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胸キュン☆ゲット大作戦  作者: 中嶋千博
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過去を反省する

 その日の夜、ノエルと俺の部屋で作戦を練ることになった。


「野々原さんの胸キュンをゲットするためにどうするべきか考えましょう」

「野々原さん?」


 って誰だ?」


「コンビニのお姉さんの名前です」

「ああ、そういう苗字だったか」


 途端に「くすっ」と笑ったコンビニの、野々原さんの顔が瞼の裏によみがえる。


「あのお姉さんを胸キュンさせるなんて絶対無理だ!」


 あのはずかしい自分の行為を思い出して、身もだえしそうになる。

 学校にいる間は、授業に集中してできるだけ「やらかしたあの件」は考えないようにしていたのだ。


「ただ一度の失敗であきらめるのは早いですよ。

 チャンスを探すんのです。

 次にコンビニのお姉さんに会えるのは土曜日場所はコンビニですね」

「ああ、そうだ」


 相槌を打ったあとに、「会う」ということを想像し、頭をがしがしとかきむしる。


「うわぁ、会いたくないぞ。

 どんな顔して会えばいいんだ。

 週間サタデーを読みにいくコンビニ変えようか」

「博士様、逃げては先に進めませんよ」

「けどよ、お姉さんに会ったらなんて言えばいいんだ?

 いい言葉が思いつかないぞ」


 今の俺の状況は告白して振られた男、というものだ。お姉さんの立場からすれば、俺がふたたびのこのことやってきても、「振った男がまた来た」くらいにしか思われないだう。


「土下座ですね」

「――なんで?!」

「乙女ゲームに出てくる大好きなキャラクターにコスプレをしてした告白について謝るためです」

「誰がそんなことをさせたと思っている?」

「うまく行くと思ったんです!」


 逆切れされた。


「しかし、よく考えたらお姉さんに対して確かに失礼な行動だった。名前もろくにおぼえていないお姉さんに、俺は自分の欲だけのために告白して胸キュンゲットしようとしたんだからな」


 俺は相手の意志を無視した自分勝手なふるまいをしたことに気づき、お姉さんに申し訳ないと思った。


「コンビニのお姉さんに会う理由は謝ること。これでいいですね?」

「お、おう。

 しかし土下座はなしだ」


 告白して鼻で笑れ、土下座してまた鼻で笑われたら俺、二度と立ち上がれない。自信をもって言える。


「どう謝るかは、おいおい考えましょう」


 言うと、ノエルは大きなあくびをした。


 デジタル時計を確認すると、時刻は夜の1時になるところだった。


「今日はもう眠りましょう」

「ゲームはしないんだな」

「はい。着替えをしたいので、博士様、少しの間、部屋を出ていてください」

「分かったよ。ちょうどトイレに行こうと思っていたんだ。コンタクトレンズもとらなくちゃいけないしな」


 俺は部屋を出て、洗面所に向かった。それにしてもコンタクトレズはやっぱり面倒くさいぞ。


 寝る前の準備を整えて部屋に戻ると、ノエルはパジャマに着替えてすでにベッドの上にいた。

 翼はベッドの横に置かれている。毎回思うんだが、この手作り感満載な翼はなんなのだろうな。


 そんなことを思いながら、パジャマに着替え、すみっこに四つにたたんでおいた掛布団を床に敷きはじめる。


「何をしているんですか?」

「寝る準備だ」

「床で寝るんですか? ここにベッドがあるのに」

「一緒に寝ることになるぞ?」

「それがどうかしましたか?」


 きょとんとした表情で聞き返すノエル。


「昨日床に寝ていたわたしをベッドに寝かせてくれたのは博士様でしょう?」

「うん、まあ……」


「わたしと一緒には寝られないですか?」

「俺は別にかまわないが、ノエルはいいのか?」

「まったくぜんぜん気にしません」


 しれっと言い切った。俺を男とみていないこの態度はどうなんだ?

 いくらノエルとはいえ、微妙に傷つくぞ。


「ノエルがいいんなら、俺も気にしないぞ」


 俺はベッドに入って、ノエルの傍らに横になった。


「わたしがいる分、ベッドが狭くなってごめんなさい」

「気にするな。ノエルは身体が小さいから、普段とあまり変わらない。

 そういえばノエルは時々ふらりとどこかに行くが、どこに言っているんだ?」

「ここではない世界です。わたしのような存在にとってはあちらの世界のほうが本当の世界なんですけどね」

「そんな世界があるのか。夢みたいな話だな」


 ノエルのいる世界をいろいろと想像する。天使が空を飛んでいて、森には恐竜みたいな生き物がして、海には背中に島を載せた巨大なクジラがいたりする。

 ここではない世界。非現実的なノエルがいるのだから、そういう世界も実際に存在するんだろう。

 そんなことを考えていると、ノエルが眠そうな声で言ってきた。


「おやすみなさい、博士様」

「おやすみ」


 誰かと一緒に寝るなんて、久しぶりだ。中学校の修学旅行以来じゃないだろうか。


 すぐにノエルの眠りについた寝息が聞こえてきた。


「もう、寝たのかよ?」


 ノエルのほうを向くと、なんとも気持ちよさそうに寝ていた。

 おでこにかかったピンクの髪をかきあげてやる。


 まったくこいつは。一緒に寝るのに、遠慮していた俺がバカみたいだ。

 ノエルの気持ちよさそうな寝顔を見ていたら、こっちも眠くなってきた。


 目をつぶると思うより早く眠りはやってきた。


 朝、目を覚ますと、またしても身動きが取れなかった。

 何かが俺の体に絡みついているようだ。柔らかくて暖かい、何か。


 なんだ?


 目を開けると、ノエルが気持ちよさそうに寝ていた。

俺の体にコアラの子供みたいに抱きつきながら。


「……っ!」


 声にならない声をあげる俺。


 朝目覚めたら、隣に女の子が寝ていた。

 それも『かわいい』という装飾語付き。


 そんなシュチエーションを男子ならば一度は妄想すると俺は思う。


 俺は堂々と言ってもいいが、何度も妄想したことがある。

 それが今叶った。半分だけ。


 『女の子』と言っても年齢に幅がある。

 俺が妄想していた女の子は俺と同じくらいか少し年上くらいの女の子だ。

 小学校3年生は対象外だ。


 乱暴にならない程度に俺に抱きついているノエルの腕を払いのけ、上半身を起こした。


「ほえ? おはようございます。博士様」


 ノエルは俺の気も知らないまま、寝起きの無防備な表情であいさつをした。


 くそ。思わずそのおでこにデコピンをする。


「いたっ! 何するんですか?」

「ちょうどいいところにでこがあったから、おもわずデコピンしていた」

「ひどいです」


 ノエルはほほを膨らませた。


「悪かったよ」


 ノエルの頭をなでなですると、


「子供扱いしないでください」


 と、ぷいと頬を膨らませた。


 なんだよ、せっかく謝ってやったのに。


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