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クリア済みゲームを今度はリアルで救う  作者: エスト
第一章 ギルド加入
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第11話 「赤い髪の女の子」

「それじゃあ話してもらおうか。この女の子のことを」


 宿屋に着いた俺たちは早速この女の子について話を聞く。

 一応女の子にはナナに買ってきてもらった服を着せていると補足しておく。もちろんソウラの道案内とともに。


「うん、この女の子は僕が作ったんだ」


「作った?」


「そう、グラシャ=ラボラスを僕が殺してこの世界がどんな状況になったかはナナから聞いたよね?」


「ああ、お前の後先考えない行動のせいでこの世界が危機に瀕しているんだったな」


 俺は多少嫌味を込めて神に言う。しかし神は全く意に介さずに答える。


「それでね、一応僕も責任を感じて何か行動しようと思ったんだよ。だけど神の権限はもう使っちゃったからどうしようかなあと思ってね。その時考えたのが強い生命体を1から作って戦ってもらおうってものだったんだ」


 なるほどな、この世界のモンスターを殺すことは出来なくても、自分から作ることは出来るってことか。それで代わりにモンスター達を倒してもらって人間を助けようと、神にしては考えたな。


「じゃああの女の子はお前の娘ってことか?」


「娘っていうのとはちょっとちがうかな。あの子は性行為で作ったんじゃなくて神の力でちょちょいと作ったんだ。プラモを作る感覚かな」


 性行為って、もっと他に言い方なかったのかよ。


「神の力って便利だな、ていうかなんで女の子なんだ。男女差別とか関係なく男の方が力とか強いと思うんだが」


「この世界じゃ女の方が魔法の適性が高い傾向にあるんだよ」


 なるほどな、つまりこの世界じゃ身体能力よりも魔法を使える方が戦闘には役立つってことなのか。あとでナナにぶっ放してもらおうかな。


「それでね、ただ魔法が強いとかじゃなくてもっと別の力があった方がこの世界のモンスターに対抗できると思って、グラシャ=ラボラスの体の一部をエネルギー化してこの子に組み込んだんだ。そうしたらご存知の通りレッドドラゴンになっちゃってね」


 前言撤回、こいつ何も考えてない。


「いやあまいったよ。まさかモンスター化するとは夢にも思わなかったよ。とりあえずここまででなんか質問ある?」


 夢にも思わないって、確かに予想外のことかもしれないけどこいつの場合どんな可能性も考えてないだろ。

 それよりもまず……聞きたいことか。


「今のところ3つかな。まず最初に聞きたいのがレッドドラゴンは我が主、グラシャ=ラボラスって言ったんだ。これってどういうことだ?」


 神の話からするとあのドラゴンはグラシャ=ラボラスが死んでから作られた存在のはずなんだ。グラシャ=ラボラスを主と呼ぶのも、そもそも知っていることがおかしい。


「ああそれね、それは多分グラシャ=ラボラスだけじゃなくて他のモンスターのエネルギーも組み込んだから記憶が混ざったんだと思うよ」


 思うよって、こいつどこまで適当なんだよ。でもまあなんとなく理由は分かった。


「もう1つは、この子には自我があるのか?」


「自我? 他のモンスターたちの自我が交わりあった可能性ならあるけど、この子自体には自我はないと思うよ。なんでそんなこと聞くの?」


「レッドドラゴンが言ってたんだよ、私の中に何かが潜んでいるってな。それにこいつは俺たちがあの洞窟から逃げるときに待ってって言ったんだ。普通の女の子みたいにな」


 あの時のレッドドラゴンは普通の女の子だった。少なくとも俺はそう感じたからあのドラゴンの話を聞いたんだ。


「普通の女の子、か。多分だけどあの子を作った時に人間の魂を起動力にしようと体に入れたんだ。その魂の影響じゃないかと思うよ」


 こいつ、多分とか思うとか本当役に立たないな。まあでも多分それが本当のことだろうしいいか。


「それじゃあ最後の質問、なんでこいつは元に戻ったんだ?」


 これが一番の問題だ。こいつは俺が触ると急に光って体が崩れ落ち、中から出てきた。大体予想は出来るけど確認しときたい。できれば予想を裏切ってほしいけど……


「それは君のスキル、リバースのおかげだよ」


 やっぱりか! あーあ、これで俺のスキルがなんも使い道がないことが判明したよ。スキルが発現した時の俺の感動返せってんだよ。


「あのスキルはもともとこの子を元に戻すためのものだったんだ。いやーびっくりしたよ。本当は君たちがある程度レベルが上がったらそれとなく教えるつもりだったんだけど、まさかあの場所が見つかるとはね。すごいね、君」


 神がソウラに向かい称賛の声を上げる。

 確かにあの場所は偶然でもなければ見つからないだろうな。何人かは見つけたみたいだけど。


「いやあ、それほどでも」


 満更でもなさそうな顔でソウラは言う。


「で、なんで俺に元に戻させようとしたんだ。勝手に元に戻して連れ帰ればよかっただろ」


「それがそういうわけにはいかなかったんだよ。実はあのレッドドラゴンは天界じゃ1個の生命体として認められちゃってね、権限を使った僕はもう干渉できなかったんだよ」


 生命体としてか……ていうことはもしかして経験値が手に入ったんじゃ……

 カードを見てみるとそこには……レベル2と書かれていた。


「なんでだよ! お前の話から考えるとあれを元に戻すこと=殺すことなんじゃないのかよ! 何で経験値入って無いんだよ!」


「確かに元に戻す=殺すになるけど力の源は死体だからね。経験値はないんだよ」


 くそっ、ぬか喜びさせやがって。


「ああもう、お前もうこの子連れて帰れよ! もう質問はないからよ。さっさと帰れ」


「それは無理なんだ。天界から下界に生命体を送ることは出来るけどその逆は出来ないんだ。あ、僕は例外ね。この子はたしかに僕が作ったけど、もう僕の所有物というよりもこの世界の住人として登録されちゃったから連れ帰ることは出来ないんだ。頑張って」


 そういうと神の体が光に包まれた。


 逃がすか!


 俺は神が転送される直前に胸ぐらをつかみ殴りかかる。


「わああ、ちょっと待って! ストップ!」


 誰が待つか、俺を殺したと言った時から殴ってやりたかったんだ。

 

「くらえ—————消えやがった! チクショー!」


 俺の拳が当たった瞬間に神の転送が完了してしまった。

 あれじゃ殴ったとはいえねぇ。当たっただけじゃねぇかよ。


「クソが、いつか絶対に殴ってやるからなあ!」


「おしい、あと少しで殴れたのに」


 俺が悔しがっているとナナも悔しがっていた。ナナもあいつに苦労かけられてるからなあ。

 すると神が残していった女の子が目を覚ました。


「……? ここは……どこ?」


 女の子は辺りをキョロキョロ見回している。

 この子、結構かわいいな。まだ全然子供だけど綺麗な赤い髪に端正な顔立ち、将来有望だな。

 そういやこの子に名前ってあるのかな? 神の奴が名前を付けてるとは思えないけどドラゴンの時は自分の名前を分かってたよな。


「君の名前はなんていうんだ?」


「なまえ? アカネだよ」


「そうか、アカネか。なあアカネ、何か覚えてることないか?」


「おぼえてること?」


 質問が難しいか。もっと具体的に言わなきゃダメか。


「アカネ、年齢は?」


「……8」


「そうか、じゃあ神様ってわかるか?」


「かみさま? わからない」


 どうしよう、自分のことは名前と年しか覚えてない感じだな。

 アカネが俺の手をつかみ話しかける。


「おとう……さん」


 …………ん?


「お父さん」


 お父さん!? 何言ってるんだアカネは!? 俺の事父親だと思ってるのか? 記憶が曖昧みたいだけど俺の事父親と思うか? 一応年齢的には高校卒業したのと同じだぞ! 見た目的にもお父さんはないだろ。


「マサトさん、いつのまにこんな大きな子を!?」


「バカ! 今までの話で察せ!」


「マサト、男としてここは認めるべきだぞ」


「だからお前まで、今までの話聞いてなかったのか! 記憶が曖昧でこんなこと言ってるに決まってるだろ!」


 こいつら俺に押し付けようとしていやがるな。ソウラはともかくナナまで、仕舞にゃ泣くぞ。


「ちがうの?」


 アカネが泣きそうな顔でこちらを見てくる。

 そんな顔で見ないでくれ。違うなんて言えないじゃないか。


「マサトさん、ここは父親ということにしておきましょう。そのほうがいいです。この子の為にも」


「そうだぞマサト、この子の為にもお前が父親になってやれ」


 こいつら他人事だと思って……でも確かにアカネの為を考えたらここは俺が認めた方がいいのか。だけど実際には違うわけだしもしアカネが本当の父親のことを思い出したらまたさっきみたいに……


「お父さんじゃ……ないの?」


 くっ、こんな泣きそうな女の子に違うなんて言えるわけないだろ…………しょうがない、ここはアカネの為にも父親ってことにしておくか。


「アカネ、間違ってないぞ。俺はお前のお父さんだ」


 考えてみたらアカネは俺と同じ神に振り回された被害者だ。それにまだ子供なんだ。この子には拠り所が必要なんだ。俺が拠り所になれるかというと不安が残るがやるしかない。だってこの子がかわいそうすぎる。


「ねぇお父さん、あのひとたちはだれ?」


 アカネがナナとソウラを指さし聞いてくる。


「あの人たちはお父さんの友達だよ」


「そうですよアカネちゃん。私たちはあなたのお父さんのお友達のナナだよ。よろしくね」


「うむ、その通り。私の名はソウラ、よろしくだアカネ。おっともうこんな時間か。今日のところは私は帰らせてもらおう。ではまた明日ギルドでな」


 行かせるか!

 俺はソウラの腕をつかみ引っ張る。


「離せマサト! その子はお前の娘だろう。お前が責任をもって面倒を見ろ!」


「何が責任をもってだ! もとはといえばお前があの洞窟見つけてきて行きたいって言ったからだろうが! どう考えてもお前にも責任はある!」


「そうですソウラさん、あなたにも責任はあります。ていうかほとんどの責任はあなたにあります」


 よし、ナナも味方になってくれた。これでソウラの奴も納得せざる負えないはずだ。


「何を言う! あの神も言っていただろう。ある程度レベルが上がったら教えていたと! どうせこうなる運命だったんだ!」


 この野郎、どうあっても責任逃れするつもりか!

 俺とソウラが論争していると部屋の中に封筒がひらひらと舞い降りてきた。


「ん? なんだこれ?」


 俺はソウラの腕を握っていた手を放し封筒の中身を見た。

 封筒の中にはカードと手紙が入っていた。


『やあ神様だよ。

 あの子の名前アカネっていうんだってね。まさか名前まであるなんて驚いたよ。これも起動力に魂を入れた影響かな? とりあえずあの子のカードを作っといたから君に送るね。お父さん(笑)

 あとサービスで所持金は5000Gにしといてあげるよ。養育費だと思ってくれていいよ

 それじゃ、世界を救ったら迎えに行けるから、子育てと世界を救うのがんばってねー

 

 偉大な神様より』


 グシャッ


 俺は無意識のうちに手紙を握りつぶしていた。

 くそっ、ふざけやがって! (笑)とか馬鹿にしてやがんのか。世界を救ったら迎えに行けるだと、いつになるってんだよ。

 ……まあ、5000Gもあるのは救いか。それによくみるとステータスがソウラの3倍以上ある。レベルは1なのにさすがは神が作った女の子ってところか。


「しょうがないか。みんな、これから大変だろうけど頑張っていこうぜ」


 …………そこにはナナとアカネだけでソウラの姿はどこにもなく、鍵をかけていたはずのドアが開いていた。


「あのヤロオオオオォォォォ!」


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