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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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ダンスとカラオケ

 ほどなくして今度は、三瀬から連絡があった。


「小林君、助けて欲しいの!」


 電話に出た途端に、いきなりこう言われて驚いた。三瀬の話を聞けば、今年の文化祭で、三瀬達はダンスを披露するつもりだがメンバーが足りないそうだ。それでダンスダンスレボリューション、約してDDRで、キレキレなダンスをした俺にメンバーになって欲しいというお願いだった。

 俺は速攻辞退した。人前でダンスを踊る自分なんて想像できない。俺はゲーセンの片隅で地味にこっそりDDRを楽しむだけで満足なのだ。

 しかし、三瀬に「一度練習に来てみて」と言われ、断りきれず行くことにした。

 三瀬達が普段練習しているのは、公園や公民館などのフロアを借りてやることが多いとのこと。文化祭で披露する組は、部活動として活躍している演劇部の演劇や、軽音楽部の演奏など以外では、事前にオーディションを受けて受かった組が披露できる仕組みになっている。

 去年の俺は文化祭自体興味がなくて、どんな組が披露されたかまったく覚えていなかった。そもそも当時1年の三瀬が文化祭でミスコンテストで優勝したことすら知らなかったくらいなのだ。

 で、俺が三瀬に言われて行った練習場所は公民館のスタジオだった。


「小林君、来てくれたのね」


 三瀬はすでにダンスの練習に入っていて、うっすらと頬を紅色にそめていた。そこにいるメンバーはいつも三瀬を囲っているバスケット部のエース佐々木、いつも学力テストでは十番以内に入る秀才。三瀬と負けず劣らずきれい系の女子2人だった。

 やっぱりこのメンバーかぁ。うすうす想像はしていたが、今まで俺の周りにはいなかった種類の人種だ。

 俺の姿を見て、あからさまに嫌な顔をしたのはバスケットのエース佐々木だ。


「なんだ、とっておきの助っ人って鼻血男かよ」

「小林だ」

 

 すかさず言い返す俺。


「運動が得意そうにはみえませんが、本当に彼、大丈夫なんですか?」


 秀才君が言えば、女子二人も言葉を重ねた。


「躍らせてみればわかるじゃん」

「さっそく音楽流そうよ」


 結局、俺はメンバーになってしまった。

 三瀬にはすでに知られていたが、俺が意外にもダンスができることを、皆が認めたからだった。

 三瀬と互角に、いやそれ以上に踊れるのは今のところ俺だけだった。


 週3回ほどの練習が入ることになった。まったくやれやれである。ゲームをする時間が少なくなってしまうじゃないか。

 3回目の練習が終わった後に、みんなでカラオケに行くことになり、一人ずつ歌うことになった。


 一番バッターは女子達。次に三瀬。三瀬はそつなく一人ボーカルの女性の歌を歌ってみせた。

 そして佐々木となった。佐々木は最近人気のPOPSグループの歌を歌ったが、俺はその歌声をきいて我が耳を疑った。

 一瞬自分の耳が悪くなったのかと思ったが、みんなが無理やり笑顔を浮かべて、佐々木の歌をいかにも聴いているふうな様子を見て、俺の耳がおかしくなったわけではないと確証した。

 歌った後に点数がでた。その点数は予想通りの点数だった。


「おっかしいなぁ。この点数おかしいんじゃないか?」


 佐々木はしきりに首をひねった。

 いやいや、おかしいのは佐々木、お前の耳だ。お前の声だ。自分の音痴に気づいていないのか?


 その後、秀才君が歌った。まあ、口直しによかった。秀才君は特別うまくもなくかといって、下手でもない、まあごく普通の歌声だった。

 そして、最後に俺にマイクが回ってきた。

 カラオケは俺の家族が大好きで、安奈が俺を毛嫌いする思春期になる前は、月1で家族で近くのカラオケボックスに行っていた。そのため、いちおう歌は歌えるのである。


 俺はアニソンを歌った。いつも聴きなれているし、大好きな曲だからだ。アニソンを歌うのは、いかにも自分がオタクだということをアピールするみたいだから、違う歌にしようかとも思ったが、三瀬のメンバーにはとことこん振り回されているんだ。こいつらにいらぬ気づかいはせず、自分の好きな歌を歌おうと開き直ったのだ。

 俺が歌いだしてしばらくすると、みんなが静かになっていた。そのことに気づかずに、俺は最後まで歌い切った。

 歌った後に点数がでた。その点数をみて皆は奇声を発するやら、嘆きの声を発するやらで騒がしくなった。


 秀才君が眼鏡の縁をくいっと持ち上げてから、俺に言った。


「小林君、ダンスがうまただけじゃなく、歌もうまいだね」


 佐々木がくやしそうにこぶしを握り締めた。


「やっぱりこの機械、壊れてるじゃねぇか? 俺の点数があんなで、小林の点数がこなんのは、おかしすぎる!」


 二人の女子はやたらとテンションが高くなった。


「こんな点数初めてみた。プロになれるよ」

「デモテープ送ってみたら? アイドルになれるかもよ。今のうちにサインもらっておこうかな」


 三瀬だけは静かな笑みを浮かべて俺に言った。


「小林君、いろんな才能があってうらやましいわ」


 いやいや、俺は黙っているだけで人々を引き寄せる三瀬の才能のほうがうらやましいぞ。

 俺が死ぬほど努力したって、そんなオーラを身につけることはできないだろうからな。


 カラオケがお開きになり、カラオケ屋で出て各々が自分の帰る方向に向かったところで、佐々木に呼び止められた。


「小林、お前の音感を見込んで頼みたいことがある」


 佐々木の頼み事とは、俺に歌のコーチを付けてほしいというもの。文化祭で、佐々木はダンスのほかに、バンドでエントリーするつもりだという。バンドのパートはヴォーカルだそうだ。

 カラオケの点数を信用するなら、今のままではオーディションで落ちるだろうから、練習をしてもっと歌がうまくなりたいんだそうだ。


 それなら専門の先生に習えばいいじゃないかと俺が言うと、専門の先生に習ったらどれだけレッスン料をとられるかわかったものじゃない。身近に歌がうまい人がいたら、その人に教えてもらったほうがいい、との返事。


「人に教えられるか分からないぞ。歌なんて、感性みたいなもんだと思うし」

「それでもいい。俺を鍛えてやってくれ。もちろんただとはいわない。お前はゲーム好きだと聞く。『カワセミの唄』って知っているか?」


「カワセミの唄だと? 知っているも何も、残虐でグロテスクなシーンが多いっていうんで絶版となったシュミレーションゲームじゃないか。今ではプレミアがついて、その金額は2桁代になっているゲームだぞ」


 やりたいが、2桁は高校生の小遣いでは到底手がでない。それでも俺は大人になったら絶対に手にいれてやると、ひそかに誓っていたのだった。


「それを貸してやる」

「なんだって? 佐々木、持っているのか?」

「俺がっていうより俺の兄貴のだけどよ。兄貴はもう社会人なんだが大阪に転勤になってしばらく帰ってこない。だから貸すことができる」

「分かった。引き受けよう」


 俺は佐々木の願いを引き受けることにした。

 というわけで、週1で佐々木とカラオケボックスに行くことになった。男2人でカラオケボックスははたからみれば、怪しい関係を連想するかもしれないが、俺と佐々木の中にはそれはない。

 佐々木は文化祭で歌いたい、俺は超レアゲームをやりたい、というお互いに持つつもたれつの間柄なのだ。

 佐々木にはカラオケで歌う時間以外にも、宿題を出した。

 佐々木が音痴なのは、音程をとるのが苦手なのと、リズムを合わせるのが苦手、というこの二つが大きな原因だと思われる。

 俺は音楽創作ソフトを佐々木に貸してやり、音を聞いてその音を音符に起こす、という作業をやらせてみることにしたのだ。最初は「カエルの歌」や「キラキラ星」といった簡単なものから取り組むことにした。

 佐々木がリズム感が苦手なのは、一緒にダンスの練習をしていて分かっていた。だから、まずはDDRで練習することと。他にも音ゲーを2、3個、紹介してそれで鍛えさせることにした。


 そのかいあってか、佐々木は夏休み終盤のころは、はじめに佐々木の歌を聴いたときよりも、別人と聴き違えるほどにうまくなっていた。

 本人のやる気と、練習のたまわものだろう。

 そして、俺の指導の仕方もよかったのだ、きっと。

 そう思っておこう。


「ときめきトワイライト」、「春華春闘花の舞」に続き、

「カワセミの唄」も中嶋の創作です。


『カワセミの唄』

内容:

 カワセミが住み着く小川がある田舎で起きる殺人事件。

 誰かが死んだらデッドエンド。


 主人公は男子高校生。事業で失敗した父親と一緒に父親の故郷であるこの村に住むことになった。

 田舎だと馬鹿にしていたが、同じ学校に通う生徒の中に美少女がいて驚く。

 もうじきこの村では、櫛色祭りという祭りが開かれるらしい。


 櫛色祭りでは、相手に櫛をプレゼントして相手がそれを受け取れば、相思相愛になると言われている。


 そして別の伝説もあった。本命の相手にプレゼントする前にその、櫛を他の誰かの手に渡してしまうと、、その櫛を手にいれたものは死ぬ、と。

 櫛を受け取った相手の死体の髪には櫛が刺さっているのだそうだ。


 主人公は櫛色祭りで美少女に櫛を渡そうとするが、その意思に反し、主人公の周りで不穏な出来事が続く。


と、ホラー的要素の強い物語となっています。

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