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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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ザ・オーディション

 安奈の胸キュンをどうやってゲットするか試行錯誤している中、文化祭で出演できるかどうかを決めるオーデションの日となった。


 オーデションは3日間に渡って開催され、場所は1日目は理科室、2日目は家庭科室、3日目は音楽準備室と割り当てられた。

 選考するのは、生徒会と文化祭運営員会だ。すべて学生が運用し、最後の承認だけを校長と教頭、そして文化祭運営員会担当の教師がする仕組みとなっている。

 ダンスは1日目、3日目に佐々木が歌のオーデションを受けることになった。


 ダンスは問題なくオーデションを終えた。

 問題があったのは佐々木の歌だった。佐々木は友達とバンドを組み、バンドとともに歌を歌う予定だった。

 俺は佐々木のバンド仲間がどんなやつらは知らなかった。

 オーディション当日、午前中の授業と授業の合間の休み時間に佐々木から電話があった。

 校内にいる間は電話は使ってはいけないと言われているが、こんな時間に電話をしてくる佐々木が気になり、トイレに行くと、折り返しこちらから電話をしてみた。


「博士、俺のかわりにオーディションを受けてくれ」


 佐々木の声はやたらとかすれてていて、集中して聞かないと聞き取れないほどだった。俺はすっとんきょうな声を上げた。


「はぁ?」


 佐々木の話では風邪を引き、喉をやられ、熱がでて家で寝込んでいるのだそうだ。

 2日前のダンスのオーデションでは元気よく踊っていた。それがうまくいって気が緩んだところに、風邪を引いたらしい。

 今日のオーディションはオーデション最終日で日替わりが利かない。だからボーカルを代行して欲しいとのこと。

 昼休みに音合わせをするから、音楽室に来てほしいとのことだった。そのときにはバンドの仲間にも事の事態を伝えておくと。


 文化祭で歌を歌うために佐々木が今まで頑張ってきたことは知っている。

 夏休みはじめのころ、初めて佐々木の歌を聴いたときには、あまりのひどさにわざとやってるのかと思ったくらいだった。

 その後、俺に教えをこい、俺のアドバイスのもと、リズム感と音程を鍛えていった。

 今では俺ほどとはいわないが、そこそこ聴けるくらいにはなっているのである。


「頼む! 俺、文化祭の歌にかけているだ。この歌を歌ったあとに、美月に告白する!」

「ええ? そんな目論見があったのか」


 佐々木が美月のこと好きなのは知っている。そのおかげで佐々木に最初にあったときは、三瀬に近づくなとけん制を受けたし、その後はプール更衣室の裏に呼び出されて、暴力沙汰になりかけた。

 当時は佐々木の身勝手なふるまいに腹を立てたが、今思えば、それも三瀬のことが好きで好きでしかたがないのに、その思いが三瀬に伝わらない感情から来ていたことが分かる。


 しょうがない。ここは佐々木の思いに敬意をはらってやるか。


「分かった。代行は引き受ける。委員会側が許すかどうかは分からないぞ」


 とはいえ、たぶんいけるだろう。

 なぜなら、誰もが影の薄い俺よりも、バスケットエースの佐々木の歌を聴きたいと思っているはずだからだ。

「恩に着る……」


 佐々木は心から絞り出すように言って通話を切った。

 昼休み、昼食を終えて、音楽室に行くと、すでにバンドのメンバーは集まっていた。

 大柄な体躯の男子に、細身の体に前髪が長い男子と、ふわふわした髪をした小柄な男子の計三名。

 細身の体に前髪が長い男子と、ふわふわした髪をした小柄な男子は、ベースをもって音の調整をしていた。

 あの二人がベースとすると、大柄な男子はドラムか。

 顔ぶれはみたことがある。ときどき佐々木とつるんでいるのもみたことがある。

 しかし、それだけの間柄だった。


 大柄なの男子が気さくに話しかけてきた。

「君が蹴斗が言っていた博士君か」

「ああ、そうだ」

「俺は吉田剛。ドラムをやっている。よろしく」


 続いて細身の体に前髪が長い男子が声をかける。


「俺は中部奏也。ベースでメインパートを弾いている」


 最後に、ふわふわ髪の小柄な男子が言ってきた。


「蹴斗が君のことめちゃくちゃほめていたよ。一緒にやるのが楽しみだな。僕は五味錦。苗字呼ばれるのは好きじゃないから錦と名前で呼んでほしいな」


 錦は無垢な少年っぽく笑う、もっていたベースの腹を少女のようななめらかな白い手でなでた。


「楽器はもってきたのか?」

「これは軽音楽部に借りたんだよ。何もない日にいちいち学校にもっこないよ。重いもん」

「そりゃあそうだな」


 吉田が声をあげた。


「時間がない。さっそく音合わせをしよう」


 吉田はドラムがないため、机をスティックで叩くことで応用した。かさばる楽器とは違い、スティックは持ち運びしやすいので、いつても持っているという。


 音合わせは最初こそ、リズムのずれがあったが、次第に合ってきた。

 ようやく乗ってきたというところで、昼休み終了のチャイムが鳴る。


 そして放課後のオーディションを迎えた。

 本来のボーカルの代行としてオーディションを受けたが、印象的には良い感触を受けた。

 選考委員に女子が多かったことも理由の一つだと思う。本番ではしっかりと、俺ではなく佐々木の歌を聴きたいと望んだのだ。


 オーディションが終わり、吉田達と別れるときに、吉田達が声をかけてきた。


「博士君と一緒に演奏ができてよかったよ」

「一緒に演奏していて合わせやすかった」

「本番も蹴斗じゃなくて、博士君とやりたいな」

「それは佐々木に失礼だぞ。俺も楽しかったよ」

「今度、機会があったら、また一緒にやろう」

「ああ」


 数日後、ダンスも佐々木のバンドもオーディションに受かったという通知がやってきた。


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