閉じられた記憶
前半はシェニエスタ視点
後半は少年視点です。
3月19日 11:06 改稿
内容はあまり変わらないと思います。。
ブラックな少年は、しばらくの間ブツブツと何やら呟いていた。
内容は聞くに堪えない物凄い悪態。なので割愛させていただくねー。
ふふっ。こんな真っ黒な言葉聞いたことない。。精神が汚染されそ・・・げふんげふん
「・・・あーあ。なんか、完璧忘れてるっぽいし。僕のことは?覚えてる??」
失礼な事を考えてたら、少年が諦めたように深く溜息をついた。
私のせいで彼は今日溜息まみれだなー、申し訳ない。
しかし、覚えてない・・・と言ったらぶっ飛ばされそうな目をしている。怖ぇー。
でも嘘を許さないという目もしてる。はいはい、人間正直が大切ですよねー。分かってますって。
「・・・・覚えてないんだね」
「さーせん」
「もう、ホンット最悪。」
つくづく申し訳ない。少年は、しばらくまた悪態を呟いてから諦めたように溜息(また溜息!)をつき、
「クロムウェル」
ボソッと呟く。
「・・・え??」
「覚えてないんでしょ?僕の名前。クロムウェルだよ、シェニエスタ」
「クロムウェル。」
「・・・クロエでいいよ。君にそう呼ばれると背筋がムズムズするからね」
心底嫌そうに顔を顰めるクロエは、私が頷くのを見ると満足そうに笑って「さて、どうするか」と顎に手を当てる。
私はこっそりと舌の上で転がすようにクロエの名前を呟いてみる。うん、なんかこっちのほうが馴染む。
・・・それにしても、クロエは私を知っているという。
私を目の前にして「シェニエスタ」と呼ぶという事は、間違いなく私は彼の言う「シェニエスタ」なんだろう。それが不可解だ。
じゃあ、その姿をしている私は一体誰なのか?姿は間違いなく女神。じゃあ、中身は??
ふふふっ、何だかゴチャゴチャだわ。もう何が何だか・・・。思考回路はまさにショート寸前!ね。
と、いうか。女神を知るという彼は一体ナニモノ??
今更ながらの疑問に首を傾げると、私の疑問を察したのか彼は「それも忘れてるのか」と苦笑する。
「僕は闇を司る神。ちなみにさっき言ってたメニフィアってのは美を司る君LOVEな女神ね。」
LOVEって・・・・かなり俗世っぽい言い方だ。
思わず「神様」に抱く荘厳な印象が総崩れしてしまいそうになった。いやいや、待つんだ私。
クロエだけで全ての神様への印象を変えるのは早急すぎる。きっと他の神様は普通よ。きっと!
「それにしても、この状況は予想外だったなー・・・。ドウシヨ、強制連行しづらいじゃないか」
強制連行。その言葉にブルッと思わず身体が震えた。
なんだろ、彼の記憶は私には無いはずなのに何故か断言できる。強制連行、クロエは容赦しないだろうなー確実に。
しかし、もし私に記憶があったらどんな連れ帰り方をされてたんだろうか。・・・・おぉう。リアルに寒気がするー。
困ったと言う割に彼は何所か楽しそうに私を見る彼の瞳に文字通り私は竦み上がった。肉食獣に睨まれる草食獣の気分です。。
「よし、決めた!今の状態の君を神界に連れ帰っても混乱しそうだしね。強制連行は諦める事にするよ。」
偽り抜きでホッとした。
強制連行回避ぐっじょぶ、私!
「ただし」
安堵のため息をついてたら、クロエがニンマリと笑った。可愛らしい顔には似合わない悪魔の様な微笑み。
・・・・・ホントに神様なの??とつい疑ってしまう程にブラックな笑みだ。めっちゃホラー
「・・・ただし??」
わざとらしく言葉を切ったクロエに恐る恐る尋ねると、
「僕も君とこっちに居る事にするよ」
今度は鮮やかな爽やかスマイルでそう言い切った。
あぁ・・・・なんか、凄い嫌な予感がする・・・。
************
彼女が神界からいなくなったのは少し前の事。
僕ら神にとってはほんの少し前、一呼吸にも満たないような一瞬前。
でも、人間世界の時間で言えば多分、20年ちょっとくらい中途半端に前の事。
誰かに何かを言う事もなく突如として消えた愛しい気配。
彼女は、僕達にとって母であり娘であり伴侶である存在だったから、人の世では尊大で偉大・・・とか言われている神々全てが半狂乱となって彼女を探した。
それなのに、見つかる気配のないシェニエスタという女神。
あの時は気配が全く感じられなかったんだ。見つからない事もしょうがない事だった。
・・・そんな彼女の気配が、一転してその存在を主張し始めたのは僕が今こうして彼女の前に現れる、人間世界で言えば数時間前のこと。
いままで見つからなかったのかが不思議なほどに輝かしいその気配は、僕が管理する世界に忽然と現れた。
間違うはずもない彼女の気配。でもどこかに違和感を感じさせるオーラ。
僕は慌てて、人の世界に降りたった。
ついてくると言って聞かない野郎共に「いきなり大勢の神が降りたら管理する世界の人間が驚く」と強引に押し切って降りた世界に彼女は確かにいた。
見つけたシェスタの変わらない元気そうな姿を見たときは思わず力が抜けた。
僕ら神に時間感覚という物はほとんど無いに等しい。
だから、彼女がいなかった時間は僕らからすれば、本来であればほんの少しの時でしかなかった。
・・・もしいなくなってたのが慈愛の女神でなければ、誰も気にも止めなかっただろう。
そんな一呼吸に満たないような短時間だと言うのに。それほどまでに彼女は僕達にとって大きく大事な存在だった。
血相変えて探していた僕らを「過保護」だと、彼女はいつものように笑うだろうか?
あの形良い唇に笑みを乗せて、美しい瞳にさも楽しそうな色を浮かべて。
さて。そろそろ彼女を迎えに行こうか。
心配をかけた事を叱ってやるんだ。
もう、突然いなくなるんじゃないって。
・・・・僕に心配をかけるんじゃない・・・って。
で、そしたらきっと彼女はいつも通りこう言うんだ
「クロエってば考えすぎ!あんまり悩んでると禿げちゃうわよ??」
まぁ・・・・・・結局はそんな僕の予想は無残にも打ち砕かれた訳だが。
連れて帰ろうと現れた僕に彼女は、どこかぎこちなくて。
訝る僕にシェスタは気まずそうに目を泳がせるだけで、詳細を語ろうとしない。
こんな彼女は珍しい。いつもはハキハキし過ぎてるほどなのに。
あんまり人の頭の中を視るのは好きじゃないんだけど、今回ばかりは仕方がない。
ということで、一言断ってから視てみる事にした。彼女の記憶を。
大人しくされるがままな彼女の頭を覗く為に意識を集中させて・・・・・、あれ?と僕は首を傾げる。
・・・・・視えない。
まさかと思いつつ、もう一度意識を集中させてみるが、どうしても視えなかった。
まるで靄がかかっているかのように不確かであやふやな場所に手を伸ばしているような奇妙な感覚。
わざと見せないようにしてるのかと最初は戸惑っけど、目を開けて額を合わせた状態で僕と同じように目を閉じているシェスタを見て「それはない」と即座に僕は僕の考えを否定する。
彼女は何処までも素直に僕に視せようとしてくれている。
ならば問題は何処に・・・?
もう一度、彼女に意識を集中させ僕はふと、違和感を感じた。
今までの彼女にはなかった、妙な気配。
それは、靄の向こう側にある、とても綺麗で危ういものの気配だった。
・・・・そこで唐突に理解する。
シェスタはそれが消えてしまわないように、鍵をかけているのだと。
危ういそれは、きっと何か大切な記憶。
それが他の膨大な記憶の中に埋もれて消えてしまわないように、必死に繋ぎ留めようとしているのだ。
だから鍵をかけた。
表層に出て来ないよう、あまりにも濃すぎる神としての記憶に掻き消されてしまわない様に。強固な記憶となるように奥底に丸ごと全てを押し込んで。
なんて無茶をするんだろうかと呆れた。シェニエスタはいつでも豪快すぎる。
そこまでして守りたい記憶とはいったいどんなものなのか。
醜い嫉妬が胸の中に生まれた。
ねぇ、シェスタ。
それはどんな記憶なの??
君がそれほど大事にするその記憶は一体、誰との記憶なの?
低劣な考えだ。馬鹿馬鹿しい。
でも、それは確かに僕の心を悩ませる重大な問題。
内心の思いを押し込めるようにしてシェスタに微笑みかけ、僕はゆっくりと口を開く。
「・・・・・僕も君とこっちに居る事にするよ」
・・・そんな、心にもない事を言って。
この世界は僕が管理する世界。だから他の神は簡単には入ってこれない。
だからそう、コレは僕の我が儘。
君を、心配するフリをして僕はただ君と2人でいたいだけ。
そんな記憶に負けないような記憶を僕と共に作って欲しいというワガママ。
我が儘をどうか赦して、僕の女神・・・・・。
僕は闇を司るクロムウェル。
闇は、光があってこそ存在する。
僕にとっての光は貴女。
誰が何と言おうと、僕の光は貴女だけなんだ・・・・・
お読みいただきありがとうございました♪
いろいろな小ネタを活動報告にて報告させていただきますので、気が向きましたらそちらの方もご覧いただけたら嬉しいです
3月19日 11:06 改稿
内容はあまり変わらないと思います。。