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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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モテ期到来

 佐藤雫から告白されたことを皮切りに、、俺の周りの環境が変化した。


 まったく知らない一年生女子に声をかけられた。


「小林先輩、おはようございます」

「え? ああ、おはよう」


 同じクラスの今まで話したことも微妙な女子にクッキーをもらった。


「小林君、これ、昨日の料理研究会で作ったクッキーなの。おすそわけよ」

「ああ、そうか。ありがとう」


 軽音楽部の三年生女子に軽音楽部に入部させられそうになった。


「小林って、歌うまいだって? 今度聴かせてよ。噂通りにうまかったら、軽音楽部でデュエットやらせてあげてもいいわよ」

「遠慮しておきます」

「どうしてよ?!」


 とまあ、いろんな女子から声をかけられるようになったのだ。


「モテ期到来ってやつか?」

「まさにモテ期です。わたしのプロデュースのおかげですね」


 ノエルはない胸を張った。


「彼女たちからは胸キュンがピョンビョン飛び出しています」

「へえ、そうなのか」

「それを瓶に詰められないのが歯がゆいですね。わたしが瓶に詰められるのは、博士様が胸キュンターゲットにした方の胸キュンだけなんですから」


 とても残念そうだ。


「ノエルのプロデュースがどう作用したのかいまだにわからないんだが、みんな、俺のどこに胸キュンしているんだろうな?」

「それはですね……」


 ノエルはニシシと笑った。


「教えてあげません」

「なんでだよ?」

「その自覚の無さがまた、博士様の魅力になっているからです」

「意味がわからん」


 土曜日になった。この日は朝から体育館のステージ裏の掃除があるため、学校に向かった。

 集合時間がせまるつれ、ちらほらとダンスとバンドのメンバーが集まってきた。


 体育の教師は俺たちを見回して言った。


「欠席者はいないな」


 ステージ裏はカオスである。折りたたまれた長テーブル、ミュージックバンドで使用する大きな旗、なぜか木刀がすみっこに置かれていたり、何かの部品の金属片が落ちていたり。


「うわぁ、すごい埃だな。これ全部掃除するのか」


 ぼやきながらも掃除をする俺たち。


 掃除を半ばを迎え、掃除が手慣れてきたころ、佐々木が掃除をしながら俺に行った。


「きついな。これも美月と付き合う代償と思えば安いものか」

「それに付き合わされる俺たちの身にもなってくれよ」

「悪いな。博士には感謝している。博士の言葉がなければ、美月と付き合うことはできなかった」

「なんか言ったっけ?」

「『美月の内面を見ろ』って言っただろ?」

「ああ、佐々木に呼び出されたときのことか」


 あの時は、佐々木ともこんなに仲良くなるとは思ってもいなかったな。


「なに? わたしの話をしているの?」


 三瀬がやってきた。


「美月は周りに合わせるために自分に仮面みたいなものを付けていたんだな。気づかなくってごめん」

「ううん、わたしも小林君に指摘さけなれれば気づかなかったわ。それが当たり前のことになっていたら。だから、小林君には感謝しているの。ダンスっていう心から楽しいと思えるものを見つけることができたのも小林君のおかげよ」

「ダンスをしているときの美月って、ほんと、楽しそうだもんな」

「楽しいもの」


 言って、笑みをかわす二人。へいへい、お熱いことで。

 俺がため息をつくと、三瀬が俺のほうを見た。


「わたしたちの恋のキューピットは小林君ね」

「キューピットって、もっとかわいいものじゃないか」


 ノエルがうんうんと頷いた。


「そうです。わたしはかわいいんです」

「キューピットじゃなくてエンジェルだ。褒められれば調子に乗るただのアホだぞ」

「アホとはなんですか? アホとは!」


 ノエルがビービーわめく。

 佐々木が不思議そうな顔をした。


「愛のキューピットを見たことがあるのか?」


 しまった。


「ゲームでな」

「ははん。なーる」


 佐々木は納得した。納得してくれてよかったが、ゲームの一言で納得されるのも、どうなのだろうかと一瞬考えたが、俺の趣味を理解してくれているのだと良いほうに納得する。

 佐々木たちは俺がゲーム好きだということをすでに知っているからだ。


 時間が経過するのは早い。

 この前、中間テストを受けたばかりだというのに、もう期末テストがやってきた。

 その間、俺が命の次に大事にしているゲームはほとんど進まなかった。『春華春闘花の舞』は完全攻略するのはあきらめた。やりかけの『カワセミの唄』は、とにかく最後までクリアしたい。


 が、時間は有限なのである。


 三瀬がダンス部をつくりたいと言い出し、それに乗った俺たちは、ポスターを作ったり会員を集めたりすることになった。

 それから、軽音楽部の先輩女子が、一日置きに俺を勧誘しにくるようになった。


 休み時間にはひっきりなしにいろんな人がやってくるため、宿題をする時間が無くなり、家でゲームする時間が宿題にあてられるようになった。

 それでも宿題が間に合わなくて、授業が始まる直前に二ノ宮のやってきた宿題を書き写したりした。


 唯とゆっくり話をする時間が見つけられない。唯と会話ができる時間は、学校へ登校するときにたまたま会ったり、校内の廊下でばったり会ったり。教科書を貸し借りしたりするときしかない。

 今ではそんな短いチャンスまでもなくなってきていた。登校しているときには、誰かが話しかけてくるし、休み時間には誰かがやってくる。放課後は唯は部活に行ってしまうから、会う時間はない。


 そうこうしているうちに期末テストを一週間前に控えたテスト週間となった。テスト週間は部活がないから、下校する時間は唯も同じだ。

 俺は玄関で唯を待ち伏せすることにした。

 放課後、玄関に向かうと、女子達が玄関先で騒いでいた。


「どうしたんだ?」


 ちょうど同じクラスの女子で、この前、料理部で作ったというクッキーをもらった女子がいたので、聞いてみる。

「校門の前に知らない男の子が立っているの。誰か待っているんだと思うわ。誰を待っているかで騒いでいるのよ」

「へえ」


 俺は校門のほうに目線を移した。


「げっ!」


 その人物を目視して、俺は心底嫌な声を出した。



 校門の前に立っていたのはアニスだった。


「あら、ヒロ君」


 振り返ると唯が立っていた。


「唯か。あいつがあそこにいるのは唯を待っているのか?」

「そうだよ。普段はあたしが部活で遅くなってゆっくり会えないから、テスト週間になって部活がない今日、迎えにきてくれたのね」

「アニスと唯の仲は続いているだな」

「そうよ。じゃあ、ヒロ君、また明日ね」

「ああ」


 会話をしている間に、唯は上履きから外履きに履き替えて、玄関を出て行った。

 アニスが唯に気づき、お互いに手を振り合う。


 女子達がまた騒ぎ出す。


「あの人、平野さんを待っていたのね」

「あんなかっこいい男の子とどこで知り合ったのかしら」

「平野さんって、モテるわよね。うらやましいわぁ」


 聞き逃せない内容が聞こえ、俺は聞き返した。


「え? ゆ、いや平野ってモテるの?」

「そうよ。さばさぱしていて明るくて元気なタイプでしょう。そういう子が好きな男の子っていうのも結構いるのよね」

「そうなのか」

「なあに? 小林君も平野さんを狙っていた口?」

「そういうんじゃない。平野がモテることが信じがたくてな」

「それ、平野さんに失礼よ」


 言葉とは裏腹に面白そうに彼女は言った。

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