第一部:変化と夏―4
考えすぎか…と思い直す。
「ううん。何でもない」
「何だよ。変なヤツ」
皮肉っぽく言う薫にとびきりの苦笑いで皮肉を言い返す。
「じゃあ宿題見せなくていいんだ?」
「それは困る」
他愛もない会話を交わしている間に塾の前。ずかずかと冷たい階段を上がって行く薫を見つめる。逃げてしまおうかと考えながら。
「月島ぁ!遅刻だぞォ!」
突然頭上からドスの聞いた濁声が降り掛かる。驚いて見上げると担任の先生がテスト用紙をひらひらとさせながら沙和を催促している。
沙和は小さくため息を吐きながら暗く、冷たい階段を上がっていく。上がって行く足はまるで鉛のようで。
それでも無理矢理足を引きずって教室の在る三階まであがる。
「遅いぞ月島ぁ!」
正直いって先生の声は好きじゃない。うんざりするほど聞いているし。
「…すみませんでした」
小さく謝ると一番手前の席に着く。すると後ろから鉛筆か何かで突つかれる。
振り向くとそこには薫が。
「怒られてやんの」
「うるさいな」
「オイそこォ!テスト始めるぞ!私語はつつしめ!」
「「はっはい!」」
慌てて準備をすませ、テスト用紙が配られるのを待っているとふと、さっきの薫の話が脳裏に浮かぶ。
―お客さんか…珍しいな誰だろ?
兄かもしれないというのもあったが人のあまり居ないこの場所に何の目的で来たのだろう、そういう気持ちだった。
「…ぃ…ぉぃ…おい!」
後ろから呼ぶ声にハッとする。振り向けばイライラした様子で沙和の机に配られているテスト用紙を無言で指差す。
「あっごめん。今配るから」
ちっ、と小さく舌打ちする音が聞こえる。
「よォし!テスト開始!」
パン、パン、と乾いた音が響いた。
重要な人物の兄がなかなか出てこなくて申し訳ありません。次回はだしますので!私もまだ高校生で分からないことや至らない所、表現がまだまだ半人前ですが、見守って頂ければ幸いです