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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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期限迫る

 期末テスト最終日の金曜日、すべてのテストを終え、俺はとぼとぼと家路を歩いていた。

 いまだかつてない、テストの手ごたえのなさを感じていた。

 中間テストが思いのほかよかったから、高を括っていたということもある。

 しかし、根本的な原因は勉強不足だ。いままで学校の休み時間を利用して、宿題も予習も復習も済ませていた俺が、ここ最近、とくに文化祭を終えたあたりから、学校の休み時間には誰かが話しかけてきて、そのことで時間がつぶれ、放課後、ゲームをやるためにそそくさと家に帰ろうとすれば、誰かに呼び止められ、場合によってはカラオケやスウィーツ店などに寄り道して帰る日々。


 ゲームの時間を削るか勉強をする時間を削るか、という究極の選択を迫まれた。

 そして俺はゲームの時間を優先した。勉強する時間をおろそかにし、宿題は二ノ宮のものを写させてもらったりしていたのだ。


 千佳さんに癒されたい。

 三瀬や泉先生は、俺のテストの点数に幻滅するだろうな。

 安奈には再びバカにされるだろう。


 明日の土曜日は、三瀬が通っているダンススクールで発表会があり、みんなで応援に行く予定だ。

 日曜日は久しぶりに俺の弟子にして安奈の彼氏でもある山田とその友達が俺の家にゲームをしにくる。


 みんなと楽しい休日を過ごして嫌なことは忘れてしまおう。

 休日は確かに楽しかった。

 このまま時が止まってしまえばいいのにと思った。

 しかし無常にも時間は過ぎていく。


 あっという間に、月曜日がやってきた。


 はあ。学校行きたくないなぁ。

 テストの結果を見るのがこわい。


 はぁ。登校中、盛大なため息をついたところで声がかかった。


「小林先輩、おはようございます」

「おはようございます」


 二人の後輩女子である。文化祭のとき、クラスの出し物で執事カフェで、俺が執事をしていたときに、俺のことを褒めてくれた女子達だ。

 朝の登校時間はこうして一緒に学校に向かうことが日常になりりつある。

 俺は彼女たちにむりやり笑みを作った。


「ああ、おはよう」

「小林先輩、クリスマスとか、何か予定ありますか?」

「クリスマスの予定はとくにないな」


 期末テストを終えたと思ったらもうクリスマスの話か。気が早いなぁ。

 ノエルが何かを思い出したように大きな声をあげた。


「あっ!」


 どうしたんだ? と目だけで聞いてみる。ノエルは、


「大変、大変、大変ですぅ~。日数を確認しなくちゃ」


 と叫びながら去って行った。変なやつだ。


 前方に唯の姿を見つけた。


「クリスマス、まだ予定が入っていなかったら、一緒にどこか行きません?」

 唯の姿を見失いそうになる。


「ごめん。急ぎの用事を思い出した。その話はまた今度な」


 返事をするのもそこそこに、後輩たちに手を振り、駆け足で唯のところに向かう。

 なんだかんだで、いろんな人に妨害されて、唯と話せていないのだ。

 強行突破するしかない。


「唯、おはよう」

「ああ、ヒロ君。さっき見かけたけど、後輩の子たちとおしゃべりしていたから、追い越しちゃった。彼女たちをほうっておいて大丈夫なの?」

「大丈夫だ」


 言って、一気に走ってきたため、荒れた息を整える。


「どうしたの?」

「悪い。走ってきたからな」

「そうなんだ」


 しばらく一緒に歩いて荒れた息を整えた。唯はその間、俺の状態を理解したのか黙っていた。

 ようやく呼吸が正常になり、俺は口を開いた。


「アニスとはうまく行っているのか?」

「なあに? 気になるの?」

「な! ただの話題の提供だ」

「テスト期間中はアニス君と会わないことにしていたの。勉強に集中したかったからね。ほら、今回の期末テストって、三学年にどのクラスになるかを決める重要なテストだったじゃない」

「そういえばそうだったな」


 俺はその重要なテストで散々だったがな。

 生徒の中でひっそりと噂されていることがある。3学年のクラスは、成績順だというのだ。

 4クラスあるうちの、1組が将来有望な生徒が集まり、4組は見放された生徒が多いという。実際には3年生の4組にも優秀な先輩はいるし、1組には暴力沙汰を起こすような生徒もいる。

 だからただの噂に過ぎないだろうが、今のうちから、進みたい大学がすでに決まっている生徒にとっては、藁にもすがる心境なのだろう。


「唯はどこの大学に行きたいかって決まっているのか?」

「うん」


 唯が告げたのは倍率が厳しい有名な公立の大学だった。正直、今の唯の成績じゃあ、厳しいだろう。

 実は俺もそこを狙っている。家から通える距離にあるし、何より公立で学費が安いというのが理由だ。


「どうしてそこなんだ」

「まあ理由はあるけれど、ヒロ君には言わない」

「なんだ、それ」


 俺は前を向いたまま、訪ねた。


「アニスとは順調か?」

「アニス君とは普段もわたしが部活が忙しいから、部活帰りにマックで少し話をしたりするくらいなの。最後にアニス君と会ったのは、なかなか会えないからってわざわざ学校の門のところで待っていてくれたときだな」


 あの時か、俺はアニスと唯が二人並んで帰ったところを思い出す。


「アニスと一緒に帰ってどこに行ったんだ?」

「家に帰ったよ。アニス君には見送ってもらった感じ。そのときに、アニス君にテスト期間中は会えないっていったの。テストも終わったし、今日あたりアニス君と連絡を取ってみようかな」


 そこで校舎までたどり着き、同時に岡崎から声をかけられた。


「小林君、おはよう。平野さんもおはよう」

「おはよう、岡崎」

「岡崎さん、おはよう」


 唯は岡崎に挨拶すると、俺と岡崎を見比べた。


「あたし、先に行ってるね。じゃあ」


 唯を見送ると、岡崎は俺のほうを見た。


「平野さんと一緒に登校ねぇ。わたしが身を引いているうちに、何かあったのかしら?」

「たまたま会っただけだぞ」

「そういうことにしておきましょう。返事、今週中に欲しいわ」

「ああ」


 俺はひきつった笑みを浮かべた。岡崎に告白されたことをすっかり忘れていたからだ。


 数学の授業時間に、ノエルがすごい権幕でやってきた。


「博士様、博士様。大変です。大変なことが発覚しました!」


 響く音と言ったら泉先生が黒板にチョークを走らせる音と、それをメモする生徒たちの鉛筆を走らせる音だけの静かな教室で、ノエルの大きな声は教室の隅々まで響いたが、そのことに気づいたのは俺だけだった。


 ノエルのほうを見ると、隣の席の女子が俺の行動に気づいて、俺が見ている先に視線を向け、すぐに俺に視線を戻した。

 その表情に、何か怖いものでもみるような光が宿る。


 人には見えないものが見える電波系男子だと思われたかもしれない。

 ノエルのせいで!

 ここはノエルを無視するにかぎる。

 俺はノートに目線を移した。


「胸キュンを集める期限日があと1週間しかないことが発覚したんです」


 思わず俺は叫んでいた。


「なんだって?」


 突然大きな声をあげた俺に、クラス中の視線が集まった。


「小林さん、どうしましたか?」

「あ、いやぁ。この方程式があまりにも心に刺さったので、思わず叫んでしまいました」

「方程式が心に刺さるとは学者さんのような感性ね。けれど、今は授業中です。感情を自制することも大切ですよ」

「はい。すみません」


 俺は何度も頭を下げて謝った。

 ノエルのせいだ!

 休み時間となり、俺はそそくさと教室を出た。ノエルがついてくる。

 人の通りが少ない階段のすみっこで、スマホをいじるふりをしながら、ノエルと話をする。


「1週間ってどういうことだよ?」

「以前、説明しまたよね。胸キュンは発生してから6ヵ月で消えてしまいます。千佳さんの胸キュンをゲットしたのがいつか調べてみたんです。

 6月18日の土曜日だったんです。そこから6ヵ月後というと、12月17日の土曜日なんです」

「今日が10日日だから、ほんとだ。1週間しかない」

「この1週間のうちに、絶対に唯さんの胸キュンをゲットしてください」

「そんな横暴な。どうしてこんなぎりぎりになるまで期限に気づかなかったんだ。ノエル、ノー天気にもほどがあるぞ」

「気づいただけでもよかったですよ。褒めてください」

「誰が褒めるか」

「期限があるのは博士様も知っていたはずです。説明しましたからね。一緒に忘れていたのだから、わたしだけ攻めるいわれはありません」


 言われてみればそうだ。

 俺は言い返す言葉がなく、ただ悔しさを込めて握り拳を握った。


 予鈴がなって、俺はただ光らせていたスマホをポケットにしまうと、教室に戻ろうとした。そして、角から半分だけ顔をだして俺たちの様子を見ていた人物がいることに気づいた。


「お前、もしかしてみていたのか?」


 今のはた目から見見れば、俺の独り言を。

 うっすらと笑みを浮かべながら言うのは、隣の席の女子だった。


「あなた、見える人なのね」


 ここにきてまた新キャラ登場かよ。

 キャラが多くなってきたぞ。


「話はあとだ。急いで教室に戻るぞ」

「そうね」


 俺たちが教室に戻ると、運よくまだ先生は教室にいなかった。

 予鈴が鳴った後に急いで教室に入ってきた俺たちをクラスのやつらは興味津々に見てきた。

 岡崎の顔は怖くてみれなかった。


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