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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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博士の独白

 小学校の卒業式の日、唯が得意げに付き合う宣言をしてきて、なぜだかむかついた。

 唯に先を越された感じがしてとても不快だった。なんでそんな気持ちになったのかまではその時は分らなかった。

 分らなくても、自分も唯をギャフンと言わせたいと思ったのは確かだ。俺は負けじと、近くにいた隣の席の女の子に告白したんだ。

 このとき、自分が振られることは想定していなかった。


 あの時はショックだった。ショックしすぎて、現実逃避した。

 いつだったか、唯にはギャルゲーにはまるのは時間の問題だったと言ったが、一つだけ言っていないことがある。


 たいして好きでもない女の子に告白して振られてこんなにショックを受けるなら、本気に好きになった女の子に告白して振られたら想像もつかないくらいのショックを受けるだろう。


 だったら、最初から誰も好きにならなければいい、と俺は考えを方向転換したんだ。


 人との距離を保ち、他人に深く干渉しないようしようと。


 一度手を出したら本気でゲームにハマり、授業が終わると、誰よりも早く教室を出て家に帰り、そのあとはずっと部屋にこもってゲームをする日々が続いた。


 特に意識していたわけではないが、ふと気づいたときには、俺の周りには誰もいなくなっていた。


 別にそれでもいいや、と思った。


 そのうち、俺がギャルゲーにハマっているという情報をどこからか入手したどこのクラスでもいるオタク一味が俺に接触してきた。

 彼らは俺が池袋のアニメマートでギャルゲーを購入するところを見ていたそうだ。

 それで、ゲームディスクの交換をしたり裏技情報の交換をするようになった。


 そんなある日、俺がいかがわしいゲームにハマっているという情報がクラス中に流れた。

 今までは、人付き合いの悪いおとなしいヤツ、で通ってた俺の印象が、人付き合いの悪いオタクでキモイヤツ、という目で見られるようになった。


 そして、ますます人と触れ合うことがなくなり、小学校で俺のことを知る同級生も、小学校のときの俺のことを忘れ、今あるオタクでキモイヤツという印象しかなくなっていったようだった。


 人に触れ合うことをやめ、ゲームに浸りつづける俺は周りに対する節度や気配りも失っていき、高校生になったときには、どこからどうみても自信をもって言える根っからのオタクになっていた。


 別にそれでもいいや、と思っていた。

 リアルの女にもてず、一生童貞でもいい。

 ヴァーチャルが充実していればそれでいい。


 事が起きるまでは。


 ダイヤは磨かねば光るまい。かつてノエルはそう言った。


 鉄くずや鉛なら磨いても光らない、と言い返す俺に、ノエルはさらに言った。


『みがけばそれなりになるものです』


 俺は自分のことをダイヤの原石だとは思わない。

 それこそ鉄くずや鉛みたいなものだろう。


 けれどこんな俺でも、変わることができた。

 ノエルが契約した通り、モテる男になれた。


 そして、予想していなかった大きな代償を払うことになった。


 モテる男には、ひっきりなしに女の子がやってくるため、それぞれに時間を作るのが大変だ。


 代償とは、ゲームをする時間が大幅になくなってしまったことだ!


 贅沢な悩みといえはそうなのかもしれない。


 けれど、これだけは言いたい。


 モテる男になるためには、見た目がいいとか、持って生まれた性格の良さというのは大きな利点だが、それよりもなによりも、努力が必要だということだ。


 俺がモテる男になれたのは、血のにじむような努力があってこそなのだ。

 時には穴があったら入りたいような恥ずかしい思いをしたし、時には、失恋に似た心境を味わった。


 そのたびに、俺は成長していけたと思う。


 天使の笑みで悪魔のような契約を所望してきたあの見習いエンジェルの姿を思い出す。


 今は見習いエンジェルじゃなくてエンジェルに格上げになったんだったか。

 あの白い翼はまさにエンジェルのものだった。


 今頃、新しいカップルを成立させるために、恋の矢を誰かに向けて構えているかもしれない。

 ノエルの姿が見えなくなった今、その矢が見当違いの人に当たらないことを祈ってやろう。


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