神とイースのその後
イースは下界を半ば崩壊させた罪として、5万年の刑期を無の空間で過ごさなければいけない。
そして元神も、天界規定を破ったことによる罰を受けなければいけない。
この途方もない時間を、元神はイースと共に過ごすことを決めた。
「ねえあんた」
「どうしたんだい? 君から話しかけてくるなんて珍しいね」
「暇すぎるからよ。茶化すんなら二度と話しかけないわ」
「あはは、それもそうか。さすがに何もない空間にい続けたら、嫌いな人にも話しかけるか。で、なに?」
「……なんであんた、私と同じ罰を受けることにしたのよ?」
「まあ……僕は正直、君よりも罪深いと思っているから」
「はっ、確かにそうね。あんたのしたことに比べたら、私のしたことなんて屁でもないわね、けど……」
「けど?」
「あんた、悪気は全くなかったのよね。それが何よりもタチが悪いんだけど」
「そうなんだよねえ。僕としては善意しかなかったんだけど、いやはや、どうしてこんなことになったのか」
「バカだからよ」
「そのとーり。いやあ、まったく害がないから神になれたけど、無能ってのは最大の害なんだね。今回のことで身に染みたよ」
「そのくせ行動力もあるから、色々とやらかしてくれたわね……ま、中にはよくやったと言いたいこともあったけどね」
「何かいいことあったっけ? 全部裏目に出た気しかしないけど」
「マキナとアカネ、あの2人を作ったことだけは、あんたにしては上出来よ」
「あの2人が? 正直可哀そうなことをしたと思ってるんだけど」
「知ってんでしょ、私が魂の力を集めてたこと」
「知ってるけど、それがどうかしたのかい?」
「あの2人の魂、誰よりも綺麗だったわよ」
「……そっか。でもそれって僕のおかげかな?」
「ま、綺麗なのはマサトって子のおかげね。けど、あんたがあの子たちの魂を救うきっかけを作ったのよ」
「きっかけ?」
「てかあんた元となった魂を知らないの?」
「浄化の場に行く前の魂を適当に拾い上げたからね」
「……前言撤回、やっぱあんたクソだわ」
「え~、というかあの2人に何があったの?」
「ゴミ神が。アカネって子は幼くして死んだのよ。しかも目の前で父親を魔族に惨殺された光景を見た挙句、さらには1年の間モンスターのおもちゃとして生かされていたの」
「おお、なかなかヘビーな過去。で、マキナは?」
「貴族の奴隷として親に売られ、何年も慰み者になった挙句、飽きたって理由で手足をもがれて、最後には目玉をくり抜かれて、そこに毒を流されて死んでいったわ」
「これまたヘビーな過去。え、僕ってそんなに無残な殺され方をした魂を利用したの?」
「そうよ、しかも魂を浄化させないまま、深い傷を負った状態でね」
「罪深すぎでしょ、僕」
「ほんとにね。無能もここまで行くと目も当てられないわ」
「……ちょっとあの子たちに土下座したいんだけど」
「そう思えるだけまだマシね。ま、別にいいんじゃない? 私が魂に蓄えられた力を回収するときにはすでに傷はなかった。あの世界での、マサトと過ごした時間が傷を癒したのよ。ま、純粋無垢な存在であるが故の奇跡だけどね。普通の人間なら魂の傷なんてそう簡単に癒えはしないもの」
「マサト君には感謝だねえ」
「あの子もあの子で、可哀そうだったわね。あんたみたいな神に利用されたんだから」
「利用なんて人聞きが悪いな。僕は最悪な世界を少しでもマシにしたかっただけなのに」
「あんたのせいで最悪がさらに最悪になったんじゃない」
「その点に関しては本当に申し訳ない。まあ次の神はイスタ君だし、そんなことにはならないと思うよ」
「真面目だったものね」
「そう。だからマサト君がどれだけ頑張ったかを説いたら、死んだ彼を生き返らせてくれたんだよ」
「ふーん、いい感じのハッピーエンドになったものね」
「たまに近況を教えてくれてたんだけどね、結構楽しい日々を送って、無事に天寿を全うしたそうだよ」
「……そう」
「何か思うところがあるのかい?」
「別に。幸せで何よりよ」
「そう思えるのなら、どうしてあんなことをしたのか不思議でならないよ」
「元凶はあんたでしょうが。最初から神がイスタだったらこんなことはしなかったわよ」
「そっかあ……じゃあ、刑期を終えたら僕と一緒に、イスタ君のもとで働く?」
「……本気で言ってんの?」
「本気も本気さ。そもそもイース、君はあと数万年の時を過ごした後、どうするつもりだったんだい?」
「あらゆる権利を剥奪された私に、イスタのもとで働く以外の選択肢があるの?」
「ないだろうねえ」
「ったく、言っておくけど、ヘマしたら蹴とばしてやるからね」
「はは、今度は失敗しないように気を付けるさ。それに、たとえ失敗しても君がいてくれたら、何とかしてくれるだろ?」
「……うっさい」
やがて刑期を終えた2人は、神に従事し、下界の人々の安寧のために身を粉にするのであった。




