

 こいつは予想以上の強さだが、俺でもそれぐらいは出来るはず。


「グルアアアアアア!」


 こっ、怖え。

 だけどやらなきゃいけない。ここでこいつを倒せなきゃ、ソウラが……


「やってやらあああああ!」


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