飛光少年A(8)
十七歳の冬、二千年になった。ぼくも、周りも、何も変わらなかった。それは今年年の七月が来たときと同様に、何の前触れもなくやってきた。
二十一世紀の来年は、ぼくは何を思うだろう。十八歳のぼくも、きっと何も変わらないに違いない。上原さんは違うと言ったけれど、ぼくはそんなことはないと思う。
悲劇かなにかである気がした。
頭の芯が冴えてゆく。冷水をぶっかけられたように突然全身を寒気が襲った。心臓をわしづかみにされた気分で、感傷的になったらもう終わりだ。血が滲むほどの強さで下唇を噛み締めるが、じわりと滲んだ視界はもうどうにもならない。もはや自分の意思では制御がきかず、とめどなく温かい水分が頬を伝っていった。ぼくにできることといったら、せいぜい顔を下に向け、可能な限り乱暴に、袖で涙を拭うことくらいだ。
眼鏡をかけていることを忘れ、思い切り腕を顔面に押し付けてしまった。鼻の頭を激痛が襲い、違う意味でまた目頭を熱くした。
自分が可哀想だから泣くのだ。
泣いている間は気分が良いし、あとにはすっきりする。
だから責められるのは仕方ないのだけれど、でもどうしようもない現象だった。感傷的な性格は嫌いではない。
これからもそうやって歳を取っていくんだと思うと、ひどく憂鬱だった。
半分腐って落ちたような脳ミソで、酸っぱい終末感を噛みしめていた。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。次は過去編です。