第12話 「感謝」
あれから数日、俺たちは何事もなく過ごした。ナナはアカネの世話を率先してやってくれるし、ソウラも昔使っていたという装備品をアカネの為にいくつか持ってきてくれて装備を整えてくれた。あの時逃げたくせに思う所があったんだろう。
おかげでアカネの装備は俺とナナ以上に充実している。ステータスも俺よりかなり高いしよっぽどのことがない限りこのあたりの敵に後れを取ることはないだろう。
「今日はどうしようか」
アカネには装備を与えたし俺もナナの魔法を受けたおかげで弱いのなら使えるようになったからそこらへんのモンスターで試してみようかな。ちなみに魔法は超痛かった。レベルが上がったから魔法の威力が多少上がったそうだ。回復魔法を持っているナナがいなかったら絶対やりたくない。
それと俺の魔法属性は火と水だった。
ナナの話によるとこの世界の攻撃魔法は火、水、風、光、闇の5種類しかないそうだ。だが数は少ないが1つ1つの範囲がなかなか広い。例えば水の魔法なら氷も含まれるし光の魔法なら雷も含まれる。
まぁ魔法の才能が開花されたばかりの俺はまだちっちゃい火と少量の水しか出せないけど。
「お父さん、この剣と盾ってずっともってなきゃだめ?」
アカネが聞いてくる。
アカネに持たせたのは俺の持っているナイフよりも長い片手直剣、ソウラが持ってきてくれたのでいくらかは分からないが店のものと比べても推定1000G、ナナの盾よりも武骨で可愛らしさはないが防御力が優れていそうな盾、こちらもソウラの持ってきたもので推定2000G。間違いなくパーティ最強はアカネだ。
まあ実践ではおそらくソウラの方が強いだろうけど。
「これからモンスターと戦いに行くからそれが終わるまで持っていような」
「マサトさん、もうモンスターと戦わせるんですか?」
「ああ、そのために装備を整えたんだろうが。なーに心配するな、アカネのステータスとこの装備ならここら辺の奴じゃ傷ひとつ負わせられないよ」
「確かにそうですが……アカネちゃん、今からモンスターと戦いに行きますけどつらくなったらすぐ言うんですよ」
「うん、わかった!」
いつも世話をしているからナナにはすごいなついてるな。こういう光景を見てたらなんか、心が洗われていく。
「よし、じゃあいくぞ。ナナ、アカネ、俺の後をしっかりとついてこいよ」
「はい、分かりました」
ナナが元気よく返事をする。アカネは返事をせず俺の後ろではなく横に来て手をつなぐ。
外に出るときはいつも俺の隣に来たがるな。やっぱりまだまだ甘えたいんだろう。
……それにしても、何か大事なことを忘れてる気がするんだよな。なんだっけ……
まあいいや、いつだか誰かが忘れてるなら大したことじゃないって言ってるのを聞いたことがある。これも別に大したことじゃないだろう。
俺たちは町の外に行く途中ソウラと遭遇し一緒にモンスター退治に出かけた。
「おっ、いたいた。アカネ、今日はあいつらを倒すんだ」
俺たちの目の前にはおよそ10匹ほどのドラコキッドがいた。主のレッドドラゴンがいなくなったったからもしかしてもう出ないんじゃないかと思ったが問題なかったようだ。
「あの子たちを?」
「ああそうだ」
「わかった、やってみる」
おっ、やる気はあるみたいだな。ドラコキッド達を怖がったりしたらどうしようかと思ったが心配はいらなそうだ。
「アカネ、あいつらの頭をその剣で狙うんだ」
「うん、わかった」
アカネが剣を抜き構える。ステータスが高いから子供なのに片手でも剣を装備できる……のはいいんだが……
「アカネ、俺の手を握っていたら盾を持てないぞ」
今のアカネは左手に剣、右手に俺の手、そして左腰に盾というスタイルだ。
「でも、盾を持ったらお父さんの手をにぎれない」
うん、そりゃそうだけどさー、まさかモンスターを目の前にしても俺の手を握りつづけるとは……むしろモンスターの目の前だからか。
「アカネ、盾を持っていなかったらあいつらが攻撃してきたとき自分のこと守れないだろ」
「わかった」
よし、分かってくれたか。賢いぞ、わが娘よ。
「これで……いい?」
アカネは剣を納め右手で俺の手を持ち左手で盾を持った。
「ほお、考えたな。アカネは賢いな」
ほめてんじゃねぇよソウラ! このままでどうやって戦うんだよ。
「マサトさん、やっぱりアカネちゃんにはまだ早いんじゃ……」
確かにアカネはまだ幼い。戦うにはまだ早いのかもしれない。だけど戦う力は身につかせなきゃいけない。俺たちは一応は世界を救うために戦うんだ。危険なところに長い間い続けるかもしれない。その時アカネはどうする?
宿屋に置いていくにしてもこんな幼い子を一人にすべきじゃない。かといって俺たちは少ない、誰かが残るわけにもいかない。
なら連れていくか? それも危険だ。これから先、モンスターはどんどん強くなっていくはずだ。守りながら戦うなんてとても出来ない。まして手をつなぎながらなんて不可能だ。
アカネには酷かもしれないが戦う力を身につける必要があるんだ。これはアカネの為なんだ。
「いいかアカネ、俺たちはこれから危険なことがいっぱいの所に行くんだ。その時とてもじゃないがアカネを守りながら戦うことは出来ない」
アカネは黙って俺の話を聞く。
「そんなときアカネはどうする? 宿屋で一人おとなしくしてるか?」
アカネは首を横にぶんぶんと振る。
「そうだろ。一人は嫌だろ。だけど俺たちは人が少ないからアカネと一緒に宿屋にいれないんだ。だからアカネが俺たちと一緒にいるには戦うしかないんだ。だけど手をつなぎながらじゃ危険なんだ。片手しか使えないし怪我をするかもしれない。分かるか?」
アカネは小さく頷く。
「分かったら両手を使ってあのモンスター達を倒してみな。俺たちも手伝うから」
「たおしたら、お父さんたちはいっしょにいてくれる?」
「ああもちろんだ。お前を置いてどこかへ行ったりしないよ」
「そうですよアカネちゃん。私たちはどこへも行ったりしません」
「そうだ、私だってできる限りアカネとともにいてやろう」
ナナ、ソウラ、お前らもアカネの事大事に思ってくれるんだな。なんかうれしくなってくるぜ。
「わかった。がんばってみる」
アカネは俺の手を握っていた手を放し剣と盾を持つ。
「いいか、あいつらの頭を狙うんだ。尻尾は堅いから当てないように気を付けろ」
アカネがおそるおそるドラコキッド達に近づく。俺たちもアカネのすぐ後ろでスタンバっている。
「えいっ」
アカネがドラコキッドの頭めがけて剣を振るう。
そういや突くように倒すって言い忘れてたな。
「ピキャアアア」
アカネの剣はドラコキッドの頭には当たらなかったが胴体に当たり体の半分ほど切った。
傷をつけられたドラコキッドは地面に伏し動かなくなる。
すぐさま他のドラコキッド達がアカネに襲い掛かる。
「させるか!」
襲ってくるドラコキッドにソウラは剣を突き刺し、俺はアカネの前に出て守り、ナナは魔法を放つ。
「ピキャアアアアア」
ソウラが3体ほどドラコキッドを倒すと他の奴らが逃げていく。
「よしっ、よくやったぞアカネ。1体倒せたな」
俺はアカネの頭をなでながらほめる。
「えへへ」
とてもうれしそうだ。
「それにしても、頭を外しはしたが胴体を切って倒すとは、武器の性能もあるだろうがアカネはセンスがあるな」
ソウラがアカネの戦闘の感想を言う。
確かにアカネの攻撃はなかなかすごかった。剣を振るうスピードは俺よりも数段速く、ソウラの剣を突く速度とも遜色なかった。
少し自分が情けなくなってくるが戦力が増えたんだ。素直に喜んでおこう。
「よーしみんな、この調子でガンガン倒していこうぜ!」
「「「おー!」」」
あれから2時間ほど経った。
俺たちはドラコキッドを最低でも50匹は倒していた。大半はアカネとソウラが倒したが……もしかしなくてもパーティ最弱は俺だな
「マサトさん、そろそろお昼です。休憩にしませんか?」
「もうそんな時間か。分かった、一度町に戻ろう」
俺たちは町に向かって歩き出す。
「いやあそれにしても、4人いると楽に倒せるな。モンスターをサクサク倒してこの2時間だけでレベルも1上がったぞ」
ソウラの奴レベルが上がったのか。俺はまだレベル2なのに、やっぱ元々の素質がないからレベルが上がりにくいのか。
そういやアカネの倒した分の経験値は手に入らないのか。クエストを共通の物にしてない…………し
「しまったああああああ!」
「い、いきなりどうしたんですか!?」
「クエストだよ! ギルド加入クエスト! 俺達まだクリアの報告してない!」
「なっ!? そういえば確かにしていなかったが、この場合どうなるんだ?」
ソウラが質問しナナが答える。
「たっ、確か期限内にクエスト達成の報告をしなければクエスト失敗とみなされ、ギルド加入クエストは1年間受けることは出来ないのでギルドには入れないことになります」
「ナナ! 期限はいつまでだ!?」
「あと20分ほどです!」
「走るぞおおおおお!」
俺はアカネを抱え走り始める。ナナとソウラも全力で町に向かって走り出す。
ここからだと20分はギリギリか? くそっ、調子に乗って町から離れすぎた。
「お父さん、どうしたの?」
アカネが心なしかうれしそうに聞いてくる。抱っこがそんなにうれしいのか?
「大事な用があったんだ! いますぐ町に戻るんだ!」
もし間に合わなかったら1年もギルドに入れない。そうなったら世界を救うどころじゃない。
「ハアッ、ハアッ、ちょっとヤバイな」
さすがに子供を抱えながらだと疲れる。レベルが1上がってるとはいえ俺のステータスはやっぱり一般人よりも低いんだろうか?
「お父さん、アカネじぶんではしろうか?」
アカネが不安そうな面持ちで聞いてくる。
確かにアカネのステータスは俺よりも高い。足もそれなりに速いだろう。だけどさっきの戦いで分かった。たとえステータスは高くてもアカネはまだ子供、体力はそこまで高くないんだ。ここからギルドまであと3キロちょい、走り切れるとは思えない。
「大丈夫だ。俺はまだまだ平気だぞ」
正直ちょっとヤバイ。だけど子供の目の前だからかかっこつけたい自分がいる。親の気持ちってこんなんなんだろうか。
俺たちが町に向かって走っている最中20匹ほどのドラコキッドが現れた。
「「「ピキャアアアアア」」」
「くそっ、こんな時に限って」
どうする、さすがに1匹ずつ相手している暇はない。魔法で追い払うか? だけど俺の魔法はもとよりナナの魔法でもあいつらを倒す威力はない。ここは俺がおとりになって……いや、俺一人じゃ20匹は無理だ。1分ともたずに殺される。どうすれば——————
「ここは私に任せろ! お前たちは先に行け!」
ソウラが剣を抜きドラコキッドの前に出る。
確かにソウラなら20匹でも持ちこたえられるかもしれないが下手すれば……
「ソウラさん!? ですが————」
「私たちのクエストは共通の物になっている。お前たちがクリアの報告をすれば私もクエストクリアした扱いになる。違うか?」
「確かにそうですけど20体を一人ではさすがに……なら私も残ります。マサトさん、先に行ってください」
ナナもソウラと一緒にドラコキッドの前に立ち盾を構えながら魔法の準備をする。
ナナが戦うぐらいなら俺が……いや、ナナ一人に行かせればモンスターに襲われたとき対処できないし、なによりギルドどころか町にすら行けないかもしれない。
「ナナ、ソウラ、頼む! 絶対に間に合わせる!」
ドラコキッドをナナ達に任せ俺はギルドに向かって走る。
頼む、もうモンスターは出ないでくれ。
走り始めてからもう10分、あと5分もせずに町に入る。このまま普通にいけば間に合う。
「ピキャアアアア」
い、今のはもしかして、ドラコキッド?
俺が声のした方を向くと5体ほどのドラコキッドが俺を襲ってくる。
「くそっ! でもこの数なら、アカネ! 戦うぞ!」
「うん、わかった!」
俺とアカネは武器を取りドラコキッドに立ち向かう。
5体なら俺一人でもなんとか勝てる数だ。アカネと一緒なら1分もかからないはず。
「ピキャアアア!」
「うおおおおおおおお!」
「ハアッ、ハアッ、アカネ……すぐ走るぞ。悪いけど……抱える体力は……もうない。自分で……走ってくれるか?」
「うん、だいじょうぶだよ」
俺たちはドラコキッドを1分ほどで倒しギルドに向かって走り出す。はっきり言ってもう体力がほとんど残ってない。
だけど間に合わせなくちゃいけない。ナナとソウラが頑張ってくれているんだ。アカネも頑張ってくれている。ここで諦めたら、男じゃねぇ!
俺は走った。ギルドに向かって走る。足が鉛のように重い。うまく空気も吸えない。こんなに長い間走るのは中学のときのマラソン大会以来だな。あの時は確か150人中143位だったかな。
昔を思い出しながら走っているといつの間にか町についていた。
「ここまで来れば歩いてでもギルドまで3分とかからないな」
俺は少しスピードを落とし小走りでギルドに向かう。アカネはかなり息が荒くなっている。結構きつそうだ。
「アカネ、もう町に着いたから安全だ。お前は歩いて先に宿屋に戻ってていいぞ」
「だいじょうぶ、わたしも、お父さんと、いっしょに行く」
アカネは俺に付いていこうと懸命に走る。
そしてようやくギルドに着いた。
ギリギリ間に合った。残り時間はあと3分
「ふう、アカネ、頑張ったな。着いたぞ。お疲れさま」
俺とアカネはギルドに入り受付まで行く。
「加入クエストをクリアした。確認して……っとその前に、この子と俺のクエストを共通の物にしてもらえるか?」
俺は受付の人に自分のとアカネのカードを渡す。
「同じものにですか、申し訳ありませんがそれは出来ません。クリア条件を達成してるクエストはもうだれとも共通の物には……あれ、この子はもうあなたとクエストを共有してますよ」
「えっ?」
俺は受付の人からアカネのカードをもらい見てみる。するとそこには俺たちと同じクエストが書かれていた。
これはもしかして、あの神の仕業か? ほとんどろくなことしかしないくせに気が利くな。
「それじゃあクエストクリアの確認をお願いする」
「はい、確かに確認しました。これであなたとあなたのお仲間たちもギルドに加入されました。お仲間の方々は今日来れますか?」
「ああ、今は来れないがあとからなら来れる」
「では後ほどお仲間の方々と一緒にもう一度こちらにいらしてください。ギルドの説明をいたしますので」
「わかった。アカネ、すぐ戻るぞ。ナナとソウラが心配だ」
「うん」
俺とアカネはすぐにギルドを出てナナとソウラがいるはずの場所へと向かった。
「おおマサト、ギルドに加入できたみたいだな」
ソウラとナナの足元に20匹を超えるドラコキッドと他のモンスターの死体が転がっていた。
「二人とも、こんなに倒したのか?」
「ある程度モンスターを散らして帰ろうと言ったんですが、ソウラさんが全部倒したいといい、ドラコキッド達もなぜか1匹も逃げず、むしろ仲間を呼ぶよう鳴き声を出したのでこんなことに」
ナナは疲れ切った顔をして言う。
「そうか、大変だったな。ありがとう2人とも、2人のおかげでギルドに入ることができた」
「礼などよせ。これは私がギルドに入るために、自分のためにやったことなのだ。それに礼を言うのは私だ。お前とナナのパーティに入れてもらえなけらばギルドに入れなかっただろうからな」
「そうですよマサトさん。私だってマサトさんがいなかったら今でもあの神様のもとで働かされていたでしょう。私たちは当然のことをしたんです」
「2人とも……」
思えば俺には友達なんて今まで一人もいなかったな。小学生の時は俺は教室ではずっと一人で本を読んでいた。中学生になった時は……思い出したくもない。中学卒業した後は引きこもり、ネット上で仲良くなった人はいたが、リアルの友達は一人もいなかった。
だけど、今の俺には仲間がいる。
嬉しい。心の底からそう思う。
「よし2人とも、ギルドの人が説明があるって言ってたから戻るぞ」
「分かった」
「分かりました」
神、お前に殺されこの世界に転生したこと、今でも納得はできない。お前に対して決して良い感情は抱いていない。だけど、お前のおかげで初めての仲間に巡り合えた。そのことにだけは、感謝する。
ありがとよ
第一章はこれで終わりです。
気合が入ってつい文章が多くなってしまいした。




